世界は音楽に満ちている。:映画『蜜蜂と遠雷』感想

こんばんは、うたげです。
今日は映画『蜜蜂と遠雷』を見てきた感想です!

 

『蜜蜂と遠雷』感想

まずは映画の感想を。

冒頭、雨粒が地面に当たり弾ける映像。原作読んだからわかる…雨粒が何かを叩く音、これは亜夜が音楽の神様に愛されていてどこにでも音楽はあると全身で感じていることを表しているんだわ…

突如として暗転、無音。
音楽を題材にした映画だから、無音の時間が生きる…これは終盤にも出てきそうな演出だな…
(と思いながら見ていたら終盤でほんとに同じ展開があった)

一次予選に向かう亜夜に容赦なく投げかけられる周囲の言葉。ここで亜夜がどんな人かを説明しているのね。でもこの段階では言葉だけ。亜夜はかつて天才少女だったが今は相当長いブランクがあるということがここでわかるようになっている。

そんな亜夜が一次予選の演奏を始めようとしたところで場面転換。次はもう通過者発表も終わった場面に切り替わってて、かなりサクサク進めてる。一次予選はかなりあっさり終了、まぁたしかに映画的には『春と修羅』の二次予選や、亜夜とマサルに葛藤のある本選に焦点を当てたいよね。原作ではここは各コンテスタントがどういう経歴で、どんな気持ちでコンクールに臨むかを説明しているけど、映画では映像で説明しないといけないものね。
でも一次予選の結果発表後の場面で、プレスの人たちの会話を通してマサルやジェニファ・チャン、明石の紹介をするのはスムーズでわかりやすかったと思う。女の子にサインをねだられるマサル、そこに割り込み調律師への不満を漏らすジェニファ・チャン(その不満はファンサより優先度高いの?)。二人のキャラクターわかりやすくていいね。そして撮影のためコンクールに来ている雅美ことブルゾンちえみが追う明石。
え、ブルゾンちえみ?雅美の役なの?出るのは知ってたけどまさか雅美とは。この役どころだと明石と一緒に出て明石に解説を促す役回り…?てことはかなり後半まで出てくる…?チョイ役と思ってたのにけっこう出そうだよブルゾンちえみ!

三枝子登場!斉藤由貴!!原作読んだときは勝手にややふっくらしたきつそうな性格の見た目を想像してたんだけど、この三枝子は明らかに魔性の女。色気がすごい。流し目されたら男だったら何でもしてしまいそう。ナサニエルが入れあげるのもわかる…わかるよナサニエル…。この三枝子はかなりの男を惑わしてきたと思うね。映画ではナサニエルと昔は夫婦だったことなんて微塵も出てこないし、なんならマーくんの恋愛模様も一切出てこないけどね。たしかにナサニエルと三枝子、亜夜とマサルの恋愛を絡めると全然別方向の話になっちゃいそう。ピアノコンクールはただの再会の場になっちゃうもんね。現実と同じく真剣勝負の場に恋愛感情は邪魔なのよね、きっと。

序盤は明石にもやや焦点が当たる。出場制限ぎりぎりの年齢、音大生ではなくサラリーマン、家に帰ればパパという明らかに周囲から浮いた属性の明石。取材のためブルゾンちえみがインタビューすると、「生活者のための音楽」は負けないことを証明したいのだ、と語る。
実は明石は岩手に住んでいる設定になっている。岩手といえばご存知、宮沢賢治。『春と修羅』の著者。つまりは映画では明石は、本当に普段の生活の中で得たものを『春と修羅』のカデンツァにこめた、ということになる。これはなかなかよい。原作では、新曲の解釈に四苦八苦する描写として、岩手への弾丸旅行をしたことや賢治の著作を読み漁ったことが描かれていたけれど、映画の明石は賢治が吸っていた土地の空気を吸って生活している。だからその明石が、普段の空気をカデンツァに落とし込めばそれこそが「生活者の音楽」だ、というメッセージがかなりわかりやすく発信されていて。だからこそ、その『春と修羅』で選考された二次予選で明石が落ちてしまったこと、それはインタビューでも明石が言っていたように「生活者の音楽」の敗北だ、ということになるのかな。
でも、終盤で亜夜に言ってたように、世界中に様々な音楽があるので、例えコンクールでは負けてしまっても「生活者の音楽」は続けていいし、続くべきなんだよ、明石!そのメッセージが明石の口から語られたのはアツい展開だった。

さて、明石の二次予選の結果発表の前に、亜夜にもスポットライトが当たる。
一次予選の時点では亜夜はかつての輝きを失っているという三枝子の談。でもそこに現れる風間塵!
亜夜の前の出番の彼が舞台裏に戻ってきたとき、足元がモカシンと舞台にはあり得ない服装であることにびっくりした亜夜が顔を上げて目を合わせたのが二人の出会い。
その後、二次予選の明石の「あめゆじゅ~」を聴いてどうしてもピアノが弾きたくなった亜夜。ここ、原作ではマサルのカデンツァに触発されるのだけど、映画ではそれが明石のカデンツァになっているの、とてもいい。明石と亜夜の出会いをよりクッキリさせていると思うし、明石の演奏に刺激される描写があることでその後の亜夜の号泣場面にも説得力が出てくるね。ピアノを弾きたいのに練習室が使えない亜夜に、明石が知り合いを紹介。何らかの工房を持っていて何らかを作っている明石の知り合い。何者?何作ってるの?この明石の知り合いについては特に言及なし。原作では、亜夜の付き添いで来た奏(亜夜の指導教授の娘)の知っているピアノ教師の家、という設定だったけど、ピアノと無縁そうな工房だし何かの職人だしで、彼が気になりすぎた…。あと工房の彼は何かをガンガン叩いて何かを作っていたけどもピアノ練習の妨げにならないのかな。そんなに物理的な距離があるのかしら。
とか思ったけど、そこに突如として現れる風間塵に何らかの工房の人への色んな疑問は吹っ飛んだ。風間塵は亜夜がピアノを弾きに行くんだろうと思ってあとを尾行してきた。なんて危ない。危なさすぎる。ストーカーじゃん!原作でも亜夜のあとを付けてきてたけど、実際に映像にするとヤバさがすごい。16歳の男の子って子どもとはいえけっこうでかいよね!夜、女の子一人のところに窓を叩かれたら、驚くなんてもんじゃない。
…けどそこは風間塵なので。ギフトなので。亜夜と月明かりのもと、連弾。ここの演奏とってもよかったな。月の光からどんどん曲が移り変わっていく。編曲も素晴らしいし、そのいかにもその場の流れで曲が移り変わっていますよ、という空気を醸し出せる俳優陣もすごい。ここの演出は大変だったろうなと思う。最後の締めも息ぴったりで、近年の映画の中ではかなりいい演奏シーンだった。

でも、二人でピアノを弾く前後の会話は、亜夜がぎこちないのがまたいい。初めは風間塵が突然現れたことに対する驚きや警戒心もあったと思うけど、それでも人と距離を置いている感じ。
この映画の中の亜夜は、基本的に感情をあまり外に出さない。無難にやり過ごすための薄っぺらい笑顔が張り付いてしまっているような感じ。マーくんと再会したときだって、破顔という表現で笑いこそすれ、すぐにいつもの張り付けたような笑顔に戻ってしまう。だって小さい頃の約束を守ってピアノをずっと続けてきて、ピアノが大好きだと臆面もなく言えるマサルに対し、亜夜は七年間もピアノから離れ、ピアノが本当に好きなのか自信がない。昔は自分のあとをついてくるばかりだった小さなお友達がいつの間にか自分よりずっと先を堂々と歩いているって、亜夜にとっては自分のこれまでの道のりがどういうものだったか問い詰められているような感覚だったんじゃないかな。居心地悪くて、逃げ出したかったに違いない。
それでも二次予選を突破できたのはやっぱり風間塵のおかげ。彼との連弾がなかったら。彼が二次予選の舞台袖に戻ってきたとき上気した顔で亜夜に「楽しかったよ」と声をかけなかったら。

映画では風間塵は本当に「ギフト」役に徹底していて、人間らしい描写が少ない。音の出ない鍵盤で練習して指先に血が滲んだりする場面はあるけど、それも痛みすら気にしない程に音楽に入り込んでいる、みたいに見えなくもない。音楽の神様の使い、みたいな感じ。
彼は音楽を連れ出すことを目的にしているけど、映画ではそれは具体的に亜夜の復活を指しているんだと思う。亜夜はかつて母親と世界が音楽で満ちていることを感じた。最後、亜夜はその感覚を取り戻し、再びステージに立つ。本選の前に、亜夜とマサルの会話で、マサルの夢がコンポーザーピアニストだということも明かされる。「音楽が閉じ込められている枠を壊したい」という主旨の夢。きっとそれは風間塵の目指す、音楽を連れ出すこと、世界は音楽に満ちていると再発見することと同じことだと思う。こんな感じでテーマはけっこうわかりやすく散りばめられてる。
ちなみに亜夜が二次予選突破できたのは、風間塵が、作られた曲をホールで演奏するだけでなく世界中に音楽があるんだよってことを亜夜に教えてくれたおかげだと思う。月の光を見てドビュッシーの『月の光』を弾き始めるっていう、音楽は本来周囲にあるんだよ、ってメッセージがなかったら、亜夜は母親との連弾を思い出さなかったんじゃないかな。母親と連弾して、「あなたが世界を鳴らすのよ」って言葉を思い出したから、母親のようにすべてを包み込むカデンツァが出てきたんだと私は思う。

