ゴールデンカムイ第197話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

そしてこのブログは感性を大事にしているので他の方の感想などをできるだけ見ずに書いています。
ゆえにとんちんかんなことを言っていたり支離滅裂だったりしますが、ご容赦ください。
他の方の素敵な考察を読んで自分の頭の中のゴールデンカムイをアップデートするのはあとでもできますが、初めて読んだ感想は一度しか抱えられないですから。

 

第197話 ボンボン

先週、尾形の治療をしようと亜港の診療所へ向かうところでお話は終わっていました。
今週は尾形の治療結果から。
医師曰く今夜が峠とのことですが…
治療後の隙に医師を殴り倒し、看護師を人質に取って医師に言うことを聞かせ、鯉登少尉に銃口を突き付けます。
死が迫る中で鯉登少尉の回想が始まり、なんと14歳の時点で鶴見中尉に出会っていたことが判明します。

 

結託再び?

尾形が大人しく治療されると思えないと先週の感想でも書きましたが、本当にその通りになりました。
でもかなり荒っぽいやり方で、予想の斜め上をいっています…。

いくつかある気になる点を総合すると、「尾形は誰かと組んでいるのでは?」と思います。
なぜって、一人で逃げるのは到底無理ですし、状況的にもそう言えるのではないかなと。
また、組んでいる前提で読むと、恐ろしい狙いが見えてきます。

さて、尾形は誰と組んでいるかという話。
まずは、医師。一見ありそうです。
医師が言いました、呼吸も血圧も弱くなっていると。
そんな人間が一般人とはいえ露西亜人男性を殴り倒せるでしょうか?
詳しい状況が不明ですが看護師もその現場を無抵抗に声も上げず見ていたとは考えにくい。
結託して医師に嘘の容態を伝えさせ、看護師にも演技をさせたのならあの状況も成り立ちます。
と、医師と看護師の状況から見るとアリなのですが、不自然なのが、まさに呼吸も血圧も弱いと言わせること。
医師にそう言わせたら杉元たちが様子を見に来るとして、例えば全員で来ていたら不利になってしまいます。
それにもし嘘を言わせるなら、何日か様子見、と言わせておいたほうがよさそうですし。
そうすれば杉元たちのうち何人かは月島軍曹の待つコタンに帰るかもしれないし、時間の制約が延びる分チャンスも増えます。
なので医師という線はないかな…。

あとは候補としては杉元しかいないですよね。
そもそも、今夜が峠と聞いて、なんとか頼んでみる、というのもやや不自然です。
医師が手を尽くしてその結果なのでどうにもならない、せめて顔を見ようくらいが普通でしょう。
逃げたから裏へ回れという指示も、あえて病室から遠ざけようとしているように見えてしまいます。
雪が降っているようなのでうまく動かないと足跡で行先が知れてしまう状況で、重傷の尾形に杉元たちから逃げ切ることができるでしょうか。
それに、本当に尾形は逃げたいのでしょうか?
杉元が出した指示は、谷垣と白石に向けたものでした。
その場にいて白石より戦力になる鯉登少尉には何も言わないというのもおかしいと思いませんか?
この機に杉元と尾形が企てて、鯉登少尉を亡き者にしようとしているということかなと思いました。
アシリパさんに並々ならぬ思い入れのある杉元と尾形にとって今最も邪魔なのは、月島軍曹と鯉登少尉です。
鶴見中尉の腹心の二人とこのまま一緒に日本に帰れば、自分はおろかアシリパさんがどう扱われるかわかりません。
この二人がいなければ鶴見中尉には状況がわからず尾形も無事でいられる可能性が高い。
月島軍曹が重傷を負っている今が鯉登少尉を葬る絶好の機会
杉元が尾形と手を組む理由には、キロランケの口から聞けなかったことを話す、ということがなり得ます。

…という可能性もあるなと思いました。
この場合、杉元は絶対にアシリパさんを泣かせることになると思います。
アシリパさんはこの仲間割れを望んでいない…無事に全員で戻れなかったら鶴見中尉の元にいるインカラマッがどうなるかもわからないですし…。
杉元は本当に静かに暴走しているんでしょうか…。

 

カインとアベル

尾形に銃を突き付けられた鯉登少尉は鹿児島で過ごしていた14歳の頃を思い出します。
鶴見中尉と出会ったとき

西郷さんが鶴見中尉と第七師団ままですね。
私の「漫画日本の歴史」知識だと、欧米で見聞を広めている間に自らの意思とは異なる理念の新政府ができ、それに対抗する形で反乱を起こした西郷さん。
欧米に行くを露西亜での諜報活動に、異なる理念の新政府ができを陸軍で冷遇されに置き換えれば、それはもう鶴見中尉と第七師団です。
西郷さんのお墓参りに来た鶴見中尉は西郷さんの何に思いを寄せているのでしょうか。
仲間のために立ち上がった仁義か、信念を最期まで貫き通した武士道か。
士族の反乱という言葉から想起されるイメージから言えば、もしかしてただ思想を掲げどこへとも知れず駆け抜けることを始めから目指していたのでは?と思わせる不穏な鶴見中尉の西郷さんお墓参り。

お墓参りをする人がもう一人。
14歳の鯉登少尉です。
鶴見中尉からもらった月寒あんぱんを半分こし、兄の墓前にお供えします。
鯉登少尉は次男だったのですね。
しかも今の鯉登少尉からは考えられない自己を貶める物言いをしており、14歳当時の鯉登少尉にはあまり快活さが感じられません。

自分が死ねばよかった、なんでそうそう出てこないセリフです。
次回以降に明らかになるでしょうが、鯉登少尉を助けようとして兄が死んだか、二人で何かに巻き込まれ鯉登少尉だけ運よく帰還したか、そういったところだと思います。
当時の家制度を思えば長男のほうが非常に大事にされたと思います。
学校の敷地内に珍しい乗り物で入っていったり兄をからかったりとややヤンチャな気配のある14歳の鯉登少尉に対して、からかわれても一度も怒らない兄。
優秀な兄と不出来な弟、という構図でもおかしくありません。
長男を失った周りの人々はそれをひどく嘆いたでしょう。
心無いほんの出来心での「長男のほうが生きていれば」という言葉に傷ついたゆえの、自分が死ねばよかった、という発言だったのではないかと推測しています。

今回、何かと鯉登少尉に突っかかる尾形の心境が少しわかった気がします。
勇作さんと似ているのですよね、鯉登少尉は。
恵まれた家庭に生まれ育って、父が軍人で、兄がいて、兄を慕っていて、でも理由があって兄は遠い存在。
勇作さんの場合は母親も境遇も異なっており親しくできる間柄ではなかった、鯉登少尉の場合は兄はすでに死んでしまった、という違いはありますが。

それに尾形本人とも通ずるところがあります。
兄弟で比べられているのでしょうね、尾形も鯉登少尉も。
鯉登少尉の場合は次男で、長男がすでに亡くなっているとなれば、もし長男が生きていれば…と何かにつけ比べられたのではないかなと。
尾形は第七師団の兵の間でもそういう兄弟を比べる話がされていそうですが、何よりも本人が一番勇作さんと自分を並べて比べていたでしょう。
勇作さんや鯉登少将と自分を比べたときに尾形がどんなことを思ったのか…。
同じ血を分けたはずなのにまるで違う自分と勇作さん。
似た境遇だけど父との関係が悪くなさそうに見える鯉登少尉。
見比べては違うということを強く意識していたのではないかなと…切ないですね…。

これだけ兄弟という関係にこだわるのは、カインとアベルという世界一有名な兄弟の話があるからです。
ゴールデンカムイは聖書の引用が多いですからね。

これらを踏まえると先週の鯉登少尉の、父に成果を報告できるのが嬉しい、という発言も見え方が変わってきます。
父親に認めてほしいのでしょう。
そしておそらく14歳の鯉登少尉のその欲求を満たしたのが鶴見中尉なのではないかなと。
やはり鶴見中尉は父親絡みの満たされない心を握るのが上手なのですね。

鯉登少将の長男が亡くなったとあれば陸軍にも情報が渡るでしょうから鯉登少将に会うためにわざわざ来たのでは…?と思わせる鶴見中尉の恐ろしさ
さて何をして鯉登少尉をたらしこむに至ったのか…次回が楽しみです。

 

この他のゴールデンカムイ関連の記事はこちら。

ゴールデンカムイ第196話感想

ゴールデンカムイ第195話感想

ゴールデンカムイ第194話感想

ゴールデンカムイ第193話感想

ゴールデンカムイ第192話感想

ゴールデンカムイ第191話感想

ゴールデンカムイ第190話感想

ゴールデンカムイ第189話感想

ゴールデンカムイ第188話感想

ゴールデンカムイ第187話感想

ゴールデンカムイ第186話感想

ゴールデンカムイ第185話感想

ゴールデンカムイ第184話感想

ゴールデンカムイ第183話感想

ゴールデンカムイ第182話感想

ゴールデンカムイ第181話感想

ゴールデンカムイ第180話感想

ゴールデンカムイ第179話感想

ゴールデンカムイ第196話感想

こんばんは、うたげです。
久しぶりのゴールデンカムイ最新話感想です!
二週間休載していたので三週間ぶりに読む最新話。
ネタバレありです!未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

