ゴールデンカムイ第217話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第217話 北海道にて

大泊にいる尾形は、アシリパさんたちが泊まっていた宿の人に話を聞いていました。アイヌであり、しかもその子が乗り込んだ連絡船を海軍が砲撃したとあって、大泊では噂になっているようです。北海道近くの流氷に下りてその女の子が逃げおおせたところまで噂になっています。
アシリパさんが北海道へ戻ったことを確信した尾形は、外套を脱ぎ、ヴァシリの連絡船からの狙撃で死んだ兵士から剥ぎ取った軍服姿になります。樺太作戦で負傷し最近まで寝たきりだったが北海道の両親の元へ帰りたいと、連絡船の船長に嘘八百を並べ、船賃代わりの干した棒鱈を渡して連絡船に乗り込みます。

場面は北海道の山へ移ります。中年とおぼしき男が息を切らして走ります。その背後に迫るヒグマ。枝で額を横一文字に切りつけながらも必死で走りますが、甲斐なく男はヒグマに食われてしまいます。男の腰には、煙草入れでしょうか、魚をかついだヒグマが彫られたものがついています。

一方、いよいよ北海道へ戻ってきたアシリパさんたちは山で狩りをしていました。流氷にいるところを船で通りかかったアイヌの仲間でしょうか、猟犬を引き連れたアイヌと一緒です。猟犬の働きでヒグマの巣穴を見つけ、罠を置き、かかったヒグマを仕留めます。しかしヒグマは巨大な生き物、猟に出てきたアシリパさん・杉元・現地民の三人だけでは運びきれません。「ネウサラカムイ」と呼ばれる目印を置き、明日またヒグマの肉を取りに来ることにします。
帰り道、アシリパさんがアイヌの言い伝えを杉元に聞かせます。熊は山奥の神、良い心を持つ人の矢には自ら当たりに来る。だから熊を狩ったら丁重に扱いなさい、そうすれば熊の毛皮を着たカムイがどっさり肉を持って何度でも遊びにやってくるだろう、と――。

山からチセに戻ってきた杉元たちは今後の予定を話します。杉元の考えは、漁夫の利。鶴見・土方の両陣営をぶつけて、横から金塊をかすめ取る作戦です。
しかしそれをするにもお金が必要。北海道に来てから十日あまり、ヒグマを狩って路銀を稼いできましたが、もっと稼げる話はないものかと、チセの主人に白石が聞いてみると。
ウェンカムイの退治を頼まれているとのこと。ウェンカムイとは人を殺した熊。人の味を覚えた非常に危険な個体です。
しかもこのウェンカムイが襲ったのは、みな川で砂金を採っていた者だそう。杉元も作品の冒頭で砂金を採ろうとしていましたが北海道の砂金はこの頃にはほとんど採り尽くされていたはずです。しかし噂では「雨竜川」で砂金を掘り大儲けしている男がいると。ウェンカムイに見つからずに砂金を採れれば路銀には困らなくなりますが、ウェンカムイに会わずに採ることが可能なのか――?

さらに場面は変わり、また山中。斜面を歩いている際に雪が崩れ、崖から落ちそうになっている人物がいます。助けを求める声を聞きつけた人が、平太、と呼びます。崖から落ちかかっている平太は、杉元たちによって助け出されます。
その平太の顔は、ヒグマに食われたはずの男の顔。額には逃走中についた傷、腰には熊が彫られた煙草入れ…。なぜヒグマに殺されたはずの男が生きているのでしょうか?

 

アシリパさんたちの現在地は浜頓別?

雨竜川で砂金が採れる、というくだりで、アシリパさんたちの現在地が出ていましたね!今の地図に照らし合わせると、北海道の浜頓別町あたりでしょうか。中頓別町とのちょうど境目あたりの可能性もありますね。
中頓別は全国一の冷え込みを記録するほどに寒さが厳しい土地のようです。流氷の出る時期なので非常に冷える季節…こんな中で吹雪にでも遭ったら本当に天に召されてしまいそうですね…。

そんな現在地から南南西に下ったところにある雨竜川。人を食った熊に砂金。この漫画の本来の目的や、冒頭部の魅力を再確認させてくれるようなワードが目白押しです。ヒグマに食われたはずの人間が生きていた!?というホラー展開もありますし、これは楽しみです。

雨竜川で鳥を見たい!

北海道の地名といえばアイヌ起源のものが多い中、この雨竜川はアイヌの空気をあまり感じない…?と思いましたが、雨竜川もしっかりアイヌ起源みたいですね。ただ諸説あるそうで。北海道の雨竜町では、町名の由来は「ウリロペツ」鵜の多い川、となっています。鵜ってあまり寒いところにいるイメージがなかったのですが、寒冷地に分布するものもいるみたいですね。
私としてはアシリパさんがさらわれかけた伝説の巨大怪鳥、「フリュー」が語源になっているものを推したいですね!暴れ回るフリュー(暴れるようになった原因は人間側ですが…)に槍でとどめを刺す、なんてかっこいいので、野田先生の作画と説明でその伝説を見たい聞きたい!でも、怪鳥のお話は既出なので、やはり鵜でくるのかな?とぼんやり想像しています。

 

山に潜む怖さ

話は変わりますが、「三毛別」という地名をご存知でしょうか?ゴールデンカムイがお好きな方なら耳にしたことがあるかもしれません。「三毛別羆事件」の舞台になった場所です。

三毛別では過去、身の毛もよだつ恐ろしい出来事が起きていました。集落の住民複数名が、ヒグマに殺されてしまうという事件です。
事の発端は冬眠に入らなかった「穴持たず」です。冬の間の食料を求めて人里へ来てしまったようです。ヒグマに驚いた人の声がヒグマを刺激し襲われ、食料の在り処を覚えたヒグマは何度もやって来てしまう…という悪夢のような実話です。

獣によって被害が出ることを「獣害」と呼びますが、この三毛別の事件が最悪と言われています。

福岡大学ワンダーフォーゲル部の事件も有名どころですね。こちらは比較的最近のお話です。いかに文明が発達しようとも自然の中では無力であることを痛感しました。
ヤングジャンプでは他にもサバイバルを題材にした作品が連載されていますが、それを読んでいると、知識を持っていて尚且つそれを非常時に実行できる状態じゃないと、山に入ってはダメなんだな、と思います。ヒグマと出くわしたときに背中を見せるなとはよく聞きますが、どでかい獣が檻も何もないすぐ近くにいるのを見てパニックにならない一般人ってどのくらいいるのでしょうか。普段開けた視界で過ごしている人が山の木々だらけの中で危険を早めに察知できたりするでしょうか。
山は気軽に入っていけない場所なのですよねぇ。アシリパさんたちアイヌや谷垣たちマタギが山を神聖な場として敬意を払うのも納得です。神の領域なので何が起こっても不思議じゃないなと思うのです。

そんな山の中で、山奥の神と対峙する杉元たち。杉元はアシリパさんの狩りの腕前もありヒグマを何頭も仕留めていますが、かなり奇跡的なことですよね。山では人間のほうが圧倒的に弱いのに、そこを民族に伝わる知恵で切り抜けていくアイヌの生き様のかっこよさと、それをやはり上回る山の力、それらを拝めると思うと次週のサバイバル狩猟会は非常に楽しみですね。

 

 

 

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第216話 謎の白い熊

流氷上でホッキョクグマ?に出くわした杉元たち。ヴァシリが撃とうとしますが、真っ白な熊はとても珍しい。毛皮を売ればまとまったお金になります。できるだけ高く売りたいので毛皮に傷はつけたくなく、ヴァシリの射撃を止めます。
しかし傷をできるだけつけずにシロクマを倒すにはどうすればいいのやら。脳か心臓を狙うしかなく、できるだけ毛皮の価値を高く仕留めるとなるともう開けた口に撃ち込むしかない。杉元が海に落ちたシロクマが流氷に上がってくるのを待ち受けていると。
上がってきたシロクマが流氷に上がろうと体重をかけると、杉元の乗った小さな流氷は勢いよく傾きました。その勢いのまま投げ飛ばされる杉元。シロクマの後ろに着地します。振り向いたところにはシロクマのお尻が。そのとき杉元の脳裏には、親分と姉畑先生が獲物を熊の尻穴に突っ込んだ場面が思い出されていたのでした。
杉元の奮闘むなしく仕留められたシロクマは小さな流氷ごと流されてしまいますが、通りかかったアイヌの船に乗せてもらい、いよいよ北海道へ帰還を果たします。

一方、水雷艇には簀巻きにされた鯉登少尉が寝せられていました。情けないと呟く鯉登少尉に対し、父親は辺りに人がいないのを確認してから、生きていればよい、と息子に伝えるのでした。

 

軍人の鑑

鯉登少尉!生きてた!!!