亜夜の本選は、もうほんとに涙なしでは見られなかった。。映像になると、幼い亜夜の心の空洞がよりリアルになってしまって、本当にダメ…あれは泣かないでいられない…。
亜夜の天才ピアノ少女時代の終わりは、こう。舞台袖に一人座る亜夜。その周囲で母の葬儀に間に合うかという心配をする大人、まだ子どもだぞと亜夜をかばう大人。亜夜本人の意思を無視して周りの大人だけで話を進めようとする、亜夜にとっては居心地の悪い空間。そんな中、いつも通り「時間です」と田久保に声をかけられステージ上のピアノへ歩いていくが…。ステージに出るもそこにいつもの音楽はなくて、ただ暗くて息苦しい黒い箱があるだけ。幼い亜夜の指はずっと膝の上にある。指揮者がいくら合図を出してもピアノの音は鳴らない。オケ奏者が怪訝そうな目、いや、ほとんど睨んでくる。そんなところから亜夜は立ち上がって逃げ出したんだ。
そのとき弾こうとしていたプロコフィエフ三番。でもあのときのことを思い出して、亜夜はリハで一度はピアノを弾くものの、ピアノをまったく響かせられない。指揮者小野寺にも、ピアノが鳴らなくなったのかとと言われ(予告編で使われてるシーン)、ついにはオケがリハを進める中で亜夜の指はまた膝の上に戻ってしまうし、さらには荷物をまとめて出場前にコンクール会場を立ち去ろうとさえする…。

でもね、ここで場面転換。地下の駐車場になぜか置かれているピアノ。雨も降る中当然そんなところにピアノは置かないから、きっとこれは暗喩。冒頭で示されたように、亜夜が世界から音楽を見つける例として使われるのは、雨音なんだよね。だから雨音を聞いて、そこに音楽があると気付くシーン。母親との回想でも雨の音を聞いてそれを音楽にして…という印象的なシーンがあるので、雨音を物語のキーにして見るとだいぶわかりやすい。
本選本番では、幼い頃の回想やリハでの様子がいいバネになっていて、それら陰鬱とした出来事を乗り越える亜夜の演奏の様子は、見ていて涙があふれた。風間塵は音楽を連れ出してくれる人を見つけた!

私は、亜夜や風間塵は、まるでシャーマンや翻訳者のようだなと思った。原作でも小野寺が言っていることだけれど。(小野寺は原作と一番違うキャラクターでちょっとびっくりだよね…)
世界中に満ちている音楽を、代弁する存在。それが亜夜たち音楽家なんじゃないかな。世界にある音楽を取り出して、解釈し、自分の言葉で語る。同じ雨だれを聞いても、亜夜と風間塵の奏でる音楽は違うし、たぶん誰一人として他の人と同じ音楽を語ることはない。それどころか一人の人間でも、昨日と今日では同じ音を聞いてもまったく違う音楽を奏でるだろう。小野寺がホフマン追悼コンサートで語ったように、音楽は泡沫の芸術。耳に届いてもそれをずっと閉じ込めておくことはできない。でも一瞬の煌めきだからこそ、永遠だ。

亜夜は本選の演奏後、舞台から世界に音楽が満ちているのを見て、それで涙したのではないかな。かつて母親と見て聴いていた世界が、あのときよりも広くなっている。昔はよく遊んでいたのにいなくなってしまった友達に再会できた喜び。もちろん演奏を終えた安堵感などもあると思うけれど、それよりも、音楽が満ちる世界をまた見つけられたからこその涙だと思う。

 

原作小説との違い

たくさんあったので抜けてるのもありそうですが、ひとまず覚えているものから。

  • 奏・オリガのキャラクターは登場なし。それぞれの役割は、
    オリガ=審査委員長 → 三枝子が審査委員長に
    奏 → たぶん明石に集約
  • 亜夜とマサルの先生が、綿貫先生→亜夜の母親に。
  • 亜夜の出番が大トリではなく四十四番。(ただこれはあまり影響ない。)
  • 三次予選なし。一次はおそらく原作通り、二次は『春と修羅』一曲、その次が本選。本選の課題は原作通りピアノコンチェルト。
  • 明石の役割が増えている。
    原作:「生活者の音楽」を示す最年長コンテスタント、仕事も家庭もあり読者に最も近い立場
    映画:原作の役割に加え、亜夜に要所要所で言葉を投げかける潤滑剤のような役割も
  • 亜夜と風間塵の連弾が、コンクール開始前→一次予選後、音大の教室→明石の知り合いの工房、にタイミングも場所も変更。
  • 本選の指揮者小野寺のキャラクターがかなりの曲者に変更。マサルの前には壁となって立ちはばかり、亜夜にとってはボイコットしたあの演奏会を思い出させるという悪役的な立ち位置に。
    他、ホフマン先生追悼演奏で、音楽とはどういうものか、彼の口から語れる。「一瞬を通じて永遠に触れている」

 

世界は音楽に満ちている

「世界は音楽に満ちている」というメッセージに重きを置いた作りだったと思います。そのために各キャラクターの役回りを大胆に改変したところもありましたが、映画の二時間に物語を収めるのならば改変は必須ですよね。それでも、コンテスタントたちの心の動きが丁寧に描かれていて、原作未読でも感動を覚える作品に仕上がっていると思います。特に亜夜は作品の要なので、原作のあの飄々とした感じがなくなり、音楽との向き合い方にもがき苦しむ役どころへ変更。一度沈んでから最後の演奏までを見せているので、彼女の成長あるいは復活物語のようです。亜夜の物語とオーバーラッピングしてくるのが明石。前半は明石の物語でもあって、彼の演奏が亜夜を刺激して亜夜の成長へうまく繋げていく構成は、わかりやすくてよかったです。原作だと各人の物語が同時並行で進んでいくので、浮き沈みがあって物語として作りやすい二人を抜き出して、映画の枠にはめるため周りに必要最低限の飾りだけ付け足した、という感じかな。役割を集約させて登場人数を削ったことで、全ての登場人物がきちんと機能していたのは関心しました。

とにもかくにもなかなか自然で納得のできる映像化でした!
原作を読んだ方にはなかなか楽しめる作品だと思います。音楽はもちろん、映像もきれいです!あまり声を荒げたりするシーンもないので疲れたとき見るのもいいんじゃないかな。私はそういう風に見たいと感じました。
でもやっぱり一番のおすすめは原作を読んでから見ることですね。逆でもいいと思いますが、原作も素晴らしいですよ。

ゴールデンカムイ第221話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第221話 ヒグマ男

平太と戦う杉元。それまでの親切な砂金掘り師匠が幻だったかのような形相と怪力で襲ってきます。
刺されて悲鳴を上げる平太は、もはや人なのかヒグマなのかも曖昧な様子で描かれています。苦痛に悶える平太なのかヒグマなのか曖昧な存在の口から出てきた人の手が、アマッポの紐を引き……杉元の喉元へ向けて飛んだ矢は、平太の喉に突き刺さりました。まるで杉元をかばうかのように自ら射られに行った平太のおかげで、ヒグマ男と杉元の戦闘は唐突に終わりを迎えます。

松田平太は、人を殺して死刑囚となっていました。幼い頃に聞いたアイヌのウェンカムイの話が恐ろしくて、ずっと空想していた平太は、砂金を掘ってもすぐに散財してしまう家族を憎んでいました。そしてある日、平太のウェンカムイが散財する家族にバチを与えました。家族を惨殺したのです。門倉の話では、平太は自分の中に何人もの人間がいると話していたそう。ヒグマが平太の頭の中の人間を一人ずつ食べていき、最後に平太が食べられるとウェンカムイに乗っ取られる。乗っ取られたら現実の人間を殺さずにはいられなくなり、殺すと平太の体はバラバラの肉片になって飛び散り、やがて元の平太に戻る。それを何度も繰り返して網走監獄に入ったのです。しかしウェンカムイに食われ誰かを殺す行為を誰かに止めてほしいと願っていた平太は、杉元と戦うことで自らとどめを刺すことに成功したのです。

アイヌにとってウェンカムイは悪い神であり、仕留めたあとは皮も肉も切り刻んで、改心するよう山へばらまいています。また、ウェンカムイに殺された人間は、カムイに好かれていたから連れていかれたとされています。平太が自分の中で膨らませたウェンカムイ像は、アイヌの考えが正しく伝わっていないがために間違った方向へ膨らんでいたのです。
アシリパさんの言うように正しく伝えることの重要性か。はたまた砂金の人を狂わせる魔力か。平太の件から得られる教訓は様々です。

 

人間を送るということ。

今週は平太の話の解決編でした。が、気になる点がいくつか。

 

■平太にとどめを刺したのは本人なの?

