ゴールデンカムイ第202話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレを含みますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第202話 狙撃手の悪夢

街中で買い出し中のところヴァシリに狙撃され、身動きが取れなくなった一行。
味噌を買いに別行動をしていた杉元だけが自由に動けます。味噌の詰まった樽を抱え建物の隙間を走る杉元は狙撃手の元へ急ぎます。
狙撃手が尾形ならば杉元を見落とすはずがない――鯉登少尉のこの発言に対し何やら思案顔の月島軍曹。狙撃手が尾形ではないと気付き、対策を考えているのでしょうか。

月島軍曹と鯉登少尉の隠れているそりとやや離れたところにあるそりには、アシリパさんと谷垣が隠れています。そりを押して白石へ近づき助けようとアシリパさんが提案するも、狙撃手が尾形なら狙いはアシリパだと制止する谷垣、しかしそれでも助けると聞かないアシリパさんの押し問答が緊迫した状況下で繰り広げられます。
その様子を察知した白石は、お菓子で犬ぞりの犬たちを呼び寄せてその場からの脱出を図りますが、エノノカとおじいちゃんに阻止され失敗。白石よりも犬たちのほうが大事です…生活がかかっていますからね。
先週の話で食べていたお婆ちゃんの口噛み団子をまた食べたいがためにお米を買っていたので、米粒をまいてカラスをおびき寄せ少しでも狙撃しづらくしようという狙いも………ダメでした。お米を啄みに来たのはカワイイスズメたちでした。

米粒を啄むスズメを歯を食いしばりながら眺める白石を、双眼鏡でヴァシリが観察します。ヴァシリは白石のことを覚えていました。しかしヴァシリが探しているのはおそらく尾形なのでしょう。モノローグで「あの時の続きをしよう」と言っています。
このシーンからわかるのは、ヴァシリは尾形を追って来たということですね。尾形と協力しているわけではないようです。

一方、狙撃される側では、月島軍曹が帽子だけそりの陰から出すなどしてヴァシリの注意を引き続けていました。それは杉元との連携のため。注意を引き付けている間に杉元がヴァシリの居場所へ向かう作戦です。
さすがヴァシリも軍人です。杉元が建物に入ってきたことにすぐ気付きます。気配はあっという間にふすま一枚隔てたすぐそこへ。
ふすまを開け部屋へ踏み込む杉元。当然ながら銃撃のほうが早いです。そんなことは杉元もわかりきっているので、ふすまを開けたらまず鏡がヴァシリの目に飛び込むように配置。一発目は鏡に映った杉元をあえて撃たせ、弾を装填する隙を作りました。そのまま懐へ飛び込もうとする杉元。ヴァシリも接近戦への備えとして拳銃を取り出しますが、そこでヴァシリの顔面へ投げ込まれる味噌樽!なんて機転を利かせた対応!(踏み込むのに味噌樽持ったままだったとは…)
味噌樽を顔に食らい刺されそうになるヴァシリですが、逆に味噌樽をうまく使い、杉元の銃剣を防ぎます。自分に有利な距離を取ろうと逃げようとするヴァシリを、ふすまを突き破って伸ばした手で摑まえる杉元。そのままふすまのこちら側へ引っ張り、得意の柔道で投げます。畳に背をつけたヴァシリの胸元には、尾形の似顔絵が。ここで尾形という接点でヴァシリと杉元たちがどう繋がるのか?

 

動物がカワイイ

今回は白石のギャグパートで動物がたくさん出てきました。ゴールデンカムイといえば、動物の魅力も醍醐味ですよね!
犬ぞりのワンコたち、ふさふさした毛並みや口から出ている舌などが本当にわんちゃんのそれで、呼吸音が聞こえてきそうなくらいにリアルなんですよね。リアルだけど漫画の画面の中にあっても浮いたりすることなく可愛いのも、作品に引き込まれてしまう理由の一つです。
カラススズメは静香にもいたのですね。世界中にいそうな鳥ですが、動物が出てくるとなると山の中が圧倒的に多いのがゴールデンカムイなので、人里近くに住むことの多い鳥たちは珍しいです。スズメは本当に可愛い!樺太なので日本より寒いですね。なのでふっくらした暖かそうな羽毛が生えそろっているところ、ふわふわの見た目が実に愛らしいです。そんなスズメと、策がことごとく失敗して血がどんどん流れ出て、依然危険な状況にある白石との必死の形相とのギャップでより一層スズメが可愛いです。

 

久々の登場は一番燃える

ハッキリとヴァシリだとわかる描写がいくつかありましたね。目元だけでも明らかに日本人でないとわかる顔立ち。ウイルタに扮装した白石のことを覚えているということ。尾形の似顔絵を持っていること=尾形と因縁があること。
ロシア国境付近で出会ったときには髪を後ろへ流して帽子をかぶっていましたが今は前髪を下ろしているみたいです。こういうのすごく興奮しますよね…再登場してきたときに見た目、特に髪型が変わっているキャラクター…狙撃手だから視界良好が必須だと思うので前髪は邪魔じゃないのかな?とも思いますが。尾形もオールバックだし。帽子があるから大丈夫なのか、髪型を整えられないくらいに実は切羽詰まっているのか、それとももうなりふり構わず玉砕覚悟くらいの気持ちでいるからなのか。理由はわかりませんがヴァシリの前髪いいですね。口元を隠しているのは、傷跡を隠しているからでしょうか?弾は貫通していたように見えますが、ひどい有様だったりするのでしょうか。でもこの顔の下半分を隠すという格好は、中二心をとてもくすぐられます…忍者みたいでかっこいい…。
余裕しゃくしゃくだった狙撃手が、敵に接近を許し焦っている様子、すごく好きです。ヴァシリには悪いですけど、追い詰めていくさまがすごく楽しいのです。今週号は味噌樽投げてからがすごく面白いです。「距離さえあれば負けない」なんて(モノローグで)言うの、フラグですよね。距離取れるわけないでしょう…狙撃が止んだのに気付いた鯉登少尉たちも向かっているだろうし…。ふすまから杉元の手が出てきて胸倉を掴まれるのは、ホラーですね!このコマだけ静止画の演出で見えます。ヴァシリの心臓と連動してるのかなーなんて思います。ふすまから手が出てきてしかも掴まれちゃったら思わず心臓止まりそうになりますよね…。まさしく狙撃手の悪夢…。

 

狙撃手の執着

最後、ヴァシリが尾形の似顔絵を持っていたことが明らかになります。きっと自分の記憶から似顔絵を描き、それを使って尾形を探してここまで来たのでしょう。残念ながら杉元たちから逃げてしまいましたが、一行と尾形が一緒にいたという情報を掴んだので白石たちを狙ったのでしょうね。
ふつう、あまり見慣れない人種の人の顔って、識別しづらいと思うのですよ。ヴァシリが普段からロシア人以外との交流をしていればまた話は違ってくるでしょうが、ヴァシリも普段はロシア人に囲まれて暮らしているはずだし、日本人の顔って少し区別がつきづらいのではないかなと思います。尾形と狙撃手対決をしたときだって狙撃手同士なので間近で顔を見たわけではないのですよね。ヴァシリは双眼鏡で尾形を見ていましたが、外套を深くかぶっていたので顔は見えていないはず。そんな状況なのに記憶でここまで正確な似顔絵を起こせるとは、尾形のビジュアルの強さに感服です。
もしくはヴァシリの狙撃手らしいところに感服します。狙撃手は、獲物を仕留めるために、対象にものすごく執着するのだと聞きました。執着して追い回して張り付いて、自分が仕留める。ヴァシリもいい狙撃手の条件をそろえていると思うので、獲物への執着がすごそうです。獲物と決めた尾形のことはたとえ少ししか見ていなくてもこうまで記憶に正確に残っていたのは、獲物への執着心のなせる業なのでしょう。白石のことも覚えていましたしね。

杉元とヴァシリ、絶対尾形やっつける男同士の邂逅は、この後どう響いてくるのでしょうか?来週も目が離せません!

