ゴールデンカムイ第207話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第207話 塹壕から見えた月

先週までのアシリパさんたちから登場人物は変わり、今回は登別にいる鶴見中尉たち第七師団のお話です。
なんと、都丹が生きていました!!死んだと思われていた都丹がどうして生きていたのか、その死を確認したはずの有古は嘘をついていたのか、それはなぜか?その一端が見えるお話です。

都丹の刺青人皮を手に入れた鶴見中尉たちは、手持ちの暗号を並べてみます。アイヌである有古は、祖母の刺青がヒントになるかもしれないと意見を述べます。アイヌ女性の刺青には地域差があるので隠し場所のヒントになるかもしれない、と。しかしながら並べられた刺青からは特に情報を読み取れず、有古は鶴見中尉に尋ねます。これが手持ちの全ての刺青か、と。それに対し鶴見中尉の返答は、これが全てだ、というものですが、その表情は影があり何かを隠していると言わんばかりのもの。鶴見中尉は真実を言っていないのです。
鶴見中尉は、都丹を単身で仕留め刺青を持ち帰った有古を褒めます。有古はただ運が良かっただけだと言いますが、それに対し鶴見中尉は、運が悪ければ刺青が一枚欠けてしまい永遠に金塊が見つからないかもしれない、と言います。鶴見中尉のその発言の真意を掴めずにいる様子の有古。

有古に焦点が当たる状況は続きます。
鶴見中尉のいる建物を出ると空を見上げる菊田が有古に声をかけます。月だけは同じだ、と。
菊田と有古は、奉天会戦のとき、爆撃された塹壕で発見されないまま一晩を明かしました。お互いの生存を確認するために一晩中声を掛け合って。塹壕から見えた真っ暗な空に浮かぶ細い月。じきに新月となる頼りない細い明かりです。

そしてやがて迎えた新月の夜。
有古が窓を突き破って雪深い地面に落ちます。それを狙い破れた窓から発砲する兵士たち。血を流しながら移動し、どこだ、と誰かに声をかける様子の有古。
なぜ有古が仲間であるはずの兵士に撃たれているのか?それは都丹の生存が全てを物語っています。都丹は生きていました。生きており、しかも敵として戦った有古に手を貸しています。新月は都丹の独壇場。舌の音で道を探りながら有古を引っ張っていきます。

都丹と合流した有古が抱えているのは刺青人皮の入った袋。鶴見中尉の元から盗んできたようです。それも全部。
有古が刺青人皮を盗み出してきたということは、鶴見中尉を裏切ったということ。なぜ裏切ったのか?その理由の一つは、有古がアイヌであることに関係がありました。
有古の父はのっぺら坊に殺されたアイヌのうちの一人だったのです。
都丹を仕留めたと思われたとき、都丹と有古の間でやり取りがあったのでしょう。有古は父親の遺志を継ぐべく鶴見中尉を裏切り金塊を手に入れようとしているようです。
しかしこれらは全て鶴見中尉のお見通し。有古が都丹のものだと言って刺青人皮を持ち帰ったときから気付いていました。鶴見中尉はすでに都丹の刺青を把握しており、有古が嘘をついていることは見透かされていたのです。

 

深まる謎

今週の衝撃は、鶴見中尉がすでに都丹の刺青を把握していたこと!都丹とは直接出会っていないと思いますが、なぜ知っているのでしょう。それにそこまで把握しているのなら直接刺青を集める必要もないのでは?
言われてみれば稲妻お銀を除けば鶴見中尉が積極的に刺青を獲得しようとしている場面はあまりなかったような…。でも把握できているなら江渡貝くんの偽物を見分けるタンニン鞣しの情報も必要ないので…全てを把握しているわけではないのかもしれません。

また、のっぺら坊に殺されたというアイヌたちの遺品整理をしたのが鶴見中尉だというのも、有古は知りませんでした。菊田たちは知っていますし、尾形も知っていたので、鶴見中尉に近い人間は知っているはずなのです。しかし有古は知らされていません。
それに都丹の刺青の内容を把握しているなら宇佐美や菊田も一緒になってあそこまで躍起になって追う必要もそうなかったわけで。仕留める必要はあったかもしれませんが、鶴見中尉が言うように雪崩から発見できなかったら金塊が見つからない――という事態にもなりません。
なので今回の登別での一件は、有古の造反をあぶり出すことと、さらにその先に狙いがあるのでは?と思うのですよね。有古と都丹が繋がっていることを確信した鶴見中尉はあえて有古に刺青を持って行かせる。都丹と合流したあとは当然土方さんのところへ向かう。鶴見中尉と土方さんが手を組むのはあり得ないでしょうが、土方さんと杉元たちが手を組むことはあり得ます。暗号を解かせるために一芝居打ったのかなと想像しています。アシリパさんを守るため杉元がアシリパさんに何も言わせないことも鶴見中尉には容易に読めているでしょうから、杉元一行と再会しても正攻法では金塊にたどり着けないのです。

 

有古のこれから

有古が鶴見中尉を裏切ったことで、金塊をめぐる戦いは、アイヌはじめ少数民族vsその国の多数派という、マイノリティ対マジョリティの構図が色濃くなってきましたね。

鶴見中尉は作品の中で父親との心の溝につけ入るのが上手く描かれていますが、今回もそれかなと。有古も父の真相を知りたがっていたのでしょう。でも鶴見中尉は真相に繋がる事実を隠していました。まるで父親が、子どもに言うことを聞かせるために、世の中の不都合な事実を見せないように。ウイルクものっぺら坊としてアイヌたちを殺したという伝聞についての真相を隠したまま逝ってしまいました。知られては都合の悪いことがあるのでしょう。
同じ真相であってもどこから見るかで見え方は変わります。必要なのはたくさんの側面を見ること。有古のように家庭を飛び出し新しい視点を与えられた人間が、何を掴み取るのか?非常に興味深いです。

 

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また、以下は私の所感です。
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第205話 ふたりの距離

今回はアシリパさんの胸の内と、杉元のアシリパさんに対する想いが聞けた、まさに副題ぴったりな回でした。

アイヌの昔話の活動写真撮影が終わり、上映会へ。鯉登少尉のおかげで芝居小屋を貸し切って贅沢な上映です。
杉元たちの映像を楽しく眺める一行ですが、アシリパさんの表情は厳しめ。また、谷垣・チカパシの演じたお話を見る楽しそうなエノノカに対し、チカパシはどこか浮かない表情です。その様子を見つめる谷垣もまた何か胸に抱えているような顔。
昔話のお芝居が終わると、撮影技師ジュレールがアシリパさんに見てほしいという活動写真の上映を始めます。内容は、なんとアシリパさんのコタンの十年以上前の映像。青い色の目をしたアイヌのウイルクが健在です。そして何よりもその隣にいる女性。ジュレール曰く、この女性がアシリパさんにそっくりだからこの映像を見てもらいたいのだと。その女性は映像の中で朗らかに笑い、弓を持ち、食事をおいしそうに食べ、時折変顔をする、明るくて晴れの日みたいな女性です。誰もハッキリと言いませんが、明らかにこの女性はアシリパさんのお母さんです。まだ生まれたてのアシリパさんも映っています。
活動写真には若かりし日のキロランケも映っていました。キロランケが映ったあたりで、シネマトグラフが発火し上映していたフィルムは焼けてしまいます。

母の顔を芝居小屋で上映したシネマトグラフで初めて見たアシリパさんに杉元が声をかけます。アシリパさんは母への恋しさを覚えるのではなく、シネマトグラフでは大事なものは残せないと歯がゆそうな様子です。
映像で見た母よりも、ウイルクが語ってくれた母の思い出のほうが心に深く残っている。つまり、自分たちで守っていかなければ文化は残らないのだと、アシリパさんはハッキリと言います。樺太の旅はそれを知るためのものだったと気付いたのです。そして、これから先、戦わなければならないのかとアシリパさんは誰にでもなく問いかけます。
その言葉に対し、杉元は、戦うのはアシリパさんでなくてもいい、と答えます。金塊争奪戦が起こる前の猟をする生活に戻れと言うのか、キロランケが命をかけて教えてくれたのに無関係の振りはできない、とアシリパさんの温度が上がっていきます。杉元はアシリパさん自身ではなくアシリパさんを通して昔の自分を見ていて、アシリパさんを救うことで自分を救いたいだけではないのか、とアシリパさんは杉元に詰め寄りますが、対する杉元は静かにでも力強く返します。
杉元は、ウイルクたちがアシリパさんにしてきたことが許せないのです。山での戦闘を仕込んだウイルク、樺太へ連れていき戦いを選ぶしかなくなるよう誘導したキロランケ。杉元の中で彼らと鯉登少尉の父親が重なります。戦う者ならばその子をまず前線に出させるべきという考え方ですが、それらは親が勝手に子どもに望むこと。ではその子自身、アシリパさん自身はどうしたいのか?人を殺したら落ちるという地獄をどうとらえているのか?杉元の問いかけはアシリパさんの心を揺らしているように見えます。

