ゴールデンカムイ第205話感想
こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。
また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。
第205話 シネマトグラフ
杉元と月島軍曹の会話から始まる今回のお話。
キロランケがアシリパさんを樺太へ連れてきた意味、ソフィアへ会わせた目的、尾形が吹雪の中アシリパさんを引き離し殺そうとした理由、そしてキロランケの最期の安堵の表情……それらから、月島軍曹は「アシリパさんは暗号を解く鍵に気付いた」と推測しています。
それに対し杉元は、アシリパさんが尾形に解読方法を話す(そして用無しになったアシリパさんを殺す流れになる)わけがない、自分が話すから邪魔をするなと言い切ります。アシリパさんと無事に合流できましたが、果たして鶴見中尉はアシリパさんをどう扱うつもりなのか…。
一方のアシリパさんは、フランスのリュミエール社が派遣した撮影技師ジュレールと、日本での興行権を得た稲葉勝太郎からシネマトグラフ(活動写真)の話を聞いています。当時の活動写真では動きは残せても音声は一緒に残せませんでした。口伝で継承されてきたアイヌの昔話は、そのままでは活動写真に不向き。かといって蓄音機では、動きを見せることができず言葉が違う人たちに伝えることは難しい、と考えたアシリパさんは、アイヌの昔話をお芝居にして活動写真として残すことを提案します。クズリから助けたことを盾に撮影技師たちを巻き込むことに成功した杉元たちによる、お芝居撮影が始まります。
街の外れらしきところで撮影がスタート。監督はもちろんアシリパさん。演目は、「パナンペ・ペナンペ物語」、わかりやすい例えだと「こぶとり爺さん」が近いお話です。
大儲けするパナンペ役に杉元、その妻役に鯉登少尉。パナンペを羨ましがり真似をするペナンペ役に白石、妻役に月島軍曹です。
アシリパさんの演技指導にはかなりの熱が入ります。声が入らないので表情や仕草で感情を伝えるしかないのです。しかし素人のぶっつけ本番なのでアシリパさんが求めるレベルの演技はできません。それに大きく落胆するアシリパさん。自分たちが受け継いできた物語がうまく残せない、伝えられないことにかなり焦りを感じている様子です。
次は「斑文鳥の身の上話」というお話の撮影です。谷垣・杉元・チカパシが三兄弟を演じます。狩りの中で出会った娘役には、鯉登少尉・月島軍曹・そしてエノノカ。娘たちの暮らす家に入ってきた熊を倒すと兄弟たちはとても感謝され、娘の父親からは婿入りを求められます。末弟役のチカパシはその家の息子になり幸せに暮らしますが、一番上の兄が自分は実は鳥のカムイ・ケソラプ(プは漫画中の表記では小さい文字)だと告白します。鳥の姿になった兄はどこかへ飛んでいきます。末弟にとって兄は、身寄りのない自分を迎え入れ、旅へ連れ出し立派な男へ育ててくれ更に新しい家族まで持たせてくれた、いわば恩人です。その人との今生の別れでそんな芝居なのかとアシリパさんに声をかけられたチカパシは、まさしくこの鳥のカムイと谷垣を重ね合わせ、本心からの涙をこぼします。
アイヌの昔話
今回印象的だったのは、撮影監督をするアシリパさん。自分たちの文化が残せるかもしれないという希望を活動写真に寄せますが、焦って空回りしている印象です。それだけこの旅の中で、少数民族である自分たちがどういう立場なのかを痛烈に自覚したということなのでしょうか。
民族のため戦う道を選んだウイルクやキロランケと異なり、アシリパさんはそうではないような気がしています。戦うのであれば映像を残す必要はないですからね。映像を残したいということは、遺書のようなもので、文化の担い手自体は消えていくかもしれないが文化があったことは残したい、そんな意図を感じました。物語を通じて人を殺さないという態度を貫いているアシリパさんらしい態度だと思います。
アシリパさんの口から語られたわけではないので確信はないですが、北海道アイヌの今後についてアシリパさんは、流れに任せる、という方針なような気がします。逆らわない、抗わない。いなくなったり和人に吸収されていくのが流れならそれも仕方ない。でも自分たちが生きた証として映像を残したい。蓄音機ではダメなのは、やがて残された史料を見るのは和人だと想定しているから。……と考えているとしたら、まだ12歳の少女が選ぶ道としてはあまりに切ないと言いますか、達観していると言いますか…。早くアシリパさんの本人が聞きたいですね。
昔話の中では、先週に引き続いてチカパシの今後に触れられていますね。
先週は、北海道に帰ってインカラマッに会いたいと言っていましたが、それは同時にエノノカと別れるという意味だと気付きました。そして今週、アイヌの昔話に登場する鳥のカムイ・ケソラプに谷垣を重ね合わせます。谷垣と北海道中、更には樺太を旅し、様々な動物や時には悪人とも戦い男として成長し、樺太ではエノノカとも出会ったチカパシ。谷垣と別れ、エノノカと樺太で暮らす道もあるのかもしれません。谷垣とチカパシがお別れするのは本当に寂しくてそんな場面できれば見たくありませんが…得てしてどちらかしか選べないのですよね。谷垣と北海道へ戻るか、エノノカと樺太に残るか。幼いチカパシならどちらでもうまく適応できるでしょう。果たして豊原で鶴見中尉と合流後、北海道へ戻る船に乗り込むまでに、チカパシはどんな結論を出すのでしょうか?
(もちろん、エノノカとヘンケが北海道へ来るというルートも歓迎ですよ!ヘンケの年齢や樺太アイヌとしての誇りなどを考えると難しいと思いますが…)
用済みにさせないために
さて、お話の冒頭で月島軍曹が言っていたこと。ここまでの状況をうまくまとめてくれていますね。
アシリパさんが暗号解読の鍵に気付いたのではないか?というのは、読者は間近で見てきましたから知っていますが、状況を繋ぎ合わせてその結論にたどり着いた月島軍曹はやはり経験豊富で頼もしい軍人だなと思います。鶴見中尉じゃないですがすぐ側にいてほしい存在ですね。
アシリパさんは、あのとき気付いた刺青の暗号のことについて、杉元にもまだ話していないのですね。話してしまえば自分が用済みになって身の安全が保証されなくなること、話した相手の杉元も無事でなくなるかもしれないこと、そんなところまで考えての判断だとしたらやはりアシリパさんは聡いですね。狩りを生業にして日々命を懸けているとそういった重要なことに対する判断力が研ぎ澄まされるのかなとぼんやり妄想してしまいます。
そして月島軍曹と話していた杉元も、彼なりに考えて行動していると思います。アシリパさんから暗号の鍵を聞き出してしまえば、アシリパさんの身が危ない。用無しになって、月島軍曹が尾形に対して推測しているように、殺されてしまうのです。おそらくは鶴見中尉に。なのでアシリパさんから俺が聞き出すと口では言いつつも、おそらく聞き出さない選択をするでしょう。たぶん、聞き出したのではという不要な探りをされないよう、アシリパさんと二人きりになるというシチュエーションも避けるのではないでしょうか。
いよいよ大詰めという感じですね。これからどうなるのかますます楽しみです!
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