 

第196話 モス

登別温泉編も終結のようです。
前回は都丹が雪崩に飲み込まれる描写で終わり、生死が気になって(できれば生きていてほしいと思って)いましたが、ようやく判明です。
久々のローカルグルメ情報を挟み、負傷中の月島軍曹と尾形に焦点が当たる今回のお話。

 

父との関係をめぐる物語

ニヴフの文化の紹介パートから始まるお話。
都丹の生死が気がかりな前回の終わり方からこれなので引っ張りますねぇ…。

でも久々の異文化交流はアシリパさんが大活躍で楽しいです。
現地の人の話を杉元たちに通訳してあげるアシリパさん。杉元にレクチャーしてやる!みたいな感じで誇らしげな気持ちが出てるんじゃないかな。かわいい。
自分たちの文化をきちんと杉元たちに説明していたし、近い文化を持つニヴフのことを知れるのもそれを説明できるのも嬉しいんじゃないかなと思うんですよね。
自分たちが大事にしていることはもちろん、何気ない日常の中で行っているあれこれに興味を持ってもらうのって嬉しいですよね。むずがゆさを伴う嬉しさ。
こういうやり取りでだいぶ消耗しているであろうアシリパさんの心も少し癒えるとよいですね。いくら強いヒロインとはいえまだ幼い子どもなので。

今週のグルメ紹介は、「モス」というニヴフの魚を使った冬のお菓子
「モス」といえば、そう、鯉登少尉のお父さん、鯉登平二海軍少将
その響きから鯉登少尉が父上を思い出すくらいなので、「もす」が本当に口癖なのですね鯉登少将…。
鯉登少将が出てくるのは網走監獄大激突の前後のみというごくわずかなシーンのみですが、それでもけっこうなインパクトを残していますよね。
あのシーンはとてもいいですよね。父親としても軍人としても責任を全うしようとする心意気が見えて。
父上は杉元相手にも薩摩弁で話すくらいお国訛りが抜けていないというのも良きですが、父親としての心根を話していたから最も親しんだ言葉が出てきたんだという見方のほうが素敵ですね、あのシーンは。

そんな父親とは良好な関係を築いている鯉登少尉と、自分の父親については思うところのある月島軍曹の対比。
佐渡の親父殴り殺しから続いた月島軍曹の佐渡関連のストーリーもここらで一旦完結でしょうか?
真相不明ながら人生の邪魔をしてきた父親を殴った月島軍曹の目の前には、父親を尊敬している若い将校の姿があって。
大事な誰かの娘を連れ去ろうとした月島軍曹が、別の誰かの娘が生きるのを手助けして親を悲しませないよう助言した。
自分自身の親や周りの人とは良い結末を迎えられなかったかもしれませんが、今近くにいる人の良い結末を祈ったり手助けしたりすることはできるんですよね。
父上のことを語る鯉登少尉を見て思うことはあったと思いますが、それでも「誇らしく思うはず」と声をかけられた月島軍曹。
かつての自分がしたことを他の誰かに見るという経験を樺太でしてきたからこそ言えたことかなと思います。
それだけ自分を客観視できたということで、この旅で月島軍曹も成長したのでしょう。

 

山猫はまだ語らない

さて、まだ伏線がほぼまったくと言っていいほど回収されていない男がここに一人。
そう、尾形
この男は、戦う目的が謎。
動機といいますがここに至る背景は度々出てくる勇作さんはじめ家族との因縁でなんとなく掴めはしているのですが。(参照:ゴールデンカムイ第188話感想)
何のためにこんなことをしているのか?という問いは未だにわかりませんよね。
結局、金塊がほしいのか、アシリパさんがほしいのか、何なのか…。そもそもなぜ鶴見中尉を裏切ったのか?とか…。
なんとなく自分でも何がほしいかわからなくて、とりあえず猫が獲物をもてあそぶように、人殺しのできる戦いに身を投じているだけのような感じもありますが、本人が何も言わないのでまだまだ謎が多い男です。
おそらく作品自体がもう九合目にさしかかるくらいのはずなのに。

そんな尾形はアシリパさんの心に深く爪痕を残そうと試みましたが杉元によって阻止され、今は死んではいないものの無事とは言い難い状況のようです。
ニヴフが草から作る傷薬ではもちろん治せません。
医者に見せる必要がありますが、鯉登少尉は密入国や日本兵であることを通報される危険を回避したい。
でも杉元は危険を冒しても尾形を助けるつもりです。
尾形には聞きたいことが山のようにある。
それもそうですが、何よりもこのまま尾形を死なせては、アシリパさんが殺したことになってしまうから。
人殺しかそうでないかの境界線をアシリパさんに越えてほしくない、よりによって尾形のせいで。
これについてはアシリパさんも尾形を殺すのはおろか傷付ける意図もなかったので杉元とアシリパさんの間に溝はないのですが、杉元の理想の押し付けにも見えますよね。
ウイルクの今際の言葉を正確に伝えなかったりと杉元には自分の思うアシリパさん像をアシリパさんに押し付け気味の傾向があります。
静かに暴走しているかもしれないのですよね。これもその暴走の一端かもしれない、と思うと今回の話も途端にホラーになってきます…。
(参照:ゴールデンカムイ第192話感想)

負傷しているのは尾形だけではありません。
月島軍曹にも治療が必要だという杉元の言葉で鯉登少尉も渋々承諾し、亜港の医者の元を訪れた一行。
でもそこでは重症の尾形の治療は無理でした。
本格的な機材のある病院へ行く必要があるとのことで、尾形をそりに括り付け病院へ運ぶことにします。

最後のコマの尾形、微妙に口角が上がって、笑っているように見えませんか?
不気味ですねぇ…今は何を考えているのか…。
今逃げ出したところで無事でいられるはずもないので大人しく治療を受けると思うのですが、尾形は猫と同じで何を思っているかその顔からは一切伺えないですからね。
次号あたりみんなが少し目を離した隙に舌を噛み切ってそれにアシリパさんが最初に気付くなんて展開だったらどうしよう…すごくトラウマ…。

余談ですが、冒頭で「父上に成果を報告できて嬉しい」という鯉登少尉のセリフと、「密入国者で日本兵だから通報されては困る」というセリフは、何か伏線なのでしょうか…?
このまま無事に帰国できて父上にも鶴見中尉にも褒められる鯉登少尉が見たいのですが…。

日本へ帰る前にもう一波乱ありそうな予感です。

 

第七師団のウサギと亀

登別の第七師団も出てきました。

都丹、死んでる………。
刺青はがされて皮だけになってる…。

硫黄山の苦役で募らせた怒りを原動力にするガッツのあるやつだから、どうにか生き延びているはず…!と思ったのに…。
死ぬときはあっさり死にますよね、この漫画。
野田先生が前に何かで「死ぬときの演出なんてない」というようなことを言っていた気がするので、そういうことですよね。
生き延びるのにも過剰な演出はしないということでもありますものね…。
都丹のトレードマークのスカーフ?を、戦利品として首に巻く菊田特務曹長のコマ、見ていて切ないです…都丹ほんとうに死んでしまったのか…。
でも、いなくなったということを小物で見せる演出は好きです…悪魔の証明をモノで語れるってすごい…。

菊田特務曹長と有古一等卒はかなりのやり手でしたね。
有古は都丹の死亡を確認したあと、死体を運ぶのは労に見合わないと判断し刺青の入った皮をはいで下山し、アイヌのコタンに潜伏。
宇佐美と二階堂の手柄横取りすら予見した的確な判断です。
宇佐美と二階堂はのんびりしている間に出し抜かれているけれど大丈夫なんでしょうか。
ウサギと亀のウサギみたいですね。

仲間内での手柄横取りのほか、刺青は獣の皮と同じようにはぐという情報が菊田たちに伝わっていないことを考えると、第七師団の中でも宇佐美や二階堂といった金塊争奪戦に直接関わる兵たちは破格の扱いということになりますね。
菊田と有古は刺青について、鶴見中尉が求めているということしか知らなかった。
「正中線で途切れている」という作品の初期に印象付けられている情報を今このタイミングで出すということは、今後の展開に繋がってくるものになるのでしょうか?
菊田と有古ももうひと騒動起こしてくれそうですね。
一枚岩かと思われた相手方にも内部から亀裂が生じている、という展開は非常に楽しみです。

 

この他のゴールデンカムイ関連の記事はこちら。

ゴールデンカムイ第195話感想

ゴールデンカムイ第194話感想

ゴールデンカムイ第193話感想

ゴールデンカムイ第192話感想

ゴールデンカムイ第191話感想

ゴールデンカムイ第190話感想

ゴールデンカムイ第189話感想

ゴールデンカムイ第188話感想

ゴールデンカムイ第187話感想

ゴールデンカムイ第186話感想

ゴールデンカムイ第185話感想

ゴールデンカムイ第184話感想

ゴールデンカムイ第183話感想

ゴールデンカムイ第182話感想

ゴールデンカムイ第181話感想

ゴールデンカムイ第180話感想

ゴールデンカムイ第179話感想

ゴールデンカムイ第195話感想

こんばんは、うたげです。
ヤングジャンプ連載中のゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。
言わずもがなアニメ派の方も!アニメ三期早く~

