ゴールデンカムイ第213話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第213話 樺太脱出

大泊に滞在する杉元一行のうち、白石とアシリパさんが部屋で宿の仲居さんと話す回想から始まります。北海道への連絡船が故障により出発が通常と違い、明日の早い時間に出ることを白石とアシリパさんは知ります。
アシリパさんはその連絡船に乗るに違いないと踏んだ白石は、谷垣と街の外れにある連絡船乗り場へ走ります。

杉元とアシリパさんは、「頭巾ちゃん」ことヴァシリに会います。第七師団がアシリパさんの周囲にいては尾形が姿を見せないのではと考えるヴァシリは、アシリパさんの樺太脱出に手を貸します。
ヴァシリの操る馬に二人も乗り、途中で白石も拾い上げて走り続けます。

馬に乗れなかった谷垣は、走りながらアシリパさんへ叫びます――鶴見中尉の監視の目があるのでフチの村へは戻れないぞ、と。
そんな谷垣に対しアシリパさんは、インカラマッがいるから谷垣は来るなと言い、さらにフチへ伝言を頼みます。フチに会う夢を見たから安心して、必ず会いに戻るから。谷垣を置いて四人は馬で走り去ります。

四人を見送ったあと、谷垣が白石と一緒でないことに菊田が気付きます。谷垣が白石はアシリパさんたちと街のほうへ逃げたと言うと、ならばなぜ追わない、走れ谷垣一等卒、と菊田は指示しますが…
俺はマタギの谷垣です、と谷垣は答えます。

連絡船上では、手負いの杉元が心配そうなアシリパさんに向け語ります。俺は俺の事情で金塊がほしい、戦ってこうして傷を負うのも覚悟しているだろう、と。杉元はアシリパさんの人を殺したくない信念を理解したうえで、アシリパさんのやり方でアイヌを守ってくれると信じ、彼女と同じ道を行く決断をしたのです。

一方船の近くに血痕を見つけた兵士がこちらへ近づいてくるのが見え、ヴァシリがそれを狙撃。稚内港行きの連絡船は無事に離岸しますが…
射撃音が鶴見中尉の耳に入り、連絡船に乗ったことを推理されてしまい、水雷艇で第七師団が追ってきます。

 

マタギの谷垣

今週は俺はマタギですと言う谷垣が輝いていましたね。
谷垣一等卒、と呼ばれ命令されたあとに言うところもまたいい演出です。

ゴールデンカムイでは、杉元のように、心が戦場に行ったまま帰ってこない人たちが描かれています。心が戦場にある、というのは、本来の自分ではないという表現だとやや語弊がありそうですけど、私の拙い表現力読解力ではこれが限界なので、本来の自分ではない、ということにしておきましょう。
杉元は梅ちゃんに自分とわかってもらえなかったように、こうありたいと願う自分ではない状態なのでしょう。谷垣も、本当は山で獲物を追うマタギとしての自分に一番誇りを持っていたのだと思います。けれど軍隊では、谷垣一等卒であって、上官の命令に従い敵を追う兵士でしかありませんでした。その兵士が菊田特務曹長の指示に背き、俺は兵士ではないと言うのです。然るべきところに自分の心が帰ってきた感覚があったのではないでしょうか。そして谷垣の心を帰す最後の一押しは、アシリパさんだったのでしょう。鶴見中尉に怯え信念を曲げることはせず、周囲の人々を助けもしながら、真っ直ぐ進んでいくアシリパさんの生き様を見て、こうありたいと願う自分になりたいという気持ちを外に表出させたのだと思います。

 

杉元の事情

杉元は今回、「俺は俺の事情で金塊がほしい」と言っています。ここに杉元の成長が少し見えた気がして、嬉しいです。

杉元は静かに暴走している状態にありましたが、アシリパさんと再会し、アシリパさんの人を殺さないという信念・アイヌを守るという決意を見て、暴走が収まったと思います。
ここでいう暴走状態とは、アシリパさんのためという建前を被せた恩着せがましい行動のことです。アシリパさんに手を汚してほしくないからアシリパさんを金塊争奪戦から離したい、という杉元のちょっと前までの願望は、アシリパさんのアイヌを守りたいという意思を無視したものですよね。それにアシリパさんのためと言って戦って、それによって負う傷は、アシリパさんをも傷つけることになっていたと思います。怪我をした人に、あなたのためだからと言われたら、罪悪感が半端ないですよね。なのでアシリパさんのためと言いつつ、結局は責任をアシリパさんにも押し付ける最悪の動機だったと思います。

でも今回の杉元は、俺は俺の事情で戦っているんだ、と言っています。アシリパさんのためなどという厄介な建前を被せたものではないです。もちろんアシリパさんを助けたいという気持ちも動機にはあると思いますが、俺の事情だという主体性の有無でアシリパさんの心の負荷もだいぶ変わってきますよね。

そうなると覚悟が必要なのがアシリパさん。アイヌを守るためには金塊争奪戦に参加して勝ち抜けなければいけないのです。アシリパさんは不殺を貫く信念を持っているようですが、杉元が言うように、アシリパさんの周囲の者たちは誰かを殺し誰かに殺されるかもしれないのです。間接的な殺人とでも言えばいいのかしら。そして誰かを守るために誰かを殺す場面も出てくるのかもしれない。それでも不殺を貫く覚悟があるかと杉元は問うていると思います。

アシリパさんがどうするのかはわかりませんが、誰かを手にかけるかアシリパさんが葛藤する場面が出てくるのではないかなと思っています。アイヌを守るために誰かを犠牲にする。村を守るためにヒグマの子どもを神へ送り返すように。でもアシリパさんなら、不殺の信念とアイヌの守護、どちらも両立する道を見つけてくれると私は杉元と同じく信じていますよ。

 

 

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また、以下は私の所感です。
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第212話 怒り毛

鶴見中尉のもとから逃げている杉元とアシリパさん。舟が置かれた倉庫の中を走り抜けていきますが、アシリパさんは行き先が決まっているようです。逃げる先に当てがあるということで、誰か味方になってくれる人がいるのでしょうか。

鶴見中尉は当然、部下たちに二人を捕らえるよう指示します。月島軍曹たちが手分けして探し始める中、谷垣が狼狽えた様子でこぼしたのは、アシリパさんがフチの村に戻れなくなる、ということ。鶴見中尉はフチの村、つまりアシリパさんが北海道に戻ったら行く先である場所を知っているのです。

倉庫の入り口で出くわした宇佐美を、杉元がバックドロップと踏み付けで追い込み、アシリパさんが積まれた米俵を落として動きを完全に封じます。応援にやってきた他の兵士に対しても米俵が大活躍。第七師団の兵士を蹴散らしながら二人は逃げ続けます。

しかしながら月島軍曹に出くわしてしまい、杉元の足は止まります。月島軍曹は躊躇なく撃ってきたのです。3、4発の銃撃を食らい倒れた杉元のところへアシリパさんが駆け寄ります。アシリパさんのおかげで銃撃は止まったものの(鶴見中尉はアシリパさんの記憶がほしいので傷つけたくない)、鯉登少尉までやってきてしまいます。

銃撃を複数発受け、杉元は再起不能に思われたのでしょう。アシリパさんへ拳銃を向けながら鯉登少尉が二人へ近づきます。それを見て、離れろと叫ぶ月島軍曹。ヒグマのように、怒りで毛を逆立てた杉元は、鯉登少尉に反応を許さず鯉登少尉の心臓の位置へ剣を刺します――。

剣は鯉登少尉の体に刺さると同時に背中側まで貫通しました。
俺は不死身の杉元だ、そう叫んだ杉元は他の兵士を叫んだ勢いのまま始末し、奪った銃を振り回して周囲を圧倒します。

二人がその場から逃げ出すと、月島軍曹が座り込んでいる鯉登少尉へ近寄ります。剣を抜かないよう鯉登少尉を制止し、さらに、感情的に動くなといつも注意していたでしょう、とこぼします。昨日は素直に注意を聞いてくれたのに、と胸の中でも同時にこぼしながら。

そのとき鶴見中尉が通りがかります。鯉登少尉の頭を膝に乗せている月島軍曹を一瞥し、無言で杉元たちが逃げたほうへ歩いていく鶴見中尉。月島軍曹にも、鯉登少尉にも何の言葉もかけません。

鯉登少尉が戦闘不能になり兵士も数名失った鶴見中尉と月島軍曹。銃撃を受け満身創痍の杉元と、アシリパさん。彼らの追いかけっこはどうなるのでしょうか。

 