平太の毛皮の口から手が出てきてアマッポを作動させ、それがとどめとなりました。が、あの手は、一体誰のものだったんでしょうか。作中では平太の空想と読者・杉元の視界が入り混じっていて、何が現実なのかがわかりにくくなっています。意図的にそうしていると思うので、だからこそ大事なとどめの場面でそうする理由が何かあると思うのですが……残念ながら私にはわかりません!
平太はヒグマの毛皮を被っているだけでヒグマ自体が戦っているわけではないのですよね。けれどヒグマが唸り声を上げたり刺されて悲鳴を上げたり。ウェンカムイに乗っ取られそうになっている平太、というのを表しているのだろうなと思います。
ヒグマの口から出てきた手は、杉元と同じコマに描かれていても、その手を杉元が目線で追っている様子がなくて認識していないように見えます。つまり平太の妄想かもしれないのです。
けれどアマッポは発動していますから、誰かが紐を引いたのでしょうけど。実際には揉み合っているうちにどちらかの体が紐に触れて、ということなんでしょうか。それを平太の側から描くとこうなるのかな。

 

■杉元の銃は何を示している?

杉元の銃は、平太と揉み合って崖から落ちたときに木に引っかかっていました。二人の後を追うアシリパさんが回収した様子もないので、平太が倒された今週の話の最後の時点ではまだ木の上です。
揉み合ったときに体を離れることはままあると思うのですが、木の上にあるのをしっかり描いたコマが挟まれていて、銃が杉元の体を離れたんだなぁとハッキリわかります。あえてそれを見せる理由が何かあると思うのですよね。
私なりに思うのは、平太に人間として向き合う、という意味だったのかなぁと。銃は、ゴールデンカムイの中で、「軍人の象徴」として扱われているのかなと思います。銃を持っているのはたいてい軍人ですし、杉元も元兵士ですし。軍人が銃口を向ける先は様々でしょうが、お仕事で向けているので、そこにあまり感情を差し挟むことはないと思います。なので、銃を使わない=平太を彼の妄想通りのウェンカムイとしてではなく、一人の人間・松田平太として手厚く葬った、ということになるのかなと。一人の人間として送ってやりたいというのが誰の意図なのかわからないですが、優しいことじゃないですか。平太は殺人衝動に苦しんでいたようなので、ウェンカムイから解放され救われたのはよかったです。
また、杉元が白いクマを仕留めたにも関わらず送れなかったことも少し関係あるのかしらと思います。どちらで見ればいいかわからないのですが、「銃で仕留めた(=クマと人間が離れている状態で)から次は送れるよう銃を使わないよう山の神が仕向けた」「白いクマを送れなかったから山の神が銃を取り上げた」、どちらかかしら。でもどちらもほとんどこじつけなので、解釈しきれないことをカムイのせいにしてはいけないですねー。

 

最後は、アシリパさんと杉元の視点が違うことが浮き彫りになっているようで切ない…。
アシリパさんはアイヌ文化を伝えることを、杉元は砂金(金塊)を。二人が目指すゴールは違うものかもしれないですが、道のりは同じはずなのですれ違いなく走り抜けてほしいですね…。

それにしても北海道に戻ってきた途端に鶴見中尉や土方さん、尾形の動向が見えなくなって怖いですね。さすがに次回あたり出てきそうですが、来週はお休みです。ということは次のお話が読めるのは12月…。早いなぁ…。

 

 

 

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第220話 毛皮

平太が見たというヒグマを杉元たちが探しますが、足跡も見つかりません。痕跡がないのにヒグマが目撃されるだなんて、流氷の上で白いクマをしっかり神の国に送れなかったから山の神が怒っているのでは…と案じる杉元に対し、「わからないことをカムイのせいにし考えないのは良くない」とアシリパさんがたしなめます。ヒグマがいれば必ず足跡が残る。それがないならヒグマもいないのでは――アシリパさんの言葉からは平太を疑うようなにおいが感じられます。

白石は大事な砂金掘りの師匠がヒグマに食われないようヴァシリを呼びに行きますが、当の平太は土饅頭にされた親父と三郎を見つけます。慌ててその場から走り去る平太の耳にどこからか念仏が届きます。それはヒグマに食われている嵩の声でした。腹を食い破られても念仏をうわ言のように唱える嵩の頭を踏みつけてヒグマは嵩のもとを去ります。嵩が食われ殺されるところに居合わせたノリ子は木の陰で声を押し殺していました。そこへ現れる平太。緊張と不安からかノリ子が平太に抱きつくと、興奮した平太がノリ子の唇に自分のそれを重ね合わせます。更には着物の袷にまで手をかけて……さすがにノリ子も抵抗し平太を諫めますが、そのときヒグマの大きな手がノリ子の顔を覆い、その美しい顔を爪で引き裂いたのです。

ノリ子の惨状を目撃した平太は走って逃げ、やがて杉元とぶつかります。「早く逃げないと次は私だ」「私はあいつに必ず食われる」と、平太たちを皆殺しにせんとヒグマが狙っているかの口ぶりです。親父・三郎・嵩・ノリ子、みんな平太がウェンカムイを連れてきたから食われてしまった…と涙する平太に向けられた杉元の言葉。「誰の話をしてるんだ」――実は平太の仲間たちは実在していなかったのです。嵩にいたちの行動はすべて平太が一人でやっていたこと。ヴァシリを誘惑したノリ子の行いも平太のもの。ヴァシリを呼びに行った白石は、彼が描くノリ子の裸、つまり平太の裸のスケッチを見て息を呑みます。平太の体には、金塊の隠し場所を記した暗号の刺青が入っていたのでした。

では平太が見たというウェンカムイは何だったのか。これも実在していないのか。その答えは、これも実在していません。平太は実はヒグマの毛皮を持っていたのです。何度捨てても平太の元にいつの間にか戻ってくる不思議な毛皮。ノリ子がヴァシリにスケッチしてもらったときに見つけて怯えていたのはこの毛皮のようです。しかし杉元たちから見れば、毛皮はいつの間にか戻ってきたのではなく、平太が大事そうに背負っていました。この毛皮を杉元と白石がヒグマを見間違えた、そう考えたアシリパさんは、ウェンカムイは平太の頭の中にしかいないのではと平太に言い渡します。
これまでの行動の事実が明らかになり、”自分の頭の中では”ヒグマに首を折られる平太。現実では突然倒れその上にヒグマの大きな毛皮が覆いかぶさります。”頭の中では”食われる平太が、毛皮の下で起き上がり、まるでヒグマが興奮したときのような荒い息の音を聞かせていたかと思うと……ヒグマの毛皮をかぶりまるでヒグマになってしまったかのように凶暴な顔をした平太が、杉元に攻撃を仕掛けました。

 

映画『JOKER』を見たあとに思うこと

平太は実は一人きりだったのですね。彼の妄想?の中に、ヒグマも嵩たちもいました。実在しない人物たちと行動していたということで、先週語られた「アイヌの人と仲良くなってもらった煙草入れ」のエピソードも、本当かどうかが疑わしくなってきます…。煙草入れはアイヌのものなのでアイヌの人の存在はおそらく間違いないと思うのですが、「仲良くなってもらった」の部分があやしいかな?ヒグマに殺されたアイヌの人のを持ってきた、そのヒグマは平太が仕留め毛皮にして持っている、そういったところでしょうか。

さて、平太のこれが、なんらかの原因があってそのショックからこうなったのか、それとも生まれついての一種の持病みたいなものなのか、何なのかはわかりませんが、少し悲しいなと思ってしまいます。
というのも大ヒットしている映画『JOKER』。この中で主人公のアーサーは、笑ってしまう発作や学習障害などのせいで”一般的な”社会生活からはじき出された存在です。アーサーも、”自分の頭の中で”起こっていることと現実に起こっていることが一致していませんでした。”一般的な”人たちから疎まれるアーサーは最終的にゴッサムシティの暴動の扇動者のような位置にたどり着きますが、あの映画は、人はなぜ犯罪を犯すのかという一例だと思います。
社会から仲間外れにされ笑いものにされる日々。そんな中、必死で何かをしても、社会には入れず空回るばかりかどんどん悪いほうへ向かっていく。いうなれば犯罪は、社会的弱者が辿り着く終着駅のようなものです。そこに平太を重ねてしまうのですよね…。

