ゴールデンカムイ第187話感想
こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ187話の感想です。
罪穢れ
今週号、尾形のあまりの不器用さに、思わず笑ってしまいました。
尾形の心情総集編というくらいに尾形成分が詰まったお話。
引き続き焦ってアシリパさんから金塊の暗号の秘密を聞き出そうとする尾形。
焦るあまりに「杉元に遺言で頼まれた」とまで言い出す始末…
普段ならこんな見え透いた嘘なんてつかないのでしょうが、すぐ近くに自分を殺そうとしている男が迫っている状況ではそうまでしないといけないんでしょうね。
きっちりアシリパさんの恋心まで持ち出してくるし。このあたりは、釧路湿原での鶴の舞のくだりとつながっていますね。表紙絵がホパラタでわかりやすい構成!
でも人の恋心のためを思ってなどいう嘘で、大事な人の死の真相をずっと黙っているのは良くないと思います…真相も何も全部嘘ですけど…慕う相手が死の間際に別の女性の名を言っていたとしても、こんなに大事な最後の言葉を伝えない野暮がおりますか?こんなこと言われたらそいつのこと一切信用できなくなっちゃいますね。でもアシリパさんはそれでも怒ったりせず、それどころか全部教えてくれと頼んでいるので、それなりに尾形のことは信用していたんだろうな…。
尾形の回想がところどころ挟まりますが、杉元から聞いた話は非常に断片的なんですよね。キーワードを拾って尾形が自己解釈で組み立てているように見えます。そんな尾形が作り出した虚像の杉元に、アシリパさんが心の中に持っている杉元像が劣るわけがありません。尾形と杉元よりももっと長い時間を、アシリパさんと杉元は過ごしてきたんですから。
尾形は杉元とアシリパさんの間にある絆を甘く見ていたのか、看破されると予想しつつもこの状況ではそうせざるを得なかったのか…。
結局、尾形の嘘は見破られてしまうわけですが。このあたり、猫ちゃんぽくて、すごく好きです。
「俺ではだめか」というセリフ、俺と比較されている誰かがいるんですよね。アシリパさんとずっといた杉元や、もしかしたらたくさん人をたらしこんできた鶴見中尉のことも指しているのかもしれないです。どちらにせよ、「アシリパさんの信頼を勝ち取って金塊に最も近づいている杉元」「人心掌握術に長け他人を思うように動かせる鶴見中尉」のようにやりたかったのに、俺にはできなかった。ずっと見てきたのだからやり方は知っている、だからできるだろう、さぁやってみたら――だめだった。
という、尾形の中での行動のサイクルが、猫ちゃんっぽいなと思いました。他の猫が高いところに乗っていてうらやましいから自分もジャンプしてみたら届かなかった…という感じで。失敗してもすごい慌てたり怒ったりしないあたりも猫ちゃんぽい…(そんな反応ができる場合ではないのはわかってますけどね)
尾形の道理
アシリパさんから金塊の重大なことを聞き出そうとして失敗した尾形。金塊から一気に遠のいたら、次にやることは決まっています。
自分の理論を、アシリパさんに人殺しをさせることで証明すること。
尾形の目的には金塊獲得もあるのかもしれませんが、鶴見中尉を裏切ったり勇作さんを殺したりした動機そのものは、自分がこれまで行ってきた人殺しが関係していると思うのですよね。何度も勇作さんのことが語られていることや今回のお話でもそれはよくわかります。どういう心理からなのかは正直よくわかりませんが…。
人を殺す道理、という言葉が出てきたので、尾形にとって人殺しは、やはり罪悪感があるのでしょう。勇作さんを撃ったときに振り向いたように見えたのも、やはり罪悪感がそう見せたのでは。
道理を持ち出してきて罪悪感に苦しまないよう殺した事実から目を逸らす。人を殺したやつはみんなそうしてきたから殺しても生きていられるのだし、人を殺していないやつだって道理さえあれば殺す、みんなそうなんだ。そう思うことで自分は人間として大事なものが欠落しているわけではないんだと信じたい。
一方で、尾形と対峙するアシリパさんは、誰も殺していないし、父親を殺した相手に対してさえ不殺を貫きます。さらに、どちらももう亡くなってしまったとはいえ、父と母にしっかり愛された記憶を持っている。尾形とは正反対なんですよね。勇作さんと同じで、尾形とは境遇が鏡写しのよう。勇作さんやアシリパさんのような人間がいていいわけがないんです、尾形にとって。清い人間の存在を認めてしまったら自分が家族を手にかけた事実に真っ直ぐ向き合わないといけなくなる。自分に欠陥品の烙印を押すことになる。
尾形の心情、まだ不透明なところもありますが、なかなかシンプルですよね。自分がしてきたことを正当化するために、道理なんて理屈を無理やりつけて、さらに周りにも自分と同じ行いを強要してみんなそうだよねと安心したい。本当に小さい子どもみたいだなと思います。かわいい…愛しい…。やはり尾形はよしよしと撫でたい…なんて庇護欲をくすぐるやつなんだ…!構おうとすると素っ気なく振る舞いそうなところもいいですよね。ん猫ちゃん猫ちゃん。
尾形、後ろ後ろ!
勇作さんは、尾形のたらしこみには乗らず、結果として殺されました。尾形はアシリパさんをたらしこもうとするもできず、人殺しをさせようとしてもできず、結果、殺すしかなくなった。
どうなるアシリパさんvs尾形!?というところで杉元の登場。このページの尾形、アニメ2話修正前の尾形をちょっと思い出させるお顔…尾形のデザインの肝はやはり下まつげなのか?
尾形は殺されるんでしょうねぇ…あの距離なら振り向いて発砲して間に合うとは思えない…杉元の出血大好きな作者なので一発くらい尾形に撃たれそうですが、距離も近いし人数も不利だし杉元が負けるのはないでしょ…アシリパさんも弓で腕を狙うくらいの加勢はするかもしれないし…。
尾形の生存ルートがまったく見えませんが、杉元とアシリパさんの再会が近いのにはすごくワクワクします!!
あと、杉元vs尾形の戦いの中で、もう少し尾形の心境が語られるといいな。
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