それぞれの境遇おさらい

今回は各自の言動で、置かれている状況や辿ってきた経歴がよく見える話だったなと思いました。

まずは谷垣。アシリパさんとフチを心配していましたが、彼がこの旅にやってきたそもそもの発端は、レタラによって負わされた脚の怪我をフチにお世話になって癒したことが始まりです。恩返しのために、孫を連れて戻ってくるというのがきっかけなのです。
また、彼自身もインカラマッを人質に取られているような状況です。アシリパさんにとってフチが人質になっている状況だというのを、おそらく他の誰よりも理解できています。だからこそ二人が逃げ出して一番肝を冷やしたのではないでしょうか。

次に鯉登少尉は、状況を冷静に見極めず突っ走ってしまう青さが目立ちました。若い将校、という性格のほうが勝った描かれ方でしたね。
なんやかんやあっても生き残る次代の象徴というポジションかと思っていましたが違うのでしょうか…。迂闊なボンボンとしてこのまま終わってしまうのですかね…尾形に言われたことが気になって最終的に鶴見中尉の元を離れるという筋書きが一番きれいだと思ったのにな…。

月島軍曹は、鶴見中尉のやることに対し思うところありつつも、それを行動に表すことはせず任務を忠実にこなす人でしたね。でも刺された鯉登少尉に対して、戦友への想いの一端を見せていたあたりが今週の好きポイントです。菊田のようにすぐに杉元たちを追わず、鯉登少尉へ声をかけるところが、激昂のあまり父親を殴り殺し上官にも殴り掛かる彼の激情っぷりを少しだけ見せています。ただただ鶴見中尉に忠実な部下ではないのです。それに、かつての鯉登少尉のようにひたすら心酔というわけでもない。思いを抱えながらも自らの選択として鶴見中尉についていくことを選んだ大人の部分と、刺された鯉登少尉を通り過ぎることができなかった情に厚い部分とが、今回のお話に詰まっているなと感じました。

月島軍曹は鯉登少尉を救おうと急ぐ様子も、想定外のことを引き起こされて焦る様子もなく、ただただ静かに語りかけていました。この逃走劇に似つかわしくない穏やかさが、鯉登少尉の終わりを確信しているように見えますが果たして鯉登少尉はどうなるのでしょうか…。鶴見中尉も一瞥しただけで素通りです。鯉登少尉は駒に過ぎず使い終われば声をかける必要もないということでしょうか?

 

暴走杉元再び?

杉元はスチェンカで暴走したとき、根っこには網走監獄で何もできなかった不甲斐ない自分についての後悔がありました。その後、アシリパさんを戦いから遠ざける、とアシリパさんの意思を確認せずに突き進みます。このように杉元はアシリパさんと離れてからやや不安定な部分がありました。
しかし前回のお話でアシリパさんが杉元へ私のことは私が決める、と意思表示。それによって杉元もアシリパさんの意思を確認し同意したうえで戦うことになり、久々に清々しい笑顔を見せてくれました。

アシリパさんは杉元を救って来たのです。北海道の山で狩りをし、戦場に行ったままの青年の心を少しずつ人に戻しました。
暴走していた杉元の心も、矢じりに毒のない矢を放つことで、一瞬で信頼し合っていた相棒の頃の杉元へ戻してしまったのです。

さて、今回はアシリパさん側の心境について考えてみました。
俺は不死身だと自分を奮い立たせ、短期間であれ行動を共にした鯉登少尉ですら攻撃し、敵であれば容赦なく殺す杉元を見て、アシリパさんは何を思ったのでしょうか。

おそらく、杉元にはまだ救いが必要だと思ったのではないかなと思います。本人がそう自覚したというよりも、尾形との流氷上でのやり取りを経て、杉元のこの様子はもしかして苦しんでいるのかもと感じたんじゃないでしょうか。

杉元は、俺は不死身だと叫びますが、これは自分を奮い立たせるためだと思います。不死身だから暴力を恐れない。不死身だから恐怖に屈しない。不死身だから立ち向かえる。不死身だから死ぬことは怖くない――。
でもそれは裏を返せば、痛みや死を恐れるただの人間の心があるからゆえなのではないでしょうか。恐怖する自分を焚き付け前進させるための合言葉が「俺は不死身の杉元だ」。

杉元は本当は梅ちゃんに認識してもらえる人間でありたいのかもしれません。アシリパさんと出会い山で狩猟生活をしていた頃の杉元はあの頃の杉元だったのかも。
そのときの杉元を近くで見ていて、尾形からも清さを問われたアシリパさんだからこそ、樺太での離れ離れのあとに再会した杉元の様子に気付いた、と考えられるのではないでしょうか。
しかも杉元が暴走する原因はアシリパさんです。暴走しているかのように自分の体や命など顧みず敵を倒す杉元を見て、この青年は自分のためにここまで鬼になっているのだと感じ、杉元に必要なことは何だろう?という考えが過ったのではないかと。

直前に鶴見中尉・月島軍曹・鯉登少尉のエピソードが挟まれたのもそういう意味かしらと思えてきます。
鶴見中尉のために汚れ仕事も引き受ける月島軍曹。アシリパさんのために人殺しを行う杉元。
この役割分担を続けるのかそれともアシリパさんがやむを得ず誰かを手にかけ戦う人生を選ぶのか、はたまたアシリパさんは手を汚さず杉元にもこれ以上手を汚させない道があるのか。

ほとんどただの妄想ですけど、アシリパさんと杉元の間にはもう一段階くらい、峠がありそうな気がしています。

 

 

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第211話 怒りのシライシ

いよいよ鶴見中尉が大泊へ到着する日がやって来ました。杉元は眠れなかったのか朝焼けの時間に建物の外に佇み、ただただ虚空を見つめます。そこへ酔っ払いの白石が朝帰りしてきます。
鶴見中尉にアシリパさんを引き渡すんだろ、と白石は杉元に絡みます。杉元は、アシリパさんを戦わせたくない一心で、自分のしようとしていることを正当化しようとしますが…。
梅ちゃんはどうなるんだ、恋人でも嫁でも娘でもないのにアシリパさんを正しい道へ導くつもりか、と白石は杉元の痛いところを突きます。杉元が見ていないだけで、樺太の旅でアシリパさんは大きく成長しました。キロランケがまさしく命がけで見せたものはアシリパさんに覚悟を決めさせました。アシリパさんがアイヌを背負いたいのならそれをどうこうする理由はない、と白石は杉元に詰め寄ります。彼女を自立した相棒として信じろと、酔っ払って吐いて倒れこみながらも杉元を諭します。

日が昇り、いよいよ水雷艇が大泊へ到着しました。鶴見中尉はアシリパさんの目を見て、在りし日のウイルクや死体になって再会したときのウイルクを思い出しながら、父親と同じ目だ、とこぼします。
飲み過ぎた白石が吐いてそちらに鶴見中尉たちが気を取られている隙に。アシリパさんが矢筒から矢を5本抜き出しました。私のことは私が決める、そう杉元に言いながら弓を引くアシリパさん。何かを了承し頷く杉元。
アシリパさんは上空に向け矢を放ちました。空に舞った矢が重力に従い地に落ちてくる。その落下地点を見極めようと、第七師団の兵士たちが真上を見上げているとき、杉元は、毒矢だと叫びます。その場の皆が毒矢を避けるのに必死になった隙をつき、杉元とアシリパさんは走り出します。

実は、アシリパさんが放ったのは毒矢ではありませんでした。矢じりに毒がついていないことを杉元はすぐに見抜き、逃げる気のアシリパさんへ組したのでした。
樺太で離れていたとはいえ、共に北海道を旅した二人のコンビネーションは相変わらずです。言わずとも通じる杉元だと再認識し、不敵に笑うアシリパさんは、杉元にこう言います――相棒なら一緒に何かをしようという前向きな言葉を聞きたい、と。それに応じる杉元は、二人で金塊を見つけようと晴れ晴れとした笑顔で答えます。

 

アイヌの矢

今週号は、野性の杉元が戻ってきた~!!と爽快感あふれる回でした。
久々に杉元とアシリパさんの気持ちが通じている描写、気持ちがいいですね。
しかも矢をフックにした展開で、二人が最初に出会ったときのことを思い出します。矢=アシリパさんの象徴なのですよね。それでヒグマとも戦うし、杉元が鶴見中尉の元から逃げる手助けもするし。アシリパさんがアイヌとして生きること戦うことを表していると思います。

杉元とアシリパさんの関係がどうなるのか先週までかなり不安でしたが、仲を取り持ったのは白石でした。本当によかった…。
白石が、お金の話を持ち出したのは、自分が出会った当初お金のために手を組んだように、杉元にも金塊争奪戦に参戦した当初の目的や初めの頃の気持ちを思い出してほしいからでしょうね。
白石は、以前に述べた通り、すでにキャラクター一個人の中の葛藤を乗り越え成長をしていますし、杉元とアシリパさん、どちらも近くで見てきた彼だからこそ間に入って繋ぎ直せたのですよねぇ…。
人と人とが繋がるところは数多く見ますが、誰かと誰かを結び付けられる人は貴重ですよね。そういう点でもやはり白石は誰かのために行動できる人間になったのだろうと思います。谷垣も、チカパシとエノノカをきちんと結んであげたし。こちらはそもそもチカパシが先に谷垣とインカラマッを結び付けたのですよね。

結び付けるといえば、相手に鎖をかけ強固な楔で自分の傍に打ち付ける、鶴見中尉って人もいるんですけど……こちらは自分と相手のことなので白石谷垣チカパシとは別、ですね!