網走監獄に収容されていた囚人には土方さんのような時代の転換期に扱いが変わってしまったゆえの人もいれば、辺見ちゃんや親分のように己の生き様を貫いた結果の人もいたでしょう。でも実際に大半の囚人は、差別を受けていたり生まれつき体が弱かったり精神になんらかダメージがあったりという、社会からつまはじきにされた人たちだったと思うのです。
平太の頭の中には昔から親父たちがいて、という生まれついてのものでも、平太にはおそらく友達がいなくてノリ子への気持ちも報われなくて…という切ない人生の結果が網走監獄だったのだろうと想像してしまいます。また、何かの事件のショックでこうなったというのでも、きっとそれは人が殺されるということに慣れていないからで、辺見ちゃんたちとは違い自らの意思で網走監獄に入れられるようなことをしたのではないのだろうな…と想像できてしまいます。

これまでの囚人は、清く正しく自分の心に正直に生きていたら監獄に入っていたというノリの人たちが多く、ある意味真っ直ぐで明るくて、見ているこちらも清々しいまでの散りっぷりだったのですが、平太はこれまでと違って強烈に「後悔」「恐怖」という負の感情が見えるので、見ていて怖いですし不憫にも思えてくるのですよね…。その感情を抱かせる理由が、ヒグマの毛皮と煙草入れを持つに至った経緯にあるのではと思っていますが、さて平太の口から何が語られるのでしょうかね。
きっとこれまでの他の囚人の中にも平太と同じように監獄に入るまでの悲しい人生があった人間がいたのかもしれませんが、『JOKER』を見ないとそこに私は思い至らなかったわけで。存在はしているけれど目を向けたことがなかったものに気付くことができる良い映画だと思います。あれ、映画の感想になってる…?まぁそれだけ濃密なキャラクターが多いということですよねゴールデンカムイには!ホラー調の平太の話、結末までとても楽しみです。

 

 

 

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第219話 平太師匠

先週末、平太たちの中のうちおじいさんがヒグマに食われました。どうやら嵩の父親のようで、親父はどこに行った?と少年・三郎に聞きます。また一人で酒を買いに行ったんだろうと三郎は返します。
ヴァシリはお絵描きに夢中。ミソサザイ、アイヌで「チャクチャクカムイ」を写生します。チャクチャクカムイはヒグマが近くにいればチャクチャクと鳴いて案内してくれる鳥。その鳥が鳴かないなんて、ヒグマはいないのではとアシリパさんは疑っている様子。

ヒグマがいると言っていた当の本人の平太は、川で杉元と白石に砂金の取り方を伝授していました。ネコ板という道具を使い流し掘りという技法を用いるのが、少人数での砂金掘りには効率的とのこと。しかし何より重要なのは場所選び。経験がものをいうところですが、平太はもう雰囲気だけで場所がわかるようです。テキパキと自信たっぷりに説明していく平太を、白石は「平太師匠」と呼びます。平太が言う通りに取れれば一日15円以上の儲け。ヒグマを狩るよりも割のいい仕事です。しかしその割の良さに一攫千金を夢見た人々がこぞって猟をやめ砂金を掘ったために川が汚れた――アシリパさんはヒグマがいる発言への疑いに続き、ここでも平太に対しやや批判的な目を向けているようです。
続いて平太の腰の煙草入れにアシリパさんが言及します。それはアイヌのものではないか?と聞けば、昔アイヌと砂金を採っていて仲良くなりもらった、と平太は答えます。だから平太はウェンカムイという言葉を知っていました。アシリパさんは平太にさらに質問を投げかけます。平太が見たというヒグマは何日前から近くをうろついているのかという問いに対し、平太は、「もう何年もです」と答えます。

一方、一人黙々とお絵描きを続けるヴァシリにノリ子が声をかけます。身振り手振りも使ってノリ子はヴァシリに自分を描いてくれるよう頼みます。小屋の中にヴァシリを招き入れ、着物を脱いでいくノリ子。まるでヴァシリを誘惑しているようですが、視界に何か入ったノリ子はサッと表情を凍らせて「捨てたはずなのに」とその何かを見つめながら呟きます。そこへ嵩が乱入しノリ子を小屋の外へ連れ出します。ノリ子と夫婦であるらしい嵩は、会ったばかりの男の前で脱ぐなと怒りますが、ノリ子に反省する様子はあまりありません。どうやら砂金掘りで忙しい嵩に放っておかれているらしいノリ子。きれいなうちに自分の体を絵で残しておきたかったとノリ子が言えば、ハクで儲けたら東京に行って商売するから待ってくれ、と嵩が応じ、二人は唇を重ねます。その様子を木に登り凝視する平太。目を皿のようにしながら舌を突き出し動かす様は、嵩と自分を重ね合わせてノリ子に口付けているように見えますが、平太・嵩・ノリ子の関係性は一体何なのでしょう。

平太のそんな行いも知らず、平太に教わった方法で砂金掘りに励む杉元と白石。平太がいないことに気付くと、ヒグマに食われては儲けることができないとアシリパさんに平太を探し安全を確保してくれるよう頼みますが、当のアシリパさんはやはり平太のことを疑っている様子。本当にヒグマが近くにいるのでしょうか。

場面はまたヴァシリに戻ります。ヴァシリの双眼鏡がなぜか離れた場所のサルノコシカケの上に置かれています。ノリ子のいたずらだと嵩は言いますが、自分で取って持ってくることはせずヴァシリに取りに行かせます。ヴァシリが双眼鏡へ近づくと途中のアマッポが発動。仕掛け弓がヴァシリに向かって飛びますがアシリパさんがヴァシリを蹴り飛ばしたおかげで無事でした。嵩がいたはずのほうをヴァシリが振り返ると、すでに嵩の姿はありません――。
アシリパさんは平太がヒグマを見たという場所から周囲を広く探しましたがヒグマが活動したような形跡はなく、アシリパさんは平太の発言を嘘だと断定しています。なぜそんな嘘をつくのか。
しかしその頃、杉元と白石もヒグマの姿を目撃。平太の言う通りだと二人は言いますが、果たして平太とアシリパさん、どちらの言い分が正しいのでしょうか?ヒグマの足元にある土饅頭に埋められた親父と三郎を、平太は本当に見ているのでしょうか…。

 

ヒグマと人間、どっちが怖い?

今回は平太たちの関係が見えてきましたね。嵩とノリ子はおそらく夫婦。平太はおそらくノリ子が好き。

平太の行動はなかなかに不気味でしたね。ヒグマを見たという嘘か真かわからない発言もそうですが、ハクで大金を稼いだのも平太の奇妙さに拍車をかけています。大金を稼いで、ヒグマに追われて、それでもまだハクを掘っているのですよね。嵩は東京で商売をするという目的があるようですが、平太はなぜヒグマに何年も付き纏われながらも砂金を掘り続けているのでしょうか。
平太についてはそれなりに性欲があることがしっかり描かれているのがまた不気味です。他人のキスを覗き見して、それをエアで味わおうとするのは、なかなかに気持ちの悪いシーンですよね。イジリー岡田の芸を思い出しました。。平太はお金には困っていないと思いますし、女がほしいなら買ってしまえばいいと思うので、ノリ子が好きなのではと私は思います。でもノリ子は嵩のもの。このあたり複雑な人間関係が絡んでいそうですね!嵩もヴァシリをほとんど逆恨みで罠にけしかけたりと、かなりノリ子に執着しているようで、とても粘度の高そうな三角関係が期待できます。
こんなに狭い人間関係の中で二人の男に好意を寄せられるとは、ノリ子はとても魅力的な女性のようですね。長いまつ毛に泣き黒子、しかも出会ったばかりのヴァシリの前で脱いでしまうあたり、色香で引き付けるタイプの魅力の持ち主です。嵩が砂金掘りにまで連れてくる気持ちもわかりますねー。村に置いておいたら、本当に寂しくて他の男と一夜を明かしてしまいそう…。ところであのときヴァシリは何を描いていたのでしょうね。興奮しているようにも見えましたが、ヴァシリのキャラクター的に女体に息を荒げる…という感じではないので、何か別の面白そうなものをノリ子の裸体に見つけたのでしょうか。女性だから刺青人皮の暗号はないなぁ…。平太もそれっぽい描写が時折挟まれますが、この人たち死体なのに動いているとかなのでしょうか?実はあとからヴァシリのスケッチを見て、ノリ子の体の普段隠れた部分がズタズタになっているとか?その展開、面白そう…。

今回、三郎がヒグマに食われたようなので、残るは平太・嵩・ノリ子と、因縁のありそうな三人のみ。ヒグマの恐怖で追い詰められていく平太たちがどう動くか楽しみですね。

 

 

