映画『モンスターハンター』の思い出

見てから間が空いてしまいましたが、見てきましたので感想をしたためておきます。

 

満を持しての実写化

この見出しがしっくり来るような期待された題材だったと思います。
原作は社会現象にすらなったゲームタイトル。主演は同じくゲーム実写映画『バイオハザード』シリーズで功績のあるミラジョボビッチ。
CG映像でモンスターがどうスクリーンに描かれるのか、圧倒的な力を持つ彼らに人間がどう立ち向かうのか…そう期待した人も多かったと思います。

 

予告画像の違和感

期待が大きすぎると現実との落差に人は落ち込むもの。この映画も原作の評判が良いだけにそういった苦境に立たされました。
まずは現在の制作の様子として公開された1枚の画像。誰もがこう思ったでしょう。「大剣にしては小さくない?」と…。
どう見てもゲーム中なら片手剣のサイズ。でも片手剣であれば盾を持っているはずだけどそれは見えないし、双剣だとしたら一本足りない。ということはやはりこれは大剣なのか…。
この時点ですでにやや諦めムードが漂い始めていました。

 

いよいよ迎えた公開

一発目のビジュアル面ですでにガッカリ感漂うことになってしまった本作もついに日本公開を迎えます。
私は公開3日目に見に行きましたが、上映スケジュールは限られていました。それもそのはず、同時期に公開された『エヴァンゲリオン』の完結版のほうが圧倒的な人気で、多くのスクリーンがそちらのために使われている状況でした。
(ものすごい余談ですが、エヴァ人気がすごすぎて売店が長蛇の列になっており、朝ご飯を買おうと思っていた私は上映終了まで空腹で見ることを余儀なくされたのでした…)

知名度のわりに小さなシアターに入り着席。この時点でお客さんは一桁。
実は体調が思わしくなく字幕で見るのはつらいかもと思い吹替を見に行ったので、そのせいでお客さんが少なかったのもあると思いますが…いや、思いたいですが…字幕版だともう少し盛況だったりしたのでしょうか?
いずれにせよ、封切3日目=日曜日、朝早いとはいえこの異常な静けさは正直予想外でした…。空いててよかったですけどね。

 

モンスターこわい

大雑把なまとめとしては、「モンスターの恐ろしさをこれでもかと描いたモンスターパニック映画だった」というところになりましょうか。
この「モンスターパニック映画」というところが重要で、「ハンティング映画」ではないんです。
原作をプレイしたことがある人はその醍醐味として「強大なモンスターに立ち向かい制したときの達成感」をまず挙げることでしょう。そういったものは一切ありません
あるのはひたすらに「モンスター強い」「モンスター怖い」「実写にするとこんなに恐ろしいのか」という気持ち。
モンスターを狩るかっこいいハンターはいませんし、ハンターを苦しめた果てに狩られるいい意味でのやられ役のモンスターはいません。

見に行く人はゲームをプレイしたことがある人がほとんどでしょう。ハンターたちは、モンスターに苦戦しながらも様々な道具や環境を駆使し、己の腕前を信じ、時には運も味方につけ、モンスターを制する様をこの映画に期待していたと思います。
けれどそんな描写があったかと聞かれたら、「ない」と答えたほうがこれから見ようとしている人のためだと私は思います。

 

あえて使われなかった?原作の世界観

これだけはどうしても書かないといけません。原作であるゲームの『モンスターハンター』は、人とモンスターが共存している世界なのです。
ゲーム中の討伐依頼を見ても、殺伐とした雰囲気はありません。それもそのはず、そういった印象を抱かせる言葉を一切使用していないのです。「困っているから助けて」「あいつらをこらしめて」など小さな子どもが発しても眉をひそめたくならない絶妙な言葉使いです。

そういったゲーム制作者たちの願いにより、原作の世界観では「人とモンスターがお互いのテリトリーを守りつつうまく共存している」と私は考えています。
人里に近付きすぎたモンスターは狩る。生活のため必要な分だけ狩る。モンスターの生息地にうっかり入ってしまった。モンスターの周期的なものなどで仕方なく人里に近付いてしまった。
そういった経緯でハンターが狩りに出かけることがほとんどなのです。

なのでモンスターが積極的に人を攻撃し命を奪っていく様は、ゲーム原作の世界観ではあり得ない様子だと感じました。
好戦的なモンスターもいるので攻撃そのものは(特にディアブロスは)問題ないのかもしれませんが、死なせてしまうのはせめてもう少しぼかして描写してほしかったな…と、非常に残念に思います。

あと殺伐としていない世界観という点で見ると、ハンターとアルテミス(ミラジョボビッチ)の交流も、いぶかしみお互いを攻撃し合うところから始まるのが少々残念ではありました。
ゲーム原作の世界では、言葉が通じなくても、モンスターに襲われ困っているならば手を差し伸べる人ばかりだと思うのですよね…。

たしかに何の下地もなく考えれば、異世界から来た言葉の通じない、見知らぬ武器を持った人物ですから、まずは脅威と考え警戒するのが普通なのかもしれません。けれどそこは原作のある強みを生かしてほしかった。

 

モンスターも下地なしの独自解釈

下地ゼロで作られたであろう本作、モンスターの描写もかなり独特でした。

ネルスキュラはあまりのおぞましさにどんな様子だったか書くのもはばかられますが、群れで襲ってきたり卵を産み付けたりといった解釈は私には一切なかったので新鮮でした。
ネルスキュラをモンスターハンターのモンスターではなく実際の蜘蛛の一種として見なければ出てこないアイディアではないかなと思います。
なので映画制作陣は非常にフラットに、予備知識を入れ過ぎずに作ったような印象を受けました。
まぁ実際にこんな蜘蛛がいるわけないので、人間を恐怖に陥れるヤベー蜘蛛ってこんなんだろう、という個人的趣味が大いに入り込んでいる気もしますがね。

リオレウスは格段に大きい。大きすぎる。体躯の割に翼がけっこう薄かったり主人公に対してだけ炎を吐く予備動作がかなり長かったりとツッコミどころ満載。いや後者は演出上仕方ないとも言えますが…それにしても軍の兵器をいくつも撃墜する巨大モンスターにほぼ生身のアルテミスが勝てる理由って何なんだろう…。

ディアブロス亜種は巨大さに好戦的な性格、異常なスピード、絶望感など、比較的原作イメージ通りでした…。

 

まとめ

もう少し原作の強みを生かして省ける部分があったのでは?その分、後半の協力してモンスターに立ち向かうところを厚くしてもよかったのでは?
…というのが全体的な感想まとめですね。
最後のみんなで立ち向かうところが突貫工事でくっつけたように感じられる出来でした。

B級映画を見たときの盛り上がり方なら楽しめると思いますが期待して見た人は私を含めお気の毒様でしたね。

やっぱりモンスターハンターはゲームが最高ですね。

 

 

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