 

三つ巴の始まり?

杉元とアシリパさんが二人だけで戦うことを選びました。つまり、鶴見中尉と対立することを選んだのです。
ということは、杉元・アシリパさん、鶴見中尉率いる第七師団、土方さん、この三つ巴の戦いの始まりになるのか…!?という新しい展開が待ち構えていそうです。

また、鶴見中尉がこのままみすみす二人を逃がすのか?という不安も。鶴見中尉との合流がいやにすんなりいった印象がありませんか。鯉登少尉のキェェェも、月島軍曹の報告もなし。杉元がピリピリするであろう場面も、谷垣が緊張する描写も特になし。アシリパさんとの邂逅に重きを置いていると言えばそうですが…
有古のときもそうでしたし、あっさり場面が進んでいるときには、実はこのとき…とあとから種明かしされるパターンが考えられるので、まだ油断できないなーと思います。
鶴見中尉はウイルクに思うところありそうでしたね。ウイルクたちと出会ったことで結果的に家族を失った、とも言えるので、やはり妻子が絡むからか?と思いますが、金塊の真相絡みの可能性もあります。鶴見中尉しか知らない事実がまだあるはずです。ウイルクがアイヌを殺した濡れ衣を着せられましたが、では誰が何のために殺したのか?遺品回収をした鶴見中尉は現場で何を得たのか?など…。

あとはそもそも大泊で別行動になっても無事北海道へ帰れるのか?という心配がありますが…
ここでおそらく尾形の再登場では??と思うんですよね。
先週、鯉登少尉に揺さぶりをかけていたことがわかりましたし、鶴見中尉に敵対する者として、今度は杉元・アシリパさんへ味方する流れで出てくるのかも。あんなことがあったあとでまた以前のように手を組むなんてできないかもですが…。

杉元とアシリパさんが再び相棒として共に走り出して、今後の展開がまたまったく読めなくなってきましたね!

 

 

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第210話 甘い嘘

先週のチカパシとの爽やかな別れの話から打って変わって、今週は鶴見中尉の回です。少しずつ鶴見中尉の狙いが明らかになってきました。

馬ぞりで大泊へ到着し、杉元一行は鶴見中尉の到着を待ちます。鶴見中尉に心酔している鯉登少尉は、月島軍曹に尋ねます。
亜港の病院で尾形が逃げる直前に鯉登少尉へ何と言ったか。
そして、これは尾形脱走の回では描かれていなかった新事実なのですが、鶴見中尉に「満鉄」について聞いてみろ、と尾形は言い残していたようなのです。

「満鉄」とは、南満州鉄道株式会社です。日露戦争後のポーツマス条約によって露西亜帝国から得た鉄道を経営するための会社だそうです。(Wikipediaより←新しいタブで開きます。)
当然ながら、鉄道路線を引けばその沿線に様々な施設が建ちます。物資供給ルートも確保でき安定供給が可能で、日本の領土拡大の足掛かりとなり得ます。
しかしながら経営がうまくいくはずがないと反対する人物がいました。それが尾形の父、花沢幸次郎中将です。鯉登少尉の父と花沢中将は親しいため鯉登少尉の耳にも満鉄の話は入っていました。花沢中将の自刃によって満鉄の件が進んだという認識もあるようです。

ここで鯉登少尉が気になっているのは、花沢中将の死に鶴見中尉が関わっているのでは?ということ。鶴見中尉は以前こう言っていました。戦友たちは満州に眠っており、満州が日本領であれば彼らは日本で眠っていることになる、と。つまりは満州を日本領に置いておくため鶴見中尉は満鉄が必要で、満鉄計画に反対する花沢中将の存在が邪魔と考えたのでは?という推測に至ったわけです。
また、鯉登少尉の考えでは、尾形は父親に自刃させた中央に不満を持ち鶴見中尉についていたが、父の死の真相を知り離反した…と、たしかに筋は通っています。

鯉登少尉がそう考える根拠は函館での音之進少年誘拐事件。覆面の犯人に鯉登少尉は「ボンボンが」とロシア語で言われているのです。亜港で尾形に同じ言葉を言われたのがきっかけで回想編に突入したのでしたね。つまり函館で覆面の誘拐犯が言った「ボンボンが」と、尾形の言った「ボンボンが」が鯉登少尉の中で繋がったのです。
また、さらにあのときの覆面の犯人の中には月島軍曹もいたのではというところまで鯉登少尉の推理は進みます。となると、あの誘拐事件は全て鶴見中尉が仕組み尾形や月島軍曹と一緒になって演技していたお芝居になります。尾形が満鉄のことを言い出したのは、尾形親子と同じく鯉登親子も利用されているのだと示したかったからではないか?鯉登少尉の父、鯉登少将の抱える大湊水雷団の利用を目論んでの大芝居だったのだろう?と鯉登少将は月島軍曹に詰め寄ります。

そこで月島軍曹は返します――鯉登親子は救われたではないか、と。
月島軍曹も鶴見中尉の大芝居に巻き込まれた人物です。佐渡の想い人を利用した、9年がかりの大芝居。奉天会戦の野戦病院で、佐渡訛りでいご草ちゃんのことを話した男は、そのときその場にいるはずのない第2師団の人間でした。これも鶴見中尉の仕込みだと月島軍曹は言いたいのでしょう。鶴見中尉は月島軍曹を手元に置いておくために9年という歳月と多大な労力を費やしたことをまざまざと月島軍曹に見せたわけです。
鶴見中尉が月島軍曹を必要としている理由は、忠実な手足として利用するためだと月島軍曹は考えています。鶴見中尉は、戦友が眠る満州を日本領とするために必要なことをしているのだと語られますが、鶴見中尉の真意は月島軍曹にもわかりません。それすらも鶴見中尉についてくる者たちのための「甘い嘘」かもしれないのです。
ではなぜ月島軍曹は鶴見中尉についていくのか?その答えは、鶴見劇場を観たいから。鶴見中尉が最終的に何を成し遂げるのかを見届けたいから。そしてそんな鶴見中尉がいよいよ大泊に到着し、次回は波乱の予感です。

 

ホラー回

今週号…怖かったですね!!月島軍曹のあんな顔初めてだし、お前はまだいいだろう、なんて恨み言をつらつらと言われたら、私だったらその場に立っていられないと思います…恐怖で。
鶴見中尉は未だに腹の底が読めなくて、彼が出てくるだけでホラーっぽくなりますね。。現れるたびに誰かが惨たらしい目に遭う殺人鬼みたい…。鶴見中尉、最後のコマ以外は回想でしか出てないのにこのホラー具合。来週が恐ろしい…!