 

第195話 有古の庭

都丹――――ッ!!
今週はとにかくそんなお話…けっこうショックな展開です…。

 

見えてるぜ

読者はすでに都丹を知っているので盲点になりがちですが、菊田特務曹長たちは都丹の正体に気付いていないのですよね。
「下手くそな按摩」
「刺青の囚人の連れていた仲間が按摩さん」
坑道に入った時点ではこの二つの情報だけです。
そこに、
「氷筍の折れる音がすると狙撃してくる」
「素早く移動しているのに氷筍の折れる音がしない」
この二つが加わって、菊田特務曹長が正解にたどり着きます。
堂々と明かりをつけて、氷筍を避け都丹に近づくことに成功。
「目が見えない」と一口に言っても色々な状態があると思いますが、都丹の目は光をほとんど感知できないのでしょうか。
明かりよりも先ににおいで松明と気付いています。

明かりがあり距離も詰められていては都丹には形勢不利。
坑道から逃げ出します。

坑道から出るときの宇佐美くん、負傷という雰囲気が薄くて、あざといですね~。
菊田特務曹長にも、何なんだあいつは、みたいなこと言われていますし。
でも足を撃たれていても、いざとなったら猛ダッシュで手柄を上げに行きそうなところがありますよね宇佐美くん…。

あと、チノイェタッのシーンにいるのは、幼少期の有古でしょうか?
眉毛と目元がそのままでかわいい。
前髪がいかにも昔の子どもという感じ。
これって「チャンスの神様」ですよね…前髪しかないってやつ…。

 

八甲田山での捜索隊

登別は有古の庭
宇佐美に肩を貸す菊田特務曹長に命じられ有古一人で都丹を追います。

有古はなんと八甲田山での捜索隊にいたとのこと。
八甲田山雪中行軍遭難事件はすさまじい事故です。
興味のある方はぜひWikipedia(外部リンク・新しいタブが開きます)などで読んでみてください。
文章だけでも壮絶さが伝わってきます…。
ちなみに映画化もされていますが、トラウマ必至と聞いているため私は見ていません…怖いもの…。

八甲田山へ捜索隊として招聘されるほど雪山を知り尽くした有古。
フルネームは有古力松
彼にとっては手負いの按摩を仕留めることなんて容易いようです。
枝を踏み折る音を出すことで巧みに都丹を狙った場所へ誘導。

狙った場所へ都丹を誘導した有古が銃を撃ちます。
それは都丹を撃つためではなく山の斜面を撃つため。
山に振動を与え、雪崩を起こすため。

 

都丹、フラグ回収か?

ここで都丹目線に切り替わりますが、この演出の恐ろしいこと…。
月明かりが反射して明るい、雪をまとった山肌。
でも都丹の目にはその光は入ってきません。
彼の視界はいつでも暗闇。
暗闇の中、銃声が続くけれど、自分に当たる気配はない。
そんな中、耳慣れない音が響いてくる。
地の底が沸き立つ音。
全身でその振動を感じ取り、やがて音の振動だけではないと気付いたときには遅かったのでしょうね。
雪崩に巻き込まれるのだと悟った都丹のコマはオノマトペがなく、都丹の覚悟のようなものが感じられる演出です。
雪崩に飲み込まれる直前に「負けたぜ」と呟く都丹。
かっこよすぎる…でも切ない…お願い死なないで都丹…!!

都丹は、意外と感情を隠さないところ(硫黄山で苦役させられたことを憎んでいると言ったところやアシリパさんの言葉に降参した様子とか)、そのくせ土方さんの指示で平然と杉元たちを裏切ったところとか、けっこう人間くさくて魅力的なのですよね。
また、なんとなく不器用な感じがするからでしょうか、そこが私の好みのキャラクターたるところなのですよ。
(もう始末されてしまいましたが)登別の按摩さん仲間に「都丹さんのせいだ」「今すぐ行け」って言われてそのまま新月を待たずに行かざるを得なかったところとか…。
それでいくと温泉での盗賊団も、都丹がリーダーって感じでしたが、実はまとめるのにけっこう苦労していたんじゃ?とか考えてしまって、苦労人・都丹がまた可愛く思えてきます。
あとシニカルな感じで笑うのもけっこう好き…。

そんな彼は、網走監獄で無事だったように今回も生き残ってくれる、具体的には逃げおおせて土方さんと合流すると思っていたのですが…まさか雪崩だなんて…。

雪崩に巻き込まれた際には、手で当座の空気を確保し、泳ぐイメージで雪の流れに乗り、無理に逆らわないほうがいいと聞きますよね。
そんな知識を持ち合わせていてくれ都丹!
今回の「負けたぜ」は、相手の作戦にはまった、という意味であってほしい…命の奪い合いにおいて負けたという意味であってほしくない…
その不屈の生命エネルギーで、どうにか無事に生き残ってくれ、都丹!!
先週の「穏やかに暮らしたい」発言が思いっきりフラグになってるじゃないか都丹!
そういう伏線は私求めてないから!

次週、雪崩が収まった頃に有古が死体を回収しようとしたら、どこを見ても都丹はおらず、足跡が森の中へ続ていていた…という展開を期待してます!

 

この他のゴールデンカムイ関連の記事はこちら。

ゴールデンカムイ第194話感想

ゴールデンカムイ第193話感想

ゴールデンカムイ第192話感想

ゴールデンカムイ第191話感想

ゴールデンカムイ第190話感想

ゴールデンカムイ第189話感想

ゴールデンカムイ第188話感想

ゴールデンカムイ第187話感想

ゴールデンカムイ第186話感想

ゴールデンカムイ第185話感想

ゴールデンカムイ第184話感想

ゴールデンカムイ第183話感想

ゴールデンカムイ第182話感想

ゴールデンカムイ第181話感想

ゴールデンカムイ第180話感想

ゴールデンカムイ第179話感想

ゴールデンカムイ第194話感想

こんばんは、うたげです。
ヤングジャンプ連載中のゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方やコミックス・アニメ派の方は気をつけてくださいね。

 

硫黄のにおい

舞台は登別、登場人物は都丹とその手下二人、菊田特務曹長有古宇佐美二階堂
刺青の囚人を狙う第七師団のお話はだいぶ久しぶりですね。
当初の目的に立ち返ってきた感じです。
温泉・暗闇・都丹という組み合わせも、網走監獄前に今は解散した杉元・白石・尾形・谷垣・キロランケのチームで戦っていたことを思い出させて、いやぁ本当に懐かしいなぁという感覚です。
伝説の温泉回で共闘していたペア同士が樺太編で因縁浅からぬ再会をしたというのも感慨深い…。(杉元・尾形ペア、谷垣・キロランケペア)

 

菊田特務曹長というキャラクター

今回は菊田特務曹長がどんな人なのかが見えてきた回でした。
まずは戦闘は当然ですがかなりの手練れ。海賊の眼帯ってそういう効果があるって説があるんですねぇ。
眼帯で暗闇に目を慣らしていても、雲でわずかな月明かりすら消えたからでしょうか?完全な暗闇になれば都丹たちの独壇場。…かと思いきや、撃たれても斃れない
日露戦争で殺したロシア軍将校から”鹵獲”することにご執心だったようですね、菊田特務曹長。
鹵獲という言葉は初めて聞きましたが、Wikipediaによれば、『鹵獲(ろかく)は、戦地などで敵対勢力の装備品(兵器)や補給物資を奪うこと。接収(せっしゅう)とも、捕獲(ほかく)と称される場合もあるが、軍事用語としては鹵獲が適当な言葉である。』だそうです。(出典:鹵獲 – Wikipedia)
中でもナガンM1895という拳銃を気に入って集めていたそうで、それらをしまったホルスターを胴体にもつけているほど。
お気に入りの戦利品によって都丹の弾を受けても無事でした。

殺した敵の体の一部や身に着けているものを奪って武功とする、という行為は古くからありますよね。
首を取って討ち取った証とするのはもちろん、耳や鼻をそいだなんて思わず身が縮こまる話も…耳塚とか聞きますし。
自分の手柄だと主張したい、自己顕示欲の強い人物なのでしょうか。
戦利品収集にこだわるあたり、癖の強そうなキャラクターな気がします。

 

宇佐美のキャラクター描写も

ここまで「笑顔から真顔に豹変してトンカチ振り回す」「鶴見中尉に心酔している」「玉が入れ替わるほどの水圧で人の話を聞いていない」など、断片的な登場シーンばかりだったのでかなり局所的なキャラクターとして受け取られていた節のある宇佐美上等兵。
彼についての描写が増え、彼の理解の手助けになりそうです。
少なくとも今回のお話で「腹黒い」というのは明確になったかなと。
そりゃ軍人ですし上等兵までなった人ですから、漁夫の利を狙うような賢さ強かさがないと生き残れないし、そもそも聖人や君子でない限りどんな人間にも悪だくみする部分はあります。
でも、宇佐美に関しては、初登場のトンカチのところから薄々感じていたイメージ通りのキャラクターだなと思いました。
顕著なのが、抜け駆けしようとしていたところとか、それを「てへぺろ」で済ませてしれっと合流しているところですね。
相手にとって面白くない企みがバレても動じない人。そのまま自分の意図を通せるよう相手を巻き込んで物事を進められるタイプの人。
一言で分かりやすく言うと、これまでの二次創作まんま、なんですよね!
こういうタイプはしぶといので活躍が楽しみです。
想定の範囲が広いだろうし(きっと菊田特務曹長を出し抜けないであろうことも想像できていたと思います)、想定外のことが起きても楽しめるほうだといいですね。

宇佐美の戦闘描写もあっていいですね。
後ろから躊躇なく刺すところは手段を選ばない性格が表れていそうで好きです。
氷筍を踏んで太ももを撃たれましたが…この怪我が響いてくるんでしょうか。

 

四対一!