 

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第201話 あばよロシア

先週の話で尾形に逃走を許しましたが、樺太先遣隊の目的はアシリパさんの奪還。
任務は果たしたので尾形を追うことはせずに日本へ帰ります。
犬ぞりに乗って来た道を戻る一行。
もちろんチカパシ・エノノカ・エノノカのヘンケも一緒です。
一行は無事に国境を越えいよいよ日本へ入りました。

日も沈み国境付近の樺太アイヌの集落で一泊。
グルメパートでは「お婆ちゃんの口噛み団子」が登場。
日本の口噛み酒に似ていますが、アイヌの伝統料理かは定かではなく、証言記録が残されているものらしいです。
その名の通り、口で噛んだ米を団子にして焼いたもの。
酒の入った杉元と白石はお婆ちゃんに甘えたり味噌がないと騒いだり口噛み団子ごっこをしたりと大はしゃぎ。
冷ややかに見ている谷垣とは温度差がかなりあります。
一方の鯉登少尉と月島軍曹はさらに温度が下がります。
尾形にロシア語で言われた言葉の意味が「ボンボン」だと月島軍曹に聞いた鯉登少尉はなにやら思いつめた表情を見せます。

翌日、静香まで南下した杉元一行は街で日用品の買い出しを行います。
戦いから解放されたせいか、日本の領土へ戻り安堵したからか、どこか浮かれた様子にも見える一行。
そんな一行を双眼鏡で観察している人物が一人。
物陰に潜むそのシルエットは、銃を背負っているように見えます。

味噌を調達しに離れていた杉元を探しに白石が道の真ん中へ出ると――
いきなり脚を撃たれます。
身動きが取れず往来に倒れる白石。
ひとまず買い物をしていた店の中へ入ろうとするも扉に触れようとすると撃たれるため、白石以外の人間も身動きが取れず、そりの陰に隠れるしかありません。
軍人である谷垣と鯉登少尉はすぐさまこの状況へ対応します。
谷垣は、敵が白石の脚を撃ったのは助けに誰かが出てくるのを狙い撃ちするためだとアシリパさんへ説明。
この戦法は狙撃手の常とう手段です。
鯉登少尉は、自分の手鏡を使い狙撃手の姿を確認しようとしますが、物陰から少し出しただけで手鏡を撃たれてしまいます。

遠くからでもこんなに正確な射撃ができる人物は、みな一人しか思い浮かびません。
尾形。
尾形がもう戻ってきたのだとみな気付きます。
しかし建物の窓からこちらを狙撃している人物は尾形ではなく、何やら見覚えのある横顔。
精密射撃と遮蔽物の少ない道、この悪条件、狙撃手にとっては好条件で誰も動けない中、味噌を抱えて走る杉元は無事に狙撃手を見つけこの状況を打開することができるのか。

 

誰が狙撃しているのか?

今週何よりも気になるのは、樺太先遣隊とアシリパさんの一行を狙撃しているのは誰なのか?というところですよね。
先週、尾形が逃げおおせましたし、狙撃といえば尾形ですから、谷垣たちが尾形が狙撃していると思うのも無理はありません。

でも、描かれているのは明らかに尾形ではありません
眉毛が違うし、銃も三八ではなさそうに見えます。
何よりアシリパさんの放った矢が(事故で)刺さったはずの右目が、無事です。
狙撃手は尾形ではありません。
もしかして、尾形・キロランケ・白石・アシリパさんがロシア入国時に国境付近で戦った、ヴァシリでは…?
似てますよね。
銃も彼が持っていたものに見えるような見えないような…?
とにかく、尾形とはまったく似ていない人物です。
尾形以外にここまで正確な狙撃ができるのは、ロシア国境で戦った、ロシア国境守備隊のヴァシリだけなので、彼と考えていいでしょう。

ヴァシリだろうと考えた理由のもう一つに、メタ的ですが、尾形vsヴァシリ戦を彷彿とさせるというのもあります。
ヴァシリとの戦闘において尾形は今回の話と似た手口を使っていました。
ヴァシリの仲間の腹を撃ち足手まといにさせ、自分に有利な状況を作り出す時間を稼ぐ。
また、そのときの狙撃手対決で語られた、狙撃手の条件。
冷血で獲物に執着する。
尾形は寄る陣営を幾度と変え登場し、死んだと思わせるほどの傷を負ったはずのヴァシリはわざわざ日本の領土まで追ってきています。
敵の執拗さが際立つ今回の話は、谷垣の話す狙撃手の常とう手段という言葉と相まって、狙撃手が来た!ということをしつこい程に訴えているように思えるのです。
作中で出てきた狙撃手といえば尾形とヴァシリなので、やはりこれはヴァシリかなと、メタ的にもそう思えます。

 

なぜアシリパさんたちが狙われるのか?

さて、次に気になるのが、どうして撃たれているのか?という疑問です。

狙撃しているのが尾形であれば、アシリパさん以外の全員を殺し鶴見中尉が事態を把握するのを遅らせ、その隙に金塊を…という理由が考えられるので特に不思議はないのですが。

国境守備隊のヴァシリが狙撃しているとして、一体なぜ?という疑問が出てきます。

これはやはり背後に尾形がいるのではと思います。
ヴァシリは尾形との狙撃手対決に敗れ、尾形に首元のあたりを撃たれました。
首を撃たれたら生きていないと普通は思いますし、私も死んだものと思っていました。
ただ、ヴァシリが死んだという明確な描写もなかったのですよね。
尾形の撃った弾がヴァシリの首元にあたり血が飛んだ、という描写のみです。
なので生きていたとしてもおかしくはありません。

撃たれたが一命は取り留めた、というよりも、尾形によって一命を取り留めさせられたヴァシリがいたとしましょう。
ヴァシリに向かって尾形はこう囁いたのではないかと思います。
”皇帝殺しのユルバルスは逃しただろうが、もう一人の皇帝殺しの娘がまたここを通るかもしれない”
”その娘は莫大な量の金塊の在り処のヒントを知っている”
アシリパさんはロシア側からしても是が非でもほしい人物なのではないでしょうか。
他の日本人は不法入国はしていますが殺したり捕まえたりしたところで特にロシア側に利益はなさそうですし。
ユルバルスを見つけながらも逃したうえ仲間も殺されたヴァシリとしては手柄がほしいところというのも関係していそうですね。
もし本当にそうだったとしたら尾形の策略おそるべし…。なんとなく鶴見中尉を思わせますね…。

 

尾形はどう再登場する?

