読書記録『古代ギリシャのリアル』

こんばんは、うたげです。
読んだ本の記録を取っておかないと何を読んだのか思い出せなくなる年になってきました…。
読書の記録と、そのとき自分が思ったことの整理のために、書いていきます。
読書家ではないので本当にたまに、ですね。

 

藤村シシン『古代ギリシャのリアル』

今回の本はこちら。
藤村シシン著『古代ギリシャのリアル』実業之日本社

狭苦しい日常を抜け出して、古代ギリシャの太陽の下に連れ出してくれる本です。

何よりまず読みやすい
親しみやすい文体なので肩ひじ張らずに楽しく読み進められました。
古代ギリシャの人々の「働いたら負け」な生活スタイルや、自由奔放そのもの何でもアリな神々の逸話を読んでいるうちに、日常の些細なことを忘れられます。

ただ、ギリシャ神話の神々の紹介にかなりページ数を割いています。
ほぼ半分以上を占めており、そのための本と言っても過言ではないです。
期待していた古代ギリシャ人の生活モデルや、奴隷の使われ方などはボリューム少な目でちょっと残念。
それは他の本を読みましょうということなのですかね。
この方の語り方がとてもわかりやすいので、この方の書く「あるアテナイ市民の一日」を読んでみたいです。

 

歴史として語られるもの

この本はまず衝撃的な事実から始まります。
古代ギリシャといえば、「真っ白に輝くパルテノン神殿」「白い石で作られた神々の彫刻」などを思い浮かべていました、私は。
けれど、パルテノン神殿は実は白くなくて鮮やかに彩色されていたらしいですし、白い石=大理石で作られた彫刻に至ってはルネッサンス期の芸術家の作品です…的外れもいいところですね…。
私のこの例からもわかるように、古代ギリシャといえば、というイメージが強烈にあるのです、現代には
それらがどう形作られてきたかの概要を、実感を持って知ることができるのが、本書の冒頭から第1章です。

日本以外の場所、とりわけユーラシア大陸内の歴史を知るうえで頭に入れておかないといけないなと思っているのが、「他国との国境が海ではない」ということ。
日本は、つぶさに見ていけば現在の日本列島の中での勢力争いなどはありましたが、島国なので概ね「国境=海」ですよね。
でも他の国や地域の歴史はそうではありません。
陸続きなのでよその民族や国の侵攻を受けやすいです。
それはいわゆる古代ギリシャの位置も例外ではなく、ペルシアの侵攻を受けたが退けたという旨の発言は『アサシンクリードオデッセイ』中でも何度も聞かれましたし、その後ローマ帝国が大陸を席巻するのはお馴染みですよね。

(別の本の話ですが、チェコの歴史についてもそれはそれは他民族や他国とのにらみ合いの歴史だと感じました。
特に、東にロシア、西にヨーロッパの強国という凄まじい地理的配置なので、いかにして生き残るかと歴代の統治者は頭を悩ませていたようです。)

侵攻を受ける場合もありますが、地理的に色々なものが混じり合いやすいので、多種多様な文化が混じり合ってどんどん発展を遂げていきます。
パルテノン神殿一つとっても、ローマ帝国に入ったりオスマン帝国に入ったりと、そこに住む人々の変化に応じ様々なテイストを吸収していったはず。
十七世紀に破壊されるまで、色々なものが変えられ足され削り落とされ、変化を続けて、人々に寄り添っていたと思います。
現在の再建されたパルテノン神殿にローマ帝国のキリスト教やオスマン帝国支配時のモスクの名残を見ることはできませんが、西欧の人々の理想のルーツ像を反映した今の姿も、これはこれでこの建物が背負った歴史ということなのでしょう。

ただ、現在の姿になった過程は知っておく必要があるなと思いました。
どの文化にも歴史があって、背景にどういうドラマがあったのか知っておくと見え方が変わります。
変容することも歴史の一部だという考え方ができれば色々なことに寛容になれるはず。
変化することは何も怖くないのだという妙な自信を私は得ました。

 

歴史として語られないもの

さて、私は古代ギリシャの人々がどういう生活をしていたのかが知りたくて購入しました。
もちろんこの本でも触れられています。ボリュームは期待よりも控えめですが。
男性同士の肉体関係や結婚制度、神々への供儀などの説明はありますし、ワードを拾っていけば何を食べていたのかもなんとなくわかります。

でも実感がいまひとつ得られない。
なぜなら、現代に残されていることはおおよそが男性目線であって、女性や子どもがどうしていたのかがよくわからないから。
男性社会のもののほうが後世に残りやすいのですよね。
また、子どもという身分ができたのは比較的最近のことなので、子どもという特定の時期の人間に向けられた目はおそらくなかったのかなと思います。
(向けられていても女性のものがほとんどで残されていないとか。)

著者も、女性について書かれている史料はあまりない、と述べています。
男性だけだと当時生きていた人の半分だけなので、もう半分はよくわからない状況。
けして現代の私から見れば良いとは言えない女性の扱いだったのかもしれませんが、どんな家庭が一般的なのかや、子どもたちは何をして遊んでいたのかなど、知りたかったですね。

 

古代ギリシャ人と現代

面白いなと思ったのは古代ギリシャでの宗教観。
信仰心 < < 儀式の実践」だそうです。
これは日本の宗教観も同じです。
信じる心よりも、儀式のほうが大切にされています。
私はこれにすごくしっくりきました。
信仰していないわけではないですが、信徒と胸を張って言えるほどの信仰心はないのです。
仏教徒と言えなくもないけれど身を完全にゆだねるほどの熱心な信徒ではないし…でもお葬式は仏教式だな…と思っていましたが、まさしく「信仰心より儀式の実践」です。
また、古代ギリシャでは、きちんと実践に移さないと、いくら心の中で祈っても神様は応えてくれないという意味でもあったそうで。
今のお葬式のシステム、遺族の心の整理に繋がるそうですが、きちんと儀式を行えば心の平穏をもたらしてくれるなんて、まさしく実践によるご利益ですよね。

あとは古代ギリシャ人の終末観ですかね。
彼らの思う終末というのは人間の心からモラルが消えた状態だそうです。
人と人との心が通じない状態とも。
現代はわりと古代ギリシャで言う終末に近いのでは?…と思いますが…。

古代ギリシャ人が現代を見たらどう思うのでしょうね。
神様は大事にしているけど終末状態……カオスだ!と叫ぶ気がします。

 

古代ギリシャは面白い

つらつらと感じたことを書いてきましたが、この本は面白いです!
冒頭でも触れたように文体がとっつきやすい
注釈も同じページの下段に配置されていて、文庫本などでありがちな「いちいち巻末の注釈集まで移動して読まなければならない」ストレスもないです。

特に『アサシンクリードオデッセイ』をプレイした人にはおすすめです。
ゲーム中の登場人物が祈る神が、どういった神なのか?なぜこの場面でこの神に祈るのか?そういった疑問への答えが見つかります。
歴史的ロケーションがいかに重要なものなのかもわかり、作り手の古代ギリシャ愛に感服します。
ゲーム中で街中を歩くときに古代ギリシャの人になりきれる!

この著者が別の本を書く機会があったら読みたいなと思います。
ブログなどで断片的に読むよりまとめられたものを読むほうが理解しやすいので書籍化を待ちます。

 

買ってちゃんと読み切った本は久々でした…。
途中まで読んで積んでしまう癖はどうにかしないといけないですね…。

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