ゴールデンカムイ第203話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第203話 似顔絵

尾形もいるものと思い狙撃してきたヴァシリを杉元が掴んだのが先週のお話。

場面は再び往来のど真ん中で防御するしかない月島軍曹たちに戻ります。
馬ぞりを引いたおじいさんが無事にすぐ横を通ったことから、杉元が狙撃手の撃退に成功したことに気付きます。軍帽をそりの陰から出しても撃たれない。もうこちらで注意を引く必要はなくなりました。杉元が心配なアシリパさんはすぐに杉元のところへ駆けつけます。
一方の杉元はヴァシリの胸元から出てきた尾形の似顔絵を見て、ヴァシリは尾形を追って来たと気付きました。言葉の通じないどころか尾形に撃たれた傷のせいでうまく話せないヴァシリと、身振り手振りに絵を交え会話する杉元。自分も尾形に撃たれたのだと話します。加えてキロランケのことや、アシリパさんの毒矢が尾形の目を射たことも。アシリパさんに射る気はなかったが射てしまったため尾形の目をえぐって命を助けたんだと話す杉元。その行動の理由が「アシリパさんの見る世界に自分もいると思うと救われる思いがする」という杉元の言葉を、アシリパさんは耳にします。
アシリパさんに続き続々と到着する谷垣たち。アシリパさんによりヴァシリが国境で出くわしたロシア兵とわかり、ロシア語の話せる月島軍曹により尾形がいない状況や樺太先遣隊の目的が説明されます。杉元たちは皇帝殺しには無関係と知ってもなお、盗んだ馬で一行のあとを付けるヴァシリ。彼の関心は皇帝殺しではありません。尾形です。尾形に会えるかもしれないのであとを付いてくるのです。
尾形――一体彼の目的は何なのか?月島軍曹たちは樺太先遣隊としてアシリパさんを鶴見中尉の元へ連れて帰ることが当座の目的です。谷垣はフチにアシリパさんを会わせること。では尾形は?金塊が目的なら暗号を解く鍵かもしれないアシリパさんの前にまた現れるでしょう。しかしロシアではアシリパさんを殺す素振りも見せました。そのためにアシリパさんは尾形の目的がよくわかりません。そこで杉元は、彼はいたずらに引っ掻き回しているだけかもしれない、と感想を述べます…。
わからないことはもう一つ。キロランケたちの目的の真相です。これを知るのはソフィアのみ。大陸で仲間を集め日本へ渡り、その後どうするつもりだったのか?聞きたいけれどソフィアの居場所はわかりません。
当のソフィアは日本海沿岸の港町で、ガンソクさんと出会います。スヴェトラーナとロシア首都を目指すガンソクさんに対し、ソフィアはこう宣言します。希望と復讐のために北海道へ行くつもりだ、と。

 

か弱い人間としての杉元

今週の見どころはやはり、杉元のヴァシリとの会話でしょうか。ほぼ杉元の独白に近い状態なので彼の心の内が素直に話されていると思います。ペットやぬいぐるみなど、相手はいるけれどその相手がこちらの言っていることを理解しないという状況って、とても話しやすくてつい本音をこぼしてしまうのですよね。
尾形がアシリパさんに向かって、人を殺さない=清いまま、でいられるか?清くなくなったらどうする?という問いかけをしていたように、ゴールデンカムイでは人殺しをした者は、人として越えてはいけない境界線をまたいでしまう、と描かれています。そして境界線の”こちら側”へ来た者は、それぞれの方法で自分の心のバランスを取ります。杉元は、殺す相手も人殺しだから殺されて当然・躊躇する必要はない、と自分に言い聞かせます。尾形も似た感じで、人殺しは罪悪感なぞ持たない、というような趣旨のことを勇作さんに向けて言っていました。これが意味するのは、杉元たちがそのような”こちら側”にいることの言い訳をするのは、自己を正当化する理由を無理やりにでも作らなければならなかった、か弱い人間だということです。
救われたいけれど人殺しをした以上は救われないことは杉元本人にもわかっています。地獄に行くことを覚悟している発言は、作品の初期からありました。それでもなお、戦争から帰ってきたときに梅ちゃんに自分が杉元だとわかってもらえないことにショックを受け、干し柿から故郷の話になれば涙するなど、まだ救われたいという気持ちが残っているのだと思います。
それが表れたのが今回の、「アシリパさんの見ている世界はきれい。その中に自分もいると思うと、自分もきれいなものになった気がする」という内容の発言に繋がると思います。

さて、「アシリパさんの見ている世界はきれい」とのことですが、以前に書いたように、杉元は暴走して以降、アシリパさんの意思を尊重するより、理想のアシリパさん=”こちら側”に来ることのない人、という理想像を押し付ける方向へ暴走しているように思えます
でもこれって尾形のしたことと似ているのですよね。187話で尾形がした行動の理由であろう、”こちら側”にいる者としての道理。尾形は人殺しを他人にさせることで自分の正しさを証明しようとしましたが(勇作さんには拒否されアシリパさんのときは杉元により失敗しましたが)、対する杉元は、”こちら側”に来てほしくない。人殺しなんてせず山でアイヌの文化を守りながら暮らしてほしいという、彼のわがままとも取れる願望が行動の理由です。相手に自分の願望を押し付けるのは、その相手のことを見ていないのと同じことですからね。今の杉元には目の前のアシリパさんのことはよく見えていないと思います。彼は自分の理想のアシリパさん像というフィルターを通してしか見えていないのです。だからヴァシリとのお絵描き合戦でも彼の絵はあそこまで要領を得ない感じなんじゃないかなぁとも思います。あるがままを見ていない。

一方のアシリパさんにとってみれば、杉元はヒーローでした。ヒグマにも臆せず立ち向かい、和人なのにアイヌの生活様式に入り込み伝統を受け入れてくれた。父ともレタラとも別れても杉元はすぐ近くにいた。
そんな杉元も、上述のように、一人のか弱い人間だったということが今回わかりました。か弱い人間だからこそ、救われないとわかっていても救われたいと願う。その願いを祈る先は自分。
出会った頃は父親のように強く頼りがいがあり、恋心を覚えるに相応しく真っ直ぐでおおらかな好青年だった杉元も、地獄の底で救ってくれと祈る人間だと知ったアシリパさんの表情。杉元の心の内を知って、アシリパさんは何を思うのでしょうか?杉元の願いはアシリパさんに清いままいてもらうことですが、樺太からロシアへ渡り父の足跡を辿ったアシリパさんは、この金塊争奪戦で何を目的とするのか…そしてその目的のため清いままではいられなくなったときに、アシリパさんと杉元の関係性はどう変化するのでしょう?このまま終わりを迎えるとは思えないのでこの二人の関係ももう少し変化すると思うのですよね。

 

山猫の目的

尾形の目的は、引っ掻き回して遊んでいるだけかもしれない、と杉元が言います。思いつきのようにこぼしたのでしょうが、案外的を射ているのかも?
金塊が目的なら一番有力候補の鶴見中尉の元を離れる理由は特にないですし、独り占めしたいならアシリパさんを味方につけないといけない。でもこれらから外れる行動をし続けているので、いたずらにかき乱しているというのも、しっくりきてしまうのですよね…。
これがミスリードになるのかそれとも真相を言い当てているのか?来週も楽しみです。

 

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