ここから先は私の勝手な予想ですが…

尾形も近くにいるのではないかなと思います。
杉元がヴァシリと戦っているところへ登場。
ヴァシリと尾形がグルならば、診療所から逃げ出した尾形はまずヴァシリの元へ来るでしょうし。
戦いの結末はわからないですが、杉元が近付き狙撃さえやめさせられれば、鯉登少尉と谷垣もいますし室内なら狙撃も十分な威力を発揮できないので、尾形を捕らえる流れになるのではないかなーと。
そして鯉登少尉の今回のお話の伏線回収のターンが来るのではないかと…というよりそうなってほしいなと…。

鯉登少尉が今回「ボンボン」という言葉に見せた反応は何のか私にはわかりません。
先週までの、鯉登少尉と鶴見中尉の関係を決定づけた事件と繋がりがありそうだとは思います。
誘拐された鯉登少年も、誘拐犯のロシア人に「ボンボン」と言われていました。
あのときと同じ言葉を今聞き、その意味するところを知り、一体何を考えているのか?
もしかして鶴見中尉の仕組んだからくりに気付いた…?など恐ろしい可能性もなきにしもあらずですが、今の私にはまだまったくわかりません。

もし伏線回収のターンが来るなら、尾形には心の内を語ってもらいたいです。
語ってくれるなら樺太でなくても、どうにかこうにか北海道へ戻ったあとでもいいのですが、早く決着をつけないと誰か死にそうなので、この戦闘はあまり長引かせずできれば樺太で決着をお願いしたい…。
尾形にはせめて私がずっと抱えている”なぜ尾形は鶴見中尉を裏切ったりアシリパさんをたらしこんだりしようとしたのか?”という、尾形の目的への疑問を解消してほしいです。
そして解消の時はそう遠くない気がしています。勝手な期待ですが。

心の内を語ったら、尾形は樺太で退場になりそうですが、鶴見中尉の目の光る北海道に彼にとって安全な場所があるわけもないのでこのまま戻っても無事という保証はまったくないのですよね…。
尾形に死んでほしいわけではないですが鶴見中尉と再会したらどえらい目に遭いそうなので、このまま樺太に残り余生を送ってほしいです…。
故郷の茨城に帰るというのも考えましたが、あんな過去を持ちながら郷愁の念を抱いているとも思えないですね…。

鯉登少尉の過去も明らかになり、尾形も目を負傷しかなり大詰めという感じが出てきました。
作品自体の終わりが近そうで寂しいですが…早く謎を明らかにしてほしい気持ちもあり、複雑です。。
進んでほしいけど終わってほしくはないですね…。

 

 

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タルトの向こう側

こんばんは、うたげです。
最近ゴールデンカムイの感想しか書いていないので何か書きたいなと思っていたところに、閃きが降りてきたので、書きます。

 

タルトの向こう側

先日つい小さいタルトを買って帰ったのですが、家でお皿に乗せてみるとなんとまぁかわいいこと。
ホールケーキのサイズではなくて一人一つ丸ごと食べる、小さいタルトです。
タルト生地の器の中にチョコレートムースとバナナが入ったやつです。
思い返してもおいしそうですね。

タルトってなんか買っちゃうんだよな~惹かれるんだよな~~という方も多いのでは?
かくいう私もそう。
フレッシュフルーツが眩しいケーキや定番のシュークリームとかがあっても、ついついタルトに目を奪われてしまいます。
食べ始めるとその食べづらさに少しだけ後悔を覚えることもあるのに。
タルト生地の割りにくさ、生地がボロボロこぼれるところ、割ったとてフォークで刺すとまたボロボロ分裂するところとか。
でも選ぶときって食べづらさなんてまったく考慮しないので、その見た目の完璧さからタルトの誘惑には抗えません。

そう、小さいタルトの見た目は完璧なのです。
他のお菓子類に比べて、タルト生地の縁取りのおかげで輪郭がはっきりしている。
まるで絵画の額縁みたい。
お皿に乗せると、そこは美術館の一画。
その額縁の向こうに見えるのは箱庭的世界です。
ある世界の一部を切り取って見せてくれている。

そういう無限を感じさせるところが、私がタルトに惹かれる所以かなと思います。
絵画もそうですし、写真もそう、なんならパソコンやタブレットを通してみる誰かの生活もそうですが、切り取られたものには魅力があると思うのです。
その額縁の外側が「ない」からこそ、その見えない部分に想像力を掻き立てられる。
制約があるからこそ無限の広がりがあるように思うのです。
あの有名なミロのヴィーナスも、両腕がないからこそあそこまで人を惹きつけるのではないでしょうか。
全体を見せることではできないことがあって、それは、ある一部だけを切り取って額縁に収めることでできると思うのです。

タルト一つで何を、と思われるかもしれませんが。
あれほど完璧な見た目のお菓子もないのです。
美しさだけではなくその向こうへの広がりも持ち合わせている。
あのくっきりした背の高いタルト生地は、ただの囲いのように見えて、実は、無限の世界へと誘い込む入り口なのだと思います。

ゴールデンカムイ第200話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
一ファン個人の勝手な見解を多分に含んでいますので、そういうものとしてお読み頂ければ幸いです。

 

第200話 月寒あんぱんのひと

五稜郭に着いた鶴見中尉と鯉登パパ。
突入するも鯉登パパは気絶させられ、その間に銃声がとどろき―
音之進くんを助けに来たのは鶴見中尉でした。
その後、鯉登パパも無事に目を覚まし、勇敢にも戦った音之進くんを褒め親子の溝は埋まったようです。

誘拐犯たちは結局誰だったのかわからずじまい。
犯人の死体を片付けるのは、月島軍曹・菊田特務曹長・尾形。
三人とも何か含みのある目線を、「月寒あんぱんが私たちを引き合わせたのかな」と談笑する鶴見中尉たちへ向けます。

その後、鶴見中尉の影響か、陸軍士官学校へ入ることとなった音之進くん。
この段階ですでに鶴見中尉の前では早口の薩摩弁です。
鶴見中尉への挨拶帰りに尾形とすれ違い、何を感じ取ったのかにらみ合う二人。

そして現在。
診療所の一室で倒れている鯉登少尉と銃を突き付けている尾形。
しかしすぐそばに白石と谷垣がおり、発砲すればすぐ突入され殺される危険性が。
そこで尾形は鯉登少尉を蹴り、おそらく気絶させたのでしょう、その隙に馬を奪い逃げおおせます。
気付いた杉元が銃で狙うも失敗、尾形は果たしてどこへ逃げるのでしょうか――。

 

仕組まれた誘拐?

先週の感想で書いていたことが五割ほど描かれているように思います。
まずは鯉登親子のすれ違いを直したのが鶴見中尉だということ。
あとは、この誘拐事件にも鶴見中尉が噛んでいるかもしれない、と思うに足るほどに匂わせる描写がありますよね。

兄と自分を比べ、兄のようにはなれない、代わりに自分が死ねばよかった、と自己否定をしていた鯉登少年が、電話で謝ったことで、鯉登パパは音之進くんが何を思っていたのかを知ることができたのですよね。
優秀な兄のようにならなければ自分のほうが生きている価値がないと音之進くんに思わせたのは、兄の死後感情を見せることが減っていた自分のせいではないか?と思い至ったであろう鯉登パパ。
気絶から目を覚ましたとき、音之進くんに、誇らしいと声をかけるシーンはとても良かったですね。

その一方でこの事件の裏では鶴見中尉の思惑が働いていそうです。
まず何と言っても、犯人の遺体処理の三人
鶴見中尉は、五稜郭の番号が「144番」と知っているものがいない、と言っていました。
番号を合図で伝えたくても伝えられないのですよね。
犯人の潜伏場所が明らかになってすぐに鯉登パパと現地に向かったので、仮に他の人が部下に知らせて五稜郭へ走らせたとしても、ちょっと早すぎるのでは?と思ってしまいます。
突入前後の建物への日の当たり方から時間経過はあるものと見えますが、それにしても…という具合です。
そして何よりも、鯉登パパを気絶させた人物
一体誰なのでしょう?やはり、月島・菊田・尾形のうちの誰かなのでしょうか。それとも鶴見中尉?
銃撃戦も、犯人二人vs鶴見中尉だったのでしょうか?
遮蔽物など少なさそうな建物に思えるので、部下の援護があったとか、部下にやらせた、というほうが納得がいきます。
以上から、最初から五稜郭付近に部下を待機させていたのでは?と思うのですよね…すごく怖いですが…。