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第218話 砂金掘り師たち

平太という男を滑落の危機から救った杉元たちは、平太たちに話を聞きます。先週の平太がヒグマに追われていたときにできた額の傷は、平太によると「ちょっと前のもの」だそうですが…この傷がついたときにヒグマに食われたはずでは?
平太が身に着けている舶来のゴム長靴は高価なので平太たちがマタギではなく砂金掘りだと気付いていた杉元たちに、平太は人の好さそうな笑顔で応対しますが、嵩(タカ)にいと呼ばれる平太の仲間はあからさまに警戒します。杉元は銃を持っているので一緒にいる小さい男の子も少し怖がっている様子。ですがもう一人、おじいさんは平太を助けてくれたのだから強盗ではないだろうと平太と同じくお人好しなキャラクターのようです。また、ノリ子という女性も平太たちのグループにいます。ノリ子は流し目に色気のあるなかなかの美人に描かれていますが、嵩にいに小屋に戻れと言われると頬を膨らませて反抗する子どもっぽい一面も。

カナベラという松脂を用いた道具とガラス箱で岩盤の割れ目を掘る平太に対し、杉元と白石は揺り板とカッチャという道具を用いた、板どりという方法で砂金を狙います。しかし板どりは道具の簡素さが示す通りに効率が悪い方法。また冬の砂金掘りは時間との勝負。時折お湯で手を温めても一向に成果のない杉元は、「雨竜川で一日50円稼いだ」という話がガセではないかと言い出します。
そこで平太が「私が稼いだ」と言います。雨竜川の砂金掘りで荒稼ぎし噂になっているのは、平太だったのです。
杉元たちを警戒している嵩は平太を諫めますが、おじいさんは短い時間しか作業できないから協力したほうがいいと、ここでも嵩とお人好しらしい二人とのコントラストがハッキリ描かれます。
命の恩人だから特別に、と言って平太は「ハク」について教えてくれます。ハクは砂白金というもの。色は白く、黄金色の砂金に混じって取れます。非常に硬く加工ができないため砂金掘り師はハクをのけていました。ハクは使い道のないゴミの扱いだったのですね。しかしながら最近、舶来の万年筆のペン先が砂白金でできていると気付いた者がいました。日露戦争後で軍需工場の空きを埋めるべく砂白金のペン先の万年筆を作り、それが大成功。より多く作るために多くの砂白金を必要としており、それが砂白金の価値上昇につながっています。
ハクは、これまで何の価値もないゴミとして全て北海道中の捨てられていました。つまり北海道の川からハクを取れば……「第二のゴールドラッシュ」到来だと平太は口角泡を飛ばして熱弁します。

熱っぽく語る平太の視界に何か移りました。視線の先にいるのはヒグマ。真冬のヒグマなので冬眠しそこねた、アナモタズと呼ばれる危険な個体です。それが崖の上から平太を見ている。平太はヒグマがいるところを指さしますが…
他の人間がその方向を見たときにはヒグマは隠れてしまい、平太以外は誰もヒグマを見ませんでした。平太は昨日もヒグマを見たそうで、どんどん近づいてきていると不穏なことを言います。あれはウェンカムイだ、と。

少し経ったあと、杉元とアシリパさんが平太が見たというヒグマがいたあたりを物色しますが、ヒグマの足跡は見つかりません。笹の上を上手く逃げたのでしょうか。流氷上で仕留めた白いクマをきちんと神の世界へ送り出せなかったから山の神に嫌われたのかも、と言う杉元に対し、違う意見がありそうなアシリパさん。
一方、平太と同じくらいお人好しで杉元たちを危険じゃないだろうと迎え入れてくれたおじいさんが、ヒグマに食べられていました……。

 

平太はいつヒグマに食われるの?

先週の時点でも気になっていましたが、なぜヒグマに食べられたはずの平太が生きているんでしょう?
あの額の傷。これがヒグマに襲われた前後を見分けるキーになっているはずなのですよね。額の真一文字の傷がついたあとにヒグマに襲われ食べられたように見えるのです、先週の描写では。でも額に傷がついてから食べられるまでに実際はタイムラグがあり、額に傷がつく→杉元たちと会う(今ここ)→平太食べられる、の順で、時系列どおりに描かれているわけではないのですかね?たしかに先週のお話、ヒグマに食われている平太の顔を見ると、前ページで作った傷からは血が流れ出ているのに、その痕跡が見えない。だから傷を作ったのとヒグマに食われたのは同時ではないと言えそうです。
でもそれだと平太があのヒグマをウェンカムイだという理由が必要になってしまいます。もし、平太が本当にヒグマに食われていて、なぜかその後も生きているもしくは幽霊になってさまよっているとしたら、ウェンカムイだと言い切ることができますよね。だって食べられたのは自分だし。でも、ヒグマに襲われて生きているのは考えづらい。ヒグマは足も速く、ゴム長靴で雪の上を走る平太が逃げ切れるとは思えません。先週の回で、ヒグマに食われるシーンで長靴が見切れているので、別の走りやすい装備だったということはないと思いますし、そんな優しくはないですよね山の神様は。

だから、平太が自分が食われるより前に、あのヒグマが人を殺していると言い切れる材料が必要になってくるんですが…人を食っているところやその痕跡を見たのでしょうか。

額の傷を作ったとき、実はもう一人いて、そいつが食われたおかげで平太はそのときは逃げ切れた、とか?で、実はその一番初めに食われた人の持ち物があのクマが彫られた煙草入れで、値打ちものだと知っていた平太はそれをあとでコッソリ土饅頭から持ち出し、でもヒグマの獲物に執着する性質を知っているからヒグマが取り戻そうとやって来ないか心配で、何よりも自分の代わりに犠牲になった人(おそらく仲間だったと思います)への罪悪感からヒグマの幻覚を見ている、とか…?
この流れでいくと、何度もいかにも意味ありげに出てくるあのクマが彫られた煙草入れに、ハクがたんまり入っているのかもしれませんね。嵩にいたち仲間にも内緒のハクが。…そうすると平太が悪者っぽくなっちゃうなぁ…。ただ、辺見ちゃんと同じく「やさしい」という感想を杉元に抱いているので、辺見ちゃんのように自分の行くべきところへ送ってくれる人の登場を、平太は心のどこかでは願っているのかもしれません。仲間を助けられなかった上に金に目がくらんだ自分を責め立てる心を解放してくれる人。ヒグマを退治してくれて仲間の弔いをしてくれる人、嵩にいにハクを隠し持っているのを明かし気持ちが軽くなるきっかけを作ってくれる人。それがもしかして杉元なのかも。杉元は最後、平太の煙草入れを川に落として結局お金を手に入れられなさそう…。
ちゃんと送れなかった白いクマと、ヒグマに追われる男と、ハクと呼ばれる砂白金。散りばめられたピースを拾うと私の妄想もあながち大外れではなさそうな気もするのですが………あとはアシリパさんがちょっと思うところありそうな感じにしているのが少し引っかかりますね。平太の行いを見透かしており、それで距離を置いているように見えなくもないです。

こうして予想するのも楽しいですね。でも全然違う話だったら恥ずかしいな、そのときは笑ってやってくださいね。

 

 

 

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こんばんは、うたげです。
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第217話 北海道にて

大泊にいる尾形は、アシリパさんたちが泊まっていた宿の人に話を聞いていました。アイヌであり、しかもその子が乗り込んだ連絡船を海軍が砲撃したとあって、大泊では噂になっているようです。北海道近くの流氷に下りてその女の子が逃げおおせたところまで噂になっています。
アシリパさんが北海道へ戻ったことを確信した尾形は、外套を脱ぎ、ヴァシリの連絡船からの狙撃で死んだ兵士から剥ぎ取った軍服姿になります。樺太作戦で負傷し最近まで寝たきりだったが北海道の両親の元へ帰りたいと、連絡船の船長に嘘八百を並べ、船賃代わりの干した棒鱈を渡して連絡船に乗り込みます。

場面は北海道の山へ移ります。中年とおぼしき男が息を切らして走ります。その背後に迫るヒグマ。枝で額を横一文字に切りつけながらも必死で走りますが、甲斐なく男はヒグマに食われてしまいます。男の腰には、煙草入れでしょうか、魚をかついだヒグマが彫られたものがついています。

一方、いよいよ北海道へ戻ってきたアシリパさんたちは山で狩りをしていました。流氷にいるところを船で通りかかったアイヌの仲間でしょうか、猟犬を引き連れたアイヌと一緒です。猟犬の働きでヒグマの巣穴を見つけ、罠を置き、かかったヒグマを仕留めます。しかしヒグマは巨大な生き物、猟に出てきたアシリパさん・杉元・現地民の三人だけでは運びきれません。「ネウサラカムイ」と呼ばれる目印を置き、明日またヒグマの肉を取りに来ることにします。
帰り道、アシリパさんがアイヌの言い伝えを杉元に聞かせます。熊は山奥の神、良い心を持つ人の矢には自ら当たりに来る。だから熊を狩ったら丁重に扱いなさい、そうすれば熊の毛皮を着たカムイがどっさり肉を持って何度でも遊びにやってくるだろう、と――。

山からチセに戻ってきた杉元たちは今後の予定を話します。杉元の考えは、漁夫の利。鶴見・土方の両陣営をぶつけて、横から金塊をかすめ取る作戦です。
しかしそれをするにもお金が必要。北海道に来てから十日あまり、ヒグマを狩って路銀を稼いできましたが、もっと稼げる話はないものかと、チセの主人に白石が聞いてみると。
ウェンカムイの退治を頼まれているとのこと。ウェンカムイとは人を殺した熊。人の味を覚えた非常に危険な個体です。
しかもこのウェンカムイが襲ったのは、みな川で砂金を採っていた者だそう。杉元も作品の冒頭で砂金を採ろうとしていましたが北海道の砂金はこの頃にはほとんど採り尽くされていたはずです。しかし噂では「雨竜川」で砂金を掘り大儲けしている男がいると。ウェンカムイに見つからずに砂金を採れれば路銀には困らなくなりますが、ウェンカムイに会わずに採ることが可能なのか――?