亜港の診療所で少し疑問に思っていた、鯉登少尉は無事で尾形も無事でしかも逃げおおせたという展開に繋がる、空白の部分が補間されましたが、去り際に尾形はとんでもない爆弾を残していきましたね。「ボンボンが」という言葉は函館でのことがあったので、そのときの記憶と繋がるだろうと確信して尾形は言っていたと思います。ただのロシア語できるよアピールならかわいいですけど…。

最後に鯉登少尉が、鶴見中尉にそこまで必要とされて嬉しい、と言っていましたが、私は少し違うのではないかなと思いました。海軍少将である父親の持つ力がほしかったのであって、彼の協力を得るための道具が鯉登少尉ではないかと。二人とも生きているのでどちらに対しても言えますが、お互いが脅されている立場であり人質の立場でもあります。片方の命が惜しければ従え、と。おそらく鯉登パパは鶴見中尉の恐ろしさに気付いているのではないかなと勝手に思っているので、鯉登パパのほうが脅されている立場の気分でしょうね。息子が人質に取られているも同然の状況です。

 

鶴見劇場の役者たち

鯉登少尉自身の必要性は実は低いというのが、今後の展開に繋がるんじゃないかなと妄想しています。キャラクターには役目があるものですが、鯉登少尉は年若く、世間知らずで、周囲に迎合できるほどの柔軟性もその必要性を理解するほどの思慮深さもまだなく、鶴見中尉にあれだけ心酔するほど視野が狭く(競走馬のよう)……と、かなり「若者らしい青さ」を体現したキャラクターなのですよね。こういったキャラクターはだいたい物語の終盤で、信じていたものが自分の思想とかけ離れた実態であることに気付き、己の過ちに気付いて成長し、立場を変え再び登場する……というのが定石かなと。今週も、推測ながら事実に近付くという物語を進める役回りでしたし。(まぁ直後のアレで、もうしばらくは鶴見中尉にゾッコンだなと思わされましたが…。)
あとは、父親が、「軍人は自らの子どもにこそ先ず戦場へ行かせる」「子どものために重要な軍の資産を差し出すことはしない」という主旨のことを言っているのですがこのあたりもフラグっぽいなと…。身を盾にして鯉登少尉を守るのではないかなと思うのです。この親子が一番理想的な親子(親が身を挺して我が子を守る)というのが流れとしてキレイだと思いませんか。
鶴見中尉の真の狙いや行いの恐ろしさに気付いた鯉登少尉が、杉元やアシリパさん側につくというのもあり得るのではと思います。その気付きのきっかけが、実は自分自身は必要とされていないということを思い知った、だと思います。最終的に中央に鶴見中尉を差し出すのが鯉登少尉なのかもしれないというところまで発展しますが……あくまで妄想ですので。。でも、「若者らしい青さ」を持ったキャラクターが成長した姿は、未来への希望としてぴったりだと思うのですよね。

月島軍曹は役目で言うと、鯉登少尉を助けつつも鶴見中尉についていく人かなと思います。希望を潰えさせたくなくて鯉登少尉が鶴見中尉の元を離れるのを密かに手助けする。けれど自分はそちら側には行けない、行けたとしても行く意味がない(鶴見中尉がいないから)ので、最終的には鶴見中尉と道を共にする選択をする。そんな月島軍曹が想像できるような気がします。私の想像では、月島軍曹は鶴見中尉に地獄の底までご一緒しますと言う気がしますよ。そこに自らの行いが全て誤りだったわけではないと気付いた鶴見中尉がほほ笑むところまで妄想できます。

鶴見中尉はやはり悪役として退場まで突き進むのかなと。史実ベースで時代考証もしっかりした作品ですから、第七師団が政変を起こし別の時間軸へ突入…なんて展開はないと思います。史実通りなら鶴見中尉の計画はどこかで誰かに阻止されねばならないので…(このあたり歴史モノの辛いところですね!結末がわかっている。でも末路を知りつつもそのときの輝きや生きた証を楽しむという醍醐味の部分でもあります)政変を目論むもとん挫した、主人公とはまた別の正義として描かれるのだろうなと思っています。

史実通りに進むはず、という推測。これが辛いキャラクターはあと二人います。
一人は土方さん。北海道をアイヌと共に独立させただなんて歴史はなかったので、金塊争奪戦を勝ち抜き目的を果たすという結末はないと思われます。
もう一人はアシリパさん。アイヌは、ご存知の通り、ゴールデンカムイの作中の文化・生活様式を守りながら現代まで生きているわけではありません。アシリパさんが残したいとこんなに願っているのに…。

鶴見中尉も土方さんもアシリパさんも願いを叶えられない結末が一番現実的です。そうなると、この戦いの勝者は誰になるのか?そもそも本当に金塊は存在するのか?という疑問が浮かび上がります。次回はおそらく鶴見中尉とアシリパさんの邂逅。金塊争奪戦の中心にいるこの二人が出会って物語がどう進むのか、怖いけれど楽しみです!

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の想像・妄想・曲解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第209話 ケソラプ

今週は杉元一行の話。
リュウはなんとエノノカたちのソリを引く犬の先頭犬「イソホセタ」に昇格しました。ヘンケのソリの先頭犬の頭の飾りを羨まし気に見ていた頃を考えれば大出世です。先頭犬は特別なので飼い主と一緒に家の中で寝起きする風習があるそうで、一度は二瓶というかつての主人を失ったリュウですが、ここ樺太で自分の居場所を見つけたのでした。

ここがリュウの居場所なら、杉元たちはリュウとはここで別れなければいけません。もちろんヘンケ・エノノカとも。エノノカと鯉登少尉は、犬ぞりを使わせてもらうビジネスパートナーなので別れに涙しながらも鯉登少尉からお金を受け取るエノノカ。しっかりした子です。
でも、エノノカとチカパシは、一緒にたくさんの大冒険をした友達同士。別れるだなんて辛すぎて、さようならとは言いたくないとエノノカは言います。また会える保証なんてないのに、また来るねと返すチカパシ。大泊まで行く通りがかりの馬ぞりに乗って杉元たちとチカパシはヘンケ・エノノカ・リュウと別れます。でも手を振ってくれているのはヘンケだけ。エノノカはヘンケの後ろに隠れて泣いているのです。

ヘンケが手を振るのをやめるくらいにチカパシが小さくなってから、とうとうヘンケの後ろから出てきたエノノカは、チカパシに必死に呼びかけます。その呼びかけに振り向き手を振って応えたチカパシはソリから落ちてしまいます。
チカパシを拾おうと馬ぞりが止まりました。立ち上がったチカパシは、北海道へ戻る杉元たちと、目に涙をためているエノノカを交互に見やりながら、シネマトグラフ撮影の芝居を思い出していました。谷垣がケソラプを演じ、身寄りのなかった弟分の自分に家族を与えてくれたお話です。チカパシの足は、杉元たちのほうへすぐには向かいません。ケソラプのお話とまったく同じ状況に自分が置かれているのです。このまま北海道へ戻っていいのか?ここに残るべきなのか?チカパシは馬ぞりに戻ってくるのをためらいます。

その様子を見て谷垣が動きます。谷垣もまたチカパシとのことを思い出していました。チカパシが猟に勝手についてきたところから始まったこの長い旅路のことを。谷垣の零した大粒の涙がチカパシの頬を濡らします。谷垣はチカパシの背中を押しました。チカパシの居場所はここなのだから残りなさいと。そして二瓶から受け継いだ村田銃をチカパシへ託します。もう俺は支えてやれないから大きくなってひとりで立つまで銃は使うなと付け加えて。
ひとりで立つとはつまり「勃起」!!

こうしてチカパシは谷垣と別れ、自分の家族をつくることになるのです。

 

谷垣の持つ人間らしさ

今回は爽やかな涙が湧き上がる感動的な回でしたね!
チカパシの明らかに迷っている、というより、もう自分の中ではほぼ決めているのに決定打がない表情。きっとチカパシの心残りは、谷垣とインカラマッだったのでしょう。でも谷垣が送り出してくれるのだからインカラマッも大丈夫だと安心できたのだと思います。

谷垣がメインのお話はすごく感情移入できてしまいますね…泣いてしまうこんなお話…。
杉元たちに、少し待っててくれと言いソリを降りて、チカパシの元に来るまで一体どんな心境だったのでしょう。弟のように、なんならインカラマッと一緒になって世話した自分の子どもにすら思える存在を、遠い土地に置いていくという決断。チカパシの元に歩み寄るまでそれまでの旅を思い出し、こみ上げるものをこらえながら歩きましたが、チカパシに語りかけるときに堰を切って涙があふれたのだと思います。
家族をつくりなさい、なんてまるで親が子に言い聞かせているような口調じゃないですか。普段の谷垣とチカパシの間柄なら「つくるんだ」「つくれ」とかでもよさそうなのに。きっと谷垣自身も自分に言い聞かせているから「つくりなさい」なのかな、と思います。別れるときに本当に試されるのは送り出す側ですよね…谷垣もこの旅でずいぶん成長したのですね…こんなこと言えるなんてまるで父親みたい…。

谷垣は、ある意味ひねくれた動機を持つ者だらけのゴールデンカムイでは、わかりやすい動機を持っているのでつい自分自身を重ねて読んでしまいます。入隊のきっかけになった妹さんの件は、家族を奪われた無念さ。賢吉の件は、親友の苦しみを知りそれを受け入れる愛情の深さと、自分の役目は何だろうと自問する謙虚さ。どの要素も私をはじめたいていの人が持っている部分だと思います。人を恨んだり愛したり、時に他人を通して自分の姿を見たりそれで迷いが生じたり。谷垣はすごく人間らしいキャラクターです。それゆえに今回の彼の心の動きを想像して泣いてしまうわけです。

 