あれだけずっぷり刺されていたのに生きているとは、杉元と同じくらい生命力が強いのでは?と思わされますね。何にせよよかった、生きていて…。鯉登パパの様子も涙ぐましいですね。軍人なら我が子を進んで戦場に送るというモットーの人なので、我が子が生きていて嬉しいという気持ちを外には出せない。だから表情は変えずに、言葉だけを、息子だけに届くように零す。軍人の鑑であり父性愛に溢れた人物じゃあないですか。

大泊で鶴見中尉と再会する前夜に、鯉登少尉は鶴見中尉の過去の行いに疑問を抱く場面もありましたが、鶴見中尉の打った「音之進くん誘拐事件」でこの親子の仲が深まったのは間違いないのですよね。そして今回も、息子の無事を喜ぶ父親、その気持ちを素直に言葉にしているのも、誘拐事件があったからこそじゃあないでしょうか。思っていることはきちんと言葉にしないと相手に伝わらないという教訓を鯉登パパは誘拐事件で得たのではないかなと。

鯉登少尉が生きていて嬉しいですが、まだ生きているということは第七師団として杉元たちの前にまた立ちはだかってくるのでしょうね。北海道の沿岸部には鶴見中尉が情報網を敷いていそうですし、第七師団の猛攻が始まりそうな気配もありますが、久々の北海道なのでそろそろ土方さんが出てくる予感もしています。

 

 

 

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第215話 流氷の天使

流氷の上を進む、杉元・アシリパさん・白石・ヴァシリ。その後ろには白い獣の姿があります。
白石は実は昨夜の月島軍曹と鯉登少尉の会話を聞いていました。鶴見中尉の動機は屯田兵への報いのため、アイヌの存亡はまったく視野に入っていません。
アシリパさんが鶴見中尉の手から逃げ出すことで第七師団が金塊を手に入れる可能性が低くなり、白石は胸がすく思いでした。第七師団が金塊を手にし、アイヌはじめ少数民族の生き残る道が狭まってしまったら、キロランケは一体何のために戦って死んだのか。

キロランケに関してはアシリパさんには疑問がありました。和人でもアイヌでもないのになぜ日露戦争へ出征したのか。白石の推測ですが、キロランケはアイヌへなりすまし北海道へ潜伏、結婚して戸籍は取得しているので兵役は免れられず、拒否すれば身上調査があり面倒になりそうなので出征するしかなかったのではないか、と。そこにウイルクとの関係の変化(ここは具体的には描かれていません)や極東少数民族存続への思いも絡み合い、今できるやり方でロシアへ牙をむこうとしていたのかもしれません。
キロランケ出征の理由を聞いた杉元は、殺し合いは手っ取り早くて簡単だ、と思います。アシリパさんの目指しているであろう、誰も殺さない道は、戦争に比べ遥かに困難です。

杉元にも、キロランケに関連した疑問がありました。彼の最期のとき、アシリパさんは何を言ったのか?暗号の解き方がわかったのではないか?という質問にアシリパさんは素直に「うん」と答えます。
が、暗号の解き方は言いませんし、杉元も聞き出そうとしません。時が来たら教えてほしい、と杉元はアシリパさんを信頼し、判断を任せます。
杉元を守るには私が盾になればいい。アシリパさんにはそんな思いがありました。魂が抜けるまで戦いひとり傷つく――暗号の解き方を知ったら杉元はきっとアシリパさんを置いて行ってしまうだろうことはアシリパさんにもわかっていました。だから暗号の解き方は杉元にも教えない。暗号の解き方を教えなければ杉元とアシリパさんが離れることはないし、第七師団もむやみに攻撃してはこないでしょう。
さらに重たい決意がアシリパさんにはあります。「道理」があれば、杉元と一緒に地獄へ落ちる覚悟をしたのです。
しかし白石がシロクマに襲われアシリパさんのダイアログは終了。海に潜り助かった白石でしたがシロクマがなぜこんなところに?

一方、連絡船では鶴見中尉がこれからどうするかを話していました。宇佐美はアシリパさんの親族を殺すと脅せばいいと提案します。しかし罪のない人を見せしめで殺すのは反対だと、菊田が人道的な発言をします。宇佐美の続いての提案、フチの死亡広告を出すというものに鶴見中尉も反対ではない様子。「迷いがあって覚悟が決まっていないのならば…」と、アシリパさんの覚悟の程度によっては脅迫は有効だと鶴見中尉は考えているようです。

大泊の海岸線ではヴァシリが狙撃した兵士の回収へ月島軍曹がやって来ました。しかし死亡した兵士は軍服を脱がされており、周囲に問いかけると子どもが答えます。男の人が軍服を脱がすのを見たと。その男は、もう使わないからと軍服を脱がしたあとに銃を拾い上げ、あたかも窮地から救い出したかのような口ぶりで、こいつも壊れるまで人を撃ちたいはずだと言い放ちます。それは右目を包帯で覆った尾形でした。

 

あるがまま

今回アシリパさんがとんでもない覚悟を決めていました。不殺を貫くのかと思いきや、「道理」があれば地獄へ落ちる覚悟をしていると。つまりは人を殺すかもしれないということですよね。
アシリパさんにとっての「道理」とは何になるんでしょう?作中で「道理」は、「意思と反することをした際に自分の気持ちを納得させるための言い訳」というのが言い換え表現になるのかなと私は思っています。人殺しについては杉元・尾形についての描写が非常に高い濃度ですでに出てきています。尾形は「人を殺しても罪悪感なんてないはずだ、あるはずがないのだ」と言い、自分の中の罪悪感を押し殺しています。杉元は「自分は地獄行きだとわかっているし、人を殺す前の自分とは別人になっていることもわかっている」と、理解しているから納得してくれと必死に自分に言い聞かせているように見えます。二人ともに共通するのは、本当はしたくないことをしているということと、気持ちと行動がちぐはぐになってそれをどうにか納得させるために自分の中で通ずる理屈を組み立てていることだと思います。その理屈が「道理」になるのでしょう。人間の精神は案外弱いので、安定を保つために無理やりにでも「整合性」を必要とするのですよね。

アシリパさんの「道理」は、杉元と近いものではないかなと思います。アイヌでも人を殺した者は地獄に落ちるという思想があります。そこへ行くことはわかっているのだから納得してくれと自分の心に言い聞かせるものになるのでは?
でもアシリパさんの場合は、そこに「杉元も一緒だ」というのが加わる気がします。杉元も一緒だから地獄なんて怖くない、という信頼なのか、杉元だけ地獄に行かせるわけにはいかない、という金塊争奪戦に巻き込んでしまった責任感めいたものなのか、それともまた別の何かなのかはわかりませんけども。

兵士だらけの作品なので出てきたときにはすでに人を殺すのが当たり前、というキャラクターがほとんどの中、アシリパさんだけがこれまでに誰も殺しておらず、今後誰かを殺すかもしれない可能性があります。アシリパさんがこの矢を人に射るべきなのか迷う場面、見たいような、そんな未来は来てほしくないような…。

 

流氷上のスタンドプレー

今回月島軍曹が久々に登場しましたが、一人で行動していましたね。アシリパさんたちを追って他の兵士は連絡船、そうなると大泊に残っているのは月島軍曹と鯉登少尉ぐらいでは?と想像していますが…
果たして鯉登少尉の安否はどうなのでしょう…。何週間もやきもきしています…。
鶴見中尉たち第七師団が連絡船に乗ったあと水雷艇が大泊へ引き返し、父が何も言わぬ息子を抱きしめ船に乗せる…なんてことが起きていないとよいのですが…。