さらに場面は変わり、また山中。斜面を歩いている際に雪が崩れ、崖から落ちそうになっている人物がいます。助けを求める声を聞きつけた人が、平太、と呼びます。崖から落ちかかっている平太は、杉元たちによって助け出されます。
その平太の顔は、ヒグマに食われたはずの男の顔。額には逃走中についた傷、腰には熊が彫られた煙草入れ…。なぜヒグマに殺されたはずの男が生きているのでしょうか?

 

アシリパさんたちの現在地は浜頓別?

雨竜川で砂金が採れる、というくだりで、アシリパさんたちの現在地が出ていましたね!今の地図に照らし合わせると、北海道の浜頓別町あたりでしょうか。中頓別町とのちょうど境目あたりの可能性もありますね。
中頓別は全国一の冷え込みを記録するほどに寒さが厳しい土地のようです。流氷の出る時期なので非常に冷える季節…こんな中で吹雪にでも遭ったら本当に天に召されてしまいそうですね…。

そんな現在地から南南西に下ったところにある雨竜川。人を食った熊に砂金。この漫画の本来の目的や、冒頭部の魅力を再確認させてくれるようなワードが目白押しです。ヒグマに食われたはずの人間が生きていた!?というホラー展開もありますし、これは楽しみです。

雨竜川で鳥を見たい!

北海道の地名といえばアイヌ起源のものが多い中、この雨竜川はアイヌの空気をあまり感じない…?と思いましたが、雨竜川もしっかりアイヌ起源みたいですね。ただ諸説あるそうで。北海道の雨竜町では、町名の由来は「ウリロペツ」鵜の多い川、となっています。鵜ってあまり寒いところにいるイメージがなかったのですが、寒冷地に分布するものもいるみたいですね。
私としてはアシリパさんがさらわれかけた伝説の巨大怪鳥、「フリュー」が語源になっているものを推したいですね!暴れ回るフリュー(暴れるようになった原因は人間側ですが…)に槍でとどめを刺す、なんてかっこいいので、野田先生の作画と説明でその伝説を見たい聞きたい!でも、怪鳥のお話は既出なので、やはり鵜でくるのかな?とぼんやり想像しています。

 

山に潜む怖さ

話は変わりますが、「三毛別」という地名をご存知でしょうか?ゴールデンカムイがお好きな方なら耳にしたことがあるかもしれません。「三毛別羆事件」の舞台になった場所です。

三毛別では過去、身の毛もよだつ恐ろしい出来事が起きていました。集落の住民複数名が、ヒグマに殺されてしまうという事件です。
事の発端は冬眠に入らなかった「穴持たず」です。冬の間の食料を求めて人里へ来てしまったようです。ヒグマに驚いた人の声がヒグマを刺激し襲われ、食料の在り処を覚えたヒグマは何度もやって来てしまう…という悪夢のような実話です。

獣によって被害が出ることを「獣害」と呼びますが、この三毛別の事件が最悪と言われています。

福岡大学ワンダーフォーゲル部の事件も有名どころですね。こちらは比較的最近のお話です。いかに文明が発達しようとも自然の中では無力であることを痛感しました。
ヤングジャンプでは他にもサバイバルを題材にした作品が連載されていますが、それを読んでいると、知識を持っていて尚且つそれを非常時に実行できる状態じゃないと、山に入ってはダメなんだな、と思います。ヒグマと出くわしたときに背中を見せるなとはよく聞きますが、どでかい獣が檻も何もないすぐ近くにいるのを見てパニックにならない一般人ってどのくらいいるのでしょうか。普段開けた視界で過ごしている人が山の木々だらけの中で危険を早めに察知できたりするでしょうか。
山は気軽に入っていけない場所なのですよねぇ。アシリパさんたちアイヌや谷垣たちマタギが山を神聖な場として敬意を払うのも納得です。神の領域なので何が起こっても不思議じゃないなと思うのです。

そんな山の中で、山奥の神と対峙する杉元たち。杉元はアシリパさんの狩りの腕前もありヒグマを何頭も仕留めていますが、かなり奇跡的なことですよね。山では人間のほうが圧倒的に弱いのに、そこを民族に伝わる知恵で切り抜けていくアイヌの生き様のかっこよさと、それをやはり上回る山の力、それらを拝めると思うと次週のサバイバル狩猟会は非常に楽しみですね。

 

 

 

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第216話 謎の白い熊

流氷上でホッキョクグマ?に出くわした杉元たち。ヴァシリが撃とうとしますが、真っ白な熊はとても珍しい。毛皮を売ればまとまったお金になります。できるだけ高く売りたいので毛皮に傷はつけたくなく、ヴァシリの射撃を止めます。
しかし傷をできるだけつけずにシロクマを倒すにはどうすればいいのやら。脳か心臓を狙うしかなく、できるだけ毛皮の価値を高く仕留めるとなるともう開けた口に撃ち込むしかない。杉元が海に落ちたシロクマが流氷に上がってくるのを待ち受けていると。
上がってきたシロクマが流氷に上がろうと体重をかけると、杉元の乗った小さな流氷は勢いよく傾きました。その勢いのまま投げ飛ばされる杉元。シロクマの後ろに着地します。振り向いたところにはシロクマのお尻が。そのとき杉元の脳裏には、親分と姉畑先生が獲物を熊の尻穴に突っ込んだ場面が思い出されていたのでした。
杉元の奮闘むなしく仕留められたシロクマは小さな流氷ごと流されてしまいますが、通りかかったアイヌの船に乗せてもらい、いよいよ北海道へ帰還を果たします。

一方、水雷艇には簀巻きにされた鯉登少尉が寝せられていました。情けないと呟く鯉登少尉に対し、父親は辺りに人がいないのを確認してから、生きていればよい、と息子に伝えるのでした。

 

軍人の鑑

鯉登少尉!生きてた!!!

あれだけずっぷり刺されていたのに生きているとは、杉元と同じくらい生命力が強いのでは?と思わされますね。何にせよよかった、生きていて…。鯉登パパの様子も涙ぐましいですね。軍人なら我が子を進んで戦場に送るというモットーの人なので、我が子が生きていて嬉しいという気持ちを外には出せない。だから表情は変えずに、言葉だけを、息子だけに届くように零す。軍人の鑑であり父性愛に溢れた人物じゃあないですか。

大泊で鶴見中尉と再会する前夜に、鯉登少尉は鶴見中尉の過去の行いに疑問を抱く場面もありましたが、鶴見中尉の打った「音之進くん誘拐事件」でこの親子の仲が深まったのは間違いないのですよね。そして今回も、息子の無事を喜ぶ父親、その気持ちを素直に言葉にしているのも、誘拐事件があったからこそじゃあないでしょうか。思っていることはきちんと言葉にしないと相手に伝わらないという教訓を鯉登パパは誘拐事件で得たのではないかなと。

鯉登少尉が生きていて嬉しいですが、まだ生きているということは第七師団として杉元たちの前にまた立ちはだかってくるのでしょうね。北海道の沿岸部には鶴見中尉が情報網を敷いていそうですし、第七師団の猛攻が始まりそうな気配もありますが、久々の北海道なのでそろそろ土方さんが出てくる予感もしています。

 

 

 

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第215話 流氷の天使

流氷の上を進む、杉元・アシリパさん・白石・ヴァシリ。その後ろには白い獣の姿があります。
白石は実は昨夜の月島軍曹と鯉登少尉の会話を聞いていました。鶴見中尉の動機は屯田兵への報いのため、アイヌの存亡はまったく視野に入っていません。
アシリパさんが鶴見中尉の手から逃げ出すことで第七師団が金塊を手に入れる可能性が低くなり、白石は胸がすく思いでした。第七師団が金塊を手にし、アイヌはじめ少数民族の生き残る道が狭まってしまったら、キロランケは一体何のために戦って死んだのか。