自分以外の誰かのために

また、谷垣の特徴として、何度か変化=成長しているところがあると思います。妹殺しの犯人として憎んでいた賢吉を、最後には許し看取ったこと。はじめは警戒していたインカラマッとは、彼女の打算的な一面に何度か騙されながらも、彼女を救うため樺太行きを決意するほどの仲になっていますし。今回の件も、大切な人だからこそ選択を間違ってほしくないという思いでチカパシの背中を押したのです。

この変化というか、成長。ゴールデンカムイの物語の中では変化しているキャラクターが何人かいますが、わかりやすくいい方向へ変わっているのって、白石と谷垣くらいなのですよね。
白石は自分の欲望に忠実に生きていましたが、網走監獄で杉元と離れて樺太にキロランケたちと行き、離脱する選択肢もあった場面で、杉元の頼みだからと自らアシリパさんへついていく道を選びます。安全なところにいたいという自分の欲求とは違うのに。谷垣は今回チカパシのためにあえて別れを選択しました。自分のためではなくて誰かのために選択するということをやってのけたこの二人の男は最高にかっこいいですね。
杉元もこの最高にかっこいい側に入れそうな気がしています。アシリパさんが望むこと、アシリパさんが後悔しない道を選べばかなりかっこいい。ただアシリパさんの場合はまだ彼女にとっての答えが定まっていないので、アシリパさんの選択を手放しで後押ししていいものかという疑問の余地はあります。そこがまだ杉元を悩める青年枠に押し留めていますね。主人公なのだからまだまだ大いに悩んで迷って暴走してくれていいのですが。

杉元の周りがあまり見えてなさそうな感じが絶妙に青臭くて、彼の変化が楽しみです。主人公サイド寄りで描かれているのはまず杉元と、アシリパさん白石に谷垣あたりが中心ですが、白石と谷垣は前述の通り変化しているのでこれからはより杉元とアシリパさんの変化にスポットライトが当たるものと思います。
戦場で心を失った青年がアイヌの少女と過ごすうち戦争に行く前の自分を取り戻し、今度は自分を救ってくれた少女をいかに救うか。今の杉元はアシリパさんを戦いから引き離すことで救おうとしているようですがアシリパさんの望みが戦うことでしか叶えられないならどうするのか?今後の物語はここが焦点になるのかなと思っています。

 

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第208話 限りなく黒に近い灰色

雪崩の直後。都丹はまだ息がありました。何か情報を聞き出せるかもしれないと思った有古は都丹を雪から出して担ぎます。
そこへ現れたのは土方さん!!夏太郎も久しぶりの登場です。
都丹を仕留めに行った有古が土方さんと出会い、なぜ鶴見中尉を裏切ることになったのか?今回はその答え合わせのお話です。

鶴見中尉の荷物をあさる有古のところへ鶴見中尉・菊田・宇佐美が詰め寄るシーンに戻ります。
鶴見中尉は語ります。鶴見中尉と土方さん、この二名が現在、主に金塊を追っていますが、目的が違うため取れる手段も変わってきます。
土方さんは、北海道を独立させることが目的です。そのためには元から住んでいるアイヌ民族の協力が不可欠。ゆえに土方さんの意にそぐわない動きをした場合に、厳しい制裁はできません。そんなことをしては信頼関係が築けませんから。
一方で鶴見中尉は、北海道に兵器工場を作り戦争を起こし続けることが狙いです。アイヌの協力は必要なく、それゆえに相手が誰であっても厳しい態度で臨むことができます。
鶴見中尉は恐怖で荒い息をしている有古イポプテに語りかけます。裏切った場合は家族にも容赦せず報いを受けてもらう、と。
有古が鶴見中尉を裏切れないと理解したのを見透かしてか、鶴見中尉は刺青人皮をすべて有古に渡します。刺青人皮は、金塊にたどり着くために絶対に必要なもの。だからこそ写しではなく皮のものを渡すことで、土方さんを信用させろというのです。有古を信用した土方さんは有古を傍に置くはずなので内通者として潜り込み、情報を鶴見中尉に渡せと。つまりは有古に二重スパイをさせるわけです。

しかしながらこの刺青人皮は、江渡貝くんが作った偽物です。刺青人皮は紙に写したものもありますが、それでは偽造ができてしまうので、有古が持って行ったとしても土方さんはそれを本物とは考えないでしょう。刺青人皮は皮であることが重要なのです。皮ならば本物と信用するだろう、皮でも偽物があるとは思うまい、という鶴見中尉の作戦です。

しかし。土方さんたちも、偽物の刺青人皮があることに気付いていました。江渡貝邸で、第七師団によって火がつけられるまでのほんの短い間に、土方さんは偽物に繋がる情報を集めていたのです。それまで土方さんの中で推測でしかなかった偽物が、手元に舞い込んできた。有古を使った作戦はまずまずの成果です。
永倉は、網走監獄で杉元たちが鶴見中尉に確保されたのを見ています。つまり杉元の持っている都丹の刺青の写しは鶴見中尉の手元にあるということ。その状況で、有古が都丹のものだと偽って刺青を持って行ってもすぐにバレてしまいますが、そこも土方さんは計算済み。都丹のものだと偽って持って行っても有古が鶴見中尉の元から逃げられたのは、二重スパイの可能性があると、鶴見中尉の考えは土方さんに読まれています。

刺青人皮が集まり、いよいよアシリパさんと鶴見中尉の邂逅も近いです!

 

悪魔との契約

今週は、頭脳戦で読みごたえがありましたね!
都丹のものだと偽って持ってきたときに有古の裏切りに気付きながらも、自分が入浴している(鶴見中尉は常に刺青人皮を身に着けているので)隙に有古がやってくるまで泳がせていた鶴見中尉も怖いですが、家族にも報復するぞと脅迫して有古を縛り付ける鶴見中尉は悪魔そのものでしたね。

鶴見中尉は悪役らしく描かれていて面白いです。
有古もそうですし、月島軍曹も、言わば大切な人を人質に取られているのですよね。いごちゃんは生死不明として描かれていますが、髪の毛まで用意できるということは、生きていたとしてもすぐに手を下せるところにいるということでしょう。
鯉登少尉も同じなんですよね。息子の命の恩人ということで鯉登パパと鶴見中尉は仲良く描かれていますが、懐に入り込んでいるということはいつでも喉元に刃を突き付けられるとも言えます。鯉登少尉は鶴見中尉にすっかり心酔しきっているのでそんなつもりはまったくなさそうですが、子どものほうをたらしこむのは常とう手段です。

大切な人と言えば、谷垣にとってのインカラマッ、杉元にとっての梅ちゃん、アシリパさんにとってのフチ。
アシリパさんは暗号解読に協力してもらわないといけないので鶴見中尉も手荒な真似はしないと思いますが、杉元と谷垣相手にはきっと大切な人がどうなるかわからないぞと脅すのでしょう。杉元はアシリパさんを用済みにしないため暗号解読の鍵をそうやすやすとは聞き出さないつもりでしょうが、鶴見中尉のことなので杉元の出身や人間関係まで調べがついていると思います。

人質に取るというと、樺太出発時の谷垣を思い出します。谷垣は鶴見中尉の元で働いていたからその恐ろしさは知っているはずが、同時に、忠実に従いさえすれば人質に手を出さないというのも知っているのではないでしょうか。だからインカラマッを置いて出発できたのだと思います。
鶴見中尉に従って役目を果たし、仮に解放されたとしても、その後も監視下に置かれていそうで嫌ですけどね…。

一度契約してしまったら生涯離れられない、地獄の底までずっと一緒。まるで悪魔みたいですね、鶴見中尉は。

 

尾形は悪魔の契約を反故にできる?