あとは尾形、ここで出てきたか!という感じです。今回の発言だけ聞くと、人殺すのだぁい好き!という風に聞こえますが…そんなキャラだったっけ…?
でも再起不能かに思われたキャラが実は無事で戦線復帰…というのはアツい展開なのでワクワクします。眼帯キャラ枠にも収まってきてるし、さすが尾形、魅力にあふれまくっているところは相変わらずです。
鶴見中尉たちより早くアシリパさんたちへ会い、そこでまたアシリパさんが尾形を殺せるのかどうなのか!?という展開があるのでしょうか。そういえばあのときも流氷の上でしたね。吹雪にならないといいなぁ。

 

 

 

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第214話 雷型駆逐艦VS樺太連絡船

樺太連絡船に乗り込んだ杉元・アシリパさん・白石・ヴァシリ(頭巾ちゃん)でしたが、すぐに鯉登パパが指揮する駆逐艦が追ってきます。砲撃に加え停止するよう発光信号も送られ、船長たち乗組員が戸惑う中、杉元は船長に銃をつきつけ進み続けるよう命令します。しかしこの時期は樺太と稚内を繋いでしまうほどの流氷がありますし、船の速度も駆逐艦のほうが段違いに速く、すぐに追いつかれてしまいそうです。
アシリパさんが乗っているので駆逐艦ができる砲撃は威嚇射撃や行く手を阻むためのもの、当てる気はないと踏んだ杉元。進路を変え逃げ続けるように装い、行先にある流氷を駆逐艦に砲撃させ流氷を砕くことに成功します。砕けた帯状の流氷の切れ目から向こう側の海へ逃げ時間を稼いだ杉元たち。ですが鶴見中尉がすぐに、艦砲射撃が流氷を砕き逃げ道を作ったのだと気付き、駆逐艦も同様に流氷を砕いて杉元たちを追いかけてきます。
そこでアシリパさんが機転を利かせます。連絡船内から白い布を集め、それらを被って流氷の上を徒歩移動することにしたのです。杉元たちが降りたあとの連絡船は駆逐艦の発光信号での命令に従い駆逐艦の真横につけ、降伏の意思表示をしますが、杉元一行はすでに真っ白な流氷の上を真っ白な布に隠れながら移動を始めており、鶴見中尉たちからは姿が確認できなくなっていました。宇佐美が流氷上の捜索をしようとしますが、ヴァシリの狙撃の腕前を脅威と感じた鶴見中尉は流氷上では狙撃手に有利だからと流氷に降り立ち追うことを制止。さらに流氷の動きが早く、囲まれては動けなくなるのでこの場での杉元一行の追跡は断念、連絡船に移り稚内からオホーツク沿岸の集落の捜索に切り替えざるを得ませんでした。その指示を下す鶴見中尉の額当てからは脳汁が落ち、「ゆっくり話したいことがあったのに」と独り言ちます。

流氷の上を進む杉元たちは連絡船と駆逐艦が離れていくのを見て安堵します。緊迫感からの解放で空腹を覚えた一行。杉元は双眼鏡でアザラシを探し、白石は魚でいいのにと言いながら魚が穫れるであろう流氷の穴を覗き込みます。そこにはクリオネがたくさん泳いでいました。杉元は愛読書「少女世界」でクリオネを知っています。クリオネを食べる方法はないかとアシリパさんへ尋ねると、アイヌはクリオネを食べないから調理法も知らないしアイヌ語の名前もない、と返ってきます。
久々の杉元アシリパさん白石でのサバイバルグルメ、和気あいあいと笑いながら流氷のかけらに乗り漕いでいると、四人のにおいをかぎつけたらしい明らかに巨大とわかるサイズの白く毛深い生き物が登場。フォルムや鼻先の形状はヒグマに似ていますが果たして誰なのか――。

 

知らぬが仏

大泊に鶴見中尉がやってきたとき雷型駆逐艦に乗っていたのでいるだろうと思っていましたが、鯉登パパはやはり登場しましたね。鯉登パパ、息子の状態を知っているのでしょうか…。鯉登少尉の安否は未だに不明ですが、心臓の位置をズブリと貫かれていたのでかなり厳しいと思っています。この漫画、重症でも無事ならアッサリ描いてあって死ぬときの負傷は割合ドラマチックに描かれる傾向があると思っているのですが、刺されたあとの月島軍曹と鯉登少尉のやり取りの泣かせる演出も相まって、これはもう鯉登少尉の存命は望み薄なのでは…と思ってしまいます。すごく悲しい。
鯉登少尉は樺太での成果を父上に報告できると嬉しそうに話していました。大泊ですぐ近くまで父親が来ていたのにそれを伝えられていない可能性があります。もし伝えられていないとしたら、野田先生はなんて残酷なことをするのでしょう。父に認めてもらいたいと願っていた青年の願いが叶いそうになる寸でのところでぷっつり終わり。あまりに残酷で、美しいとさえ思えてきます。小学生男児として数々の笑いをもたらしてくれた鯉登少尉が一気に悲劇のヒロインに。
ただ鶴見中尉が大泊に着いてすぐに杉元たちと合流したと決まったわけではありません。もしかしたら前夜に着いていて、月島軍曹と鯉登少尉だけは先に会っているのかもしれない。そのときに鯉登少尉と父上には感動の再会を果たしていてほしいです。

息子を失ったとわかった鯉登パパはどうするのでしょうか?それでもまだ鶴見中尉に協力するのでしょうか?
この親子はあまりにもきれいにフラグを回収してしまいました。軍人として我が子を真っ先に戦場へ送り込んだ父。そんな父へ喜ばしい報告ができると言いながら(確定ではありませんが)伝えられずに逝ってしまった息子。
鯉登少尉がいなくなってしまったら鯉登パパが鶴見中尉に手を貸す動機はなくなると思います。海軍の駆逐艦まで持ち出したのですし今さら後に引けない、という理由ならありそうですが。

今回、月島軍曹と鯉登少尉は果たして駆逐艦に乗っていたのでしょうか。急いで連絡船を追いかける必要がありましたし、おそらくは連絡船を停止させ杉元たちを樺太の陸地へ戻らせるつもりだったでしょうから、あの二人は乗っていないと思います。鶴見中尉は宇佐美たち陸兵には連絡船に乗り船内を捜索しながら稚内へ向かうよう指示していました。ということは鶴見中尉は駆逐艦で一度樺太へ戻り、残してきた月島軍曹たちを回収して稚内へ行くと思います。回収のとき鯉登少尉と鯉登パパは否が応でも顔を合わせることになるでしょう。そのときの様子がどう描かれるか……見たいけれど見たくない、そんなシーンが次週拝めることを期待しています。安否がわからないとハラハラしっぱなしで心臓に悪い!

 

 

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第213話 樺太脱出

大泊に滞在する杉元一行のうち、白石とアシリパさんが部屋で宿の仲居さんと話す回想から始まります。北海道への連絡船が故障により出発が通常と違い、明日の早い時間に出ることを白石とアシリパさんは知ります。
アシリパさんはその連絡船に乗るに違いないと踏んだ白石は、谷垣と街の外れにある連絡船乗り場へ走ります。

杉元とアシリパさんは、「頭巾ちゃん」ことヴァシリに会います。第七師団がアシリパさんの周囲にいては尾形が姿を見せないのではと考えるヴァシリは、アシリパさんの樺太脱出に手を貸します。
ヴァシリの操る馬に二人も乗り、途中で白石も拾い上げて走り続けます。

馬に乗れなかった谷垣は、走りながらアシリパさんへ叫びます――鶴見中尉の監視の目があるのでフチの村へは戻れないぞ、と。
そんな谷垣に対しアシリパさんは、インカラマッがいるから谷垣は来るなと言い、さらにフチへ伝言を頼みます。フチに会う夢を見たから安心して、必ず会いに戻るから。谷垣を置いて四人は馬で走り去ります。

四人を見送ったあと、谷垣が白石と一緒でないことに菊田が気付きます。谷垣が白石はアシリパさんたちと街のほうへ逃げたと言うと、ならばなぜ追わない、走れ谷垣一等卒、と菊田は指示しますが…
俺はマタギの谷垣です、と谷垣は答えます。

連絡船上では、手負いの杉元が心配そうなアシリパさんに向け語ります。俺は俺の事情で金塊がほしい、戦ってこうして傷を負うのも覚悟しているだろう、と。杉元はアシリパさんの人を殺したくない信念を理解したうえで、アシリパさんのやり方でアイヌを守ってくれると信じ、彼女と同じ道を行く決断をしたのです。