犯人が「ボンボンが」と言っていますが、これもちょっと引っかかります。
お金がほしい犯人が、裕福な家の子どもを誘拐して「ボンボンが」と言うのは納得がいきます。
自分がほしいのに持っていないものをたくさん持っているから。僻みみたいなものですね。
でも今回の誘拐の目的はお金ではないのです。
もし鶴見中尉の読み通り、本当に露西亜が関わっているなら、こんな危険な工作を、「ボンボンが」と言うようなお金に飢えた人にやらせるのか?という点も引っかかるポイントです。
適当な人をお金で釣ってやらせるのは難しいし、適当な人ではなくちゃんとした人がやるならもっと周到に用意するはず。
第一、誰にやらせるにしても、露西亜人がやるのでは目立つので現地の人間を買収なりなんなりしてやらせるものでは?
露西亜の思惑があるという鶴見中尉の読みに説得力を持たせるため、それこそ鶴見中尉が買収した適当な露西亜人だったのでは…?くらいまで思ってしまいます。

私が先入観を持って読んでいるからかもしれませんが、やはり今回の事件は鶴見中尉の仕組んだ狂言誘拐に思えるのですよねぇ…。

 

尾形と独占欲

鯉登少尉(この時点ではまだ士官学校入学前ですが)とにらみ合う尾形。
尾形はよくこの陸軍内の階段で描かれますよね。
時期は不明ですがこのときはおそらくまだ勇作さんを殺す前かと思います。鶴見中尉の額あるし。

ここで鯉登少尉をにらんでいた意味を少し考えてみました。
尾形は独占欲が強いのではないかなと思います。
母親は尾形に興味を示さず、父親には疎ましがられた幼少期。
その後鶴見中尉の元に来るまでの経歴は不明ですが、鶴見中尉は尾形を買っていたと思います。
花沢中将の息子という立場は非常に魅力的です。
尾形を通じて勇作さんを、延いては父親を、そしてゆくゆくは陸軍の中央への足がかりができるかもしれないのです。
結果、勇作さんのたらしこみはうまくいきませんが、尾形と鯉登少尉がすれ違ったこの時点ではまだ失敗と決まったわけではありません。
が、海軍との橋渡しが期待できる鯉登少尉は、尾形の立場を脅かすに足る存在だったのではないでしょうか。
鶴見中尉が中央や海軍など他の力へのアクセスを求めていたならば、鯉登少尉のほうが圧倒的に魅力的です。
鶴見中尉の目的に自分よりも沿っている人物の登場で、今いる自分の立ち位置―中央への繋がりが得られるかもしれない存在―が揺らぐのを感じ取ったのではないでしょうか。
つまりは鶴見中尉に重用されなくなること、もっと言ってしまえば鶴見中尉の関心を独占できないことに危機を覚えたのではないかと。

アシリパさんとの流氷上でのやり取りを見ていても、独占欲が強いのだろうと思います。
人殺しをさせて「こちら側」へ来るのを見たい、だなんて歪んでいると思いませんか。
杉元のように、何が何でも清くあってくれ、というのも勝手な幻想の押し付けですが、自分のいるほうへ来てほしいという尾形の願望もなかなかにクレイジーなものがあります。
かつての杉元が願ったような、その人の意思を尊重し寄り添いたい、という見守るスタンスではなくて、手元へ引き寄せて共に地獄にいてほしいという強引な欲望
これを独占欲が強いと言わずに何と言いましょうか。

今回、尾形は裸に布一枚という格好で逃げたわけですが、次に杉元たちと会うときはどうなっているのでしょうか?
アシリパさんへの執着がさらに強くなって再登場するのでしょうか。
そろそろ尾形の真意が知りたくて知りたくてウズウズします。

 

 

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こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
妄想・勘違い・見逃し等々も多分に含んでいます。
一ファンの感想としてお読み頂ければ幸いです。

 

第199話 坂の上のロシア領事館

オチそれかい!!!
というのが率直な感想の最新話でした。

無人のロシア領事館で犯人からの電話を待つ鶴見中尉たち。
鯉登パパは「息子可愛さに海軍を裏切ることはしない。音之進には国のために死ねと言う」と息子を失う覚悟です。
犯人からの電話を受け取り、音之進くんの無事の確認を要求。
鯉登パパが「国のために」と音之進くんに伝えたところ、彼の口からは「兄のようになれず申し訳ない」とのセリフが…。
電話から犯人の居場所を特定し急ぎ向かう鶴見中尉たち。
急坂で馬が怖がるため音之進くんの愛車・ド ディオン ブートンで鯉登パパと鶴見中尉が函館は五稜郭へ急ぎます。

 

父であり武人である

今週の見どころはやはり鯉登パパと音之進くんですね!
パパは「国のために死ね」と言いたかったのに、実際に伝えられたのは「お前は助けない。国のために」まででした。
鯉登パパの言葉を遮って音之進くんが話した言葉からは、彼が勘違いしているように思えます。
鯉登パパの結論としては「息子は助けない」なのですが、理由がしっかりあるのですよね。
海軍の重要な拠点を任せられている鯉登パパには犯人に従って息子を解放してもらうという選択肢がないだけなのです。
だから、鯉登パパは別の選択肢、「鶴見中尉を信用し犯人たちより先回りする」を取ったのです。
決して音之進くんが兄に劣るから見捨てるわけではないです。
鯉登パパはもし誘拐されたのが兄のほうであっても同じ結論を出すでしょう。

それに、音之進くんと電話で話して、鯉登パパの中で気持ちに変化があったように思います。
息子の悲痛な気持ちをわかってそれに心が動かされるなんて、愛情深いお父さんですよ!
ゴールデンカムイに出てくる父親は基本的にダメダメな感じなのでこれは嬉しくなっちゃいますね。
鯉登パパ、電話の前までは、犯人の要求なんぞ飲まん!お国のために息子には死んでもらう!という頑固さがありましたが、電話のあとには、お国を守りつつ息子も守りたい、と望むようになったんだと思います。
父である前に武人、だったのが、父であり武人である、に変わったのかなと。
「国を守る」「息子を守る」両方やらなくちゃあいけないのが軍人のつらいところだ……というところでしょうか。

音之進くんには卑屈にならないでほしいです。
「生まれてこなかったものと思ってください」なんて悲しいこと言わないで…。
兄が亡くなったという事実と、自分が船に長時間乗れないという事実だけで、父親の愛情を無下にしないでほしいです。
ご両親にとってはどちらも大事な子どもで、比べられるようなものではないのですから。
せめて戦って死んでやるという悲愴な覚悟がありそうですが、鶴見中尉たちが助けに行くからそれまで無事でいて…!

 

たらしこみの気配

音之進くんが、電話越しに鯉登パパと話すところで、犯人の一人が彼の背中に手を添えていますよね。
もしかして音之進くんの話す日本語がわかっているのでは…?と思わせる描写です。
また、五稜郭に向かう鶴見中尉たちを追う犯人グループの一人。
彼を倒したのは鶴見中尉ですが、犯人がやられるときの様子が、なんだかちょっとあやしいような…?
車で走行しながら馬に乗った人物を撃てるものなのでしょうか。
はっきり弾が当たったような描写も見当たらないですし…。

何が言いたいかというと、今回の件も鶴見中尉が一枚噛んでいるのでは?という深読みです。
犯人グループと繋がりがあるのかなぁとぼんやり思いました。
この誘拐事件の首謀者が誰なのかはわかりません。
犯人側がいわば狂言誘拐をするため鶴見中尉が手を貸したのかもしれないですし、鶴見中尉が命じてやらせているのかもしれません。
そうなってくると、二話前で「また会おう」と言っていた鶴見中尉が、その後ちゃっかり音之進くんと再会しているのも(まだ電話越しで直接は会っていませんが)あやしく見えてきますね…。

なんにせよ、尾形と勇作さんのケースといい月島軍曹のケースといい、鶴見中尉にとってかなり都合のいい状況が出来上がっているので、自ら作り出したのでは?と勘ぐってしまうのですよね。
私の妄想なのであまりあてにならないですが、このあたりもしっかり説明したうえで完結してほしいですね…!