鶴見中尉の駒として動いている人を思い出すと、尾形だけ例外なように思えてきます。
この男だけは、大切な人を守るため鶴見中尉に従う、というわけではないのです。そもそも家族は自分で殺していますし。
そうなると尾形だけは鶴見中尉の支配下から逃れられた、と見るべきかな?と思います。
造反したまま無事でいるのもこの男だけですし。玉井伍長たちは死亡、二階堂は耳に始まり体のパーツを次々失いモルヒネ漬け、と鶴見中尉の元を離れようとした人は無事ではないのですよね。

ただ尾形のアシリパさんへの執着具合、勇作さんを重ねているだけでは説得力に欠ける気がするので、もっと他の理由もある気がしています。そうなると尾形にとってアシリパさんも人質になり得るのでは?という推察もできるので、鶴見中尉の手がまた伸びてくる可能性はありますかね…。

 

いよいよ暗号の謎が解かれるかもしれないですし、土方さんvs鶴見中尉の構図も鮮明になってきました。
早く続きが知りたいですが、合併号ということは次週は発売なし…。お盆休みでゆっくりしながら次回を待ちます。

 

 

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第207話 塹壕から見えた月

先週までのアシリパさんたちから登場人物は変わり、今回は登別にいる鶴見中尉たち第七師団のお話です。
なんと、都丹が生きていました!!死んだと思われていた都丹がどうして生きていたのか、その死を確認したはずの有古は嘘をついていたのか、それはなぜか?その一端が見えるお話です。

都丹の刺青人皮を手に入れた鶴見中尉たちは、手持ちの暗号を並べてみます。アイヌである有古は、祖母の刺青がヒントになるかもしれないと意見を述べます。アイヌ女性の刺青には地域差があるので隠し場所のヒントになるかもしれない、と。しかしながら並べられた刺青からは特に情報を読み取れず、有古は鶴見中尉に尋ねます。これが手持ちの全ての刺青か、と。それに対し鶴見中尉の返答は、これが全てだ、というものですが、その表情は影があり何かを隠していると言わんばかりのもの。鶴見中尉は真実を言っていないのです。
鶴見中尉は、都丹を単身で仕留め刺青を持ち帰った有古を褒めます。有古はただ運が良かっただけだと言いますが、それに対し鶴見中尉は、運が悪ければ刺青が一枚欠けてしまい永遠に金塊が見つからないかもしれない、と言います。鶴見中尉のその発言の真意を掴めずにいる様子の有古。

有古に焦点が当たる状況は続きます。
鶴見中尉のいる建物を出ると空を見上げる菊田が有古に声をかけます。月だけは同じだ、と。
菊田と有古は、奉天会戦のとき、爆撃された塹壕で発見されないまま一晩を明かしました。お互いの生存を確認するために一晩中声を掛け合って。塹壕から見えた真っ暗な空に浮かぶ細い月。じきに新月となる頼りない細い明かりです。

そしてやがて迎えた新月の夜。
有古が窓を突き破って雪深い地面に落ちます。それを狙い破れた窓から発砲する兵士たち。血を流しながら移動し、どこだ、と誰かに声をかける様子の有古。
なぜ有古が仲間であるはずの兵士に撃たれているのか?それは都丹の生存が全てを物語っています。都丹は生きていました。生きており、しかも敵として戦った有古に手を貸しています。新月は都丹の独壇場。舌の音で道を探りながら有古を引っ張っていきます。

都丹と合流した有古が抱えているのは刺青人皮の入った袋。鶴見中尉の元から盗んできたようです。それも全部。
有古が刺青人皮を盗み出してきたということは、鶴見中尉を裏切ったということ。なぜ裏切ったのか?その理由の一つは、有古がアイヌであることに関係がありました。
有古の父はのっぺら坊に殺されたアイヌのうちの一人だったのです。
都丹を仕留めたと思われたとき、都丹と有古の間でやり取りがあったのでしょう。有古は父親の遺志を継ぐべく鶴見中尉を裏切り金塊を手に入れようとしているようです。
しかしこれらは全て鶴見中尉のお見通し。有古が都丹のものだと言って刺青人皮を持ち帰ったときから気付いていました。鶴見中尉はすでに都丹の刺青を把握しており、有古が嘘をついていることは見透かされていたのです。

 

深まる謎

今週の衝撃は、鶴見中尉がすでに都丹の刺青を把握していたこと!都丹とは直接出会っていないと思いますが、なぜ知っているのでしょう。それにそこまで把握しているのなら直接刺青を集める必要もないのでは?
言われてみれば稲妻お銀を除けば鶴見中尉が積極的に刺青を獲得しようとしている場面はあまりなかったような…。でも把握できているなら江渡貝くんの偽物を見分けるタンニン鞣しの情報も必要ないので…全てを把握しているわけではないのかもしれません。

また、のっぺら坊に殺されたというアイヌたちの遺品整理をしたのが鶴見中尉だというのも、有古は知りませんでした。菊田たちは知っていますし、尾形も知っていたので、鶴見中尉に近い人間は知っているはずなのです。しかし有古は知らされていません。
それに都丹の刺青の内容を把握しているなら宇佐美や菊田も一緒になってあそこまで躍起になって追う必要もそうなかったわけで。仕留める必要はあったかもしれませんが、鶴見中尉が言うように雪崩から発見できなかったら金塊が見つからない――という事態にもなりません。
なので今回の登別での一件は、有古の造反をあぶり出すことと、さらにその先に狙いがあるのでは?と思うのですよね。有古と都丹が繋がっていることを確信した鶴見中尉はあえて有古に刺青を持って行かせる。都丹と合流したあとは当然土方さんのところへ向かう。鶴見中尉と土方さんが手を組むのはあり得ないでしょうが、土方さんと杉元たちが手を組むことはあり得ます。暗号を解かせるために一芝居打ったのかなと想像しています。アシリパさんを守るため杉元がアシリパさんに何も言わせないことも鶴見中尉には容易に読めているでしょうから、杉元一行と再会しても正攻法では金塊にたどり着けないのです。

 

有古のこれから

有古が鶴見中尉を裏切ったことで、金塊をめぐる戦いは、アイヌはじめ少数民族vsその国の多数派という、マイノリティ対マジョリティの構図が色濃くなってきましたね。

鶴見中尉は作品の中で父親との心の溝につけ入るのが上手く描かれていますが、今回もそれかなと。有古も父の真相を知りたがっていたのでしょう。でも鶴見中尉は真相に繋がる事実を隠していました。まるで父親が、子どもに言うことを聞かせるために、世の中の不都合な事実を見せないように。ウイルクものっぺら坊としてアイヌたちを殺したという伝聞についての真相を隠したまま逝ってしまいました。知られては都合の悪いことがあるのでしょう。
同じ真相であってもどこから見るかで見え方は変わります。必要なのはたくさんの側面を見ること。有古のように家庭を飛び出し新しい視点を与えられた人間が、何を掴み取るのか?非常に興味深いです。

 

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第205話 ふたりの距離

今回はアシリパさんの胸の内と、杉元のアシリパさんに対する想いが聞けた、まさに副題ぴったりな回でした。

アイヌの昔話の活動写真撮影が終わり、上映会へ。鯉登少尉のおかげで芝居小屋を貸し切って贅沢な上映です。
杉元たちの映像を楽しく眺める一行ですが、アシリパさんの表情は厳しめ。また、谷垣・チカパシの演じたお話を見る楽しそうなエノノカに対し、チカパシはどこか浮かない表情です。その様子を見つめる谷垣もまた何か胸に抱えているような顔。
昔話のお芝居が終わると、撮影技師ジュレールがアシリパさんに見てほしいという活動写真の上映を始めます。内容は、なんとアシリパさんのコタンの十年以上前の映像。青い色の目をしたアイヌのウイルクが健在です。そして何よりもその隣にいる女性。ジュレール曰く、この女性がアシリパさんにそっくりだからこの映像を見てもらいたいのだと。その女性は映像の中で朗らかに笑い、弓を持ち、食事をおいしそうに食べ、時折変顔をする、明るくて晴れの日みたいな女性です。誰もハッキリと言いませんが、明らかにこの女性はアシリパさんのお母さんです。まだ生まれたてのアシリパさんも映っています。
活動写真には若かりし日のキロランケも映っていました。キロランケが映ったあたりで、シネマトグラフが発火し上映していたフィルムは焼けてしまいます。

母の顔を芝居小屋で上映したシネマトグラフで初めて見たアシリパさんに杉元が声をかけます。アシリパさんは母への恋しさを覚えるのではなく、シネマトグラフでは大事なものは残せないと歯がゆそうな様子です。
映像で見た母よりも、ウイルクが語ってくれた母の思い出のほうが心に深く残っている。つまり、自分たちで守っていかなければ文化は残らないのだと、アシリパさんはハッキリと言います。樺太の旅はそれを知るためのものだったと気付いたのです。そして、これから先、戦わなければならないのかとアシリパさんは誰にでもなく問いかけます。
その言葉に対し、杉元は、戦うのはアシリパさんでなくてもいい、と答えます。金塊争奪戦が起こる前の猟をする生活に戻れと言うのか、キロランケが命をかけて教えてくれたのに無関係の振りはできない、とアシリパさんの温度が上がっていきます。杉元はアシリパさん自身ではなくアシリパさんを通して昔の自分を見ていて、アシリパさんを救うことで自分を救いたいだけではないのか、とアシリパさんは杉元に詰め寄りますが、対する杉元は静かにでも力強く返します。
杉元は、ウイルクたちがアシリパさんにしてきたことが許せないのです。山での戦闘を仕込んだウイルク、樺太へ連れていき戦いを選ぶしかなくなるよう誘導したキロランケ。杉元の中で彼らと鯉登少尉の父親が重なります。戦う者ならばその子をまず前線に出させるべきという考え方ですが、それらは親が勝手に子どもに望むこと。ではその子自身、アシリパさん自身はどうしたいのか?人を殺したら落ちるという地獄をどうとらえているのか?杉元の問いかけはアシリパさんの心を揺らしているように見えます。