一方船の近くに血痕を見つけた兵士がこちらへ近づいてくるのが見え、ヴァシリがそれを狙撃。稚内港行きの連絡船は無事に離岸しますが…
射撃音が鶴見中尉の耳に入り、連絡船に乗ったことを推理されてしまい、水雷艇で第七師団が追ってきます。

 

マタギの谷垣

今週は俺はマタギですと言う谷垣が輝いていましたね。
谷垣一等卒、と呼ばれ命令されたあとに言うところもまたいい演出です。

ゴールデンカムイでは、杉元のように、心が戦場に行ったまま帰ってこない人たちが描かれています。心が戦場にある、というのは、本来の自分ではないという表現だとやや語弊がありそうですけど、私の拙い表現力読解力ではこれが限界なので、本来の自分ではない、ということにしておきましょう。
杉元は梅ちゃんに自分とわかってもらえなかったように、こうありたいと願う自分ではない状態なのでしょう。谷垣も、本当は山で獲物を追うマタギとしての自分に一番誇りを持っていたのだと思います。けれど軍隊では、谷垣一等卒であって、上官の命令に従い敵を追う兵士でしかありませんでした。その兵士が菊田特務曹長の指示に背き、俺は兵士ではないと言うのです。然るべきところに自分の心が帰ってきた感覚があったのではないでしょうか。そして谷垣の心を帰す最後の一押しは、アシリパさんだったのでしょう。鶴見中尉に怯え信念を曲げることはせず、周囲の人々を助けもしながら、真っ直ぐ進んでいくアシリパさんの生き様を見て、こうありたいと願う自分になりたいという気持ちを外に表出させたのだと思います。

 

杉元の事情

杉元は今回、「俺は俺の事情で金塊がほしい」と言っています。ここに杉元の成長が少し見えた気がして、嬉しいです。

杉元は静かに暴走している状態にありましたが、アシリパさんと再会し、アシリパさんの人を殺さないという信念・アイヌを守るという決意を見て、暴走が収まったと思います。
ここでいう暴走状態とは、アシリパさんのためという建前を被せた恩着せがましい行動のことです。アシリパさんに手を汚してほしくないからアシリパさんを金塊争奪戦から離したい、という杉元のちょっと前までの願望は、アシリパさんのアイヌを守りたいという意思を無視したものですよね。それにアシリパさんのためと言って戦って、それによって負う傷は、アシリパさんをも傷つけることになっていたと思います。怪我をした人に、あなたのためだからと言われたら、罪悪感が半端ないですよね。なのでアシリパさんのためと言いつつ、結局は責任をアシリパさんにも押し付ける最悪の動機だったと思います。

でも今回の杉元は、俺は俺の事情で戦っているんだ、と言っています。アシリパさんのためなどという厄介な建前を被せたものではないです。もちろんアシリパさんを助けたいという気持ちも動機にはあると思いますが、俺の事情だという主体性の有無でアシリパさんの心の負荷もだいぶ変わってきますよね。

そうなると覚悟が必要なのがアシリパさん。アイヌを守るためには金塊争奪戦に参加して勝ち抜けなければいけないのです。アシリパさんは不殺を貫く信念を持っているようですが、杉元が言うように、アシリパさんの周囲の者たちは誰かを殺し誰かに殺されるかもしれないのです。間接的な殺人とでも言えばいいのかしら。そして誰かを守るために誰かを殺す場面も出てくるのかもしれない。それでも不殺を貫く覚悟があるかと杉元は問うていると思います。

アシリパさんがどうするのかはわかりませんが、誰かを手にかけるかアシリパさんが葛藤する場面が出てくるのではないかなと思っています。アイヌを守るために誰かを犠牲にする。村を守るためにヒグマの子どもを神へ送り返すように。でもアシリパさんなら、不殺の信念とアイヌの守護、どちらも両立する道を見つけてくれると私は杉元と同じく信じていますよ。

 

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第212話 怒り毛

鶴見中尉のもとから逃げている杉元とアシリパさん。舟が置かれた倉庫の中を走り抜けていきますが、アシリパさんは行き先が決まっているようです。逃げる先に当てがあるということで、誰か味方になってくれる人がいるのでしょうか。

鶴見中尉は当然、部下たちに二人を捕らえるよう指示します。月島軍曹たちが手分けして探し始める中、谷垣が狼狽えた様子でこぼしたのは、アシリパさんがフチの村に戻れなくなる、ということ。鶴見中尉はフチの村、つまりアシリパさんが北海道に戻ったら行く先である場所を知っているのです。

倉庫の入り口で出くわした宇佐美を、杉元がバックドロップと踏み付けで追い込み、アシリパさんが積まれた米俵を落として動きを完全に封じます。応援にやってきた他の兵士に対しても米俵が大活躍。第七師団の兵士を蹴散らしながら二人は逃げ続けます。

しかしながら月島軍曹に出くわしてしまい、杉元の足は止まります。月島軍曹は躊躇なく撃ってきたのです。3、4発の銃撃を食らい倒れた杉元のところへアシリパさんが駆け寄ります。アシリパさんのおかげで銃撃は止まったものの(鶴見中尉はアシリパさんの記憶がほしいので傷つけたくない)、鯉登少尉までやってきてしまいます。

銃撃を複数発受け、杉元は再起不能に思われたのでしょう。アシリパさんへ拳銃を向けながら鯉登少尉が二人へ近づきます。それを見て、離れろと叫ぶ月島軍曹。ヒグマのように、怒りで毛を逆立てた杉元は、鯉登少尉に反応を許さず鯉登少尉の心臓の位置へ剣を刺します――。

剣は鯉登少尉の体に刺さると同時に背中側まで貫通しました。
俺は不死身の杉元だ、そう叫んだ杉元は他の兵士を叫んだ勢いのまま始末し、奪った銃を振り回して周囲を圧倒します。

二人がその場から逃げ出すと、月島軍曹が座り込んでいる鯉登少尉へ近寄ります。剣を抜かないよう鯉登少尉を制止し、さらに、感情的に動くなといつも注意していたでしょう、とこぼします。昨日は素直に注意を聞いてくれたのに、と胸の中でも同時にこぼしながら。

そのとき鶴見中尉が通りがかります。鯉登少尉の頭を膝に乗せている月島軍曹を一瞥し、無言で杉元たちが逃げたほうへ歩いていく鶴見中尉。月島軍曹にも、鯉登少尉にも何の言葉もかけません。

鯉登少尉が戦闘不能になり兵士も数名失った鶴見中尉と月島軍曹。銃撃を受け満身創痍の杉元と、アシリパさん。彼らの追いかけっこはどうなるのでしょうか。

 

それぞれの境遇おさらい

今回は各自の言動で、置かれている状況や辿ってきた経歴がよく見える話だったなと思いました。

まずは谷垣。アシリパさんとフチを心配していましたが、彼がこの旅にやってきたそもそもの発端は、レタラによって負わされた脚の怪我をフチにお世話になって癒したことが始まりです。恩返しのために、孫を連れて戻ってくるというのがきっかけなのです。
また、彼自身もインカラマッを人質に取られているような状況です。アシリパさんにとってフチが人質になっている状況だというのを、おそらく他の誰よりも理解できています。だからこそ二人が逃げ出して一番肝を冷やしたのではないでしょうか。

次に鯉登少尉は、状況を冷静に見極めず突っ走ってしまう青さが目立ちました。若い将校、という性格のほうが勝った描かれ方でしたね。
なんやかんやあっても生き残る次代の象徴というポジションかと思っていましたが違うのでしょうか…。迂闊なボンボンとしてこのまま終わってしまうのですかね…尾形に言われたことが気になって最終的に鶴見中尉の元を離れるという筋書きが一番きれいだと思ったのにな…。

月島軍曹は、鶴見中尉のやることに対し思うところありつつも、それを行動に表すことはせず任務を忠実にこなす人でしたね。でも刺された鯉登少尉に対して、戦友への想いの一端を見せていたあたりが今週の好きポイントです。菊田のようにすぐに杉元たちを追わず、鯉登少尉へ声をかけるところが、激昂のあまり父親を殴り殺し上官にも殴り掛かる彼の激情っぷりを少しだけ見せています。ただただ鶴見中尉に忠実な部下ではないのです。それに、かつての鯉登少尉のようにひたすら心酔というわけでもない。思いを抱えながらも自らの選択として鶴見中尉についていくことを選んだ大人の部分と、刺された鯉登少尉を通り過ぎることができなかった情に厚い部分とが、今回のお話に詰まっているなと感じました。

月島軍曹は鯉登少尉を救おうと急ぐ様子も、想定外のことを引き起こされて焦る様子もなく、ただただ静かに語りかけていました。この逃走劇に似つかわしくない穏やかさが、鯉登少尉の終わりを確信しているように見えますが果たして鯉登少尉はどうなるのでしょうか…。鶴見中尉も一瞥しただけで素通りです。鯉登少尉は駒に過ぎず使い終われば声をかける必要もないということでしょうか?