古い坑道に誘い込むことに成功した都丹。
四対一という不利な状況を、暗闇を活かして引っくり返せるのでしょうか?
氷筍を踏めば居場所が知られるのは都丹も同じですし、撃てる距離となると遮蔽物もほぼないと思われるので、最後のセリフがフラグにならなければいいなと思います…。
それでなくても、この戦いが終わったら静かに暮らしたい、なんて吉良吉影みたいなことも言っていて、これはフラグでは…?と不安になってしまいます。
都丹は家永ほど第七師団にとって利用価値があるわけではなさそうですし、網走監獄でも土方さん側についていたりと第七師団に協力するとも思えないので、捕まったらまず間違いなく殺されそう…。
そもそも相手は戦闘のプロ、軍人です。しかもそれが四人。
もし都丹に勝機があるとすれば、菊田特務曹長・有古ペアと、宇佐美・二階堂ペアは元々協力関係にあるわけではない、という点でしょうか。
この戦闘は、杉元・アシリパさんを主人公ととらえるなら、敵対(と言うほどハッキリした構図でもないですが)勢力同士の衝突なのでメタ的に言って結果がどちらに転ぶかわかりません。
次回の展開が楽しみでもあり怖くもあります。来週が待ち遠しい!

 

この他のゴールデンカムイ関連の記事はこちら。

ゴールデンカムイ第193話感想

ゴールデンカムイ第192話感想

ゴールデンカムイ第191話感想

ゴールデンカムイ第190話感想

ゴールデンカムイ第189話感想

ゴールデンカムイ第188話感想

ゴールデンカムイ第187話感想

ゴールデンカムイ第186話感想

ゴールデンカムイ第185話感想

ゴールデンカムイ第184話感想

ゴールデンカムイ第183話感想

ゴールデンカムイ第182話感想

ゴールデンカムイ第181話感想

ゴールデンカムイ第180話感想

ゴールデンカムイ第179話感想

ゴールデンカムイ第193話感想

こんばんは、うたげです。
ヤングジャンプで連載中の「ゴールデンカムイ」最新話の感想です。
ネタバレありますので、未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

 

登別温泉

樺太組はすっかり落ち着き、杉元白石アシリパさんの三人組もすっかりいつもの感じですね。
尻を出し合う杉元と白石。…という字面だけだと何が何やらですが本当にそうです。
菊田・有古のペアは第七師団の中の反乱分子みたいな位置付けかなと思っていたのですが、他の兵士と同じように鶴見中尉を信奉しているよう。
それゆえに宇佐美・二階堂のほうがよりお傍に置かれていることを良く思っていないようです。
金塊に繋がる情報をより多く得るため嗅ぎまわっていた菊田はついに都丹が刺青の囚人とつきとめ、二人が激突。
というのが今週のあらすじです。

 

アイヌの昔話

作品の中で昔話(伝承レベルのものから個人の思い出まで)が出てきたら必ず何かに繋がる展開を予想しますよね。
ゴールデンカムイではアイヌの昔話がよく出てきます。
それが次の展開の伏線になっているので今回出てきたニヴフの「ばけもの川」というお話もつい深読みしてしまいます。
この話でキーになるのはやはり「」。
かなりわかりやすく杉元とアシリパさんの会話のシーンでまとめられていますね。
伝承されているお話には教訓があるもの。このお話の教訓は「悪いことをする者は、自分を見られることが怖い」。
アシリパさんがこういった旨のことを語るシーン、背後には横になる尾形が。
もちろんその目元には包帯が巻かれていますが、そもそも包帯がなくても柱で目が隠れる位置にいるという。
二重に目が隠されていて、尾形にこの言葉が痛いほど当てはまる存在だということを示しているように思えるのです。
アシリパさんの言う「悪いことをする」というのは行動そのものの是非が問題なのではなく、「うしろめたさがあることをする」ということなのではないかなと思います。
尾形は人を殺す人間には罪悪感なんてないはずだと自分に言い聞かせながら人を殺していました。
でも、ないはずだ、という否定の言葉は、それを持っているからこそ出てくる言葉。
こちらの記事(ゴールデンカムイ第187話感想)でも書いたように、尾形はそもそも人を殺すことに罪悪感を覚えていると思います。
罪悪感があるからこそ、人殺しは越えてはならない境界線を越え罪悪感すら覚えない存在になったのだ、という罪悪感を押し込めるための理屈が必要なんです。
今回、柱と包帯で二重に「目」が隠された尾形
罪悪感というキーワードは作品一似合う男ですね。

さて「」といえば忘れてはいけないのがやはりアシリパさん
ウイルクの娘というしるしとして、薄く緑がかった青いきれいな目を持っています。
そんな印象的な目を持つアシリパさんが、罪悪感代表・尾形の目を傷つけたというのは興味深いです。
アシリパさんの透き通った美しい目は、真実を見つめる目――という位置づけのような気がします。
まっすぐ見つめられたら罪悪感を持つ者は膝をつき改心する、という効果がありそう。
それってまるでキリストみたい…。

もう一つ気がかりな点があります。
それは杉元
杉元と尾形は似ているのですよね。
どちらも人を殺すことへの罪悪感から逃れるための自分なりの理屈を持っています。
尾形は、みんな罪悪感なんてないはずだ。
杉元は、殺されるやつは人間じゃないんだ。
二人とも主に戦争のさ中に敵兵と対峙した際の心の支柱のようなものだと思いますが、尾形のほうはアシリパさんの前で華々しく散りました。死んでませんが。
その屁理屈とも呼べる人殺し理論は、アシリパさんによってくじかれたといいますか、やっぱりおかしいってわかってるよね?と心の根っこの部分を指摘されたように見えるのです。
そして今の杉元は、先週の感想に書いたようにアシリパさんの意思から段々離れつつあるのかもしれない
これらの状況を踏まえると、どこかでアシリパさんが杉元を軌道修正する時が来るような気がします。
アシリパさんを解放するという目的のため周りが見えなくなりつつある杉元。
アシリパさんには杉元の目を覚まさせてあげてほしいなと…キリストよろしく迷える子羊を導いてあげてほしいなと思います。
その過程でアシリパさんが傷つく展開も予想できるので少し心苦しいですが…でもそういうこともアシリパさんなら乗り越えられるって信じてる。

 

刺青人皮集め

樺太は心理面に不穏な気配を読み取れますが、北海道ではドンパチやっています。
都丹は同じ盲目の仲間たちとあんまの振りをしながら第七師団の情報を集めていたのですね。
そしてそれを土方さんへ流していたと。
明かりを用いた戦い方は都丹らしく好きです。
自分の戦力を考えて有利な状況を作り出す、頭脳戦が好きなのですよね。
でもそれを上回る菊田特務曹長の先読み力
眼帯を外しながら暗闇で戦う様、かっこいいです。

かっこいい戦闘の他、第七師団の中がどうなっているのかが少し垣間見えたのが面白いです。
鶴見中尉が絶大な支持を集めているのはよくわかりました。
菊田特務曹長も鶴見中尉に心酔しているようですね。
でも、そんなカリスマ(という表現が合っているかは自信がないです)だからこそ、そのお傍にいるべきなのは誰なのか?という、右腕争いが起きているわけですね。
とはいえ階級も実力も申し分ない鯉登少尉と、過去の出来事を乗り越えてそれでも共にいる月島軍曹は、鶴見中尉の側近殿堂入りクラスでしょう。
なので菊田特務曹長が争う相手は、次点の宇佐美や二階堂になる。
宇佐美たちを妬ましく思いどうにかその座を奪いたい菊田特務曹長に対して宇佐美たちは特に何も気にしていなさそう。
果たして菊田特務曹長のこの奮闘が報われる日は来るのでしょうか。
たいてい仲間内の誰かの座を奪おうとする側ってうまくいかないことが多いので心配…。
それに都丹も、得意な暗闇での戦闘も決して有利ではない状況で、どう戦うのでしょう?
先週まで樺太の果てのさらにその先の氷の上で、満身創痍の男たちの悲痛な戦いが続いたので、久々のテンポのよさそうな戦闘にワクワクします。

来週も楽しみですね!