そして杉元はアシリパさんに自分の願いを伝えます。人殺しをしてもう戻れなくなる前に、金塊争奪戦から下りてほしいと。

 

杉元の純粋な願い

今回、今まで描写で仄めかす程度だったことや断片的にしか語られなかったことが、ハッキリ登場人物の口からかなりの濃度で語られており、伏線回収のターンに入って来たなと感じています。杉元がアシリパさんに対し願うことは、本人の意思の尊重よりも自分のかつての姿を重ねていることのほうが比重が大きそうだとか。杉元は干し柿を食べていた頃の自分が一番自分らしいと思っていて実は戻りたいのに戻れなくて苦しんだとか。そういうこともわかりやすくまとめられましたね。

樺太の旅を通し、北海道では知れないたくさんの民族のことを知ることができました。やはりこの旅でアシリパさんは自らが置かれた境遇を改めて知り、他民族の状況を見て危機感を覚えているのです。
しかし杉元の言う通り、それはある意味キロランケにとって都合のいいものしか見せられていない状態とも言えます。少数民族ばかり見せられたら、ロシアや和人など国のマジョリティに対する対抗心のようなものは生まれやすいですよね。

アシリパさんは、金塊争奪戦に主体的に関わって、つまりは戦って金塊を勝ち取り北海道アイヌをはじめ少数民族のために武装蜂起する道を選ぶしかないのか、というようなことを言っています。言い切りではないのでまだ迷っているようです。
そこに杉元から、それをアシリパさんがしなくてもいいということを言われて、焦燥感から杉元に対し抱いていた違和感のようなものをぶつけたのでしょうね。お前は私自身を見ているようで見ていないのではないか?お前がしたいのは自分のためのことなのではないか?と。

私はずっと、杉元は自分のこうであってほしいという願いをアシリパさんへぶつけようとしている=静かに暴走している、のだと思っていましたが、今週号を見るにそうとも言えなさそうですね。
この時代の価値観では杉元のほうが稀有なのかもしれませんが、まだ幼い人に対して、人殺しをしてほしくない、と願うのは至極真っ当だと思います。戦え!殺せ!という願いは、もう願いを通り越して命令、軍隊みたいですよね。鯉登少尉のような軍人の家ならばそれでいいと思いますが、昔ながらの暮らしを営むアイヌの家に生まれた子に、人殺しをさせようというのは、あまりにも重たいものを子どもに背負わせているなと思うわけです。

私は今回、ゴールデンカムイはやっぱり父と子の物語だと思いました。
アシリパさんの平安な人生を願う杉元は、ある意味ウイルク以上に父親らしいです。
ウイルクもキロランケも、自分の家庭だけではなく民族全体を背負っていました。ゆえにウイルクの子であるアシリパさんは、ウイルクの娘であることに加え、民族にとっても重要な存在になってきます。当然ながら民族のリーダー的存在のウイルクはやはり自分の子には自分の意思を引き継いでほしいので、戦いを仕込みます。キロランケもアシリパさんを次代を率いる重要な存在として扱いました。
それに対し杉元は、アシリパさんにとっては血の繋がりはありませんし、過ごしてきた文化も違います。しかしそれゆえに彼にとってアシリパさんは、血縁や民族といった重たい鎖で繋がれた関係ではなく、狩りや旅での実体験を通じて得た信頼関係にある仲間なのです。もちろん、その実体験には、山での狩猟生活の中での生き生きした時間や、ユクの腹の中での干し柿を食べていた頃の自分にアシリパさんが触れたことも含みます。
杉元は「アイヌのアシリパさん」ではなくて「アシリパさん」をずっと見てきたのだろうな、純粋にアシリパさんのことを想えるのは彼だけなのだろうな、と思うのです。

アシリパさんを戦いから下ろし金塊争奪戦を終えたら、杉元は救われるのでしょうか。
アシリパさんとまた山で狩りをしてほしいなと切に思います。例え死後地獄行きの特等席だとしても、現世で一人の少女を地獄から遠ざけたのだから、せめて余生は…と思ってしまうのですよね。杉元には帰る故郷もないのですし…。できればみんな幸せになってほしいなと思いますがもう何人か死なないと終わらない物語だろうなという予感もあるので、悩ましいところです。しんどい展開が続きそうなので寂しいけど本編が完結した暁には明るい番外編をやってもらいたいですね!

 

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第205話 シネマトグラフ

杉元と月島軍曹の会話から始まる今回のお話。
キロランケがアシリパさんを樺太へ連れてきた意味、ソフィアへ会わせた目的、尾形が吹雪の中アシリパさんを引き離し殺そうとした理由、そしてキロランケの最期の安堵の表情……それらから、月島軍曹は「アシリパさんは暗号を解く鍵に気付いた」と推測しています。
それに対し杉元は、アシリパさんが尾形に解読方法を話す(そして用無しになったアシリパさんを殺す流れになる)わけがない、自分が話すから邪魔をするなと言い切ります。アシリパさんと無事に合流できましたが、果たして鶴見中尉はアシリパさんをどう扱うつもりなのか…。

一方のアシリパさんは、フランスのリュミエール社が派遣した撮影技師ジュレールと、日本での興行権を得た稲葉勝太郎からシネマトグラフ(活動写真)の話を聞いています。当時の活動写真では動きは残せても音声は一緒に残せませんでした。口伝で継承されてきたアイヌの昔話は、そのままでは活動写真に不向き。かといって蓄音機では、動きを見せることができず言葉が違う人たちに伝えることは難しい、と考えたアシリパさんは、アイヌの昔話をお芝居にして活動写真として残すことを提案します。クズリから助けたことを盾に撮影技師たちを巻き込むことに成功した杉元たちによる、お芝居撮影が始まります。

街の外れらしきところで撮影がスタート。監督はもちろんアシリパさん。演目は、「パナンペ・ペナンペ物語」、わかりやすい例えだと「こぶとり爺さん」が近いお話です。
大儲けするパナンペ役に杉元、その妻役に鯉登少尉。パナンペを羨ましがり真似をするペナンペ役に白石、妻役に月島軍曹です。
アシリパさんの演技指導にはかなりの熱が入ります。声が入らないので表情や仕草で感情を伝えるしかないのです。しかし素人のぶっつけ本番なのでアシリパさんが求めるレベルの演技はできません。それに大きく落胆するアシリパさん。自分たちが受け継いできた物語がうまく残せない、伝えられないことにかなり焦りを感じている様子です。

次は「斑文鳥の身の上話」というお話の撮影です。谷垣・杉元・チカパシが三兄弟を演じます。狩りの中で出会った娘役には、鯉登少尉・月島軍曹・そしてエノノカ。娘たちの暮らす家に入ってきた熊を倒すと兄弟たちはとても感謝され、娘の父親からは婿入りを求められます。末弟役のチカパシはその家の息子になり幸せに暮らしますが、一番上の兄が自分は実は鳥のカムイ・ケソラプ(プは漫画中の表記では小さい文字)だと告白します。鳥の姿になった兄はどこかへ飛んでいきます。末弟にとって兄は、身寄りのない自分を迎え入れ、旅へ連れ出し立派な男へ育ててくれ更に新しい家族まで持たせてくれた、いわば恩人です。その人との今生の別れでそんな芝居なのかとアシリパさんに声をかけられたチカパシは、まさしくこの鳥のカムイと谷垣を重ね合わせ、本心からの涙をこぼします。

 

アイヌの昔話

今回印象的だったのは、撮影監督をするアシリパさん。自分たちの文化が残せるかもしれないという希望を活動写真に寄せますが、焦って空回りしている印象です。それだけこの旅の中で、少数民族である自分たちがどういう立場なのかを痛烈に自覚したということなのでしょうか。
民族のため戦う道を選んだウイルクやキロランケと異なり、アシリパさんはそうではないような気がしています。戦うのであれば映像を残す必要はないですからね。映像を残したいということは、遺書のようなもので、文化の担い手自体は消えていくかもしれないが文化があったことは残したい、そんな意図を感じました。物語を通じて人を殺さないという態度を貫いているアシリパさんらしい態度だと思います。
アシリパさんの口から語られたわけではないので確信はないですが、北海道アイヌの今後についてアシリパさんは、流れに任せる、という方針なような気がします。逆らわない、抗わない。いなくなったり和人に吸収されていくのが流れならそれも仕方ない。でも自分たちが生きた証として映像を残したい。蓄音機ではダメなのは、やがて残された史料を見るのは和人だと想定しているから。……と考えているとしたら、まだ12歳の少女が選ぶ道としてはあまりに切ないと言いますか、達観していると言いますか…。早くアシリパさんの本人が聞きたいですね。

