ゴールデンカムイ第210話感想
こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。
また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。
第210話 甘い嘘
先週のチカパシとの爽やかな別れの話から打って変わって、今週は鶴見中尉の回です。少しずつ鶴見中尉の狙いが明らかになってきました。
馬ぞりで大泊へ到着し、杉元一行は鶴見中尉の到着を待ちます。鶴見中尉に心酔している鯉登少尉は、月島軍曹に尋ねます。
亜港の病院で尾形が逃げる直前に鯉登少尉へ何と言ったか。
そして、これは尾形脱走の回では描かれていなかった新事実なのですが、鶴見中尉に「満鉄」について聞いてみろ、と尾形は言い残していたようなのです。
「満鉄」とは、南満州鉄道株式会社です。日露戦争後のポーツマス条約によって露西亜帝国から得た鉄道を経営するための会社だそうです。(Wikipediaより←新しいタブで開きます。)
当然ながら、鉄道路線を引けばその沿線に様々な施設が建ちます。物資供給ルートも確保でき安定供給が可能で、日本の領土拡大の足掛かりとなり得ます。
しかしながら経営がうまくいくはずがないと反対する人物がいました。それが尾形の父、花沢幸次郎中将です。鯉登少尉の父と花沢中将は親しいため鯉登少尉の耳にも満鉄の話は入っていました。花沢中将の自刃によって満鉄の件が進んだという認識もあるようです。
ここで鯉登少尉が気になっているのは、花沢中将の死に鶴見中尉が関わっているのでは?ということ。鶴見中尉は以前こう言っていました。戦友たちは満州に眠っており、満州が日本領であれば彼らは日本で眠っていることになる、と。つまりは満州を日本領に置いておくため鶴見中尉は満鉄が必要で、満鉄計画に反対する花沢中将の存在が邪魔と考えたのでは?という推測に至ったわけです。
また、鯉登少尉の考えでは、尾形は父親に自刃させた中央に不満を持ち鶴見中尉についていたが、父の死の真相を知り離反した…と、たしかに筋は通っています。
鯉登少尉がそう考える根拠は函館での音之進少年誘拐事件。覆面の犯人に鯉登少尉は「ボンボンが」とロシア語で言われているのです。亜港で尾形に同じ言葉を言われたのがきっかけで回想編に突入したのでしたね。つまり函館で覆面の誘拐犯が言った「ボンボンが」と、尾形の言った「ボンボンが」が鯉登少尉の中で繋がったのです。
また、さらにあのときの覆面の犯人の中には月島軍曹もいたのではというところまで鯉登少尉の推理は進みます。となると、あの誘拐事件は全て鶴見中尉が仕組み尾形や月島軍曹と一緒になって演技していたお芝居になります。尾形が満鉄のことを言い出したのは、尾形親子と同じく鯉登親子も利用されているのだと示したかったからではないか?鯉登少尉の父、鯉登少将の抱える大湊水雷団の利用を目論んでの大芝居だったのだろう?と鯉登少将は月島軍曹に詰め寄ります。
そこで月島軍曹は返します――鯉登親子は救われたではないか、と。
月島軍曹も鶴見中尉の大芝居に巻き込まれた人物です。佐渡の想い人を利用した、9年がかりの大芝居。奉天会戦の野戦病院で、佐渡訛りでいご草ちゃんのことを話した男は、そのときその場にいるはずのない第2師団の人間でした。これも鶴見中尉の仕込みだと月島軍曹は言いたいのでしょう。鶴見中尉は月島軍曹を手元に置いておくために9年という歳月と多大な労力を費やしたことをまざまざと月島軍曹に見せたわけです。
鶴見中尉が月島軍曹を必要としている理由は、忠実な手足として利用するためだと月島軍曹は考えています。鶴見中尉は、戦友が眠る満州を日本領とするために必要なことをしているのだと語られますが、鶴見中尉の真意は月島軍曹にもわかりません。それすらも鶴見中尉についてくる者たちのための「甘い嘘」かもしれないのです。
ではなぜ月島軍曹は鶴見中尉についていくのか?その答えは、鶴見劇場を観たいから。鶴見中尉が最終的に何を成し遂げるのかを見届けたいから。そしてそんな鶴見中尉がいよいよ大泊に到着し、次回は波乱の予感です。
ホラー回
今週号…怖かったですね!!月島軍曹のあんな顔初めてだし、お前はまだいいだろう、なんて恨み言をつらつらと言われたら、私だったらその場に立っていられないと思います…恐怖で。
鶴見中尉は未だに腹の底が読めなくて、彼が出てくるだけでホラーっぽくなりますね。。現れるたびに誰かが惨たらしい目に遭う殺人鬼みたい…。鶴見中尉、最後のコマ以外は回想でしか出てないのにこのホラー具合。来週が恐ろしい…!