そして杉元はアシリパさんに自分の願いを伝えます。人殺しをしてもう戻れなくなる前に、金塊争奪戦から下りてほしいと。

 

杉元の純粋な願い

今回、今まで描写で仄めかす程度だったことや断片的にしか語られなかったことが、ハッキリ登場人物の口からかなりの濃度で語られており、伏線回収のターンに入って来たなと感じています。杉元がアシリパさんに対し願うことは、本人の意思の尊重よりも自分のかつての姿を重ねていることのほうが比重が大きそうだとか。杉元は干し柿を食べていた頃の自分が一番自分らしいと思っていて実は戻りたいのに戻れなくて苦しんだとか。そういうこともわかりやすくまとめられましたね。

樺太の旅を通し、北海道では知れないたくさんの民族のことを知ることができました。やはりこの旅でアシリパさんは自らが置かれた境遇を改めて知り、他民族の状況を見て危機感を覚えているのです。
しかし杉元の言う通り、それはある意味キロランケにとって都合のいいものしか見せられていない状態とも言えます。少数民族ばかり見せられたら、ロシアや和人など国のマジョリティに対する対抗心のようなものは生まれやすいですよね。

アシリパさんは、金塊争奪戦に主体的に関わって、つまりは戦って金塊を勝ち取り北海道アイヌをはじめ少数民族のために武装蜂起する道を選ぶしかないのか、というようなことを言っています。言い切りではないのでまだ迷っているようです。
そこに杉元から、それをアシリパさんがしなくてもいいということを言われて、焦燥感から杉元に対し抱いていた違和感のようなものをぶつけたのでしょうね。お前は私自身を見ているようで見ていないのではないか?お前がしたいのは自分のためのことなのではないか?と。

私はずっと、杉元は自分のこうであってほしいという願いをアシリパさんへぶつけようとしている=静かに暴走している、のだと思っていましたが、今週号を見るにそうとも言えなさそうですね。
この時代の価値観では杉元のほうが稀有なのかもしれませんが、まだ幼い人に対して、人殺しをしてほしくない、と願うのは至極真っ当だと思います。戦え!殺せ!という願いは、もう願いを通り越して命令、軍隊みたいですよね。鯉登少尉のような軍人の家ならばそれでいいと思いますが、昔ながらの暮らしを営むアイヌの家に生まれた子に、人殺しをさせようというのは、あまりにも重たいものを子どもに背負わせているなと思うわけです。

私は今回、ゴールデンカムイはやっぱり父と子の物語だと思いました。
アシリパさんの平安な人生を願う杉元は、ある意味ウイルク以上に父親らしいです。
ウイルクもキロランケも、自分の家庭だけではなく民族全体を背負っていました。ゆえにウイルクの子であるアシリパさんは、ウイルクの娘であることに加え、民族にとっても重要な存在になってきます。当然ながら民族のリーダー的存在のウイルクはやはり自分の子には自分の意思を引き継いでほしいので、戦いを仕込みます。キロランケもアシリパさんを次代を率いる重要な存在として扱いました。
それに対し杉元は、アシリパさんにとっては血の繋がりはありませんし、過ごしてきた文化も違います。しかしそれゆえに彼にとってアシリパさんは、血縁や民族といった重たい鎖で繋がれた関係ではなく、狩りや旅での実体験を通じて得た信頼関係にある仲間なのです。もちろん、その実体験には、山での狩猟生活の中での生き生きした時間や、ユクの腹の中での干し柿を食べていた頃の自分にアシリパさんが触れたことも含みます。
杉元は「アイヌのアシリパさん」ではなくて「アシリパさん」をずっと見てきたのだろうな、純粋にアシリパさんのことを想えるのは彼だけなのだろうな、と思うのです。

アシリパさんを戦いから下ろし金塊争奪戦を終えたら、杉元は救われるのでしょうか。
アシリパさんとまた山で狩りをしてほしいなと切に思います。例え死後地獄行きの特等席だとしても、現世で一人の少女を地獄から遠ざけたのだから、せめて余生は…と思ってしまうのですよね。杉元には帰る故郷もないのですし…。できればみんな幸せになってほしいなと思いますがもう何人か死なないと終わらない物語だろうなという予感もあるので、悩ましいところです。しんどい展開が続きそうなので寂しいけど本編が完結した暁には明るい番外編をやってもらいたいですね!

 

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第205話 シネマトグラフ

杉元と月島軍曹の会話から始まる今回のお話。
キロランケがアシリパさんを樺太へ連れてきた意味、ソフィアへ会わせた目的、尾形が吹雪の中アシリパさんを引き離し殺そうとした理由、そしてキロランケの最期の安堵の表情……それらから、月島軍曹は「アシリパさんは暗号を解く鍵に気付いた」と推測しています。
それに対し杉元は、アシリパさんが尾形に解読方法を話す(そして用無しになったアシリパさんを殺す流れになる)わけがない、自分が話すから邪魔をするなと言い切ります。アシリパさんと無事に合流できましたが、果たして鶴見中尉はアシリパさんをどう扱うつもりなのか…。

一方のアシリパさんは、フランスのリュミエール社が派遣した撮影技師ジュレールと、日本での興行権を得た稲葉勝太郎からシネマトグラフ(活動写真)の話を聞いています。当時の活動写真では動きは残せても音声は一緒に残せませんでした。口伝で継承されてきたアイヌの昔話は、そのままでは活動写真に不向き。かといって蓄音機では、動きを見せることができず言葉が違う人たちに伝えることは難しい、と考えたアシリパさんは、アイヌの昔話をお芝居にして活動写真として残すことを提案します。クズリから助けたことを盾に撮影技師たちを巻き込むことに成功した杉元たちによる、お芝居撮影が始まります。

街の外れらしきところで撮影がスタート。監督はもちろんアシリパさん。演目は、「パナンペ・ペナンペ物語」、わかりやすい例えだと「こぶとり爺さん」が近いお話です。
大儲けするパナンペ役に杉元、その妻役に鯉登少尉。パナンペを羨ましがり真似をするペナンペ役に白石、妻役に月島軍曹です。
アシリパさんの演技指導にはかなりの熱が入ります。声が入らないので表情や仕草で感情を伝えるしかないのです。しかし素人のぶっつけ本番なのでアシリパさんが求めるレベルの演技はできません。それに大きく落胆するアシリパさん。自分たちが受け継いできた物語がうまく残せない、伝えられないことにかなり焦りを感じている様子です。

次は「斑文鳥の身の上話」というお話の撮影です。谷垣・杉元・チカパシが三兄弟を演じます。狩りの中で出会った娘役には、鯉登少尉・月島軍曹・そしてエノノカ。娘たちの暮らす家に入ってきた熊を倒すと兄弟たちはとても感謝され、娘の父親からは婿入りを求められます。末弟役のチカパシはその家の息子になり幸せに暮らしますが、一番上の兄が自分は実は鳥のカムイ・ケソラプ(プは漫画中の表記では小さい文字)だと告白します。鳥の姿になった兄はどこかへ飛んでいきます。末弟にとって兄は、身寄りのない自分を迎え入れ、旅へ連れ出し立派な男へ育ててくれ更に新しい家族まで持たせてくれた、いわば恩人です。その人との今生の別れでそんな芝居なのかとアシリパさんに声をかけられたチカパシは、まさしくこの鳥のカムイと谷垣を重ね合わせ、本心からの涙をこぼします。

 

アイヌの昔話

今回印象的だったのは、撮影監督をするアシリパさん。自分たちの文化が残せるかもしれないという希望を活動写真に寄せますが、焦って空回りしている印象です。それだけこの旅の中で、少数民族である自分たちがどういう立場なのかを痛烈に自覚したということなのでしょうか。
民族のため戦う道を選んだウイルクやキロランケと異なり、アシリパさんはそうではないような気がしています。戦うのであれば映像を残す必要はないですからね。映像を残したいということは、遺書のようなもので、文化の担い手自体は消えていくかもしれないが文化があったことは残したい、そんな意図を感じました。物語を通じて人を殺さないという態度を貫いているアシリパさんらしい態度だと思います。
アシリパさんの口から語られたわけではないので確信はないですが、北海道アイヌの今後についてアシリパさんは、流れに任せる、という方針なような気がします。逆らわない、抗わない。いなくなったり和人に吸収されていくのが流れならそれも仕方ない。でも自分たちが生きた証として映像を残したい。蓄音機ではダメなのは、やがて残された史料を見るのは和人だと想定しているから。……と考えているとしたら、まだ12歳の少女が選ぶ道としてはあまりに切ないと言いますか、達観していると言いますか…。早くアシリパさんの本人が聞きたいですね。