 

この他のゴールデンカムイ関連の記事はこちら。

ゴールデンカムイ第192話感想

ゴールデンカムイ第191話感想

ゴールデンカムイ第190話感想

ゴールデンカムイ第189話感想

ゴールデンカムイ第188話感想

ゴールデンカムイ第187話感想

ゴールデンカムイ第186話感想

ゴールデンカムイ第185話感想

ゴールデンカムイ第184話感想

ゴールデンカムイ第183話感想

ゴールデンカムイ第182話感想

ゴールデンカムイ第181話感想

ゴールデンカムイ第180話感想

ゴールデンカムイ第179話感想

ゴールデンカムイ第192話感想

こんばんは、うたげです。
ヤングジャンプの「ゴールデンカムイ」最新話の感想です。
ネタバレありですので未読の方・コミックス派の方は気を付けてください。

 

第192話 契約更新

やっぱり都丹だった!!
先週から都丹では?と思っていた暗闇に響く下駄の音、この流れでの登場はまず間違いなく彼のことでしょう!
無事に再登場おめでとう!額の傷跡が、彼のしぶとさを物語っていますね。

今回は硫黄山での都丹たちの強盗のときとまったく同じシチュエーションでウキウキしますね!
暗闇に下駄の音が響くという噂から始まり、温泉で按摩さんから情報を聞く。
にくい演出ですね。
…ただ、過去のシーンとオーバーラップするところが多いなと感じると、それだけ物語としては回収のターンに入っているとも読めるので、終わりが近いという悲しさはありますね…。

それに今回は「樺太編のまとめ」とも言えるくらいに状況が整理された回なので、より一層、終わってしまうんだなぁという切なさを感じます。
なんで「樺太編のまとめ」と思ったかって。
・ずっと疑問に思っていた「尾形の目的って何?」について、登場人物たちの持っている情報と思惑が整理された。(でも結局わからない。今名言されていないものが答えだと思うのでおそらく金塊でも少数民族でもない)
・過去話からググッと内面の深掘りが進んだ月島軍曹がらみのところでは、スヴェトラーナの件が解決した。
・鶴見中尉や土方さんなど別陣営についての認識がアシリパさんのセリフで整理された。
・物語の開始のときにアシリパさんが杉元と交わした「父の死の真相を知りたいから金塊探しに協力する」という約束が、未だに真相が不透明であって⁰、それが樺太編から先も原動力になると再確認できた。
ざっと挙げるだけでこれだけあります。
要するに「区切り」が多いのですよね、今回。いい感じにおさらいしてくれて、すぐこんがらがってしまう私にはありがたいです。
キロちゃんの死で一気に終息に向かった樺太編、それだけキロランケがこれまで担っていた作品上の役割が重要だったということかなぁと。
尾形が何か知っていればいいのですが素直に口を割る男とも思えないし…アシリパさんが真相を知る日はいつ来るのでしょうか。

 

ちょっと違ってちょっと似ている

今回の名言といえばこれですよね。
北海道にいたら知らなかった、他の民族の文化。

他者の違いを認め、共通点を認める。
違うところも似ているところもある、それを知ったうえで生きていく。
多様性や他者の受容ということへつながる重要なセリフだなと思いました。

違う民族でも「私たち」と呼べるところにアシリパさんの寛容さが見えます。
違う場所で違う生活をしている人たちとも、分かり合える部分があるのですよね。
杉元がリスの脳を食べアシリパさんが味噌を食べたように、色々な民族がいてもお互いの存在を認め合うことがアシリパさんにはできるのですよね。
見方によっては露西亜も民族の集合体です。
なのでアシリパさんは少数民族のため蜂起するということはしないと思います。
蜂起して露西亜と戦うなら、それは他の民族と戦うということですから。

 

望む役目

そこで引っかかるのが杉元の回想でのウイルクの言葉です。
戦えるよう育てたというのは、武装蜂起を想定してのことでしょう。
しかも山に潜伏してということなら、具体的に北海道の山での戦闘を想定していると思われます。樺太では環境が違いすぎると思うので。
北海道アイヌが、露西亜もしくは大日本帝国によって消滅することを避けるためのものなのか?
アシリパさんの目指す生き方とは違う役目を望んでいたように思えますね。
それにキロちゃんの望んでいたであろうものとも少し違う気が。
キロちゃんは樺太など露西亜極東部での活動を考えていたのでは?
それとも北海道での蜂起が極東の民族たちにも励みになるのでしょうか。
ウイルクやキロちゃんの思惑の本当のところはまだまだ謎が多いですね。

杉元の役目も気になるところです。
アシリパさんを解放したいのは杉元の望みであって、アシリパさんがどうしたいかは未知なんですよね…。
まして今回珍しく杉元はアシリパさんに真実を伝えていない!
ウイルクが死の直前に言い残した言葉を伝えないのです、彼自身の意思で。
父の死の真相を知りたいアシリパさんにとってはとても重要なことのはずなのに伝えない。
杉元のアシリパさんを戦いから遠ざけたい気持ちはわかりますが、アシリパさんの願いの成就から遠ざかっている気がして、すれ違いにならないかな~と心配です…。
これももしかして脳みそカケの影響?以前の杉元ならしっかり伝えた上でアシリパさんの意思を確認していたと思うのですよね…。
安全であるように真実を伝えないだなんてまるで子ども扱い。相棒という扱いとは少し違うような…。
月島軍曹の「次に暴走したら殺す」という趣旨の発言が、杉元vs月島軍曹のフラグか?と思いながらも肩透かしに終わった暴走杉元。
ああいうわかりやすい暴走ではなくて静かに少しずつ暴走している
とかだったらめちゃくちゃ怖いどうしよう。

ウイルクといい杉元といい、みんなアシリパさんに自分の望む役目を期待していて、ますますアシリパさん自身の望みが何かに焦点が集まっているなと感じます。
彼女は何を自分の役目と見つけるのかしら。

 

日常生活でも、アシリパさんの寛容さで、他者とも認め合いたいですね…。

 

この他のゴールデンカムイ関連の記事はこちら。

ゴールデンカムイ第191話感想

ゴールデンカムイ第190話感想

ゴールデンカムイ第189話感想

ゴールデンカムイ第188話感想

ゴールデンカムイ第187話感想

ゴールデンカムイ第186話感想

ゴールデンカムイ第185話感想

ゴールデンカムイ第184話感想

ゴールデンカムイ第183話感想

ゴールデンカムイ第182話感想

ゴールデンカムイ第181話感想

ゴールデンカムイ第180話感想

ゴールデンカムイ第179話感想

ゴールデンカムイ第190話感想

こんばんは、うたげです。
いよいよというお話が来ましたね。
先週の鯉登少尉とキロランケの戦闘の決着はどうなるのか?

ネタバレありですので未読の方・コミックス派の方は気を付けてくださいね。

 

明日のために

今回は、情報が多すぎて整理が追いつかないですが、まとめるなら鯉登少尉サービス回と、キロちゃんサヨナラ回でしたね。
鯉登少尉はこれまでの小学生男子的可愛さからのギャップ抜きにしてもとにかく格好いい!
キロちゃんは真相は語らずじまい…。彼の最期に際してアシリパさんの優しさが心にしみると同時に、本人の口から真相を聞けなかったアシリパさんの無念さや期待されている役目の重さを再認識する回でもありましたね。

 

鯉登少尉とキロランケの戦闘

さて、気になる鯉登少尉とキロランケの戦闘はといえば。
鯉登少尉がキロちゃんの腹から引き抜いたマキリは…しっかりキロちゃんの喉に刺さりました。
左手を出すも防ぎきれなかった攻撃です。
谷垣と争って鯉登少尉とも戦って、出血と悪天候で凄まじいスピードで弱まっているのでしょう。
そんな中でも本能的に左手で刀を防ごうとしている、生きる意志が感じられるところにグッときます。
キロちゃんが、まだ死ねない、と踏ん張っているのが伺えるシーンですね。

左手を貫いたマキリを引き抜き反撃に転じるキロちゃん。
鯉登少尉の胸に刀が押し込まれていきます。
ここで気付いたのですが、この二人、おそろいですよね。どちらも相手の攻撃を防ごうと腕や手を犠牲にしていて、喉元という急所が危機にさらされています。
肉を切らせて骨を断つ争い。どうなるかというと。
鯉登少尉が圧倒的に有利なのは一人ではないこと。月島軍曹と谷垣の銃撃によって間一髪のところで鯉登少尉は危機を脱します。

 

鯉登少尉の見せ場

ここから鯉登少尉が最高に格好いいところ。
負傷しながらも「手出し無用」と手助けを拒み自分でケリをつけようとする剣士…この字面だけでも恰好いいですからね。
そこにさらにキロちゃんの今際の一撃を空中で仕留める離れ業!!
一切動じずに爆弾を一刀両断していて、本当に今までのわがまま坊ちゃんっぷりはここまでの壮大なフリだったの…?と思ってしまうほど。
ここの一連のコマは、オノマトペと効果線が控えめで、映画でよくある無音でスロー再生のシーンみたいで、それも鯉登少尉の卓越した戦闘能力の高さの演出に一役買っていますね。

 

アシリパさんとキロランケの別れ

鯉登少尉の見せ場の次はアシリパさんたちの登場です。尾形を背負った杉元と白石も。
これで晴れて先遣隊は役目を終え、解散ですね。小学生男子とママのファミリーかに思えた先遣隊も最後は鯉登少尉の華々しい見せ場で締めくくりです。

