ゴールデンカムイ第207話感想
こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。
また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。
第207話 塹壕から見えた月
先週までのアシリパさんたちから登場人物は変わり、今回は登別にいる鶴見中尉たち第七師団のお話です。
なんと、都丹が生きていました!!死んだと思われていた都丹がどうして生きていたのか、その死を確認したはずの有古は嘘をついていたのか、それはなぜか?その一端が見えるお話です。
都丹の刺青人皮を手に入れた鶴見中尉たちは、手持ちの暗号を並べてみます。アイヌである有古は、祖母の刺青がヒントになるかもしれないと意見を述べます。アイヌ女性の刺青には地域差があるので隠し場所のヒントになるかもしれない、と。しかしながら並べられた刺青からは特に情報を読み取れず、有古は鶴見中尉に尋ねます。これが手持ちの全ての刺青か、と。それに対し鶴見中尉の返答は、これが全てだ、というものですが、その表情は影があり何かを隠していると言わんばかりのもの。鶴見中尉は真実を言っていないのです。
鶴見中尉は、都丹を単身で仕留め刺青を持ち帰った有古を褒めます。有古はただ運が良かっただけだと言いますが、それに対し鶴見中尉は、運が悪ければ刺青が一枚欠けてしまい永遠に金塊が見つからないかもしれない、と言います。鶴見中尉のその発言の真意を掴めずにいる様子の有古。
有古に焦点が当たる状況は続きます。
鶴見中尉のいる建物を出ると空を見上げる菊田が有古に声をかけます。月だけは同じだ、と。
菊田と有古は、奉天会戦のとき、爆撃された塹壕で発見されないまま一晩を明かしました。お互いの生存を確認するために一晩中声を掛け合って。塹壕から見えた真っ暗な空に浮かぶ細い月。じきに新月となる頼りない細い明かりです。
そしてやがて迎えた新月の夜。
有古が窓を突き破って雪深い地面に落ちます。それを狙い破れた窓から発砲する兵士たち。血を流しながら移動し、どこだ、と誰かに声をかける様子の有古。
なぜ有古が仲間であるはずの兵士に撃たれているのか?それは都丹の生存が全てを物語っています。都丹は生きていました。生きており、しかも敵として戦った有古に手を貸しています。新月は都丹の独壇場。舌の音で道を探りながら有古を引っ張っていきます。
都丹と合流した有古が抱えているのは刺青人皮の入った袋。鶴見中尉の元から盗んできたようです。それも全部。
有古が刺青人皮を盗み出してきたということは、鶴見中尉を裏切ったということ。なぜ裏切ったのか?その理由の一つは、有古がアイヌであることに関係がありました。
有古の父はのっぺら坊に殺されたアイヌのうちの一人だったのです。
都丹を仕留めたと思われたとき、都丹と有古の間でやり取りがあったのでしょう。有古は父親の遺志を継ぐべく鶴見中尉を裏切り金塊を手に入れようとしているようです。
しかしこれらは全て鶴見中尉のお見通し。有古が都丹のものだと言って刺青人皮を持ち帰ったときから気付いていました。鶴見中尉はすでに都丹の刺青を把握しており、有古が嘘をついていることは見透かされていたのです。
深まる謎
今週の衝撃は、鶴見中尉がすでに都丹の刺青を把握していたこと!都丹とは直接出会っていないと思いますが、なぜ知っているのでしょう。それにそこまで把握しているのなら直接刺青を集める必要もないのでは?
言われてみれば稲妻お銀を除けば鶴見中尉が積極的に刺青を獲得しようとしている場面はあまりなかったような…。でも把握できているなら江渡貝くんの偽物を見分けるタンニン鞣しの情報も必要ないので…全てを把握しているわけではないのかもしれません。
また、のっぺら坊に殺されたというアイヌたちの遺品整理をしたのが鶴見中尉だというのも、有古は知りませんでした。菊田たちは知っていますし、尾形も知っていたので、鶴見中尉に近い人間は知っているはずなのです。しかし有古は知らされていません。
それに都丹の刺青の内容を把握しているなら宇佐美や菊田も一緒になってあそこまで躍起になって追う必要もそうなかったわけで。仕留める必要はあったかもしれませんが、鶴見中尉が言うように雪崩から発見できなかったら金塊が見つからない――という事態にもなりません。
なので今回の登別での一件は、有古の造反をあぶり出すことと、さらにその先に狙いがあるのでは?と思うのですよね。有古と都丹が繋がっていることを確信した鶴見中尉はあえて有古に刺青を持って行かせる。都丹と合流したあとは当然土方さんのところへ向かう。鶴見中尉と土方さんが手を組むのはあり得ないでしょうが、土方さんと杉元たちが手を組むことはあり得ます。暗号を解かせるために一芝居打ったのかなと想像しています。アシリパさんを守るため杉元がアシリパさんに何も言わせないことも鶴見中尉には容易に読めているでしょうから、杉元一行と再会しても正攻法では金塊にたどり着けないのです。
有古のこれから
有古が鶴見中尉を裏切ったことで、金塊をめぐる戦いは、アイヌはじめ少数民族vsその国の多数派という、マイノリティ対マジョリティの構図が色濃くなってきましたね。
鶴見中尉は作品の中で父親との心の溝につけ入るのが上手く描かれていますが、今回もそれかなと。有古も父の真相を知りたがっていたのでしょう。でも鶴見中尉は真相に繋がる事実を隠していました。まるで父親が、子どもに言うことを聞かせるために、世の中の不都合な事実を見せないように。ウイルクものっぺら坊としてアイヌたちを殺したという伝聞についての真相を隠したまま逝ってしまいました。知られては都合の悪いことがあるのでしょう。
同じ真相であってもどこから見るかで見え方は変わります。必要なのはたくさんの側面を見ること。有古のように家庭を飛び出し新しい視点を与えられた人間が、何を掴み取るのか?非常に興味深いです。
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