昔話の中では、先週に引き続いてチカパシの今後に触れられていますね。
先週は、北海道に帰ってインカラマッに会いたいと言っていましたが、それは同時にエノノカと別れるという意味だと気付きました。そして今週、アイヌの昔話に登場する鳥のカムイ・ケソラプに谷垣を重ね合わせます。谷垣と北海道中、更には樺太を旅し、様々な動物や時には悪人とも戦い男として成長し、樺太ではエノノカとも出会ったチカパシ。谷垣と別れ、エノノカと樺太で暮らす道もあるのかもしれません。谷垣とチカパシがお別れするのは本当に寂しくてそんな場面できれば見たくありませんが…得てしてどちらかしか選べないのですよね。谷垣と北海道へ戻るか、エノノカと樺太に残るか。幼いチカパシならどちらでもうまく適応できるでしょう。果たして豊原で鶴見中尉と合流後、北海道へ戻る船に乗り込むまでに、チカパシはどんな結論を出すのでしょうか?
(もちろん、エノノカとヘンケが北海道へ来るというルートも歓迎ですよ!ヘンケの年齢や樺太アイヌとしての誇りなどを考えると難しいと思いますが…)

 

用済みにさせないために

さて、お話の冒頭で月島軍曹が言っていたこと。ここまでの状況をうまくまとめてくれていますね。
アシリパさんが暗号解読の鍵に気付いたのではないか?というのは、読者は間近で見てきましたから知っていますが、状況を繋ぎ合わせてその結論にたどり着いた月島軍曹はやはり経験豊富で頼もしい軍人だなと思います。鶴見中尉じゃないですがすぐ側にいてほしい存在ですね。
アシリパさんは、あのとき気付いた刺青の暗号のことについて、杉元にもまだ話していないのですね。話してしまえば自分が用済みになって身の安全が保証されなくなること、話した相手の杉元も無事でなくなるかもしれないこと、そんなところまで考えての判断だとしたらやはりアシリパさんは聡いですね。狩りを生業にして日々命を懸けているとそういった重要なことに対する判断力が研ぎ澄まされるのかなとぼんやり妄想してしまいます。
そして月島軍曹と話していた杉元も、彼なりに考えて行動していると思います。アシリパさんから暗号の鍵を聞き出してしまえば、アシリパさんの身が危ない。用無しになって、月島軍曹が尾形に対して推測しているように、殺されてしまうのです。おそらくは鶴見中尉に。なのでアシリパさんから俺が聞き出すと口では言いつつも、おそらく聞き出さない選択をするでしょう。たぶん、聞き出したのではという不要な探りをされないよう、アシリパさんと二人きりになるというシチュエーションも避けるのではないでしょうか。

いよいよ大詰めという感じですね。これからどうなるのかますます楽しみです!

 

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第204話 残したいもの

豊原まで南下してきた杉元一行。月島軍曹が鶴見中尉からの電報を受け取り、今後の予定が決まります。
鶴見中尉は登別温泉で用事を済ませ樺太へ向かうとのこと。大泊に二週間後に到着するのでそれまで豊原で自由時間です。

谷垣はチカパシ・リュウと散策。北海道へ戻りインカラマッに会うのが楽しみな二人に対して、エノノカは寂しそうな顔を見せます。
杉元はアシリパさんとクズリ狩りをします。山へ入る前のお祈りとしてアイヌの伝統的な火起こし道具で火を起こすアシリパさんは、アイヌの伝統文化について思うところがある様子です。マッチの普及により火起こし道具は猟の前のお祈りでしか使わなくなったそうです。そうして日常の中から段々と存在感を消していく自分たちの文化を、どうすれば残せるのか。いつかなくなってしまうことを憂えている様子です。ですが、狩りの途中で出会った人たちから活動写真=シネマトグラフのことを聞き、表情が明るくなります。
一方、杉元とアシリパさんの様子を遠くから双眼鏡で観察する月島軍曹。そのすぐ近くにはヴァシリも…。ロシアに帰らず本当についてきたようですね。

 

アシリパさんに変化が?

今週は、ロシア・樺太での大立ち回りを終え、鶴見中尉と合流するまでの、””のようなお話でした。
大陸で死闘を繰り広げ、一旦収束しましたが、鶴見中尉と会えばまた何かが始まると思います。具体的には刺青の暗号を解いていよいよ金塊の在り処を突き止め、それを誰が手にするのかの争いが激化するはずです。なので鶴見中尉との再会は新しいうねりの始まりでもあるはず。月島軍曹が杉元を双眼鏡で観察、いえ、監視していたのも、杉元と第七師団は敵対関係にあったということを思い出させますね。今は利害が一致したので一時的に手を組んでいるに過ぎないのです。

月島軍曹はきっと日本領にいる間は間近で観察した杉元の様子を鶴見中尉へ電報で報告していたと思います。今回の監視や、鶴見中尉からの電報を受け取ったくだりなどから、その様子が想像できますね。
鯉登少尉は今回は冒頭でボンボンぽさを見せた以外は特に出番なし。ちなみに白石も冒頭のコマにいただけで他は登場なし。

谷垣はチカパシと本当にいいコンビだと思います。寡黙で優れたマタギである谷垣が持っていない部分を、アイヌの子どもであるチカパシが補い合っている。素敵な組み合わせですね。谷垣が、チカパシのことを頭ごなしに叱ったり、子どもの言うことだと軽くあしらったりせずに、チカパシの言動をしっかり受け止め反応しているのも、信頼関係があるという安心感、お互いが認め合っているという充足感があり、見ていて落ち着きます。

このコンビと比べると、今の杉元アシリパさんの組み合わせには少し不安感を覚えます。
アシリパさんは、自分たちの民族の伝統文化が段々と失われていくのを、ロシアでのキロちゃんとの旅を通じて肌で感じています。キロちゃんの狙い通り、この旅はアシリパさんの心境に変化をもたらしたものと思います。それまでは父親について真相を知りたいというあくまで個人の意思で金塊争奪戦に関わってきましたが、今週のお話のアシリパさんは、北海道アイヌ全体を思っているように読み取れます。
一方の杉元は、民族を思うアシリパさんに対してどう思っているのでしょう。特に明確な描写はありませんが、アシリパさんの変化に気付いたのでしょうか。先週までのことから述べるなら、杉元は”個人”としてのアシリパさんのことしか考えていないはずです。アシリパさんには、山で狩りをして暮らしてほしい、戦いになんて参加してほしくない。そう思っているはずです。
アシリパさんを戦いに巻き込みたくない杉元と、民族のためになることをしたいアシリパさん。この二人のすれ違いが、今後、大きくならないといいなと思っています。

 

アシリパさんの物語

以前から、アシリパさんがどうしたいのかが物語のキーになるのでは、と思っていました。今週のお話を読むに、民族を守るため、キロちゃんやウイルクが望んだように戦うのでしょうか。
万が一戦うという選択をした場合、杉元の願いとは相反しますが…アシリパさんが望めば杉元は手を貸すのでしょうか?再び、杉元vs第七師団vs土方一行の勢力図が出来上がるのでしょうか。
杉元とアシリパさんが別々の陣営に分かれることになりこの二人の和解が物語の締めくくりを導くという展開のほうが、アシリパさんの少数民族として生まれた者の葛藤が見え、アイヌを題材とする物語として深みが増す気がするのですよね。ただの妄想ですが。
ただ、アシリパさんのこれまでを思えば、アシリパさんが戦うことを選ぶとは思えないので、戦わずに伝統を残す道を選ぶものと思いますが…戦わずに存続を勝ち取る手段とは何なのでしょうね。シネマトグラフを残すことでしょうか?それこそ歴史的史料となり、日常から消えていくことを傍観しているだけのように思えますが…アシリパさんの言う「残す」ってそういうこと?
と、やっぱりアシリパさんがどうしたいのか、非常に気がかりです。

あとはなんといっても尾形ですかね。鶴見中尉と合流するまで二週間もあるので、さすがに一度くらい襲撃してきそうな予感があります。
それとも先にちゃっかり北海道へ戻っていたりするのかしら。