息も絶え絶えなキロちゃんをかばうアシリパさん。
彼の状態からもう長くないことを悟り、「全部思い出した」と嘘をつきます。
全部、ではないですよね。暗号の鍵となることは思い出しましたがそれだけでは不十分なはずです。でもここで思い出したと言わなかったらキロランケが浮かばれない…そう考えたアシリパさんの優しい嘘。助からないならせめて安らかに旅立ってほしいですものね…。

でもその一言でキロちゃんのこれまでの行いは報われました。ここまでの旅が走馬灯になりますが…最後に思い浮かべたのはソフィアのこと。
名前まで声に出して呼ぶのだから最も思い入れのある人物と言えるでしょう。北海道の妻子よりも大事に大事に思っていたということだと思います。
キロちゃんはやはり少数民族としての自分というほうに軸足があった、ということを意味しているのかなと思います。北海道はあくまで少数民族として生きていく過程で通り過ぎた場所。でなければ妻子を置いてこんなところまで来ませんよね…。
キロちゃんの奥さんとお子さんは、かつてキロちゃんが語っていたように、キロちゃんがいなくてもたくましく生きていってくれることを祈っています。

しかしながら、ウイルクを殺したのか?というアシリパさんの質問には無言で逝ってしまうあたり、キロちゃんもとんだ食わせ者と言わざるを得ないですね。
アシリパさんが今一番知りたかったことなのにそれには答えず、一人満足して逝ってしまうなんて。
死にゆく人間は勝手ですね。アシリパさんはもう本人の口から真相を聞くことはできません。尾形を通して語られたことが真実なのかはわかりません。結局、なぜ父親は殺されたのか?その疑問を抱えたまま、選択しないといけないのです。

アシリパさんがこれから決めなければいけないことは、彼女自身はこれからどうするのか?です。
キロちゃんが言い残したように、俺たち少数民族のためにソフィアと共に戦いに行きジャンヌダルクとなるのか?
どうにか北海道に戻り元の生活を送るのか?
はたまた別の道を選ぶのか?
キロランケはアシリパさんに自分たちのため戦ってくれることを望んでいました。
キロランケがウイルク殺害に噛んでいるということは(尾形に狙撃の合図を出したので意図はあったはず)、ウイルクはキロランケとは違う願いをアシリパさんに向けていたということだと思います。
でもそれは周りの大人たちの言い分。アシリパさん自身がどうしたいのかはこれから決めることです。
この年齢で、父親もその友人も失い信頼していた仲間(尾形)には銃を向けられるという状況で、結論を出せるものではないですが…。
でも杉元がいるから大丈夫ですよね、きっと。

 

助演男優賞の谷垣

今週のお話は私としては谷垣が助演男優賞です。
上官を案じる軍曹が背を向けてもキロちゃんから目を離さなかったところはもうとにかくイイ!獲物を仕留めるまでは油断しないマタギの鑑です。
そしてそこからの谷垣の心境の複雑さたるや。
彼にとってキロランケはインカラマッを刺した憎い男ですが、それより前に所属は違えど同じ軍人で、旅の仲間で。そのあたりの仲間意識はインカラマッを刺したことで吹っ飛んでいそうですが、まだ子どものアシリパさんにとって数少ない親族でもあり、彼女とウイルクをつなぐ重要な人物なわけです、キロランケは。フチのコタンでオソマちゃんと親しくなりチカパシの面倒を見てきた彼にとって、子どもにとって親しい人間が奪われることがどんなに重大なことなのか。谷垣はそれを真摯に考えてしまう優しい人間だと思うのです。
だからキロちゃんと対峙したとき、敵として殺すのは簡単でも、アシリパさんがいるところでは谷垣にとってキロちゃんはただの敵ではない。守りたい人間の親しい人でもある。だからこそ、二人の別れの場には背を向けていたのではないかな、と思います。
谷垣の心にどんな感情が渦巻いていたのかは想像ですが、顔を背けていることで複雑な心境だということを訴えているようで…やはり野田先生の演出は素晴らしいですね。

 

樺太の旅の終わり

今回、扉絵から、天候が良くなっています。雲の切れ目から日の光が差している。
まるでキロちゃんの旅路の終わりを見届けるように。
流氷では吹雪との闘いもありましたがようやくそれも終わりですね。
その解放感と同時に訪れる喪失感。主要人物の死は初なのでは?
特にキロちゃんはかなり重要なポジションにいたので、彼の死が、物語の終わりが近いことを感じさせて…今回のお話はかなり大きいマイルストーンな気がします。

終わりが見えてきた気がして、寂しいけれど、アシリパさんが望むように生きられるよう最後まで見届けたいです。

 

この他のゴールデンカムイ関連の記事はこちら。

カテゴリ:ゴールデンカムイ

ゴールデンカムイ第189話感想

こんばんは、うたげです。
休載を挟んで、ゴールデンカムイの最新話。
先週までは尾形とアシリパさんのお話でしたが、今週はキロランケと谷垣に場面が移ります。近くにいるであろう鯉登少尉と月島軍曹は出るかな?

 

第189話 血痕

扉絵は腹をかばいながら銃を二丁持ち歩くキロランケ
キロランケは谷垣に腹を刺されたのですが、まだ歩ける程度の力は残っているようですね。
キロランケの腹に刺さっているのは自分のマキリ(小刀)。網走監獄でインカラマッを(おおよそ彼女の意思で)刺した際のものです。それを谷垣が持っていて、キロランケの腹に刺すという形で忘れ物を返したのですよね。
そしてキロちゃんの持つ銃が二丁、ということは、自分の分と、谷垣から奪った分でしょうか?この作品は銃が大事なアイテムとして描かれることが多いので、二丁持っているという状況を見ると否応なしに色々考えてしまいますね。何か暗示しているのかなーとか…。

さて、読み進めると谷垣が倒れています。そこに駆け付けた鯉登少尉月島軍曹
谷垣は倒れていますが会話は可能です。キロランケがとどめを刺さなかったのは、今の状態の谷垣でも仕留められるか自信がないくらいに深手を負っているというのと、谷垣の仲間が近くにいる危険性を考慮したのと、両方からでしょうね。

駆け付けた月島軍曹の後ろにしっかりスヴェトラーナがいるところが、ちょっと嬉しい。ちゃんと一緒に連れてきてくれたのですね、月島軍曹が。
緊迫した展開が続いているので、家庭への帰還が予想される彼女の存在は、落ち着きますね。それを気にかけている月島軍曹の情にも。
もっとも月島軍曹としては、かつて自分がいご草ちゃんとしようとしていたことを思い出し、後悔償いといった気持ちも混じっているような気もします。
「そこで待ってろ」とおそらく月島軍曹がスヴェトラーナにロシア語で伝えるところ、このコマの描写が嬉しいです。戦いに参加できないスヴェトラーナなので安全なところで待たせているという理由付けが必要な展開なのはわかりますが、それを例えば「谷垣は彼女に見ていてもらう」とかそういうセリフ回しで見せるのではなく、ちゃんと彼女にわかる言葉できちんと伝えていると読者がわかる見せ方になっているのが…!月島軍曹の情の深い人間性を見せてくれていて、たまらないです。

扉絵でキロちゃんが担いでいた銃のうち一丁は、仕掛け爆弾に使われていました。扉絵はその伏線だったのですね。
この状況下で銃が落ちていれば、誰のものか見るため持ち上げるに決まっています。それを読み、谷垣と一緒に露西亜まで来たであろう仲間を迎撃すべく、銃を持ち上げると起爆されるよう仕組んでいたキロちゃん、さすが元工兵ですね。爆弾を仕掛けるには敵の動きを予想しないといけないですから。
腹を刺された状況でここまで頭が回る動きができるのは、元工兵としての行動のパターンのようなものだとも思いますが、それだけ必死で生き残ろうとしているからとも思います。そうまでして生き残りたい強い意志があるキロちゃん、本当は何を企んでいるのか…私にはまだわかりません。

そんなキロちゃんの仕掛け爆弾は、安定の鯉登少尉のうっかり行動により起爆されました。仕掛けが施されていることに気付き、月島軍曹が咄嗟に鯉登少尉をかばいますが、負傷し出血してしまいます。出血している場所が問題で。
首…?首、元…?月島軍曹が、首元を、負傷している……?
首はまずいです、大きな血管も脊髄も大事なものがうじゃうじゃと通っている…月島軍曹は無事なのか気が気でならない……
そんな中でも鯉登少尉の安否を気遣う様は、さすが軍曹。
と自分を落ち着けて、読み進めたいところなのですが、この展開はかなりショックなのですよね…月島軍曹がもしかしたら…と思うと…。
私の中では、月島軍曹は長く生きて若者を見守る役目があります。悪童と呼ばれていたように若い頃はやんちゃをして、今は軍曹として目下の者たちをまとめ年若い将校を支えている。彼の悪さも含めた経験の豊富さが、若い世代を見守っていくのにぴったりだなと思っていたので、年老いても鬼教官として恐れられる名物軍人になってほしいなと思っていました。
それなのに、もしかしたら、ここで……?
月島軍曹がしぶとく生き残ってくれることを祈っています…。