 

坂の上の馬

二週前の話で鶴見中尉が言っていたことの回収でしたね。
馬は下り坂を走れないので車のほうが早い。
その通り、今回は下り坂を車で疾走しました。

これも鶴見中尉のたらしこみの一環に見えてしまうのです。
みんなが困ったボンボンだと遠巻きに見ていた、車に乗る音之進くん。
この車は上りは遅いんだと言う彼に、下りは早いさ、と返す鶴見中尉。
音之進くんにとって、みんなが避けていたのにその力を認めてくれる人が現れたということを示しているのかなと思いました。
兄を亡くし父とぎくしゃくしていた少年にとって、周囲の大人と違い、愛車を褒めてくれて、兄のようにならなくていいんだよと寄り添う言葉までかけてくれる人物の登場は、どれだけ明るく見えたのでしょうか。
まして今回の音之進くん奪還作戦が成功すれば、父親との仲もうまくいくかもしれません。
そこまでいくと鯉登少尉が鶴見中尉に心酔するのもわかる気がしますよね。

 

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ゴールデンカムイ第198話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

また、以下は私の所感です。
妄想・勘違い・見逃し等々も多分に含んでいます。
一ファンの感想としてお読み頂ければ幸いです。

 

第198話 音之進の三輪車

鹿児島で出会った鶴見中尉と鯉登音之進少年。
音之進少年の兄が亡くなった経緯やそれが原因で音之進少年が船に乗れなくなったことが語られます。
やがて二年後に海軍の父の仕事のため函館に移り住んだ音之進少年。
函館の街中を自慢の三輪車で駆け回っていたところ、露西亜と思われる一味に誘拐されてしまいます。
ロシア語が堪能な鶴見中尉が音之進少年奪還のため鯉登平二中佐(当時)の元へやって来ましたが、果たして無事に帰還できるのか。

というのがざっくりしたあらすじ。

 

海軍将校になりたい

音之進少年の兄・鯉登平之丞海軍少尉
明治二十七(1894)年、日清戦争の黄海海戦で防護巡洋艦「松島」に乗っており、戦死しました。
父・鯉登平二中佐は別の戦艦から、息子の乗った松島を見つめていたそうです。
砲弾が的中し57名の味方が死んでいくさま。
松島は、敵の砲撃が装薬(弾丸を発射する際に使用する火薬だそうです)の誘爆を引き起こし、大破したそうです。
松島は日露戦争まで活躍した艦艇なので黄海海戦では沈没したわけではなく大破、またその後は200名超が乗っていたとの記述もWikipediaにありますのでその当時も乗員60名程度ではないだろうと思います。

なので大破したといっても全員死亡する規模ではないので、誰が死んだのかまでは他の艦艇からはわからないかと。
さすがに鯉登平二中佐は息子の持ち場を把握していたかもしれませんが…。
誰が死んだかわからないなら、私情を挟むのは厳禁ですが、我が子の無事を必死に祈りながら松島大破の様子を見ていたと思います。
息子の持ち場と大破した箇所が一致しているとわかっていたのなら、なぜその場所に砲弾が当たったのかと運命を呪ったことでしょう。

そしてそんな父親の胸中を想像した音之進少年の胸中は想像を絶します…。
海城学校で聞いた松島大破の様を、頭の中で映像に変換するだけでも実践経験のない身には相当な苦行のはずです。
加えて父親が笑わなくなった事実も上乗せ。
さらに、兄が死んだ分、自分が立派な海軍将校にならねばという責任を感じていたはずです。
兄の死・戦死の惨たらしさ・父の変化・使命感、それらは全て「船」に関わるため、音之進少年は船に長時間乗れなくなってしまう…。

船に乗れない者が海軍将校になれるはずがない。
兄上の代わりにはなれない。
自分は鯉登家の落ちこぼれだ。

自分のことを否定する少年に、鶴見中尉は、兄上の代わりになる義務はない、と言葉をかけます。

函館に引っ越した音之進少年は、まだ海軍兵学校を受験する予定だそうで、まだ海軍将校を目指しているのですね。
ということはきっと船に長時間乗れるようになる練習をしていたりするんでしょうか。
そのたびに兄や父のことを思い出して、体調を悪くし、父親の期待に応えられないどころか兄上という空白を埋めることすらできないと嘆いたのでしょうか…地獄ですね…。

次週あたりには鶴見中尉が音之進少年に陸軍へ入るよう助言する場面が見られるのでしょうね。

 

親の心子知らず

鯉登少尉は意外と自己評価が低いのですね。
自分のほうが死ねばよかったなんて、戦時下にそう言えることではないではないです。
やはり今週語られたように、父親の関心が自分に向いていないということが原因なのですかね。
誘拐犯相手にも、父は自分のために函館要塞を差し出す真似はしない、と言っていますし。

悲しいのは、音之進少年は、父がそうしないだろうと思っている理由を、「自分が落ちこぼれだから」だと思っているところなのですよね…。
音之進少年がそう思ってしまうのも無理はないのですがね…長男が死んだのなら、家を継ぐ者として次男にはこれまで以上に厳しく当たり鍛えようとするのが普通でしょうから。
そうしてくれなかったのは父が自分に何も期待していないからだという理屈が出来上がってしまったのでしょう。

でも、父のほうは、そう思っていないのではないかなと、いや、そう思っていてほしくないと、私は思います。
お父さんは、「息子に価値はない」と思っているから犯人の要求を飲まないのではなくて、
息子の命と天秤にかけられないほど重大なものを預かっている」から犯人の要求を飲まないのではないかなと。
樺太に向かう艦艇の上で杉元に語ったように、兵の命を預かる将校ならばまず自分の子どもを率先して戦場に差し出さねばならないのです。
息子一人のために海軍中佐として預かっているものを放り出すことはできません。

父と息子でちょっとすれ違っているかな?と思ったところです。
鶴見中尉がこの親子をうまく繋ぎ直してくれることに期待しています。

鶴見中尉は人をたらしこむとよく言われていますが、私の期待通りの展開なら、「たらしこむ」という言葉が持つ利己的なニュアンスは薄れるような気がします。
親子の間の誤解をなくすのはいいことですよね。
ただ、現在の鯉登少尉の様子からは、鶴見中尉に心酔しきっていて、心の拠り所になってさえいる印象があります。
拠り所になっているということはそれがないと立っていられないということなので、鯉登少尉が自立できなくなっているとしたら、たしかに鶴見中尉ちょっと悪い大人かもですね。

鶴見中尉のたらしこみについては、月島軍曹と尾形の例もあります。
月島軍曹のえご草ちゃんの件は、元は父親との関係が発端です。
もし「佐渡で実際に骨が掘り出されるのを見た」という発言がなければ、父親を誤解していたという後悔はあるでしょうが、恋人を死に追いやるような親ではなかったと多少の信頼回復はできていたでしょう。
なのであの発言は鶴見中尉の想定外だったのではないかと思います。

尾形のほうは、まだ全然わかりません。
やはり父親との関係が肝だろうとは思いますが…やはり父親を殺させてあげるよというところなのですかね…。
正直尾形のことは作中で何を語られても理解できないような気さえしています。
難解な男だ、尾形…。

 

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読書記録『古代ギリシャのリアル』

こんばんは、うたげです。
読んだ本の記録を取っておかないと何を読んだのか思い出せなくなる年になってきました…。
読書の記録と、そのとき自分が思ったことの整理のために、書いていきます。
読書家ではないので本当にたまに、ですね。

 

藤村シシン『古代ギリシャのリアル』

今回の本はこちら。
藤村シシン著『古代ギリシャのリアル』実業之日本社

狭苦しい日常を抜け出して、古代ギリシャの太陽の下に連れ出してくれる本です。

何よりまず読みやすい
親しみやすい文体なので肩ひじ張らずに楽しく読み進められました。
古代ギリシャの人々の「働いたら負け」な生活スタイルや、自由奔放そのもの何でもアリな神々の逸話を読んでいるうちに、日常の些細なことを忘れられます。