 

暴走杉元再び?

杉元はスチェンカで暴走したとき、根っこには網走監獄で何もできなかった不甲斐ない自分についての後悔がありました。その後、アシリパさんを戦いから遠ざける、とアシリパさんの意思を確認せずに突き進みます。このように杉元はアシリパさんと離れてからやや不安定な部分がありました。
しかし前回のお話でアシリパさんが杉元へ私のことは私が決める、と意思表示。それによって杉元もアシリパさんの意思を確認し同意したうえで戦うことになり、久々に清々しい笑顔を見せてくれました。

アシリパさんは杉元を救って来たのです。北海道の山で狩りをし、戦場に行ったままの青年の心を少しずつ人に戻しました。
暴走していた杉元の心も、矢じりに毒のない矢を放つことで、一瞬で信頼し合っていた相棒の頃の杉元へ戻してしまったのです。

さて、今回はアシリパさん側の心境について考えてみました。
俺は不死身だと自分を奮い立たせ、短期間であれ行動を共にした鯉登少尉ですら攻撃し、敵であれば容赦なく殺す杉元を見て、アシリパさんは何を思ったのでしょうか。

おそらく、杉元にはまだ救いが必要だと思ったのではないかなと思います。本人がそう自覚したというよりも、尾形との流氷上でのやり取りを経て、杉元のこの様子はもしかして苦しんでいるのかもと感じたんじゃないでしょうか。

杉元は、俺は不死身だと叫びますが、これは自分を奮い立たせるためだと思います。不死身だから暴力を恐れない。不死身だから恐怖に屈しない。不死身だから立ち向かえる。不死身だから死ぬことは怖くない――。
でもそれは裏を返せば、痛みや死を恐れるただの人間の心があるからゆえなのではないでしょうか。恐怖する自分を焚き付け前進させるための合言葉が「俺は不死身の杉元だ」。

杉元は本当は梅ちゃんに認識してもらえる人間でありたいのかもしれません。アシリパさんと出会い山で狩猟生活をしていた頃の杉元はあの頃の杉元だったのかも。
そのときの杉元を近くで見ていて、尾形からも清さを問われたアシリパさんだからこそ、樺太での離れ離れのあとに再会した杉元の様子に気付いた、と考えられるのではないでしょうか。
しかも杉元が暴走する原因はアシリパさんです。暴走しているかのように自分の体や命など顧みず敵を倒す杉元を見て、この青年は自分のためにここまで鬼になっているのだと感じ、杉元に必要なことは何だろう?という考えが過ったのではないかと。

直前に鶴見中尉・月島軍曹・鯉登少尉のエピソードが挟まれたのもそういう意味かしらと思えてきます。
鶴見中尉のために汚れ仕事も引き受ける月島軍曹。アシリパさんのために人殺しを行う杉元。
この役割分担を続けるのかそれともアシリパさんがやむを得ず誰かを手にかけ戦う人生を選ぶのか、はたまたアシリパさんは手を汚さず杉元にもこれ以上手を汚させない道があるのか。

ほとんどただの妄想ですけど、アシリパさんと杉元の間にはもう一段階くらい、峠がありそうな気がしています。

 

 

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第211話 怒りのシライシ

いよいよ鶴見中尉が大泊へ到着する日がやって来ました。杉元は眠れなかったのか朝焼けの時間に建物の外に佇み、ただただ虚空を見つめます。そこへ酔っ払いの白石が朝帰りしてきます。
鶴見中尉にアシリパさんを引き渡すんだろ、と白石は杉元に絡みます。杉元は、アシリパさんを戦わせたくない一心で、自分のしようとしていることを正当化しようとしますが…。
梅ちゃんはどうなるんだ、恋人でも嫁でも娘でもないのにアシリパさんを正しい道へ導くつもりか、と白石は杉元の痛いところを突きます。杉元が見ていないだけで、樺太の旅でアシリパさんは大きく成長しました。キロランケがまさしく命がけで見せたものはアシリパさんに覚悟を決めさせました。アシリパさんがアイヌを背負いたいのならそれをどうこうする理由はない、と白石は杉元に詰め寄ります。彼女を自立した相棒として信じろと、酔っ払って吐いて倒れこみながらも杉元を諭します。

日が昇り、いよいよ水雷艇が大泊へ到着しました。鶴見中尉はアシリパさんの目を見て、在りし日のウイルクや死体になって再会したときのウイルクを思い出しながら、父親と同じ目だ、とこぼします。
飲み過ぎた白石が吐いてそちらに鶴見中尉たちが気を取られている隙に。アシリパさんが矢筒から矢を5本抜き出しました。私のことは私が決める、そう杉元に言いながら弓を引くアシリパさん。何かを了承し頷く杉元。
アシリパさんは上空に向け矢を放ちました。空に舞った矢が重力に従い地に落ちてくる。その落下地点を見極めようと、第七師団の兵士たちが真上を見上げているとき、杉元は、毒矢だと叫びます。その場の皆が毒矢を避けるのに必死になった隙をつき、杉元とアシリパさんは走り出します。

実は、アシリパさんが放ったのは毒矢ではありませんでした。矢じりに毒がついていないことを杉元はすぐに見抜き、逃げる気のアシリパさんへ組したのでした。
樺太で離れていたとはいえ、共に北海道を旅した二人のコンビネーションは相変わらずです。言わずとも通じる杉元だと再認識し、不敵に笑うアシリパさんは、杉元にこう言います――相棒なら一緒に何かをしようという前向きな言葉を聞きたい、と。それに応じる杉元は、二人で金塊を見つけようと晴れ晴れとした笑顔で答えます。

 

アイヌの矢

今週号は、野性の杉元が戻ってきた~!!と爽快感あふれる回でした。
久々に杉元とアシリパさんの気持ちが通じている描写、気持ちがいいですね。
しかも矢をフックにした展開で、二人が最初に出会ったときのことを思い出します。矢=アシリパさんの象徴なのですよね。それでヒグマとも戦うし、杉元が鶴見中尉の元から逃げる手助けもするし。アシリパさんがアイヌとして生きること戦うことを表していると思います。

杉元とアシリパさんの関係がどうなるのか先週までかなり不安でしたが、仲を取り持ったのは白石でした。本当によかった…。
白石が、お金の話を持ち出したのは、自分が出会った当初お金のために手を組んだように、杉元にも金塊争奪戦に参戦した当初の目的や初めの頃の気持ちを思い出してほしいからでしょうね。
白石は、以前に述べた通り、すでにキャラクター一個人の中の葛藤を乗り越え成長をしていますし、杉元とアシリパさん、どちらも近くで見てきた彼だからこそ間に入って繋ぎ直せたのですよねぇ…。
人と人とが繋がるところは数多く見ますが、誰かと誰かを結び付けられる人は貴重ですよね。そういう点でもやはり白石は誰かのために行動できる人間になったのだろうと思います。谷垣も、チカパシとエノノカをきちんと結んであげたし。こちらはそもそもチカパシが先に谷垣とインカラマッを結び付けたのですよね。

結び付けるといえば、相手に鎖をかけ強固な楔で自分の傍に打ち付ける、鶴見中尉って人もいるんですけど……こちらは自分と相手のことなので白石谷垣チカパシとは別、ですね!

 

三つ巴の始まり?