その後の「ひとりで行くな」は、デジャヴですね。稲妻お銀の、賭博場からの鬼ごっこを思い出します。
あのときは逃げる相手を追うばかりでしたし、たどり着いた先では鶴見中尉という最強の仲間と合流できました。
しかしこの状況はどうでしょう…相手も攻撃をしてくるし、援護する仲間もいない。ひとりで行って勝ち目はあるのか?それも頭に血が上っているように見える状態で。
でも、それでもどうにかなるのが、鯉登少尉の役回りなのでしょう。今回はアザラシに助けられました。動物に助けられるのってヒロイン適性じゃないですか…?鯉登少尉はここでも可愛く幼く描かれているようです。

その後のキロちゃんとの戦闘は可愛さなんぞ欠片もなく、示現流で培った太刀筋の強靭さと肉弾戦での活躍ぶりを見せてくれるわけですが。ここですごいの出てきましたよ。
「私の部下たち」!
「私の部下たち」、というセリフが鯉登少尉から聞かれました。鯉登少尉の口から!少尉らしい言葉が!初めて出てきた!!
しかもこのセリフ、よくも月島を、ではないんです。ついさっき怪我した月島軍曹だけではなく、「部下『たち』」と、ここまでの金塊争奪戦で失われた第七師団の兵士たちにも言及しています。部下として認識してたんだ!と、当たり前のことに少し感動しそうになりました。
だって思い出してみてください。これまでの鯉登少尉は、まるで小学生のようでした。感情と直結した後先考えない行動の数々や、お金持ちを鼻にかけた不遜な態度。子どものような振る舞いばかりが目立っていた鯉登少尉が、ここに来て部下のために戦っているとわかるだなんて…。こんなに胸が熱くなる展開があるでしょうか?
鯉登パパの言う成長はこのあたりを指し示しているのでしょうか。ただ、あのときパパは杉元と「帰らないかもしれない」なんて不吉な話をしていたし、何よりも「よくも部下を」ってやられる前の悪役の吐くセリフみたいで…なんとなく不穏な空気を感じ取っているのは私だけでしょうか…。

今週は久々の第七師団の登場にテンションが上がりました。鯉登少尉の可愛さと勇ましさ、両方を拝めた眼福回と言えます。
が、それ以上に、月島軍曹の負傷が…。たしかに彼がもし作中でフェードアウトするとすれば、年若い上官をかばってだろう、と思ってはいましたが…。
まだまだ元気な月島軍曹を拝みたいです。スヴェトラーナを親御さんのところに送り届けて、自分の中の後悔の気持ちが少し晴れた顔を見せてほしい…!

 

次号、役目

毎週、話の終わりの「END」にて次号について少しだけ触れていますが、今週はコミックスのカバーの折り返し部分に書いてある文章があります。
コミックスから入った身としては、毎巻書かれているこの文は、作中でハッキリと出てこないということはメタ的に非常に意味のある言葉なのだろう、と思っていました。
それが、今ここに出てくる理由は何なのでしょう…。

次号の展開、正直まったくわからないです。鯉登少尉とキロちゃんの戦いなんて読めません。
体格はキロちゃんのほうが上のように見えますが、手負いですし、鯉登少尉も身体能力では負けていないので五分五分、もしくは元工兵としての先読みの経験に助けられてキロちゃんが優勢…くらいまでしか想像できません。

キロちゃんのマキリを鯉登少尉が抜いて首に突き付けているように見えるので、やはりキロちゃんの役目のことを仄めかしているのでは…という予想はしています。
マキリは大事な意味を持つアイテムですからね。マキリは自分で彫るもの。この世を去るときにはマキリに傷をつけこの世での役目を終えさせることが弔いだと、アイヌたちは考えています。のっぺら坊に殺されたとされているアイヌたちも副葬品には全て傷がつけられていたと、コミックス8巻で尾形も言っていましたよね。
このキロちゃんのマキリに焦点が当たっている展開なので、マキリに傷がつき、役目を終えるのはキロちゃんということなのでは…?と思います。

でも役目を終えるまでは死なないはず!なので、おそらく本当の目的や自分の来歴、そういった物語のキーとなることを話す展開が来るのではないかなと思います。
それらを話し終え、役目を終えたらどうなるか?相対している人にとってキロちゃんは仇なので殺されてしまう線が濃厚そうですが…鯉登少尉の戻りを待っているであろう鶴見中尉にとってはキロちゃんはまだ重要人物かもしれません。もしかしたら北海道に連れ戻される展開もあるかもしれませんね。

 

 

この他のゴールデンカムイ関連の記事はこちら。

ゴールデンカムイ第188話感想

ゴールデンカムイ第187話感想

ゴールデンカムイ第186話感想

ゴールデンカムイ第185話感想

ゴールデンカムイ第184話感想

ゴールデンカムイ第183話感想

ゴールデンカムイ第182話感想

ゴールデンカムイ第181話感想

ゴールデンカムイ180話感想

ゴールデンカムイ第188話感想

こんにちは、うたげです。
野田サトル先生の「ゴールデンカムイ」、最新188話の感想です。
コミックス派・アニメ派の方にとってはネタバレの内容含みますし、展開も明記していることがあり未読の方にもネタバレ要素があるかもしれないので、お気を付けくださいね。

 

第188話 生きる

まさかそう来るか~!という展開でした。杉元の声に驚いてアシリパさんが思わず弓を引く手を放してしまい、矢じりに毒のついたままの矢が尾形の右目に刺さる…。
その瞬間のアシリパさんの表情、作中でもこれまで見たことないほど、悲痛なものでした。父の死を聞いたときの慟哭も凄まじかったですが、こちらは驚きや後悔が混じった表情。「傷つけるつもりはなかったのに矢を放ってしまった」といったところでしょうか。
先週の描写で、矢じりに毒がしっかりついているところをあえて描写した野田先生。そこにカメラを寄せることで、アシリパさんが毒を除く意志があったかも?ということを描こうとしていたのかなと思っています。あの緊迫した場面でわざわざ小刀で削り取ることはできないだろうから、ただの深読みでしょうが…コミックスで加筆されていたら嬉しいところですね。なにせ、アシリパさんにとっては、父殺しでとんでもない嘘つきの尾形でも、旅をした仲間なのですから。

そして今週一番問題のところ。目を負傷し倒れながらも、不敵な笑みを見せる尾形
まるで先週自分が言っていた、清い人間などいていいはずがない、という言葉を実践できほくそ笑んでいるかのようです。
ただ、驚いて射てしまった、というのは尾形もわかっているような気がするので、アシリパさんが人殺しをするまでの経緯よりも、人殺しになったあとのことに対して笑っていたのかなと思います。誰かを殺すきっかけは何でもよくて、殺したという事実と、その後、罪悪感から逃れるためにどうするのか、逃れるとどうなるのか、という、ある意味「未来」について興味があるのでしょう。本来、この言葉が持っている意味はもっと明るいはずですが、尾形は清くなくなったあとどう生きていくかのほうに興味を持っていそうです。とすると、尾形の言う「清い人間はいていいはずがない、というのは、清い人間は死ぬべきだ、ということではなくて、人間の本性は清くないからその清い仮面を外せ、という色のほうが強そうですね。勇作さんみたいに仮面を外させることができないままこの世を去った人もいましたが。
「お前もこっち側に来たか」「これから地獄が待っているぞ」「そのときに俺と同じ論理を用いない自信はあるか?」――倒れ行く尾形は、そんなふうに言っているように見えます。

そしてそこに登場する杉元!尾形は当然、この展開の中で杉元に殺されると思っていたので、尾形の目の毒を吸い出したのは意外でした。それもそのはず、ここで尾形が死んだら、アシリパさんが殺したのとほぼ同じ意味になってしまう。アシリパさんに人殺しをさせまいと尾形を一旦助けたわけですね。
ここで杉元が、アシリパさんを尾形の「死」には一切関わらせない、ということを言っています。かなり突き飛ばした冷たい言い方ですよね。尾形は、母に始まり、人の関心や視線を惹きたい節が時折見え隠れします。惹きつける手段が、殺しであることが多いので、結果的に殺すというのが愛情表現、のようになってしまっていますが……つまり、尾形にとって、殺すということは気にかける・見てあげることと同義なのではないかなと。けれど杉元は、それをアシリパさんにはさせないとハッキリ言いました。死ぬとしてもそこには誰も関わらせない、というのは、誰もお前を見ていない愛していない、という意味にも受け取れます。孤独に死んで行ってくれというけん制は、尾形のやり方が、少なくともほしいものを手に入れるには間違ったやり方だった、ということを表しているようで、そのことに気付かないようにしていた尾形の意図的な鈍感さと、別の方法を試すこともできない不器用さに、涙が出てきます。