ただ、ギリシャ神話の神々の紹介にかなりページ数を割いています。
ほぼ半分以上を占めており、そのための本と言っても過言ではないです。
期待していた古代ギリシャ人の生活モデルや、奴隷の使われ方などはボリューム少な目でちょっと残念。
それは他の本を読みましょうということなのですかね。
この方の語り方がとてもわかりやすいので、この方の書く「あるアテナイ市民の一日」を読んでみたいです。

 

歴史として語られるもの

この本はまず衝撃的な事実から始まります。
古代ギリシャといえば、「真っ白に輝くパルテノン神殿」「白い石で作られた神々の彫刻」などを思い浮かべていました、私は。
けれど、パルテノン神殿は実は白くなくて鮮やかに彩色されていたらしいですし、白い石=大理石で作られた彫刻に至ってはルネッサンス期の芸術家の作品です…的外れもいいところですね…。
私のこの例からもわかるように、古代ギリシャといえば、というイメージが強烈にあるのです、現代には
それらがどう形作られてきたかの概要を、実感を持って知ることができるのが、本書の冒頭から第1章です。

日本以外の場所、とりわけユーラシア大陸内の歴史を知るうえで頭に入れておかないといけないなと思っているのが、「他国との国境が海ではない」ということ。
日本は、つぶさに見ていけば現在の日本列島の中での勢力争いなどはありましたが、島国なので概ね「国境=海」ですよね。
でも他の国や地域の歴史はそうではありません。
陸続きなのでよその民族や国の侵攻を受けやすいです。
それはいわゆる古代ギリシャの位置も例外ではなく、ペルシアの侵攻を受けたが退けたという旨の発言は『アサシンクリードオデッセイ』中でも何度も聞かれましたし、その後ローマ帝国が大陸を席巻するのはお馴染みですよね。

(別の本の話ですが、チェコの歴史についてもそれはそれは他民族や他国とのにらみ合いの歴史だと感じました。
特に、東にロシア、西にヨーロッパの強国という凄まじい地理的配置なので、いかにして生き残るかと歴代の統治者は頭を悩ませていたようです。)

侵攻を受ける場合もありますが、地理的に色々なものが混じり合いやすいので、多種多様な文化が混じり合ってどんどん発展を遂げていきます。
パルテノン神殿一つとっても、ローマ帝国に入ったりオスマン帝国に入ったりと、そこに住む人々の変化に応じ様々なテイストを吸収していったはず。
十七世紀に破壊されるまで、色々なものが変えられ足され削り落とされ、変化を続けて、人々に寄り添っていたと思います。
現在の再建されたパルテノン神殿にローマ帝国のキリスト教やオスマン帝国支配時のモスクの名残を見ることはできませんが、西欧の人々の理想のルーツ像を反映した今の姿も、これはこれでこの建物が背負った歴史ということなのでしょう。

ただ、現在の姿になった過程は知っておく必要があるなと思いました。
どの文化にも歴史があって、背景にどういうドラマがあったのか知っておくと見え方が変わります。
変容することも歴史の一部だという考え方ができれば色々なことに寛容になれるはず。
変化することは何も怖くないのだという妙な自信を私は得ました。

 

歴史として語られないもの

さて、私は古代ギリシャの人々がどういう生活をしていたのかが知りたくて購入しました。
もちろんこの本でも触れられています。ボリュームは期待よりも控えめですが。
男性同士の肉体関係や結婚制度、神々への供儀などの説明はありますし、ワードを拾っていけば何を食べていたのかもなんとなくわかります。

でも実感がいまひとつ得られない。
なぜなら、現代に残されていることはおおよそが男性目線であって、女性や子どもがどうしていたのかがよくわからないから。
男性社会のもののほうが後世に残りやすいのですよね。
また、子どもという身分ができたのは比較的最近のことなので、子どもという特定の時期の人間に向けられた目はおそらくなかったのかなと思います。
(向けられていても女性のものがほとんどで残されていないとか。)

著者も、女性について書かれている史料はあまりない、と述べています。
男性だけだと当時生きていた人の半分だけなので、もう半分はよくわからない状況。
けして現代の私から見れば良いとは言えない女性の扱いだったのかもしれませんが、どんな家庭が一般的なのかや、子どもたちは何をして遊んでいたのかなど、知りたかったですね。

 

古代ギリシャ人と現代

面白いなと思ったのは古代ギリシャでの宗教観。
信仰心 < < 儀式の実践」だそうです。
これは日本の宗教観も同じです。
信じる心よりも、儀式のほうが大切にされています。
私はこれにすごくしっくりきました。
信仰していないわけではないですが、信徒と胸を張って言えるほどの信仰心はないのです。
仏教徒と言えなくもないけれど身を完全にゆだねるほどの熱心な信徒ではないし…でもお葬式は仏教式だな…と思っていましたが、まさしく「信仰心より儀式の実践」です。
また、古代ギリシャでは、きちんと実践に移さないと、いくら心の中で祈っても神様は応えてくれないという意味でもあったそうで。
今のお葬式のシステム、遺族の心の整理に繋がるそうですが、きちんと儀式を行えば心の平穏をもたらしてくれるなんて、まさしく実践によるご利益ですよね。

あとは古代ギリシャ人の終末観ですかね。
彼らの思う終末というのは人間の心からモラルが消えた状態だそうです。
人と人との心が通じない状態とも。
現代はわりと古代ギリシャで言う終末に近いのでは?…と思いますが…。

古代ギリシャ人が現代を見たらどう思うのでしょうね。
神様は大事にしているけど終末状態……カオスだ!と叫ぶ気がします。

 

古代ギリシャは面白い

つらつらと感じたことを書いてきましたが、この本は面白いです!
冒頭でも触れたように文体がとっつきやすい
注釈も同じページの下段に配置されていて、文庫本などでありがちな「いちいち巻末の注釈集まで移動して読まなければならない」ストレスもないです。

特に『アサシンクリードオデッセイ』をプレイした人にはおすすめです。
ゲーム中の登場人物が祈る神が、どういった神なのか?なぜこの場面でこの神に祈るのか?そういった疑問への答えが見つかります。
歴史的ロケーションがいかに重要なものなのかもわかり、作り手の古代ギリシャ愛に感服します。
ゲーム中で街中を歩くときに古代ギリシャの人になりきれる!

この著者が別の本を書く機会があったら読みたいなと思います。
ブログなどで断片的に読むよりまとめられたものを読むほうが理解しやすいので書籍化を待ちます。

 

買ってちゃんと読み切った本は久々でした…。
途中まで読んで積んでしまう癖はどうにかしないといけないですね…。

ゴールデンカムイ第197話感想

こんばんは、うたげです。
ゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

そしてこのブログは感性を大事にしているので他の方の感想などをできるだけ見ずに書いています。
ゆえにとんちんかんなことを言っていたり支離滅裂だったりしますが、ご容赦ください。
他の方の素敵な考察を読んで自分の頭の中のゴールデンカムイをアップデートするのはあとでもできますが、初めて読んだ感想は一度しか抱えられないですから。

 

第197話 ボンボン

先週、尾形の治療をしようと亜港の診療所へ向かうところでお話は終わっていました。
今週は尾形の治療結果から。
医師曰く今夜が峠とのことですが…
治療後の隙に医師を殴り倒し、看護師を人質に取って医師に言うことを聞かせ、鯉登少尉に銃口を突き付けます。
死が迫る中で鯉登少尉の回想が始まり、なんと14歳の時点で鶴見中尉に出会っていたことが判明します。

 

結託再び?