杉元とアシリパさんが二人だけで戦うことを選びました。つまり、鶴見中尉と対立することを選んだのです。
ということは、杉元・アシリパさん、鶴見中尉率いる第七師団、土方さん、この三つ巴の戦いの始まりになるのか…!?という新しい展開が待ち構えていそうです。

また、鶴見中尉がこのままみすみす二人を逃がすのか?という不安も。鶴見中尉との合流がいやにすんなりいった印象がありませんか。鯉登少尉のキェェェも、月島軍曹の報告もなし。杉元がピリピリするであろう場面も、谷垣が緊張する描写も特になし。アシリパさんとの邂逅に重きを置いていると言えばそうですが…
有古のときもそうでしたし、あっさり場面が進んでいるときには、実はこのとき…とあとから種明かしされるパターンが考えられるので、まだ油断できないなーと思います。
鶴見中尉はウイルクに思うところありそうでしたね。ウイルクたちと出会ったことで結果的に家族を失った、とも言えるので、やはり妻子が絡むからか?と思いますが、金塊の真相絡みの可能性もあります。鶴見中尉しか知らない事実がまだあるはずです。ウイルクがアイヌを殺した濡れ衣を着せられましたが、では誰が何のために殺したのか?遺品回収をした鶴見中尉は現場で何を得たのか?など…。

あとはそもそも大泊で別行動になっても無事北海道へ帰れるのか?という心配がありますが…
ここでおそらく尾形の再登場では??と思うんですよね。
先週、鯉登少尉に揺さぶりをかけていたことがわかりましたし、鶴見中尉に敵対する者として、今度は杉元・アシリパさんへ味方する流れで出てくるのかも。あんなことがあったあとでまた以前のように手を組むなんてできないかもですが…。

杉元とアシリパさんが再び相棒として共に走り出して、今後の展開がまたまったく読めなくなってきましたね!

 

 

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第210話 甘い嘘

先週のチカパシとの爽やかな別れの話から打って変わって、今週は鶴見中尉の回です。少しずつ鶴見中尉の狙いが明らかになってきました。

馬ぞりで大泊へ到着し、杉元一行は鶴見中尉の到着を待ちます。鶴見中尉に心酔している鯉登少尉は、月島軍曹に尋ねます。
亜港の病院で尾形が逃げる直前に鯉登少尉へ何と言ったか。
そして、これは尾形脱走の回では描かれていなかった新事実なのですが、鶴見中尉に「満鉄」について聞いてみろ、と尾形は言い残していたようなのです。

「満鉄」とは、南満州鉄道株式会社です。日露戦争後のポーツマス条約によって露西亜帝国から得た鉄道を経営するための会社だそうです。(Wikipediaより←新しいタブで開きます。)
当然ながら、鉄道路線を引けばその沿線に様々な施設が建ちます。物資供給ルートも確保でき安定供給が可能で、日本の領土拡大の足掛かりとなり得ます。
しかしながら経営がうまくいくはずがないと反対する人物がいました。それが尾形の父、花沢幸次郎中将です。鯉登少尉の父と花沢中将は親しいため鯉登少尉の耳にも満鉄の話は入っていました。花沢中将の自刃によって満鉄の件が進んだという認識もあるようです。

ここで鯉登少尉が気になっているのは、花沢中将の死に鶴見中尉が関わっているのでは?ということ。鶴見中尉は以前こう言っていました。戦友たちは満州に眠っており、満州が日本領であれば彼らは日本で眠っていることになる、と。つまりは満州を日本領に置いておくため鶴見中尉は満鉄が必要で、満鉄計画に反対する花沢中将の存在が邪魔と考えたのでは?という推測に至ったわけです。
また、鯉登少尉の考えでは、尾形は父親に自刃させた中央に不満を持ち鶴見中尉についていたが、父の死の真相を知り離反した…と、たしかに筋は通っています。

鯉登少尉がそう考える根拠は函館での音之進少年誘拐事件。覆面の犯人に鯉登少尉は「ボンボンが」とロシア語で言われているのです。亜港で尾形に同じ言葉を言われたのがきっかけで回想編に突入したのでしたね。つまり函館で覆面の誘拐犯が言った「ボンボンが」と、尾形の言った「ボンボンが」が鯉登少尉の中で繋がったのです。
また、さらにあのときの覆面の犯人の中には月島軍曹もいたのではというところまで鯉登少尉の推理は進みます。となると、あの誘拐事件は全て鶴見中尉が仕組み尾形や月島軍曹と一緒になって演技していたお芝居になります。尾形が満鉄のことを言い出したのは、尾形親子と同じく鯉登親子も利用されているのだと示したかったからではないか?鯉登少尉の父、鯉登少将の抱える大湊水雷団の利用を目論んでの大芝居だったのだろう?と鯉登少将は月島軍曹に詰め寄ります。

そこで月島軍曹は返します――鯉登親子は救われたではないか、と。
月島軍曹も鶴見中尉の大芝居に巻き込まれた人物です。佐渡の想い人を利用した、9年がかりの大芝居。奉天会戦の野戦病院で、佐渡訛りでいご草ちゃんのことを話した男は、そのときその場にいるはずのない第2師団の人間でした。これも鶴見中尉の仕込みだと月島軍曹は言いたいのでしょう。鶴見中尉は月島軍曹を手元に置いておくために9年という歳月と多大な労力を費やしたことをまざまざと月島軍曹に見せたわけです。
鶴見中尉が月島軍曹を必要としている理由は、忠実な手足として利用するためだと月島軍曹は考えています。鶴見中尉は、戦友が眠る満州を日本領とするために必要なことをしているのだと語られますが、鶴見中尉の真意は月島軍曹にもわかりません。それすらも鶴見中尉についてくる者たちのための「甘い嘘」かもしれないのです。
ではなぜ月島軍曹は鶴見中尉についていくのか?その答えは、鶴見劇場を観たいから。鶴見中尉が最終的に何を成し遂げるのかを見届けたいから。そしてそんな鶴見中尉がいよいよ大泊に到着し、次回は波乱の予感です。

 

ホラー回

今週号…怖かったですね!!月島軍曹のあんな顔初めてだし、お前はまだいいだろう、なんて恨み言をつらつらと言われたら、私だったらその場に立っていられないと思います…恐怖で。
鶴見中尉は未だに腹の底が読めなくて、彼が出てくるだけでホラーっぽくなりますね。。現れるたびに誰かが惨たらしい目に遭う殺人鬼みたい…。鶴見中尉、最後のコマ以外は回想でしか出てないのにこのホラー具合。来週が恐ろしい…!

亜港の診療所で少し疑問に思っていた、鯉登少尉は無事で尾形も無事でしかも逃げおおせたという展開に繋がる、空白の部分が補間されましたが、去り際に尾形はとんでもない爆弾を残していきましたね。「ボンボンが」という言葉は函館でのことがあったので、そのときの記憶と繋がるだろうと確信して尾形は言っていたと思います。ただのロシア語できるよアピールならかわいいですけど…。

最後に鯉登少尉が、鶴見中尉にそこまで必要とされて嬉しい、と言っていましたが、私は少し違うのではないかなと思いました。海軍少将である父親の持つ力がほしかったのであって、彼の協力を得るための道具が鯉登少尉ではないかと。二人とも生きているのでどちらに対しても言えますが、お互いが脅されている立場であり人質の立場でもあります。片方の命が惜しければ従え、と。おそらく鯉登パパは鶴見中尉の恐ろしさに気付いているのではないかなと勝手に思っているので、鯉登パパのほうが脅されている立場の気分でしょうね。息子が人質に取られているも同然の状況です。

 

鶴見劇場の役者たち

鯉登少尉自身の必要性は実は低いというのが、今後の展開に繋がるんじゃないかなと妄想しています。キャラクターには役目があるものですが、鯉登少尉は年若く、世間知らずで、周囲に迎合できるほどの柔軟性もその必要性を理解するほどの思慮深さもまだなく、鶴見中尉にあれだけ心酔するほど視野が狭く(競走馬のよう)……と、かなり「若者らしい青さ」を体現したキャラクターなのですよね。こういったキャラクターはだいたい物語の終盤で、信じていたものが自分の思想とかけ離れた実態であることに気付き、己の過ちに気付いて成長し、立場を変え再び登場する……というのが定石かなと。今週も、推測ながら事実に近付くという物語を進める役回りでしたし。(まぁ直後のアレで、もうしばらくは鶴見中尉にゾッコンだなと思わされましたが…。)
あとは、父親が、「軍人は自らの子どもにこそ先ず戦場へ行かせる」「子どものために重要な軍の資産を差し出すことはしない」という主旨のことを言っているのですがこのあたりもフラグっぽいなと…。身を盾にして鯉登少尉を守るのではないかなと思うのです。この親子が一番理想的な親子(親が身を挺して我が子を守る)というのが流れとしてキレイだと思いませんか。
鶴見中尉の真の狙いや行いの恐ろしさに気付いた鯉登少尉が、杉元やアシリパさん側につくというのもあり得るのではと思います。その気付きのきっかけが、実は自分自身は必要とされていないということを思い知った、だと思います。最終的に中央に鶴見中尉を差し出すのが鯉登少尉なのかもしれないというところまで発展しますが……あくまで妄想ですので。。でも、「若者らしい青さ」を持ったキャラクターが成長した姿は、未来への希望としてぴったりだと思うのですよね。