キロランケに関してはアシリパさんには疑問がありました。和人でもアイヌでもないのになぜ日露戦争へ出征したのか。白石の推測ですが、キロランケはアイヌへなりすまし北海道へ潜伏、結婚して戸籍は取得しているので兵役は免れられず、拒否すれば身上調査があり面倒になりそうなので出征するしかなかったのではないか、と。そこにウイルクとの関係の変化(ここは具体的には描かれていません)や極東少数民族存続への思いも絡み合い、今できるやり方でロシアへ牙をむこうとしていたのかもしれません。
キロランケ出征の理由を聞いた杉元は、殺し合いは手っ取り早くて簡単だ、と思います。アシリパさんの目指しているであろう、誰も殺さない道は、戦争に比べ遥かに困難です。

杉元にも、キロランケに関連した疑問がありました。彼の最期のとき、アシリパさんは何を言ったのか?暗号の解き方がわかったのではないか?という質問にアシリパさんは素直に「うん」と答えます。
が、暗号の解き方は言いませんし、杉元も聞き出そうとしません。時が来たら教えてほしい、と杉元はアシリパさんを信頼し、判断を任せます。
杉元を守るには私が盾になればいい。アシリパさんにはそんな思いがありました。魂が抜けるまで戦いひとり傷つく――暗号の解き方を知ったら杉元はきっとアシリパさんを置いて行ってしまうだろうことはアシリパさんにもわかっていました。だから暗号の解き方は杉元にも教えない。暗号の解き方を教えなければ杉元とアシリパさんが離れることはないし、第七師団もむやみに攻撃してはこないでしょう。
さらに重たい決意がアシリパさんにはあります。「道理」があれば、杉元と一緒に地獄へ落ちる覚悟をしたのです。
しかし白石がシロクマに襲われアシリパさんのダイアログは終了。海に潜り助かった白石でしたがシロクマがなぜこんなところに?

一方、連絡船では鶴見中尉がこれからどうするかを話していました。宇佐美はアシリパさんの親族を殺すと脅せばいいと提案します。しかし罪のない人を見せしめで殺すのは反対だと、菊田が人道的な発言をします。宇佐美の続いての提案、フチの死亡広告を出すというものに鶴見中尉も反対ではない様子。「迷いがあって覚悟が決まっていないのならば…」と、アシリパさんの覚悟の程度によっては脅迫は有効だと鶴見中尉は考えているようです。

大泊の海岸線ではヴァシリが狙撃した兵士の回収へ月島軍曹がやって来ました。しかし死亡した兵士は軍服を脱がされており、周囲に問いかけると子どもが答えます。男の人が軍服を脱がすのを見たと。その男は、もう使わないからと軍服を脱がしたあとに銃を拾い上げ、あたかも窮地から救い出したかのような口ぶりで、こいつも壊れるまで人を撃ちたいはずだと言い放ちます。それは右目を包帯で覆った尾形でした。

 

あるがまま

今回アシリパさんがとんでもない覚悟を決めていました。不殺を貫くのかと思いきや、「道理」があれば地獄へ落ちる覚悟をしていると。つまりは人を殺すかもしれないということですよね。
アシリパさんにとっての「道理」とは何になるんでしょう?作中で「道理」は、「意思と反することをした際に自分の気持ちを納得させるための言い訳」というのが言い換え表現になるのかなと私は思っています。人殺しについては杉元・尾形についての描写が非常に高い濃度ですでに出てきています。尾形は「人を殺しても罪悪感なんてないはずだ、あるはずがないのだ」と言い、自分の中の罪悪感を押し殺しています。杉元は「自分は地獄行きだとわかっているし、人を殺す前の自分とは別人になっていることもわかっている」と、理解しているから納得してくれと必死に自分に言い聞かせているように見えます。二人ともに共通するのは、本当はしたくないことをしているということと、気持ちと行動がちぐはぐになってそれをどうにか納得させるために自分の中で通ずる理屈を組み立てていることだと思います。その理屈が「道理」になるのでしょう。人間の精神は案外弱いので、安定を保つために無理やりにでも「整合性」を必要とするのですよね。

アシリパさんの「道理」は、杉元と近いものではないかなと思います。アイヌでも人を殺した者は地獄に落ちるという思想があります。そこへ行くことはわかっているのだから納得してくれと自分の心に言い聞かせるものになるのでは?
でもアシリパさんの場合は、そこに「杉元も一緒だ」というのが加わる気がします。杉元も一緒だから地獄なんて怖くない、という信頼なのか、杉元だけ地獄に行かせるわけにはいかない、という金塊争奪戦に巻き込んでしまった責任感めいたものなのか、それともまた別の何かなのかはわかりませんけども。

兵士だらけの作品なので出てきたときにはすでに人を殺すのが当たり前、というキャラクターがほとんどの中、アシリパさんだけがこれまでに誰も殺しておらず、今後誰かを殺すかもしれない可能性があります。アシリパさんがこの矢を人に射るべきなのか迷う場面、見たいような、そんな未来は来てほしくないような…。

 

流氷上のスタンドプレー

今回月島軍曹が久々に登場しましたが、一人で行動していましたね。アシリパさんたちを追って他の兵士は連絡船、そうなると大泊に残っているのは月島軍曹と鯉登少尉ぐらいでは?と想像していますが…
果たして鯉登少尉の安否はどうなのでしょう…。何週間もやきもきしています…。
鶴見中尉たち第七師団が連絡船に乗ったあと水雷艇が大泊へ引き返し、父が何も言わぬ息子を抱きしめ船に乗せる…なんてことが起きていないとよいのですが…。

あとは尾形、ここで出てきたか!という感じです。今回の発言だけ聞くと、人殺すのだぁい好き!という風に聞こえますが…そんなキャラだったっけ…?
でも再起不能かに思われたキャラが実は無事で戦線復帰…というのはアツい展開なのでワクワクします。眼帯キャラ枠にも収まってきてるし、さすが尾形、魅力にあふれまくっているところは相変わらずです。
鶴見中尉たちより早くアシリパさんたちへ会い、そこでまたアシリパさんが尾形を殺せるのかどうなのか!?という展開があるのでしょうか。そういえばあのときも流氷の上でしたね。吹雪にならないといいなぁ。

 

 

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第214話 雷型駆逐艦VS樺太連絡船

樺太連絡船に乗り込んだ杉元・アシリパさん・白石・ヴァシリ(頭巾ちゃん)でしたが、すぐに鯉登パパが指揮する駆逐艦が追ってきます。砲撃に加え停止するよう発光信号も送られ、船長たち乗組員が戸惑う中、杉元は船長に銃をつきつけ進み続けるよう命令します。しかしこの時期は樺太と稚内を繋いでしまうほどの流氷がありますし、船の速度も駆逐艦のほうが段違いに速く、すぐに追いつかれてしまいそうです。
アシリパさんが乗っているので駆逐艦ができる砲撃は威嚇射撃や行く手を阻むためのもの、当てる気はないと踏んだ杉元。進路を変え逃げ続けるように装い、行先にある流氷を駆逐艦に砲撃させ流氷を砕くことに成功します。砕けた帯状の流氷の切れ目から向こう側の海へ逃げ時間を稼いだ杉元たち。ですが鶴見中尉がすぐに、艦砲射撃が流氷を砕き逃げ道を作ったのだと気付き、駆逐艦も同様に流氷を砕いて杉元たちを追いかけてきます。
そこでアシリパさんが機転を利かせます。連絡船内から白い布を集め、それらを被って流氷の上を徒歩移動することにしたのです。杉元たちが降りたあとの連絡船は駆逐艦の発光信号での命令に従い駆逐艦の真横につけ、降伏の意思表示をしますが、杉元一行はすでに真っ白な流氷の上を真っ白な布に隠れながら移動を始めており、鶴見中尉たちからは姿が確認できなくなっていました。宇佐美が流氷上の捜索をしようとしますが、ヴァシリの狙撃の腕前を脅威と感じた鶴見中尉は流氷上では狙撃手に有利だからと流氷に降り立ち追うことを制止。さらに流氷の動きが早く、囲まれては動けなくなるのでこの場での杉元一行の追跡は断念、連絡船に移り稚内からオホーツク沿岸の集落の捜索に切り替えざるを得ませんでした。その指示を下す鶴見中尉の額当てからは脳汁が落ち、「ゆっくり話したいことがあったのに」と独り言ちます。

流氷の上を進む杉元たちは連絡船と駆逐艦が離れていくのを見て安堵します。緊迫感からの解放で空腹を覚えた一行。杉元は双眼鏡でアザラシを探し、白石は魚でいいのにと言いながら魚が穫れるであろう流氷の穴を覗き込みます。そこにはクリオネがたくさん泳いでいました。杉元は愛読書「少女世界」でクリオネを知っています。クリオネを食べる方法はないかとアシリパさんへ尋ねると、アイヌはクリオネを食べないから調理法も知らないしアイヌ語の名前もない、と返ってきます。
久々の杉元アシリパさん白石でのサバイバルグルメ、和気あいあいと笑いながら流氷のかけらに乗り漕いでいると、四人のにおいをかぎつけたらしい明らかに巨大とわかるサイズの白く毛深い生き物が登場。フォルムや鼻先の形状はヒグマに似ていますが果たして誰なのか――。