 

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また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第203話 似顔絵

尾形もいるものと思い狙撃してきたヴァシリを杉元が掴んだのが先週のお話。

場面は再び往来のど真ん中で防御するしかない月島軍曹たちに戻ります。
馬ぞりを引いたおじいさんが無事にすぐ横を通ったことから、杉元が狙撃手の撃退に成功したことに気付きます。軍帽をそりの陰から出しても撃たれない。もうこちらで注意を引く必要はなくなりました。杉元が心配なアシリパさんはすぐに杉元のところへ駆けつけます。
一方の杉元はヴァシリの胸元から出てきた尾形の似顔絵を見て、ヴァシリは尾形を追って来たと気付きました。言葉の通じないどころか尾形に撃たれた傷のせいでうまく話せないヴァシリと、身振り手振りに絵を交え会話する杉元。自分も尾形に撃たれたのだと話します。加えてキロランケのことや、アシリパさんの毒矢が尾形の目を射たことも。アシリパさんに射る気はなかったが射てしまったため尾形の目をえぐって命を助けたんだと話す杉元。その行動の理由が「アシリパさんの見る世界に自分もいると思うと救われる思いがする」という杉元の言葉を、アシリパさんは耳にします。
アシリパさんに続き続々と到着する谷垣たち。アシリパさんによりヴァシリが国境で出くわしたロシア兵とわかり、ロシア語の話せる月島軍曹により尾形がいない状況や樺太先遣隊の目的が説明されます。杉元たちは皇帝殺しには無関係と知ってもなお、盗んだ馬で一行のあとを付けるヴァシリ。彼の関心は皇帝殺しではありません。尾形です。尾形に会えるかもしれないのであとを付いてくるのです。
尾形――一体彼の目的は何なのか?月島軍曹たちは樺太先遣隊としてアシリパさんを鶴見中尉の元へ連れて帰ることが当座の目的です。谷垣はフチにアシリパさんを会わせること。では尾形は?金塊が目的なら暗号を解く鍵かもしれないアシリパさんの前にまた現れるでしょう。しかしロシアではアシリパさんを殺す素振りも見せました。そのためにアシリパさんは尾形の目的がよくわかりません。そこで杉元は、彼はいたずらに引っ掻き回しているだけかもしれない、と感想を述べます…。
わからないことはもう一つ。キロランケたちの目的の真相です。これを知るのはソフィアのみ。大陸で仲間を集め日本へ渡り、その後どうするつもりだったのか?聞きたいけれどソフィアの居場所はわかりません。
当のソフィアは日本海沿岸の港町で、ガンソクさんと出会います。スヴェトラーナとロシア首都を目指すガンソクさんに対し、ソフィアはこう宣言します。希望と復讐のために北海道へ行くつもりだ、と。

 

か弱い人間としての杉元

今週の見どころはやはり、杉元のヴァシリとの会話でしょうか。ほぼ杉元の独白に近い状態なので彼の心の内が素直に話されていると思います。ペットやぬいぐるみなど、相手はいるけれどその相手がこちらの言っていることを理解しないという状況って、とても話しやすくてつい本音をこぼしてしまうのですよね。
尾形がアシリパさんに向かって、人を殺さない=清いまま、でいられるか?清くなくなったらどうする?という問いかけをしていたように、ゴールデンカムイでは人殺しをした者は、人として越えてはいけない境界線をまたいでしまう、と描かれています。そして境界線の”こちら側”へ来た者は、それぞれの方法で自分の心のバランスを取ります。杉元は、殺す相手も人殺しだから殺されて当然・躊躇する必要はない、と自分に言い聞かせます。尾形も似た感じで、人殺しは罪悪感なぞ持たない、というような趣旨のことを勇作さんに向けて言っていました。これが意味するのは、杉元たちがそのような”こちら側”にいることの言い訳をするのは、自己を正当化する理由を無理やりにでも作らなければならなかった、か弱い人間だということです。
救われたいけれど人殺しをした以上は救われないことは杉元本人にもわかっています。地獄に行くことを覚悟している発言は、作品の初期からありました。それでもなお、戦争から帰ってきたときに梅ちゃんに自分が杉元だとわかってもらえないことにショックを受け、干し柿から故郷の話になれば涙するなど、まだ救われたいという気持ちが残っているのだと思います。
それが表れたのが今回の、「アシリパさんの見ている世界はきれい。その中に自分もいると思うと、自分もきれいなものになった気がする」という内容の発言に繋がると思います。

さて、「アシリパさんの見ている世界はきれい」とのことですが、以前に書いたように、杉元は暴走して以降、アシリパさんの意思を尊重するより、理想のアシリパさん=”こちら側”に来ることのない人、という理想像を押し付ける方向へ暴走しているように思えます
でもこれって尾形のしたことと似ているのですよね。187話で尾形がした行動の理由であろう、”こちら側”にいる者としての道理。尾形は人殺しを他人にさせることで自分の正しさを証明しようとしましたが(勇作さんには拒否されアシリパさんのときは杉元により失敗しましたが)、対する杉元は、”こちら側”に来てほしくない。人殺しなんてせず山でアイヌの文化を守りながら暮らしてほしいという、彼のわがままとも取れる願望が行動の理由です。相手に自分の願望を押し付けるのは、その相手のことを見ていないのと同じことですからね。今の杉元には目の前のアシリパさんのことはよく見えていないと思います。彼は自分の理想のアシリパさん像というフィルターを通してしか見えていないのです。だからヴァシリとのお絵描き合戦でも彼の絵はあそこまで要領を得ない感じなんじゃないかなぁとも思います。あるがままを見ていない。

一方のアシリパさんにとってみれば、杉元はヒーローでした。ヒグマにも臆せず立ち向かい、和人なのにアイヌの生活様式に入り込み伝統を受け入れてくれた。父ともレタラとも別れても杉元はすぐ近くにいた。
そんな杉元も、上述のように、一人のか弱い人間だったということが今回わかりました。か弱い人間だからこそ、救われないとわかっていても救われたいと願う。その願いを祈る先は自分。
出会った頃は父親のように強く頼りがいがあり、恋心を覚えるに相応しく真っ直ぐでおおらかな好青年だった杉元も、地獄の底で救ってくれと祈る人間だと知ったアシリパさんの表情。杉元の心の内を知って、アシリパさんは何を思うのでしょうか?杉元の願いはアシリパさんに清いままいてもらうことですが、樺太からロシアへ渡り父の足跡を辿ったアシリパさんは、この金塊争奪戦で何を目的とするのか…そしてその目的のため清いままではいられなくなったときに、アシリパさんと杉元の関係性はどう変化するのでしょう?このまま終わりを迎えるとは思えないのでこの二人の関係ももう少し変化すると思うのですよね。

 

山猫の目的

尾形の目的は、引っ掻き回して遊んでいるだけかもしれない、と杉元が言います。思いつきのようにこぼしたのでしょうが、案外的を射ているのかも?
金塊が目的なら一番有力候補の鶴見中尉の元を離れる理由は特にないですし、独り占めしたいならアシリパさんを味方につけないといけない。でもこれらから外れる行動をし続けているので、いたずらにかき乱しているというのも、しっくりきてしまうのですよね…。
これがミスリードになるのかそれとも真相を言い当てているのか?来週も楽しみです。

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第202話 狙撃手の悪夢

街中で買い出し中のところヴァシリに狙撃され、身動きが取れなくなった一行。
味噌を買いに別行動をしていた杉元だけが自由に動けます。味噌の詰まった樽を抱え建物の隙間を走る杉元は狙撃手の元へ急ぎます。
狙撃手が尾形ならば杉元を見落とすはずがない――鯉登少尉のこの発言に対し何やら思案顔の月島軍曹。狙撃手が尾形ではないと気付き、対策を考えているのでしょうか。

月島軍曹と鯉登少尉の隠れているそりとやや離れたところにあるそりには、アシリパさんと谷垣が隠れています。そりを押して白石へ近づき助けようとアシリパさんが提案するも、狙撃手が尾形なら狙いはアシリパだと制止する谷垣、しかしそれでも助けると聞かないアシリパさんの押し問答が緊迫した状況下で繰り広げられます。
その様子を察知した白石は、お菓子で犬ぞりの犬たちを呼び寄せてその場からの脱出を図りますが、エノノカとおじいちゃんに阻止され失敗。白石よりも犬たちのほうが大事です…生活がかかっていますからね。
先週の話で食べていたお婆ちゃんの口噛み団子をまた食べたいがためにお米を買っていたので、米粒をまいてカラスをおびき寄せ少しでも狙撃しづらくしようという狙いも………ダメでした。お米を啄みに来たのはカワイイスズメたちでした。