尾形が大人しく治療されると思えないと先週の感想でも書きましたが、本当にその通りになりました。
でもかなり荒っぽいやり方で、予想の斜め上をいっています…。

いくつかある気になる点を総合すると、「尾形は誰かと組んでいるのでは?」と思います。
なぜって、一人で逃げるのは到底無理ですし、状況的にもそう言えるのではないかなと。
また、組んでいる前提で読むと、恐ろしい狙いが見えてきます。

さて、尾形は誰と組んでいるかという話。
まずは、医師。一見ありそうです。
医師が言いました、呼吸も血圧も弱くなっていると。
そんな人間が一般人とはいえ露西亜人男性を殴り倒せるでしょうか?
詳しい状況が不明ですが看護師もその現場を無抵抗に声も上げず見ていたとは考えにくい。
結託して医師に嘘の容態を伝えさせ、看護師にも演技をさせたのならあの状況も成り立ちます。
と、医師と看護師の状況から見るとアリなのですが、不自然なのが、まさに呼吸も血圧も弱いと言わせること。
医師にそう言わせたら杉元たちが様子を見に来るとして、例えば全員で来ていたら不利になってしまいます。
それにもし嘘を言わせるなら、何日か様子見、と言わせておいたほうがよさそうですし。
そうすれば杉元たちのうち何人かは月島軍曹の待つコタンに帰るかもしれないし、時間の制約が延びる分チャンスも増えます。
なので医師という線はないかな…。

あとは候補としては杉元しかいないですよね。
そもそも、今夜が峠と聞いて、なんとか頼んでみる、というのもやや不自然です。
医師が手を尽くしてその結果なのでどうにもならない、せめて顔を見ようくらいが普通でしょう。
逃げたから裏へ回れという指示も、あえて病室から遠ざけようとしているように見えてしまいます。
雪が降っているようなのでうまく動かないと足跡で行先が知れてしまう状況で、重傷の尾形に杉元たちから逃げ切ることができるでしょうか。
それに、本当に尾形は逃げたいのでしょうか?
杉元が出した指示は、谷垣と白石に向けたものでした。
その場にいて白石より戦力になる鯉登少尉には何も言わないというのもおかしいと思いませんか?
この機に杉元と尾形が企てて、鯉登少尉を亡き者にしようとしているということかなと思いました。
アシリパさんに並々ならぬ思い入れのある杉元と尾形にとって今最も邪魔なのは、月島軍曹と鯉登少尉です。
鶴見中尉の腹心の二人とこのまま一緒に日本に帰れば、自分はおろかアシリパさんがどう扱われるかわかりません。
この二人がいなければ鶴見中尉には状況がわからず尾形も無事でいられる可能性が高い。
月島軍曹が重傷を負っている今が鯉登少尉を葬る絶好の機会
杉元が尾形と手を組む理由には、キロランケの口から聞けなかったことを話す、ということがなり得ます。

…という可能性もあるなと思いました。
この場合、杉元は絶対にアシリパさんを泣かせることになると思います。
アシリパさんはこの仲間割れを望んでいない…無事に全員で戻れなかったら鶴見中尉の元にいるインカラマッがどうなるかもわからないですし…。
杉元は本当に静かに暴走しているんでしょうか…。

 

カインとアベル

尾形に銃を突き付けられた鯉登少尉は鹿児島で過ごしていた14歳の頃を思い出します。
鶴見中尉と出会ったとき

西郷さんが鶴見中尉と第七師団ままですね。
私の「漫画日本の歴史」知識だと、欧米で見聞を広めている間に自らの意思とは異なる理念の新政府ができ、それに対抗する形で反乱を起こした西郷さん。
欧米に行くを露西亜での諜報活動に、異なる理念の新政府ができを陸軍で冷遇されに置き換えれば、それはもう鶴見中尉と第七師団です。
西郷さんのお墓参りに来た鶴見中尉は西郷さんの何に思いを寄せているのでしょうか。
仲間のために立ち上がった仁義か、信念を最期まで貫き通した武士道か。
士族の反乱という言葉から想起されるイメージから言えば、もしかしてただ思想を掲げどこへとも知れず駆け抜けることを始めから目指していたのでは?と思わせる不穏な鶴見中尉の西郷さんお墓参り。

お墓参りをする人がもう一人。
14歳の鯉登少尉です。
鶴見中尉からもらった月寒あんぱんを半分こし、兄の墓前にお供えします。
鯉登少尉は次男だったのですね。
しかも今の鯉登少尉からは考えられない自己を貶める物言いをしており、14歳当時の鯉登少尉にはあまり快活さが感じられません。

自分が死ねばよかった、なんでそうそう出てこないセリフです。
次回以降に明らかになるでしょうが、鯉登少尉を助けようとして兄が死んだか、二人で何かに巻き込まれ鯉登少尉だけ運よく帰還したか、そういったところだと思います。
当時の家制度を思えば長男のほうが非常に大事にされたと思います。
学校の敷地内に珍しい乗り物で入っていったり兄をからかったりとややヤンチャな気配のある14歳の鯉登少尉に対して、からかわれても一度も怒らない兄。
優秀な兄と不出来な弟、という構図でもおかしくありません。
長男を失った周りの人々はそれをひどく嘆いたでしょう。
心無いほんの出来心での「長男のほうが生きていれば」という言葉に傷ついたゆえの、自分が死ねばよかった、という発言だったのではないかと推測しています。

今回、何かと鯉登少尉に突っかかる尾形の心境が少しわかった気がします。
勇作さんと似ているのですよね、鯉登少尉は。
恵まれた家庭に生まれ育って、父が軍人で、兄がいて、兄を慕っていて、でも理由があって兄は遠い存在。
勇作さんの場合は母親も境遇も異なっており親しくできる間柄ではなかった、鯉登少尉の場合は兄はすでに死んでしまった、という違いはありますが。

それに尾形本人とも通ずるところがあります。
兄弟で比べられているのでしょうね、尾形も鯉登少尉も。
鯉登少尉の場合は次男で、長男がすでに亡くなっているとなれば、もし長男が生きていれば…と何かにつけ比べられたのではないかなと。
尾形は第七師団の兵の間でもそういう兄弟を比べる話がされていそうですが、何よりも本人が一番勇作さんと自分を並べて比べていたでしょう。
勇作さんや鯉登少将と自分を比べたときに尾形がどんなことを思ったのか…。
同じ血を分けたはずなのにまるで違う自分と勇作さん。
似た境遇だけど父との関係が悪くなさそうに見える鯉登少尉。
見比べては違うということを強く意識していたのではないかなと…切ないですね…。

これだけ兄弟という関係にこだわるのは、カインとアベルという世界一有名な兄弟の話があるからです。
ゴールデンカムイは聖書の引用が多いですからね。

これらを踏まえると先週の鯉登少尉の、父に成果を報告できるのが嬉しい、という発言も見え方が変わってきます。
父親に認めてほしいのでしょう。
そしておそらく14歳の鯉登少尉のその欲求を満たしたのが鶴見中尉なのではないかなと。
やはり鶴見中尉は父親絡みの満たされない心を握るのが上手なのですね。

鯉登少将の長男が亡くなったとあれば陸軍にも情報が渡るでしょうから鯉登少将に会うためにわざわざ来たのでは…?と思わせる鶴見中尉の恐ろしさ
さて何をして鯉登少尉をたらしこむに至ったのか…次回が楽しみです。

 

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こんばんは、うたげです。
久しぶりのゴールデンカムイ最新話感想です!
二週間休載していたので三週間ぶりに読む最新話。
ネタバレありです!未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。

 

第196話 モス

登別温泉編も終結のようです。
前回は都丹が雪崩に飲み込まれる描写で終わり、生死が気になって(できれば生きていてほしいと思って)いましたが、ようやく判明です。
久々のローカルグルメ情報を挟み、負傷中の月島軍曹と尾形に焦点が当たる今回のお話。