 

知らぬが仏

大泊に鶴見中尉がやってきたとき雷型駆逐艦に乗っていたのでいるだろうと思っていましたが、鯉登パパはやはり登場しましたね。鯉登パパ、息子の状態を知っているのでしょうか…。鯉登少尉の安否は未だに不明ですが、心臓の位置をズブリと貫かれていたのでかなり厳しいと思っています。この漫画、重症でも無事ならアッサリ描いてあって死ぬときの負傷は割合ドラマチックに描かれる傾向があると思っているのですが、刺されたあとの月島軍曹と鯉登少尉のやり取りの泣かせる演出も相まって、これはもう鯉登少尉の存命は望み薄なのでは…と思ってしまいます。すごく悲しい。
鯉登少尉は樺太での成果を父上に報告できると嬉しそうに話していました。大泊ですぐ近くまで父親が来ていたのにそれを伝えられていない可能性があります。もし伝えられていないとしたら、野田先生はなんて残酷なことをするのでしょう。父に認めてもらいたいと願っていた青年の願いが叶いそうになる寸でのところでぷっつり終わり。あまりに残酷で、美しいとさえ思えてきます。小学生男児として数々の笑いをもたらしてくれた鯉登少尉が一気に悲劇のヒロインに。
ただ鶴見中尉が大泊に着いてすぐに杉元たちと合流したと決まったわけではありません。もしかしたら前夜に着いていて、月島軍曹と鯉登少尉だけは先に会っているのかもしれない。そのときに鯉登少尉と父上には感動の再会を果たしていてほしいです。

息子を失ったとわかった鯉登パパはどうするのでしょうか?それでもまだ鶴見中尉に協力するのでしょうか?
この親子はあまりにもきれいにフラグを回収してしまいました。軍人として我が子を真っ先に戦場へ送り込んだ父。そんな父へ喜ばしい報告ができると言いながら(確定ではありませんが)伝えられずに逝ってしまった息子。
鯉登少尉がいなくなってしまったら鯉登パパが鶴見中尉に手を貸す動機はなくなると思います。海軍の駆逐艦まで持ち出したのですし今さら後に引けない、という理由ならありそうですが。

今回、月島軍曹と鯉登少尉は果たして駆逐艦に乗っていたのでしょうか。急いで連絡船を追いかける必要がありましたし、おそらくは連絡船を停止させ杉元たちを樺太の陸地へ戻らせるつもりだったでしょうから、あの二人は乗っていないと思います。鶴見中尉は宇佐美たち陸兵には連絡船に乗り船内を捜索しながら稚内へ向かうよう指示していました。ということは鶴見中尉は駆逐艦で一度樺太へ戻り、残してきた月島軍曹たちを回収して稚内へ行くと思います。回収のとき鯉登少尉と鯉登パパは否が応でも顔を合わせることになるでしょう。そのときの様子がどう描かれるか……見たいけれど見たくない、そんなシーンが次週拝めることを期待しています。安否がわからないとハラハラしっぱなしで心臓に悪い!

 

 

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第213話 樺太脱出

大泊に滞在する杉元一行のうち、白石とアシリパさんが部屋で宿の仲居さんと話す回想から始まります。北海道への連絡船が故障により出発が通常と違い、明日の早い時間に出ることを白石とアシリパさんは知ります。
アシリパさんはその連絡船に乗るに違いないと踏んだ白石は、谷垣と街の外れにある連絡船乗り場へ走ります。

杉元とアシリパさんは、「頭巾ちゃん」ことヴァシリに会います。第七師団がアシリパさんの周囲にいては尾形が姿を見せないのではと考えるヴァシリは、アシリパさんの樺太脱出に手を貸します。
ヴァシリの操る馬に二人も乗り、途中で白石も拾い上げて走り続けます。

馬に乗れなかった谷垣は、走りながらアシリパさんへ叫びます――鶴見中尉の監視の目があるのでフチの村へは戻れないぞ、と。
そんな谷垣に対しアシリパさんは、インカラマッがいるから谷垣は来るなと言い、さらにフチへ伝言を頼みます。フチに会う夢を見たから安心して、必ず会いに戻るから。谷垣を置いて四人は馬で走り去ります。

四人を見送ったあと、谷垣が白石と一緒でないことに菊田が気付きます。谷垣が白石はアシリパさんたちと街のほうへ逃げたと言うと、ならばなぜ追わない、走れ谷垣一等卒、と菊田は指示しますが…
俺はマタギの谷垣です、と谷垣は答えます。

連絡船上では、手負いの杉元が心配そうなアシリパさんに向け語ります。俺は俺の事情で金塊がほしい、戦ってこうして傷を負うのも覚悟しているだろう、と。杉元はアシリパさんの人を殺したくない信念を理解したうえで、アシリパさんのやり方でアイヌを守ってくれると信じ、彼女と同じ道を行く決断をしたのです。

一方船の近くに血痕を見つけた兵士がこちらへ近づいてくるのが見え、ヴァシリがそれを狙撃。稚内港行きの連絡船は無事に離岸しますが…
射撃音が鶴見中尉の耳に入り、連絡船に乗ったことを推理されてしまい、水雷艇で第七師団が追ってきます。

 

マタギの谷垣

今週は俺はマタギですと言う谷垣が輝いていましたね。
谷垣一等卒、と呼ばれ命令されたあとに言うところもまたいい演出です。

ゴールデンカムイでは、杉元のように、心が戦場に行ったまま帰ってこない人たちが描かれています。心が戦場にある、というのは、本来の自分ではないという表現だとやや語弊がありそうですけど、私の拙い表現力読解力ではこれが限界なので、本来の自分ではない、ということにしておきましょう。
杉元は梅ちゃんに自分とわかってもらえなかったように、こうありたいと願う自分ではない状態なのでしょう。谷垣も、本当は山で獲物を追うマタギとしての自分に一番誇りを持っていたのだと思います。けれど軍隊では、谷垣一等卒であって、上官の命令に従い敵を追う兵士でしかありませんでした。その兵士が菊田特務曹長の指示に背き、俺は兵士ではないと言うのです。然るべきところに自分の心が帰ってきた感覚があったのではないでしょうか。そして谷垣の心を帰す最後の一押しは、アシリパさんだったのでしょう。鶴見中尉に怯え信念を曲げることはせず、周囲の人々を助けもしながら、真っ直ぐ進んでいくアシリパさんの生き様を見て、こうありたいと願う自分になりたいという気持ちを外に表出させたのだと思います。

 

杉元の事情

杉元は今回、「俺は俺の事情で金塊がほしい」と言っています。ここに杉元の成長が少し見えた気がして、嬉しいです。

杉元は静かに暴走している状態にありましたが、アシリパさんと再会し、アシリパさんの人を殺さないという信念・アイヌを守るという決意を見て、暴走が収まったと思います。
ここでいう暴走状態とは、アシリパさんのためという建前を被せた恩着せがましい行動のことです。アシリパさんに手を汚してほしくないからアシリパさんを金塊争奪戦から離したい、という杉元のちょっと前までの願望は、アシリパさんのアイヌを守りたいという意思を無視したものですよね。それにアシリパさんのためと言って戦って、それによって負う傷は、アシリパさんをも傷つけることになっていたと思います。怪我をした人に、あなたのためだからと言われたら、罪悪感が半端ないですよね。なのでアシリパさんのためと言いつつ、結局は責任をアシリパさんにも押し付ける最悪の動機だったと思います。

でも今回の杉元は、俺は俺の事情で戦っているんだ、と言っています。アシリパさんのためなどという厄介な建前を被せたものではないです。もちろんアシリパさんを助けたいという気持ちも動機にはあると思いますが、俺の事情だという主体性の有無でアシリパさんの心の負荷もだいぶ変わってきますよね。

そうなると覚悟が必要なのがアシリパさん。アイヌを守るためには金塊争奪戦に参加して勝ち抜けなければいけないのです。アシリパさんは不殺を貫く信念を持っているようですが、杉元が言うように、アシリパさんの周囲の者たちは誰かを殺し誰かに殺されるかもしれないのです。間接的な殺人とでも言えばいいのかしら。そして誰かを守るために誰かを殺す場面も出てくるのかもしれない。それでも不殺を貫く覚悟があるかと杉元は問うていると思います。

アシリパさんがどうするのかはわかりませんが、誰かを手にかけるかアシリパさんが葛藤する場面が出てくるのではないかなと思っています。アイヌを守るために誰かを犠牲にする。村を守るためにヒグマの子どもを神へ送り返すように。でもアシリパさんなら、不殺の信念とアイヌの守護、どちらも両立する道を見つけてくれると私は杉元と同じく信じていますよ。

 

 

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