米粒を啄むスズメを歯を食いしばりながら眺める白石を、双眼鏡でヴァシリが観察します。ヴァシリは白石のことを覚えていました。しかしヴァシリが探しているのはおそらく尾形なのでしょう。モノローグで「あの時の続きをしよう」と言っています。
このシーンからわかるのは、ヴァシリは尾形を追って来たということですね。尾形と協力しているわけではないようです。

一方、狙撃される側では、月島軍曹が帽子だけそりの陰から出すなどしてヴァシリの注意を引き続けていました。それは杉元との連携のため。注意を引き付けている間に杉元がヴァシリの居場所へ向かう作戦です。
さすがヴァシリも軍人です。杉元が建物に入ってきたことにすぐ気付きます。気配はあっという間にふすま一枚隔てたすぐそこへ。
ふすまを開け部屋へ踏み込む杉元。当然ながら銃撃のほうが早いです。そんなことは杉元もわかりきっているので、ふすまを開けたらまず鏡がヴァシリの目に飛び込むように配置。一発目は鏡に映った杉元をあえて撃たせ、弾を装填する隙を作りました。そのまま懐へ飛び込もうとする杉元。ヴァシリも接近戦への備えとして拳銃を取り出しますが、そこでヴァシリの顔面へ投げ込まれる味噌樽!なんて機転を利かせた対応!(踏み込むのに味噌樽持ったままだったとは…)
味噌樽を顔に食らい刺されそうになるヴァシリですが、逆に味噌樽をうまく使い、杉元の銃剣を防ぎます。自分に有利な距離を取ろうと逃げようとするヴァシリを、ふすまを突き破って伸ばした手で摑まえる杉元。そのままふすまのこちら側へ引っ張り、得意の柔道で投げます。畳に背をつけたヴァシリの胸元には、尾形の似顔絵が。ここで尾形という接点でヴァシリと杉元たちがどう繋がるのか?

 

動物がカワイイ

今回は白石のギャグパートで動物がたくさん出てきました。ゴールデンカムイといえば、動物の魅力も醍醐味ですよね!
犬ぞりのワンコたち、ふさふさした毛並みや口から出ている舌などが本当にわんちゃんのそれで、呼吸音が聞こえてきそうなくらいにリアルなんですよね。リアルだけど漫画の画面の中にあっても浮いたりすることなく可愛いのも、作品に引き込まれてしまう理由の一つです。
カラススズメは静香にもいたのですね。世界中にいそうな鳥ですが、動物が出てくるとなると山の中が圧倒的に多いのがゴールデンカムイなので、人里近くに住むことの多い鳥たちは珍しいです。スズメは本当に可愛い!樺太なので日本より寒いですね。なのでふっくらした暖かそうな羽毛が生えそろっているところ、ふわふわの見た目が実に愛らしいです。そんなスズメと、策がことごとく失敗して血がどんどん流れ出て、依然危険な状況にある白石との必死の形相とのギャップでより一層スズメが可愛いです。

 

久々の登場は一番燃える

ハッキリとヴァシリだとわかる描写がいくつかありましたね。目元だけでも明らかに日本人でないとわかる顔立ち。ウイルタに扮装した白石のことを覚えているということ。尾形の似顔絵を持っていること=尾形と因縁があること。
ロシア国境付近で出会ったときには髪を後ろへ流して帽子をかぶっていましたが今は前髪を下ろしているみたいです。こういうのすごく興奮しますよね…再登場してきたときに見た目、特に髪型が変わっているキャラクター…狙撃手だから視界良好が必須だと思うので前髪は邪魔じゃないのかな?とも思いますが。尾形もオールバックだし。帽子があるから大丈夫なのか、髪型を整えられないくらいに実は切羽詰まっているのか、それとももうなりふり構わず玉砕覚悟くらいの気持ちでいるからなのか。理由はわかりませんがヴァシリの前髪いいですね。口元を隠しているのは、傷跡を隠しているからでしょうか?弾は貫通していたように見えますが、ひどい有様だったりするのでしょうか。でもこの顔の下半分を隠すという格好は、中二心をとてもくすぐられます…忍者みたいでかっこいい…。
余裕しゃくしゃくだった狙撃手が、敵に接近を許し焦っている様子、すごく好きです。ヴァシリには悪いですけど、追い詰めていくさまがすごく楽しいのです。今週号は味噌樽投げてからがすごく面白いです。「距離さえあれば負けない」なんて(モノローグで)言うの、フラグですよね。距離取れるわけないでしょう…狙撃が止んだのに気付いた鯉登少尉たちも向かっているだろうし…。ふすまから杉元の手が出てきて胸倉を掴まれるのは、ホラーですね!このコマだけ静止画の演出で見えます。ヴァシリの心臓と連動してるのかなーなんて思います。ふすまから手が出てきてしかも掴まれちゃったら思わず心臓止まりそうになりますよね…。まさしく狙撃手の悪夢…。

 

狙撃手の執着

最後、ヴァシリが尾形の似顔絵を持っていたことが明らかになります。きっと自分の記憶から似顔絵を描き、それを使って尾形を探してここまで来たのでしょう。残念ながら杉元たちから逃げてしまいましたが、一行と尾形が一緒にいたという情報を掴んだので白石たちを狙ったのでしょうね。
ふつう、あまり見慣れない人種の人の顔って、識別しづらいと思うのですよ。ヴァシリが普段からロシア人以外との交流をしていればまた話は違ってくるでしょうが、ヴァシリも普段はロシア人に囲まれて暮らしているはずだし、日本人の顔って少し区別がつきづらいのではないかなと思います。尾形と狙撃手対決をしたときだって狙撃手同士なので間近で顔を見たわけではないのですよね。ヴァシリは双眼鏡で尾形を見ていましたが、外套を深くかぶっていたので顔は見えていないはず。そんな状況なのに記憶でここまで正確な似顔絵を起こせるとは、尾形のビジュアルの強さに感服です。
もしくはヴァシリの狙撃手らしいところに感服します。狙撃手は、獲物を仕留めるために、対象にものすごく執着するのだと聞きました。執着して追い回して張り付いて、自分が仕留める。ヴァシリもいい狙撃手の条件をそろえていると思うので、獲物への執着がすごそうです。獲物と決めた尾形のことはたとえ少ししか見ていなくてもこうまで記憶に正確に残っていたのは、獲物への執着心のなせる業なのでしょう。白石のことも覚えていましたしね。

杉元とヴァシリ、絶対尾形やっつける男同士の邂逅は、この後どう響いてくるのでしょうか?来週も目が離せません!

 

 

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こんばんは、うたげです。
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第201話 あばよロシア

先週の話で尾形に逃走を許しましたが、樺太先遣隊の目的はアシリパさんの奪還。
任務は果たしたので尾形を追うことはせずに日本へ帰ります。
犬ぞりに乗って来た道を戻る一行。
もちろんチカパシ・エノノカ・エノノカのヘンケも一緒です。
一行は無事に国境を越えいよいよ日本へ入りました。

日も沈み国境付近の樺太アイヌの集落で一泊。
グルメパートでは「お婆ちゃんの口噛み団子」が登場。
日本の口噛み酒に似ていますが、アイヌの伝統料理かは定かではなく、証言記録が残されているものらしいです。
その名の通り、口で噛んだ米を団子にして焼いたもの。
酒の入った杉元と白石はお婆ちゃんに甘えたり味噌がないと騒いだり口噛み団子ごっこをしたりと大はしゃぎ。
冷ややかに見ている谷垣とは温度差がかなりあります。
一方の鯉登少尉と月島軍曹はさらに温度が下がります。
尾形にロシア語で言われた言葉の意味が「ボンボン」だと月島軍曹に聞いた鯉登少尉はなにやら思いつめた表情を見せます。

翌日、静香まで南下した杉元一行は街で日用品の買い出しを行います。
戦いから解放されたせいか、日本の領土へ戻り安堵したからか、どこか浮かれた様子にも見える一行。
そんな一行を双眼鏡で観察している人物が一人。
物陰に潜むそのシルエットは、銃を背負っているように見えます。

味噌を調達しに離れていた杉元を探しに白石が道の真ん中へ出ると――
いきなり脚を撃たれます。
身動きが取れず往来に倒れる白石。
ひとまず買い物をしていた店の中へ入ろうとするも扉に触れようとすると撃たれるため、白石以外の人間も身動きが取れず、そりの陰に隠れるしかありません。
軍人である谷垣と鯉登少尉はすぐさまこの状況へ対応します。
谷垣は、敵が白石の脚を撃ったのは助けに誰かが出てくるのを狙い撃ちするためだとアシリパさんへ説明。
この戦法は狙撃手の常とう手段です。
鯉登少尉は、自分の手鏡を使い狙撃手の姿を確認しようとしますが、物陰から少し出しただけで手鏡を撃たれてしまいます。

遠くからでもこんなに正確な射撃ができる人物は、みな一人しか思い浮かびません。
尾形。
尾形がもう戻ってきたのだとみな気付きます。
しかし建物の窓からこちらを狙撃している人物は尾形ではなく、何やら見覚えのある横顔。
精密射撃と遮蔽物の少ない道、この悪条件、狙撃手にとっては好条件で誰も動けない中、味噌を抱えて走る杉元は無事に狙撃手を見つけこの状況を打開することができるのか。

 

誰が狙撃しているのか?