昔話の中では、先週に引き続いてチカパシの今後に触れられていますね。
先週は、北海道に帰ってインカラマッに会いたいと言っていましたが、それは同時にエノノカと別れるという意味だと気付きました。そして今週、アイヌの昔話に登場する鳥のカムイ・ケソラプに谷垣を重ね合わせます。谷垣と北海道中、更には樺太を旅し、様々な動物や時には悪人とも戦い男として成長し、樺太ではエノノカとも出会ったチカパシ。谷垣と別れ、エノノカと樺太で暮らす道もあるのかもしれません。谷垣とチカパシがお別れするのは本当に寂しくてそんな場面できれば見たくありませんが…得てしてどちらかしか選べないのですよね。谷垣と北海道へ戻るか、エノノカと樺太に残るか。幼いチカパシならどちらでもうまく適応できるでしょう。果たして豊原で鶴見中尉と合流後、北海道へ戻る船に乗り込むまでに、チカパシはどんな結論を出すのでしょうか?
(もちろん、エノノカとヘンケが北海道へ来るというルートも歓迎ですよ!ヘンケの年齢や樺太アイヌとしての誇りなどを考えると難しいと思いますが…)

 

用済みにさせないために

さて、お話の冒頭で月島軍曹が言っていたこと。ここまでの状況をうまくまとめてくれていますね。
アシリパさんが暗号解読の鍵に気付いたのではないか?というのは、読者は間近で見てきましたから知っていますが、状況を繋ぎ合わせてその結論にたどり着いた月島軍曹はやはり経験豊富で頼もしい軍人だなと思います。鶴見中尉じゃないですがすぐ側にいてほしい存在ですね。
アシリパさんは、あのとき気付いた刺青の暗号のことについて、杉元にもまだ話していないのですね。話してしまえば自分が用済みになって身の安全が保証されなくなること、話した相手の杉元も無事でなくなるかもしれないこと、そんなところまで考えての判断だとしたらやはりアシリパさんは聡いですね。狩りを生業にして日々命を懸けているとそういった重要なことに対する判断力が研ぎ澄まされるのかなとぼんやり妄想してしまいます。
そして月島軍曹と話していた杉元も、彼なりに考えて行動していると思います。アシリパさんから暗号の鍵を聞き出してしまえば、アシリパさんの身が危ない。用無しになって、月島軍曹が尾形に対して推測しているように、殺されてしまうのです。おそらくは鶴見中尉に。なのでアシリパさんから俺が聞き出すと口では言いつつも、おそらく聞き出さない選択をするでしょう。たぶん、聞き出したのではという不要な探りをされないよう、アシリパさんと二人きりになるというシチュエーションも避けるのではないでしょうか。

いよいよ大詰めという感じですね。これからどうなるのかますます楽しみです!

 

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ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第204話 残したいもの

豊原まで南下してきた杉元一行。月島軍曹が鶴見中尉からの電報を受け取り、今後の予定が決まります。
鶴見中尉は登別温泉で用事を済ませ樺太へ向かうとのこと。大泊に二週間後に到着するのでそれまで豊原で自由時間です。

谷垣はチカパシ・リュウと散策。北海道へ戻りインカラマッに会うのが楽しみな二人に対して、エノノカは寂しそうな顔を見せます。
杉元はアシリパさんとクズリ狩りをします。山へ入る前のお祈りとしてアイヌの伝統的な火起こし道具で火を起こすアシリパさんは、アイヌの伝統文化について思うところがある様子です。マッチの普及により火起こし道具は猟の前のお祈りでしか使わなくなったそうです。そうして日常の中から段々と存在感を消していく自分たちの文化を、どうすれば残せるのか。いつかなくなってしまうことを憂えている様子です。ですが、狩りの途中で出会った人たちから活動写真=シネマトグラフのことを聞き、表情が明るくなります。
一方、杉元とアシリパさんの様子を遠くから双眼鏡で観察する月島軍曹。そのすぐ近くにはヴァシリも…。ロシアに帰らず本当についてきたようですね。

 

アシリパさんに変化が?

今週は、ロシア・樺太での大立ち回りを終え、鶴見中尉と合流するまでの、””のようなお話でした。
大陸で死闘を繰り広げ、一旦収束しましたが、鶴見中尉と会えばまた何かが始まると思います。具体的には刺青の暗号を解いていよいよ金塊の在り処を突き止め、それを誰が手にするのかの争いが激化するはずです。なので鶴見中尉との再会は新しいうねりの始まりでもあるはず。月島軍曹が杉元を双眼鏡で観察、いえ、監視していたのも、杉元と第七師団は敵対関係にあったということを思い出させますね。今は利害が一致したので一時的に手を組んでいるに過ぎないのです。

月島軍曹はきっと日本領にいる間は間近で観察した杉元の様子を鶴見中尉へ電報で報告していたと思います。今回の監視や、鶴見中尉からの電報を受け取ったくだりなどから、その様子が想像できますね。
鯉登少尉は今回は冒頭でボンボンぽさを見せた以外は特に出番なし。ちなみに白石も冒頭のコマにいただけで他は登場なし。

谷垣はチカパシと本当にいいコンビだと思います。寡黙で優れたマタギである谷垣が持っていない部分を、アイヌの子どもであるチカパシが補い合っている。素敵な組み合わせですね。谷垣が、チカパシのことを頭ごなしに叱ったり、子どもの言うことだと軽くあしらったりせずに、チカパシの言動をしっかり受け止め反応しているのも、信頼関係があるという安心感、お互いが認め合っているという充足感があり、見ていて落ち着きます。

このコンビと比べると、今の杉元アシリパさんの組み合わせには少し不安感を覚えます。
アシリパさんは、自分たちの民族の伝統文化が段々と失われていくのを、ロシアでのキロちゃんとの旅を通じて肌で感じています。キロちゃんの狙い通り、この旅はアシリパさんの心境に変化をもたらしたものと思います。それまでは父親について真相を知りたいというあくまで個人の意思で金塊争奪戦に関わってきましたが、今週のお話のアシリパさんは、北海道アイヌ全体を思っているように読み取れます。
一方の杉元は、民族を思うアシリパさんに対してどう思っているのでしょう。特に明確な描写はありませんが、アシリパさんの変化に気付いたのでしょうか。先週までのことから述べるなら、杉元は”個人”としてのアシリパさんのことしか考えていないはずです。アシリパさんには、山で狩りをして暮らしてほしい、戦いになんて参加してほしくない。そう思っているはずです。
アシリパさんを戦いに巻き込みたくない杉元と、民族のためになることをしたいアシリパさん。この二人のすれ違いが、今後、大きくならないといいなと思っています。

 

アシリパさんの物語

以前から、アシリパさんがどうしたいのかが物語のキーになるのでは、と思っていました。今週のお話を読むに、民族を守るため、キロちゃんやウイルクが望んだように戦うのでしょうか。
万が一戦うという選択をした場合、杉元の願いとは相反しますが…アシリパさんが望めば杉元は手を貸すのでしょうか?再び、杉元vs第七師団vs土方一行の勢力図が出来上がるのでしょうか。
杉元とアシリパさんが別々の陣営に分かれることになりこの二人の和解が物語の締めくくりを導くという展開のほうが、アシリパさんの少数民族として生まれた者の葛藤が見え、アイヌを題材とする物語として深みが増す気がするのですよね。ただの妄想ですが。
ただ、アシリパさんのこれまでを思えば、アシリパさんが戦うことを選ぶとは思えないので、戦わずに伝統を残す道を選ぶものと思いますが…戦わずに存続を勝ち取る手段とは何なのでしょうね。シネマトグラフを残すことでしょうか?それこそ歴史的史料となり、日常から消えていくことを傍観しているだけのように思えますが…アシリパさんの言う「残す」ってそういうこと?
と、やっぱりアシリパさんがどうしたいのか、非常に気がかりです。

あとはなんといっても尾形ですかね。鶴見中尉と合流するまで二週間もあるので、さすがに一度くらい襲撃してきそうな予感があります。
それとも先にちゃっかり北海道へ戻っていたりするのかしら。

 

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