ところで、尾形には未来はもうほぼないですよね。少なくとも本人がそれまで誇っていた狙撃は、おそらくもうできない。さて、ではどうするのか?ズルズル生き永らえるのか?
私は二つほど展開があると思います。一つ目は、狙撃ができなくても、それを理由に死なれてはアシリパさんが間接的に殺したような格好になってしまうので、杉元によって(少なくとも旅の終わりまでは確実に)生かされる。その後はお互い関知しないところでしょうが、個人的にはどうにか日本に戻り、精密射撃部隊を作ってほしいです。
そして二つ目は、杉元が問い詰めて洗いざらい吐かせたあと、肉弾戦に持ち込み、結果的に殺す。問い詰めるのは、尾形の死の理由を、アシリパさんではなくこれまで数々の裏切りをしてきた危険人物だという別の理由をつけるためですね。肉弾戦なのは、毒の具合にもよりますが、狙撃ができなくても関係のないリングにすることで、これまたアシリパさんが殺したという因果関係を作らないため。
尾形は今以外の生き方はできないのではないかなと思います。不器用だし。なので本人は死にたがるかもしれませんが、そこで効いてくるのが今回のサブタイトル「生きる」。尾形はこの先、アシリパさんを人殺しにしたくない杉元によって、生かされていくという意味なのでは?と勘ぐっています。杉元のセリフの中で「死」というようにわざわざ括弧つきで「死」が書かれているのも憎い演出です。

 

最後、杉元とアシリパさんがようやく再会できたところは、感動的でした。ハリウッド映画でよく見る、娘が父に抱きつくシーンをほうふつとさせます。
そんな感動的なシーンなのですが、おそらく尾形のものでしょう、銃が海に落下しているのも描かれています。尾形は狙撃手もとい軍人としては死んだも同然、ということを暗示しているのですかね。
この見開きのコマでは他にも細かい描写があり、眺めていて飽きません。杉元の背負っている装備、当時のものはみなそうなっているのかもしれませんが、飯ごうが見えます。飯ごうといえば、杉元アシリパさん白石の食事シーン。杉元にも再会できたし、アシリパさんには心の底からヒンナって言ってご飯を楽しんでほしいです。オソマおいしいってまたアシリパさんに言ってほしいな。

今週はもう一つ見開きページがありますが、こちらは何も言いますまい。あえて言うとすれば、変顔にとどまらず、聖〇プレイ描写もありな12歳のヒロインってキャラクター詰め込み過ぎでは?ということに留めておきます。

 

ある意味、前向き

さて今週の尾形を見ていて思ったのですが、この作品、自殺が出てきませんよね。少なくとも私の覚えている範囲では。人を殺して自分も死ぬといった、人情もののような展開にはお目にかかっていません。
そういう、ある意味みんな前向きなところが、この作品の好きなところの一つです。殺したから死んで終わりにしよう、ではなくて、人殺ししをした自分のままでその罪も背負って進んでいくところが前向きだなと思います。
果たして自分の前に何があるのか、そもそも道があるのかわからないけど、とにかく進んでいく、力強い暗中模索具合が見ていてすがすがしいのだろうなと思いました。
気付かせてくれてありがとう尾形。生きたいように生きるか、死にたいように死ねるといいね。

 

この他のゴールデンカムイ関連の記事はこちら。

カテゴリー:ゴールデンカムイ

ゴールデンカムイ第187話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ187話の感想です。

 

罪穢れ

今週号、尾形のあまりの不器用さに、思わず笑ってしまいました。
尾形の心情総集編というくらいに尾形成分が詰まったお話

引き続き焦ってアシリパさんから金塊の暗号の秘密を聞き出そうとする尾形。

焦るあまりに「杉元に遺言で頼まれた」とまで言い出す始末…
普段ならこんな見え透いた嘘なんてつかないのでしょうが、すぐ近くに自分を殺そうとしている男が迫っている状況ではそうまでしないといけないんでしょうね。

きっちりアシリパさんの恋心まで持ち出してくるし。このあたりは、釧路湿原での鶴の舞のくだりとつながっていますね。表紙絵がホパラタでわかりやすい構成!
でも人の恋心のためを思ってなどいう嘘で、大事な人の死の真相をずっと黙っているのは良くないと思います…真相も何も全部嘘ですけど…慕う相手が死の間際に別の女性の名を言っていたとしても、こんなに大事な最後の言葉を伝えない野暮がおりますか?こんなこと言われたらそいつのこと一切信用できなくなっちゃいますね。でもアシリパさんはそれでも怒ったりせず、それどころか全部教えてくれと頼んでいるので、それなりに尾形のことは信用していたんだろうな…。

尾形の回想がところどころ挟まりますが、杉元から聞いた話は非常に断片的なんですよね。キーワードを拾って尾形が自己解釈で組み立てているように見えます。そんな尾形が作り出した虚像の杉元に、アシリパさんが心の中に持っている杉元像が劣るわけがありません。尾形と杉元よりももっと長い時間を、アシリパさんと杉元は過ごしてきたんですから。
尾形は杉元とアシリパさんの間にある絆を甘く見ていたのか、看破されると予想しつつもこの状況ではそうせざるを得なかったのか…。

結局、尾形の嘘は見破られてしまうわけですが。このあたり、猫ちゃんぽくて、すごく好きです。
「俺ではだめか」というセリフ、俺と比較されている誰かがいるんですよね。アシリパさんとずっといた杉元や、もしかしたらたくさん人をたらしこんできた鶴見中尉のことも指しているのかもしれないです。どちらにせよ、「アシリパさんの信頼を勝ち取って金塊に最も近づいている杉元」「人心掌握術に長け他人を思うように動かせる鶴見中尉」のようにやりたかったのに、俺にはできなかった。ずっと見てきたのだからやり方は知っている、だからできるだろう、さぁやってみたら――だめだった。
という、尾形の中での行動のサイクルが、猫ちゃんっぽいなと思いました。他の猫が高いところに乗っていてうらやましいから自分もジャンプしてみたら届かなかった…という感じで。失敗してもすごい慌てたり怒ったりしないあたりも猫ちゃんぽい…(そんな反応ができる場合ではないのはわかってますけどね)

 

尾形の道理

アシリパさんから金塊の重大なことを聞き出そうとして失敗した尾形。金塊から一気に遠のいたら、次にやることは決まっています。
自分の理論を、アシリパさんに人殺しをさせることで証明すること。
尾形の目的には金塊獲得もあるのかもしれませんが、鶴見中尉を裏切ったり勇作さんを殺したりした動機そのものは、自分がこれまで行ってきた人殺しが関係していると思うのですよね。何度も勇作さんのことが語られていることや今回のお話でもそれはよくわかります。どういう心理からなのかは正直よくわかりませんが…。
人を殺す道理、という言葉が出てきたので、尾形にとって人殺しは、やはり罪悪感があるのでしょう。勇作さんを撃ったときに振り向いたように見えたのも、やはり罪悪感がそう見せたのでは。
道理を持ち出してきて罪悪感に苦しまないよう殺した事実から目を逸らす。人を殺したやつはみんなそうしてきたから殺しても生きていられるのだし、人を殺していないやつだって道理さえあれば殺す、みんなそうなんだ。そう思うことで自分は人間として大事なものが欠落しているわけではないんだと信じたい。
一方で、尾形と対峙するアシリパさんは、誰も殺していないし、父親を殺した相手に対してさえ不殺を貫きます。さらに、どちらももう亡くなってしまったとはいえ、父と母にしっかり愛された記憶を持っている。尾形とは正反対なんですよね。勇作さんと同じで、尾形とは境遇が鏡写しのよう。勇作さんやアシリパさんのような人間がいていいわけがないんです、尾形にとって。清い人間の存在を認めてしまったら自分が家族を手にかけた事実に真っ直ぐ向き合わないといけなくなる。自分に欠陥品の烙印を押すことになる。
尾形の心情、まだ不透明なところもありますが、なかなかシンプルですよね。自分がしてきたことを正当化するために、道理なんて理屈を無理やりつけて、さらに周りにも自分と同じ行いを強要してみんなそうだよねと安心したい。本当に小さい子どもみたいだなと思います。かわいい…愛しい…。やはり尾形はよしよしと撫でたい…なんて庇護欲をくすぐるやつなんだ…!構おうとすると素っ気なく振る舞いそうなところもいいですよね。猫ちゃん猫ちゃん。

 

尾形、後ろ後ろ!

勇作さんは、尾形のたらしこみには乗らず、結果として殺されました。尾形はアシリパさんをたらしこもうとするもできず、人殺しをさせようとしてもできず、結果、殺すしかなくなった。
どうなるアシリパさんvs尾形!?というところで杉元の登場。このページの尾形、アニメ2話修正前の尾形をちょっと思い出させるお顔…尾形のデザインの肝はやはり下まつげなのか?
尾形は殺されるんでしょうねぇ…あの距離なら振り向いて発砲して間に合うとは思えない…杉元の出血大好きな作者なので一発くらい尾形に撃たれそうですが、距離も近いし人数も不利だし杉元が負けるのはないでしょ…アシリパさんも弓で腕を狙うくらいの加勢はするかもしれないし…。
尾形の生存ルートがまったく見えませんが、杉元とアシリパさんの再会が近いのにはすごくワクワクします!!
あと、杉元vs尾形の戦いの中で、もう少し尾形の心境が語られるといいな。

 

ゴールデンカムイ関連の記事はこちら

ゴールデンカムイ第186話感想

ゴールデンカムイ第185話感想

ゴールデンカムイ第184話感想

ゴールデンカムイ第183話感想

ゴールデンカムイ第182話感想

ゴールデンカムイ第181話感想

ゴールデンカムイ180話感想

ゴールデンカムイ第179話感想

モバイルバージョンを終了