今週何よりも気になるのは、樺太先遣隊とアシリパさんの一行を狙撃しているのは誰なのか?というところですよね。
先週、尾形が逃げおおせましたし、狙撃といえば尾形ですから、谷垣たちが尾形が狙撃していると思うのも無理はありません。

でも、描かれているのは明らかに尾形ではありません
眉毛が違うし、銃も三八ではなさそうに見えます。
何よりアシリパさんの放った矢が(事故で)刺さったはずの右目が、無事です。
狙撃手は尾形ではありません。
もしかして、尾形・キロランケ・白石・アシリパさんがロシア入国時に国境付近で戦った、ヴァシリでは…?
似てますよね。
銃も彼が持っていたものに見えるような見えないような…?
とにかく、尾形とはまったく似ていない人物です。
尾形以外にここまで正確な狙撃ができるのは、ロシア国境で戦った、ロシア国境守備隊のヴァシリだけなので、彼と考えていいでしょう。

ヴァシリだろうと考えた理由のもう一つに、メタ的ですが、尾形vsヴァシリ戦を彷彿とさせるというのもあります。
ヴァシリとの戦闘において尾形は今回の話と似た手口を使っていました。
ヴァシリの仲間の腹を撃ち足手まといにさせ、自分に有利な状況を作り出す時間を稼ぐ。
また、そのときの狙撃手対決で語られた、狙撃手の条件。
冷血で獲物に執着する。
尾形は寄る陣営を幾度と変え登場し、死んだと思わせるほどの傷を負ったはずのヴァシリはわざわざ日本の領土まで追ってきています。
敵の執拗さが際立つ今回の話は、谷垣の話す狙撃手の常とう手段という言葉と相まって、狙撃手が来た!ということをしつこい程に訴えているように思えるのです。
作中で出てきた狙撃手といえば尾形とヴァシリなので、やはりこれはヴァシリかなと、メタ的にもそう思えます。

 

なぜアシリパさんたちが狙われるのか?

さて、次に気になるのが、どうして撃たれているのか?という疑問です。

狙撃しているのが尾形であれば、アシリパさん以外の全員を殺し鶴見中尉が事態を把握するのを遅らせ、その隙に金塊を…という理由が考えられるので特に不思議はないのですが。

国境守備隊のヴァシリが狙撃しているとして、一体なぜ?という疑問が出てきます。

これはやはり背後に尾形がいるのではと思います。
ヴァシリは尾形との狙撃手対決に敗れ、尾形に首元のあたりを撃たれました。
首を撃たれたら生きていないと普通は思いますし、私も死んだものと思っていました。
ただ、ヴァシリが死んだという明確な描写もなかったのですよね。
尾形の撃った弾がヴァシリの首元にあたり血が飛んだ、という描写のみです。
なので生きていたとしてもおかしくはありません。

撃たれたが一命は取り留めた、というよりも、尾形によって一命を取り留めさせられたヴァシリがいたとしましょう。
ヴァシリに向かって尾形はこう囁いたのではないかと思います。
”皇帝殺しのユルバルスは逃しただろうが、もう一人の皇帝殺しの娘がまたここを通るかもしれない”
”その娘は莫大な量の金塊の在り処のヒントを知っている”
アシリパさんはロシア側からしても是が非でもほしい人物なのではないでしょうか。
他の日本人は不法入国はしていますが殺したり捕まえたりしたところで特にロシア側に利益はなさそうですし。
ユルバルスを見つけながらも逃したうえ仲間も殺されたヴァシリとしては手柄がほしいところというのも関係していそうですね。
もし本当にそうだったとしたら尾形の策略おそるべし…。なんとなく鶴見中尉を思わせますね…。

 

尾形はどう再登場する?

ここから先は私の勝手な予想ですが…

尾形も近くにいるのではないかなと思います。
杉元がヴァシリと戦っているところへ登場。
ヴァシリと尾形がグルならば、診療所から逃げ出した尾形はまずヴァシリの元へ来るでしょうし。
戦いの結末はわからないですが、杉元が近付き狙撃さえやめさせられれば、鯉登少尉と谷垣もいますし室内なら狙撃も十分な威力を発揮できないので、尾形を捕らえる流れになるのではないかなーと。
そして鯉登少尉の今回のお話の伏線回収のターンが来るのではないかと…というよりそうなってほしいなと…。

鯉登少尉が今回「ボンボン」という言葉に見せた反応は何のか私にはわかりません。
先週までの、鯉登少尉と鶴見中尉の関係を決定づけた事件と繋がりがありそうだとは思います。
誘拐された鯉登少年も、誘拐犯のロシア人に「ボンボン」と言われていました。
あのときと同じ言葉を今聞き、その意味するところを知り、一体何を考えているのか?
もしかして鶴見中尉の仕組んだからくりに気付いた…?など恐ろしい可能性もなきにしもあらずですが、今の私にはまだまったくわかりません。

もし伏線回収のターンが来るなら、尾形には心の内を語ってもらいたいです。
語ってくれるなら樺太でなくても、どうにかこうにか北海道へ戻ったあとでもいいのですが、早く決着をつけないと誰か死にそうなので、この戦闘はあまり長引かせずできれば樺太で決着をお願いしたい…。
尾形にはせめて私がずっと抱えている”なぜ尾形は鶴見中尉を裏切ったりアシリパさんをたらしこんだりしようとしたのか?”という、尾形の目的への疑問を解消してほしいです。
そして解消の時はそう遠くない気がしています。勝手な期待ですが。

心の内を語ったら、尾形は樺太で退場になりそうですが、鶴見中尉の目の光る北海道に彼にとって安全な場所があるわけもないのでこのまま戻っても無事という保証はまったくないのですよね…。
尾形に死んでほしいわけではないですが鶴見中尉と再会したらどえらい目に遭いそうなので、このまま樺太に残り余生を送ってほしいです…。
故郷の茨城に帰るというのも考えましたが、あんな過去を持ちながら郷愁の念を抱いているとも思えないですね…。

鯉登少尉の過去も明らかになり、尾形も目を負傷しかなり大詰めという感じが出てきました。
作品自体の終わりが近そうで寂しいですが…早く謎を明らかにしてほしい気持ちもあり、複雑です。。
進んでほしいけど終わってほしくはないですね…。

 

 

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第200話 月寒あんぱんのひと

五稜郭に着いた鶴見中尉と鯉登パパ。
突入するも鯉登パパは気絶させられ、その間に銃声がとどろき―
音之進くんを助けに来たのは鶴見中尉でした。
その後、鯉登パパも無事に目を覚まし、勇敢にも戦った音之進くんを褒め親子の溝は埋まったようです。

誘拐犯たちは結局誰だったのかわからずじまい。
犯人の死体を片付けるのは、月島軍曹・菊田特務曹長・尾形。
三人とも何か含みのある目線を、「月寒あんぱんが私たちを引き合わせたのかな」と談笑する鶴見中尉たちへ向けます。

その後、鶴見中尉の影響か、陸軍士官学校へ入ることとなった音之進くん。
この段階ですでに鶴見中尉の前では早口の薩摩弁です。
鶴見中尉への挨拶帰りに尾形とすれ違い、何を感じ取ったのかにらみ合う二人。

そして現在。
診療所の一室で倒れている鯉登少尉と銃を突き付けている尾形。
しかしすぐそばに白石と谷垣がおり、発砲すればすぐ突入され殺される危険性が。
そこで尾形は鯉登少尉を蹴り、おそらく気絶させたのでしょう、その隙に馬を奪い逃げおおせます。
気付いた杉元が銃で狙うも失敗、尾形は果たしてどこへ逃げるのでしょうか――。

 

仕組まれた誘拐?