月島軍曹は役目で言うと、鯉登少尉を助けつつも鶴見中尉についていく人かなと思います。希望を潰えさせたくなくて鯉登少尉が鶴見中尉の元を離れるのを密かに手助けする。けれど自分はそちら側には行けない、行けたとしても行く意味がない(鶴見中尉がいないから)ので、最終的には鶴見中尉と道を共にする選択をする。そんな月島軍曹が想像できるような気がします。私の想像では、月島軍曹は鶴見中尉に地獄の底までご一緒しますと言う気がしますよ。そこに自らの行いが全て誤りだったわけではないと気付いた鶴見中尉がほほ笑むところまで妄想できます。

鶴見中尉はやはり悪役として退場まで突き進むのかなと。史実ベースで時代考証もしっかりした作品ですから、第七師団が政変を起こし別の時間軸へ突入…なんて展開はないと思います。史実通りなら鶴見中尉の計画はどこかで誰かに阻止されねばならないので…(このあたり歴史モノの辛いところですね!結末がわかっている。でも末路を知りつつもそのときの輝きや生きた証を楽しむという醍醐味の部分でもあります)政変を目論むもとん挫した、主人公とはまた別の正義として描かれるのだろうなと思っています。

史実通りに進むはず、という推測。これが辛いキャラクターはあと二人います。
一人は土方さん。北海道をアイヌと共に独立させただなんて歴史はなかったので、金塊争奪戦を勝ち抜き目的を果たすという結末はないと思われます。
もう一人はアシリパさん。アイヌは、ご存知の通り、ゴールデンカムイの作中の文化・生活様式を守りながら現代まで生きているわけではありません。アシリパさんが残したいとこんなに願っているのに…。

鶴見中尉も土方さんもアシリパさんも願いを叶えられない結末が一番現実的です。そうなると、この戦いの勝者は誰になるのか?そもそも本当に金塊は存在するのか?という疑問が浮かび上がります。次回はおそらく鶴見中尉とアシリパさんの邂逅。金塊争奪戦の中心にいるこの二人が出会って物語がどう進むのか、怖いけれど楽しみです!

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第209話 ケソラプ

今週は杉元一行の話。
リュウはなんとエノノカたちのソリを引く犬の先頭犬「イソホセタ」に昇格しました。ヘンケのソリの先頭犬の頭の飾りを羨まし気に見ていた頃を考えれば大出世です。先頭犬は特別なので飼い主と一緒に家の中で寝起きする風習があるそうで、一度は二瓶というかつての主人を失ったリュウですが、ここ樺太で自分の居場所を見つけたのでした。

ここがリュウの居場所なら、杉元たちはリュウとはここで別れなければいけません。もちろんヘンケ・エノノカとも。エノノカと鯉登少尉は、犬ぞりを使わせてもらうビジネスパートナーなので別れに涙しながらも鯉登少尉からお金を受け取るエノノカ。しっかりした子です。
でも、エノノカとチカパシは、一緒にたくさんの大冒険をした友達同士。別れるだなんて辛すぎて、さようならとは言いたくないとエノノカは言います。また会える保証なんてないのに、また来るねと返すチカパシ。大泊まで行く通りがかりの馬ぞりに乗って杉元たちとチカパシはヘンケ・エノノカ・リュウと別れます。でも手を振ってくれているのはヘンケだけ。エノノカはヘンケの後ろに隠れて泣いているのです。

ヘンケが手を振るのをやめるくらいにチカパシが小さくなってから、とうとうヘンケの後ろから出てきたエノノカは、チカパシに必死に呼びかけます。その呼びかけに振り向き手を振って応えたチカパシはソリから落ちてしまいます。
チカパシを拾おうと馬ぞりが止まりました。立ち上がったチカパシは、北海道へ戻る杉元たちと、目に涙をためているエノノカを交互に見やりながら、シネマトグラフ撮影の芝居を思い出していました。谷垣がケソラプを演じ、身寄りのなかった弟分の自分に家族を与えてくれたお話です。チカパシの足は、杉元たちのほうへすぐには向かいません。ケソラプのお話とまったく同じ状況に自分が置かれているのです。このまま北海道へ戻っていいのか?ここに残るべきなのか?チカパシは馬ぞりに戻ってくるのをためらいます。

その様子を見て谷垣が動きます。谷垣もまたチカパシとのことを思い出していました。チカパシが猟に勝手についてきたところから始まったこの長い旅路のことを。谷垣の零した大粒の涙がチカパシの頬を濡らします。谷垣はチカパシの背中を押しました。チカパシの居場所はここなのだから残りなさいと。そして二瓶から受け継いだ村田銃をチカパシへ託します。もう俺は支えてやれないから大きくなってひとりで立つまで銃は使うなと付け加えて。
ひとりで立つとはつまり「勃起」!!

こうしてチカパシは谷垣と別れ、自分の家族をつくることになるのです。

 

谷垣の持つ人間らしさ

今回は爽やかな涙が湧き上がる感動的な回でしたね!
チカパシの明らかに迷っている、というより、もう自分の中ではほぼ決めているのに決定打がない表情。きっとチカパシの心残りは、谷垣とインカラマッだったのでしょう。でも谷垣が送り出してくれるのだからインカラマッも大丈夫だと安心できたのだと思います。

谷垣がメインのお話はすごく感情移入できてしまいますね…泣いてしまうこんなお話…。
杉元たちに、少し待っててくれと言いソリを降りて、チカパシの元に来るまで一体どんな心境だったのでしょう。弟のように、なんならインカラマッと一緒になって世話した自分の子どもにすら思える存在を、遠い土地に置いていくという決断。チカパシの元に歩み寄るまでそれまでの旅を思い出し、こみ上げるものをこらえながら歩きましたが、チカパシに語りかけるときに堰を切って涙があふれたのだと思います。
家族をつくりなさい、なんてまるで親が子に言い聞かせているような口調じゃないですか。普段の谷垣とチカパシの間柄なら「つくるんだ」「つくれ」とかでもよさそうなのに。きっと谷垣自身も自分に言い聞かせているから「つくりなさい」なのかな、と思います。別れるときに本当に試されるのは送り出す側ですよね…谷垣もこの旅でずいぶん成長したのですね…こんなこと言えるなんてまるで父親みたい…。

谷垣は、ある意味ひねくれた動機を持つ者だらけのゴールデンカムイでは、わかりやすい動機を持っているのでつい自分自身を重ねて読んでしまいます。入隊のきっかけになった妹さんの件は、家族を奪われた無念さ。賢吉の件は、親友の苦しみを知りそれを受け入れる愛情の深さと、自分の役目は何だろうと自問する謙虚さ。どの要素も私をはじめたいていの人が持っている部分だと思います。人を恨んだり愛したり、時に他人を通して自分の姿を見たりそれで迷いが生じたり。谷垣はすごく人間らしいキャラクターです。それゆえに今回の彼の心の動きを想像して泣いてしまうわけです。

 

自分以外の誰かのために

また、谷垣の特徴として、何度か変化=成長しているところがあると思います。妹殺しの犯人として憎んでいた賢吉を、最後には許し看取ったこと。はじめは警戒していたインカラマッとは、彼女の打算的な一面に何度か騙されながらも、彼女を救うため樺太行きを決意するほどの仲になっていますし。今回の件も、大切な人だからこそ選択を間違ってほしくないという思いでチカパシの背中を押したのです。