亜港の診療所で少し疑問に思っていた、鯉登少尉は無事で尾形も無事でしかも逃げおおせたという展開に繋がる、空白の部分が補間されましたが、去り際に尾形はとんでもない爆弾を残していきましたね。「ボンボンが」という言葉は函館でのことがあったので、そのときの記憶と繋がるだろうと確信して尾形は言っていたと思います。ただのロシア語できるよアピールならかわいいですけど…。
最後に鯉登少尉が、鶴見中尉にそこまで必要とされて嬉しい、と言っていましたが、私は少し違うのではないかなと思いました。海軍少将である父親の持つ力がほしかったのであって、彼の協力を得るための道具が鯉登少尉ではないかと。二人とも生きているのでどちらに対しても言えますが、お互いが脅されている立場であり人質の立場でもあります。片方の命が惜しければ従え、と。おそらく鯉登パパは鶴見中尉の恐ろしさに気付いているのではないかなと勝手に思っているので、鯉登パパのほうが脅されている立場の気分でしょうね。息子が人質に取られているも同然の状況です。
鶴見劇場の役者たち
鯉登少尉自身の必要性は実は低いというのが、今後の展開に繋がるんじゃないかなと妄想しています。キャラクターには役目があるものですが、鯉登少尉は年若く、世間知らずで、周囲に迎合できるほどの柔軟性もその必要性を理解するほどの思慮深さもまだなく、鶴見中尉にあれだけ心酔するほど視野が狭く(競走馬のよう)……と、かなり「若者らしい青さ」を体現したキャラクターなのですよね。こういったキャラクターはだいたい物語の終盤で、信じていたものが自分の思想とかけ離れた実態であることに気付き、己の過ちに気付いて成長し、立場を変え再び登場する……というのが定石かなと。今週も、推測ながら事実に近付くという物語を進める役回りでしたし。(まぁ直後のアレで、もうしばらくは鶴見中尉にゾッコンだなと思わされましたが…。)
あとは、父親が、「軍人は自らの子どもにこそ先ず戦場へ行かせる」「子どものために重要な軍の資産を差し出すことはしない」という主旨のことを言っているのですがこのあたりもフラグっぽいなと…。身を盾にして鯉登少尉を守るのではないかなと思うのです。この親子が一番理想的な親子(親が身を挺して我が子を守る)というのが流れとしてキレイだと思いませんか。
鶴見中尉の真の狙いや行いの恐ろしさに気付いた鯉登少尉が、杉元やアシリパさん側につくというのもあり得るのではと思います。その気付きのきっかけが、実は自分自身は必要とされていないということを思い知った、だと思います。最終的に中央に鶴見中尉を差し出すのが鯉登少尉なのかもしれないというところまで発展しますが……あくまで妄想ですので。。でも、「若者らしい青さ」を持ったキャラクターが成長した姿は、未来への希望としてぴったりだと思うのですよね。
月島軍曹は役目で言うと、鯉登少尉を助けつつも鶴見中尉についていく人かなと思います。希望を潰えさせたくなくて鯉登少尉が鶴見中尉の元を離れるのを密かに手助けする。けれど自分はそちら側には行けない、行けたとしても行く意味がない(鶴見中尉がいないから)ので、最終的には鶴見中尉と道を共にする選択をする。そんな月島軍曹が想像できるような気がします。私の想像では、月島軍曹は鶴見中尉に地獄の底までご一緒しますと言う気がしますよ。そこに自らの行いが全て誤りだったわけではないと気付いた鶴見中尉がほほ笑むところまで妄想できます。
鶴見中尉はやはり悪役として退場まで突き進むのかなと。史実ベースで時代考証もしっかりした作品ですから、第七師団が政変を起こし別の時間軸へ突入…なんて展開はないと思います。史実通りなら鶴見中尉の計画はどこかで誰かに阻止されねばならないので…(このあたり歴史モノの辛いところですね!結末がわかっている。でも末路を知りつつもそのときの輝きや生きた証を楽しむという醍醐味の部分でもあります)政変を目論むもとん挫した、主人公とはまた別の正義として描かれるのだろうなと思っています。
史実通りに進むはず、という推測。これが辛いキャラクターはあと二人います。
一人は土方さん。北海道をアイヌと共に独立させただなんて歴史はなかったので、金塊争奪戦を勝ち抜き目的を果たすという結末はないと思われます。
もう一人はアシリパさん。アイヌは、ご存知の通り、ゴールデンカムイの作中の文化・生活様式を守りながら現代まで生きているわけではありません。アシリパさんが残したいとこんなに願っているのに…。
鶴見中尉も土方さんもアシリパさんも願いを叶えられない結末が一番現実的です。そうなると、この戦いの勝者は誰になるのか?そもそも本当に金塊は存在するのか?という疑問が浮かび上がります。次回はおそらく鶴見中尉とアシリパさんの邂逅。金塊争奪戦の中心にいるこの二人が出会って物語がどう進むのか、怖いけれど楽しみです!
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