先週の感想で書いていたことが五割ほど描かれているように思います。
まずは鯉登親子のすれ違いを直したのが鶴見中尉だということ。
あとは、この誘拐事件にも鶴見中尉が噛んでいるかもしれない、と思うに足るほどに匂わせる描写がありますよね。

兄と自分を比べ、兄のようにはなれない、代わりに自分が死ねばよかった、と自己否定をしていた鯉登少年が、電話で謝ったことで、鯉登パパは音之進くんが何を思っていたのかを知ることができたのですよね。
優秀な兄のようにならなければ自分のほうが生きている価値がないと音之進くんに思わせたのは、兄の死後感情を見せることが減っていた自分のせいではないか?と思い至ったであろう鯉登パパ。
気絶から目を覚ましたとき、音之進くんに、誇らしいと声をかけるシーンはとても良かったですね。

その一方でこの事件の裏では鶴見中尉の思惑が働いていそうです。
まず何と言っても、犯人の遺体処理の三人
鶴見中尉は、五稜郭の番号が「144番」と知っているものがいない、と言っていました。
番号を合図で伝えたくても伝えられないのですよね。
犯人の潜伏場所が明らかになってすぐに鯉登パパと現地に向かったので、仮に他の人が部下に知らせて五稜郭へ走らせたとしても、ちょっと早すぎるのでは?と思ってしまいます。
突入前後の建物への日の当たり方から時間経過はあるものと見えますが、それにしても…という具合です。
そして何よりも、鯉登パパを気絶させた人物
一体誰なのでしょう?やはり、月島・菊田・尾形のうちの誰かなのでしょうか。それとも鶴見中尉?
銃撃戦も、犯人二人vs鶴見中尉だったのでしょうか?
遮蔽物など少なさそうな建物に思えるので、部下の援護があったとか、部下にやらせた、というほうが納得がいきます。
以上から、最初から五稜郭付近に部下を待機させていたのでは?と思うのですよね…すごく怖いですが…。

犯人が「ボンボンが」と言っていますが、これもちょっと引っかかります。
お金がほしい犯人が、裕福な家の子どもを誘拐して「ボンボンが」と言うのは納得がいきます。
自分がほしいのに持っていないものをたくさん持っているから。僻みみたいなものですね。
でも今回の誘拐の目的はお金ではないのです。
もし鶴見中尉の読み通り、本当に露西亜が関わっているなら、こんな危険な工作を、「ボンボンが」と言うようなお金に飢えた人にやらせるのか?という点も引っかかるポイントです。
適当な人をお金で釣ってやらせるのは難しいし、適当な人ではなくちゃんとした人がやるならもっと周到に用意するはず。
第一、誰にやらせるにしても、露西亜人がやるのでは目立つので現地の人間を買収なりなんなりしてやらせるものでは?
露西亜の思惑があるという鶴見中尉の読みに説得力を持たせるため、それこそ鶴見中尉が買収した適当な露西亜人だったのでは…?くらいまで思ってしまいます。

私が先入観を持って読んでいるからかもしれませんが、やはり今回の事件は鶴見中尉の仕組んだ狂言誘拐に思えるのですよねぇ…。

 

尾形と独占欲

鯉登少尉(この時点ではまだ士官学校入学前ですが)とにらみ合う尾形。
尾形はよくこの陸軍内の階段で描かれますよね。
時期は不明ですがこのときはおそらくまだ勇作さんを殺す前かと思います。鶴見中尉の額あるし。

ここで鯉登少尉をにらんでいた意味を少し考えてみました。
尾形は独占欲が強いのではないかなと思います。
母親は尾形に興味を示さず、父親には疎ましがられた幼少期。
その後鶴見中尉の元に来るまでの経歴は不明ですが、鶴見中尉は尾形を買っていたと思います。
花沢中将の息子という立場は非常に魅力的です。
尾形を通じて勇作さんを、延いては父親を、そしてゆくゆくは陸軍の中央への足がかりができるかもしれないのです。
結果、勇作さんのたらしこみはうまくいきませんが、尾形と鯉登少尉がすれ違ったこの時点ではまだ失敗と決まったわけではありません。
が、海軍との橋渡しが期待できる鯉登少尉は、尾形の立場を脅かすに足る存在だったのではないでしょうか。
鶴見中尉が中央や海軍など他の力へのアクセスを求めていたならば、鯉登少尉のほうが圧倒的に魅力的です。
鶴見中尉の目的に自分よりも沿っている人物の登場で、今いる自分の立ち位置―中央への繋がりが得られるかもしれない存在―が揺らぐのを感じ取ったのではないでしょうか。
つまりは鶴見中尉に重用されなくなること、もっと言ってしまえば鶴見中尉の関心を独占できないことに危機を覚えたのではないかと。

アシリパさんとの流氷上でのやり取りを見ていても、独占欲が強いのだろうと思います。
人殺しをさせて「こちら側」へ来るのを見たい、だなんて歪んでいると思いませんか。
杉元のように、何が何でも清くあってくれ、というのも勝手な幻想の押し付けですが、自分のいるほうへ来てほしいという尾形の願望もなかなかにクレイジーなものがあります。
かつての杉元が願ったような、その人の意思を尊重し寄り添いたい、という見守るスタンスではなくて、手元へ引き寄せて共に地獄にいてほしいという強引な欲望
これを独占欲が強いと言わずに何と言いましょうか。

今回、尾形は裸に布一枚という格好で逃げたわけですが、次に杉元たちと会うときはどうなっているのでしょうか?
アシリパさんへの執着がさらに強くなって再登場するのでしょうか。
そろそろ尾形の真意が知りたくて知りたくてウズウズします。

 

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
妄想・勘違い・見逃し等々も多分に含んでいます。
一ファンの感想としてお読み頂ければ幸いです。

 

第199話 坂の上のロシア領事館

オチそれかい!!!
というのが率直な感想の最新話でした。

無人のロシア領事館で犯人からの電話を待つ鶴見中尉たち。
鯉登パパは「息子可愛さに海軍を裏切ることはしない。音之進には国のために死ねと言う」と息子を失う覚悟です。
犯人からの電話を受け取り、音之進くんの無事の確認を要求。
鯉登パパが「国のために」と音之進くんに伝えたところ、彼の口からは「兄のようになれず申し訳ない」とのセリフが…。
電話から犯人の居場所を特定し急ぎ向かう鶴見中尉たち。
急坂で馬が怖がるため音之進くんの愛車・ド ディオン ブートンで鯉登パパと鶴見中尉が函館は五稜郭へ急ぎます。

 

父であり武人である

今週の見どころはやはり鯉登パパと音之進くんですね!
パパは「国のために死ね」と言いたかったのに、実際に伝えられたのは「お前は助けない。国のために」まででした。
鯉登パパの言葉を遮って音之進くんが話した言葉からは、彼が勘違いしているように思えます。
鯉登パパの結論としては「息子は助けない」なのですが、理由がしっかりあるのですよね。
海軍の重要な拠点を任せられている鯉登パパには犯人に従って息子を解放してもらうという選択肢がないだけなのです。
だから、鯉登パパは別の選択肢、「鶴見中尉を信用し犯人たちより先回りする」を取ったのです。
決して音之進くんが兄に劣るから見捨てるわけではないです。
鯉登パパはもし誘拐されたのが兄のほうであっても同じ結論を出すでしょう。

それに、音之進くんと電話で話して、鯉登パパの中で気持ちに変化があったように思います。
息子の悲痛な気持ちをわかってそれに心が動かされるなんて、愛情深いお父さんですよ!
ゴールデンカムイに出てくる父親は基本的にダメダメな感じなのでこれは嬉しくなっちゃいますね。
鯉登パパ、電話の前までは、犯人の要求なんぞ飲まん!お国のために息子には死んでもらう!という頑固さがありましたが、電話のあとには、お国を守りつつ息子も守りたい、と望むようになったんだと思います。
父である前に武人、だったのが、父であり武人である、に変わったのかなと。
「国を守る」「息子を守る」両方やらなくちゃあいけないのが軍人のつらいところだ……というところでしょうか。

音之進くんには卑屈にならないでほしいです。
「生まれてこなかったものと思ってください」なんて悲しいこと言わないで…。
兄が亡くなったという事実と、自分が船に長時間乗れないという事実だけで、父親の愛情を無下にしないでほしいです。
ご両親にとってはどちらも大事な子どもで、比べられるようなものではないのですから。
せめて戦って死んでやるという悲愴な覚悟がありそうですが、鶴見中尉たちが助けに行くからそれまで無事でいて…!