この変化というか、成長。ゴールデンカムイの物語の中では変化しているキャラクターが何人かいますが、わかりやすくいい方向へ変わっているのって、白石と谷垣くらいなのですよね。
白石は自分の欲望に忠実に生きていましたが、網走監獄で杉元と離れて樺太にキロランケたちと行き、離脱する選択肢もあった場面で、杉元の頼みだからと自らアシリパさんへついていく道を選びます。安全なところにいたいという自分の欲求とは違うのに。谷垣は今回チカパシのためにあえて別れを選択しました。自分のためではなくて誰かのために選択するということをやってのけたこの二人の男は最高にかっこいいですね。
杉元もこの最高にかっこいい側に入れそうな気がしています。アシリパさんが望むこと、アシリパさんが後悔しない道を選べばかなりかっこいい。ただアシリパさんの場合はまだ彼女にとっての答えが定まっていないので、アシリパさんの選択を手放しで後押ししていいものかという疑問の余地はあります。そこがまだ杉元を悩める青年枠に押し留めていますね。主人公なのだからまだまだ大いに悩んで迷って暴走してくれていいのですが。

杉元の周りがあまり見えてなさそうな感じが絶妙に青臭くて、彼の変化が楽しみです。主人公サイド寄りで描かれているのはまず杉元と、アシリパさん白石に谷垣あたりが中心ですが、白石と谷垣は前述の通り変化しているのでこれからはより杉元とアシリパさんの変化にスポットライトが当たるものと思います。
戦場で心を失った青年がアイヌの少女と過ごすうち戦争に行く前の自分を取り戻し、今度は自分を救ってくれた少女をいかに救うか。今の杉元はアシリパさんを戦いから引き離すことで救おうとしているようですがアシリパさんの望みが戦うことでしか叶えられないならどうするのか?今後の物語はここが焦点になるのかなと思っています。

 

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また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第208話 限りなく黒に近い灰色

雪崩の直後。都丹はまだ息がありました。何か情報を聞き出せるかもしれないと思った有古は都丹を雪から出して担ぎます。
そこへ現れたのは土方さん!!夏太郎も久しぶりの登場です。
都丹を仕留めに行った有古が土方さんと出会い、なぜ鶴見中尉を裏切ることになったのか?今回はその答え合わせのお話です。

鶴見中尉の荷物をあさる有古のところへ鶴見中尉・菊田・宇佐美が詰め寄るシーンに戻ります。
鶴見中尉は語ります。鶴見中尉と土方さん、この二名が現在、主に金塊を追っていますが、目的が違うため取れる手段も変わってきます。
土方さんは、北海道を独立させることが目的です。そのためには元から住んでいるアイヌ民族の協力が不可欠。ゆえに土方さんの意にそぐわない動きをした場合に、厳しい制裁はできません。そんなことをしては信頼関係が築けませんから。
一方で鶴見中尉は、北海道に兵器工場を作り戦争を起こし続けることが狙いです。アイヌの協力は必要なく、それゆえに相手が誰であっても厳しい態度で臨むことができます。
鶴見中尉は恐怖で荒い息をしている有古イポプテに語りかけます。裏切った場合は家族にも容赦せず報いを受けてもらう、と。
有古が鶴見中尉を裏切れないと理解したのを見透かしてか、鶴見中尉は刺青人皮をすべて有古に渡します。刺青人皮は、金塊にたどり着くために絶対に必要なもの。だからこそ写しではなく皮のものを渡すことで、土方さんを信用させろというのです。有古を信用した土方さんは有古を傍に置くはずなので内通者として潜り込み、情報を鶴見中尉に渡せと。つまりは有古に二重スパイをさせるわけです。

しかしながらこの刺青人皮は、江渡貝くんが作った偽物です。刺青人皮は紙に写したものもありますが、それでは偽造ができてしまうので、有古が持って行ったとしても土方さんはそれを本物とは考えないでしょう。刺青人皮は皮であることが重要なのです。皮ならば本物と信用するだろう、皮でも偽物があるとは思うまい、という鶴見中尉の作戦です。

しかし。土方さんたちも、偽物の刺青人皮があることに気付いていました。江渡貝邸で、第七師団によって火がつけられるまでのほんの短い間に、土方さんは偽物に繋がる情報を集めていたのです。それまで土方さんの中で推測でしかなかった偽物が、手元に舞い込んできた。有古を使った作戦はまずまずの成果です。
永倉は、網走監獄で杉元たちが鶴見中尉に確保されたのを見ています。つまり杉元の持っている都丹の刺青の写しは鶴見中尉の手元にあるということ。その状況で、有古が都丹のものだと偽って刺青を持って行ってもすぐにバレてしまいますが、そこも土方さんは計算済み。都丹のものだと偽って持って行っても有古が鶴見中尉の元から逃げられたのは、二重スパイの可能性があると、鶴見中尉の考えは土方さんに読まれています。

刺青人皮が集まり、いよいよアシリパさんと鶴見中尉の邂逅も近いです!

 

悪魔との契約

今週は、頭脳戦で読みごたえがありましたね!
都丹のものだと偽って持ってきたときに有古の裏切りに気付きながらも、自分が入浴している(鶴見中尉は常に刺青人皮を身に着けているので)隙に有古がやってくるまで泳がせていた鶴見中尉も怖いですが、家族にも報復するぞと脅迫して有古を縛り付ける鶴見中尉は悪魔そのものでしたね。

鶴見中尉は悪役らしく描かれていて面白いです。
有古もそうですし、月島軍曹も、言わば大切な人を人質に取られているのですよね。いごちゃんは生死不明として描かれていますが、髪の毛まで用意できるということは、生きていたとしてもすぐに手を下せるところにいるということでしょう。
鯉登少尉も同じなんですよね。息子の命の恩人ということで鯉登パパと鶴見中尉は仲良く描かれていますが、懐に入り込んでいるということはいつでも喉元に刃を突き付けられるとも言えます。鯉登少尉は鶴見中尉にすっかり心酔しきっているのでそんなつもりはまったくなさそうですが、子どものほうをたらしこむのは常とう手段です。

大切な人と言えば、谷垣にとってのインカラマッ、杉元にとっての梅ちゃん、アシリパさんにとってのフチ。
アシリパさんは暗号解読に協力してもらわないといけないので鶴見中尉も手荒な真似はしないと思いますが、杉元と谷垣相手にはきっと大切な人がどうなるかわからないぞと脅すのでしょう。杉元はアシリパさんを用済みにしないため暗号解読の鍵をそうやすやすとは聞き出さないつもりでしょうが、鶴見中尉のことなので杉元の出身や人間関係まで調べがついていると思います。

人質に取るというと、樺太出発時の谷垣を思い出します。谷垣は鶴見中尉の元で働いていたからその恐ろしさは知っているはずが、同時に、忠実に従いさえすれば人質に手を出さないというのも知っているのではないでしょうか。だからインカラマッを置いて出発できたのだと思います。
鶴見中尉に従って役目を果たし、仮に解放されたとしても、その後も監視下に置かれていそうで嫌ですけどね…。

一度契約してしまったら生涯離れられない、地獄の底までずっと一緒。まるで悪魔みたいですね、鶴見中尉は。

 

尾形は悪魔の契約を反故にできる?

鶴見中尉の駒として動いている人を思い出すと、尾形だけ例外なように思えてきます。
この男だけは、大切な人を守るため鶴見中尉に従う、というわけではないのです。そもそも家族は自分で殺していますし。
そうなると尾形だけは鶴見中尉の支配下から逃れられた、と見るべきかな?と思います。
造反したまま無事でいるのもこの男だけですし。玉井伍長たちは死亡、二階堂は耳に始まり体のパーツを次々失いモルヒネ漬け、と鶴見中尉の元を離れようとした人は無事ではないのですよね。

ただ尾形のアシリパさんへの執着具合、勇作さんを重ねているだけでは説得力に欠ける気がするので、もっと他の理由もある気がしています。そうなると尾形にとってアシリパさんも人質になり得るのでは?という推察もできるので、鶴見中尉の手がまた伸びてくる可能性はありますかね…。

 

いよいよ暗号の謎が解かれるかもしれないですし、土方さんvs鶴見中尉の構図も鮮明になってきました。
早く続きが知りたいですが、合併号ということは次週は発売なし…。お盆休みでゆっくりしながら次回を待ちます。

 

 

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