 

たらしこみの気配

音之進くんが、電話越しに鯉登パパと話すところで、犯人の一人が彼の背中に手を添えていますよね。
もしかして音之進くんの話す日本語がわかっているのでは…?と思わせる描写です。
また、五稜郭に向かう鶴見中尉たちを追う犯人グループの一人。
彼を倒したのは鶴見中尉ですが、犯人がやられるときの様子が、なんだかちょっとあやしいような…?
車で走行しながら馬に乗った人物を撃てるものなのでしょうか。
はっきり弾が当たったような描写も見当たらないですし…。

何が言いたいかというと、今回の件も鶴見中尉が一枚噛んでいるのでは?という深読みです。
犯人グループと繋がりがあるのかなぁとぼんやり思いました。
この誘拐事件の首謀者が誰なのかはわかりません。
犯人側がいわば狂言誘拐をするため鶴見中尉が手を貸したのかもしれないですし、鶴見中尉が命じてやらせているのかもしれません。
そうなってくると、二話前で「また会おう」と言っていた鶴見中尉が、その後ちゃっかり音之進くんと再会しているのも(まだ電話越しで直接は会っていませんが)あやしく見えてきますね…。

なんにせよ、尾形と勇作さんのケースといい月島軍曹のケースといい、鶴見中尉にとってかなり都合のいい状況が出来上がっているので、自ら作り出したのでは?と勘ぐってしまうのですよね。
私の妄想なのであまりあてにならないですが、このあたりもしっかり説明したうえで完結してほしいですね…!

 

坂の上の馬

二週前の話で鶴見中尉が言っていたことの回収でしたね。
馬は下り坂を走れないので車のほうが早い。
その通り、今回は下り坂を車で疾走しました。

これも鶴見中尉のたらしこみの一環に見えてしまうのです。
みんなが困ったボンボンだと遠巻きに見ていた、車に乗る音之進くん。
この車は上りは遅いんだと言う彼に、下りは早いさ、と返す鶴見中尉。
音之進くんにとって、みんなが避けていたのにその力を認めてくれる人が現れたということを示しているのかなと思いました。
兄を亡くし父とぎくしゃくしていた少年にとって、周囲の大人と違い、愛車を褒めてくれて、兄のようにならなくていいんだよと寄り添う言葉までかけてくれる人物の登場は、どれだけ明るく見えたのでしょうか。
まして今回の音之進くん奪還作戦が成功すれば、父親との仲もうまくいくかもしれません。
そこまでいくと鯉登少尉が鶴見中尉に心酔するのもわかる気がしますよね。

 

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また、以下は私の所感です。
妄想・勘違い・見逃し等々も多分に含んでいます。
一ファンの感想としてお読み頂ければ幸いです。

 

第198話 音之進の三輪車

鹿児島で出会った鶴見中尉と鯉登音之進少年。
音之進少年の兄が亡くなった経緯やそれが原因で音之進少年が船に乗れなくなったことが語られます。
やがて二年後に海軍の父の仕事のため函館に移り住んだ音之進少年。
函館の街中を自慢の三輪車で駆け回っていたところ、露西亜と思われる一味に誘拐されてしまいます。
ロシア語が堪能な鶴見中尉が音之進少年奪還のため鯉登平二中佐(当時)の元へやって来ましたが、果たして無事に帰還できるのか。

というのがざっくりしたあらすじ。

 

海軍将校になりたい

音之進少年の兄・鯉登平之丞海軍少尉
明治二十七(1894)年、日清戦争の黄海海戦で防護巡洋艦「松島」に乗っており、戦死しました。
父・鯉登平二中佐は別の戦艦から、息子の乗った松島を見つめていたそうです。
砲弾が的中し57名の味方が死んでいくさま。
松島は、敵の砲撃が装薬(弾丸を発射する際に使用する火薬だそうです)の誘爆を引き起こし、大破したそうです。
松島は日露戦争まで活躍した艦艇なので黄海海戦では沈没したわけではなく大破、またその後は200名超が乗っていたとの記述もWikipediaにありますのでその当時も乗員60名程度ではないだろうと思います。

なので大破したといっても全員死亡する規模ではないので、誰が死んだのかまでは他の艦艇からはわからないかと。
さすがに鯉登平二中佐は息子の持ち場を把握していたかもしれませんが…。
誰が死んだかわからないなら、私情を挟むのは厳禁ですが、我が子の無事を必死に祈りながら松島大破の様子を見ていたと思います。
息子の持ち場と大破した箇所が一致しているとわかっていたのなら、なぜその場所に砲弾が当たったのかと運命を呪ったことでしょう。

そしてそんな父親の胸中を想像した音之進少年の胸中は想像を絶します…。
海城学校で聞いた松島大破の様を、頭の中で映像に変換するだけでも実践経験のない身には相当な苦行のはずです。
加えて父親が笑わなくなった事実も上乗せ。
さらに、兄が死んだ分、自分が立派な海軍将校にならねばという責任を感じていたはずです。
兄の死・戦死の惨たらしさ・父の変化・使命感、それらは全て「船」に関わるため、音之進少年は船に長時間乗れなくなってしまう…。

船に乗れない者が海軍将校になれるはずがない。
兄上の代わりにはなれない。
自分は鯉登家の落ちこぼれだ。

自分のことを否定する少年に、鶴見中尉は、兄上の代わりになる義務はない、と言葉をかけます。

函館に引っ越した音之進少年は、まだ海軍兵学校を受験する予定だそうで、まだ海軍将校を目指しているのですね。
ということはきっと船に長時間乗れるようになる練習をしていたりするんでしょうか。
そのたびに兄や父のことを思い出して、体調を悪くし、父親の期待に応えられないどころか兄上という空白を埋めることすらできないと嘆いたのでしょうか…地獄ですね…。

次週あたりには鶴見中尉が音之進少年に陸軍へ入るよう助言する場面が見られるのでしょうね。

 

親の心子知らず

鯉登少尉は意外と自己評価が低いのですね。
自分のほうが死ねばよかったなんて、戦時下にそう言えることではないではないです。
やはり今週語られたように、父親の関心が自分に向いていないということが原因なのですかね。
誘拐犯相手にも、父は自分のために函館要塞を差し出す真似はしない、と言っていますし。

悲しいのは、音之進少年は、父がそうしないだろうと思っている理由を、「自分が落ちこぼれだから」だと思っているところなのですよね…。
音之進少年がそう思ってしまうのも無理はないのですがね…長男が死んだのなら、家を継ぐ者として次男にはこれまで以上に厳しく当たり鍛えようとするのが普通でしょうから。
そうしてくれなかったのは父が自分に何も期待していないからだという理屈が出来上がってしまったのでしょう。

でも、父のほうは、そう思っていないのではないかなと、いや、そう思っていてほしくないと、私は思います。
お父さんは、「息子に価値はない」と思っているから犯人の要求を飲まないのではなくて、
息子の命と天秤にかけられないほど重大なものを預かっている」から犯人の要求を飲まないのではないかなと。
樺太に向かう艦艇の上で杉元に語ったように、兵の命を預かる将校ならばまず自分の子どもを率先して戦場に差し出さねばならないのです。
息子一人のために海軍中佐として預かっているものを放り出すことはできません。

父と息子でちょっとすれ違っているかな?と思ったところです。
鶴見中尉がこの親子をうまく繋ぎ直してくれることに期待しています。

鶴見中尉は人をたらしこむとよく言われていますが、私の期待通りの展開なら、「たらしこむ」という言葉が持つ利己的なニュアンスは薄れるような気がします。
親子の間の誤解をなくすのはいいことですよね。
ただ、現在の鯉登少尉の様子からは、鶴見中尉に心酔しきっていて、心の拠り所になってさえいる印象があります。
拠り所になっているということはそれがないと立っていられないということなので、鯉登少尉が自立できなくなっているとしたら、たしかに鶴見中尉ちょっと悪い大人かもですね。

鶴見中尉のたらしこみについては、月島軍曹と尾形の例もあります。
月島軍曹のえご草ちゃんの件は、元は父親との関係が発端です。
もし「佐渡で実際に骨が掘り出されるのを見た」という発言がなければ、父親を誤解していたという後悔はあるでしょうが、恋人を死に追いやるような親ではなかったと多少の信頼回復はできていたでしょう。
なのであの発言は鶴見中尉の想定外だったのではないかと思います。

尾形のほうは、まだ全然わかりません。
やはり父親との関係が肝だろうとは思いますが…やはり父親を殺させてあげるよというところなのですかね…。
正直尾形のことは作中で何を語られても理解できないような気さえしています。
難解な男だ、尾形…。

 

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