 

父との関係をめぐる物語

ニヴフの文化の紹介パートから始まるお話。
都丹の生死が気がかりな前回の終わり方からこれなので引っ張りますねぇ…。

でも久々の異文化交流はアシリパさんが大活躍で楽しいです。
現地の人の話を杉元たちに通訳してあげるアシリパさん。杉元にレクチャーしてやる!みたいな感じで誇らしげな気持ちが出てるんじゃないかな。かわいい。
自分たちの文化をきちんと杉元たちに説明していたし、近い文化を持つニヴフのことを知れるのもそれを説明できるのも嬉しいんじゃないかなと思うんですよね。
自分たちが大事にしていることはもちろん、何気ない日常の中で行っているあれこれに興味を持ってもらうのって嬉しいですよね。むずがゆさを伴う嬉しさ。
こういうやり取りでだいぶ消耗しているであろうアシリパさんの心も少し癒えるとよいですね。いくら強いヒロインとはいえまだ幼い子どもなので。

今週のグルメ紹介は、「モス」というニヴフの魚を使った冬のお菓子
「モス」といえば、そう、鯉登少尉のお父さん、鯉登平二海軍少将
その響きから鯉登少尉が父上を思い出すくらいなので、「もす」が本当に口癖なのですね鯉登少将…。
鯉登少将が出てくるのは網走監獄大激突の前後のみというごくわずかなシーンのみですが、それでもけっこうなインパクトを残していますよね。
あのシーンはとてもいいですよね。父親としても軍人としても責任を全うしようとする心意気が見えて。
父上は杉元相手にも薩摩弁で話すくらいお国訛りが抜けていないというのも良きですが、父親としての心根を話していたから最も親しんだ言葉が出てきたんだという見方のほうが素敵ですね、あのシーンは。

そんな父親とは良好な関係を築いている鯉登少尉と、自分の父親については思うところのある月島軍曹の対比。
佐渡の親父殴り殺しから続いた月島軍曹の佐渡関連のストーリーもここらで一旦完結でしょうか?
真相不明ながら人生の邪魔をしてきた父親を殴った月島軍曹の目の前には、父親を尊敬している若い将校の姿があって。
大事な誰かの娘を連れ去ろうとした月島軍曹が、別の誰かの娘が生きるのを手助けして親を悲しませないよう助言した。
自分自身の親や周りの人とは良い結末を迎えられなかったかもしれませんが、今近くにいる人の良い結末を祈ったり手助けしたりすることはできるんですよね。
父上のことを語る鯉登少尉を見て思うことはあったと思いますが、それでも「誇らしく思うはず」と声をかけられた月島軍曹。
かつての自分がしたことを他の誰かに見るという経験を樺太でしてきたからこそ言えたことかなと思います。
それだけ自分を客観視できたということで、この旅で月島軍曹も成長したのでしょう。

 

山猫はまだ語らない

さて、まだ伏線がほぼまったくと言っていいほど回収されていない男がここに一人。
そう、尾形
この男は、戦う目的が謎。
動機といいますがここに至る背景は度々出てくる勇作さんはじめ家族との因縁でなんとなく掴めはしているのですが。(参照:ゴールデンカムイ第188話感想)
何のためにこんなことをしているのか?という問いは未だにわかりませんよね。
結局、金塊がほしいのか、アシリパさんがほしいのか、何なのか…。そもそもなぜ鶴見中尉を裏切ったのか?とか…。
なんとなく自分でも何がほしいかわからなくて、とりあえず猫が獲物をもてあそぶように、人殺しのできる戦いに身を投じているだけのような感じもありますが、本人が何も言わないのでまだまだ謎が多い男です。
おそらく作品自体がもう九合目にさしかかるくらいのはずなのに。

そんな尾形はアシリパさんの心に深く爪痕を残そうと試みましたが杉元によって阻止され、今は死んではいないものの無事とは言い難い状況のようです。
ニヴフが草から作る傷薬ではもちろん治せません。
医者に見せる必要がありますが、鯉登少尉は密入国や日本兵であることを通報される危険を回避したい。
でも杉元は危険を冒しても尾形を助けるつもりです。
尾形には聞きたいことが山のようにある。
それもそうですが、何よりもこのまま尾形を死なせては、アシリパさんが殺したことになってしまうから。
人殺しかそうでないかの境界線をアシリパさんに越えてほしくない、よりによって尾形のせいで。
これについてはアシリパさんも尾形を殺すのはおろか傷付ける意図もなかったので杉元とアシリパさんの間に溝はないのですが、杉元の理想の押し付けにも見えますよね。
ウイルクの今際の言葉を正確に伝えなかったりと杉元には自分の思うアシリパさん像をアシリパさんに押し付け気味の傾向があります。
静かに暴走しているかもしれないのですよね。これもその暴走の一端かもしれない、と思うと今回の話も途端にホラーになってきます…。
(参照:ゴールデンカムイ第192話感想)

負傷しているのは尾形だけではありません。
月島軍曹にも治療が必要だという杉元の言葉で鯉登少尉も渋々承諾し、亜港の医者の元を訪れた一行。
でもそこでは重症の尾形の治療は無理でした。
本格的な機材のある病院へ行く必要があるとのことで、尾形をそりに括り付け病院へ運ぶことにします。

最後のコマの尾形、微妙に口角が上がって、笑っているように見えませんか?
不気味ですねぇ…今は何を考えているのか…。
今逃げ出したところで無事でいられるはずもないので大人しく治療を受けると思うのですが、尾形は猫と同じで何を思っているかその顔からは一切伺えないですからね。
次号あたりみんなが少し目を離した隙に舌を噛み切ってそれにアシリパさんが最初に気付くなんて展開だったらどうしよう…すごくトラウマ…。

余談ですが、冒頭で「父上に成果を報告できて嬉しい」という鯉登少尉のセリフと、「密入国者で日本兵だから通報されては困る」というセリフは、何か伏線なのでしょうか…?
このまま無事に帰国できて父上にも鶴見中尉にも褒められる鯉登少尉が見たいのですが…。

日本へ帰る前にもう一波乱ありそうな予感です。

 

第七師団のウサギと亀

登別の第七師団も出てきました。

都丹、死んでる………。
刺青はがされて皮だけになってる…。

硫黄山の苦役で募らせた怒りを原動力にするガッツのあるやつだから、どうにか生き延びているはず…!と思ったのに…。
死ぬときはあっさり死にますよね、この漫画。
野田先生が前に何かで「死ぬときの演出なんてない」というようなことを言っていた気がするので、そういうことですよね。
生き延びるのにも過剰な演出はしないということでもありますものね…。
都丹のトレードマークのスカーフ?を、戦利品として首に巻く菊田特務曹長のコマ、見ていて切ないです…都丹ほんとうに死んでしまったのか…。
でも、いなくなったということを小物で見せる演出は好きです…悪魔の証明をモノで語れるってすごい…。

菊田特務曹長と有古一等卒はかなりのやり手でしたね。
有古は都丹の死亡を確認したあと、死体を運ぶのは労に見合わないと判断し刺青の入った皮をはいで下山し、アイヌのコタンに潜伏。
宇佐美と二階堂の手柄横取りすら予見した的確な判断です。
宇佐美と二階堂はのんびりしている間に出し抜かれているけれど大丈夫なんでしょうか。
ウサギと亀のウサギみたいですね。

仲間内での手柄横取りのほか、刺青は獣の皮と同じようにはぐという情報が菊田たちに伝わっていないことを考えると、第七師団の中でも宇佐美や二階堂といった金塊争奪戦に直接関わる兵たちは破格の扱いということになりますね。
菊田と有古は刺青について、鶴見中尉が求めているということしか知らなかった。
「正中線で途切れている」という作品の初期に印象付けられている情報を今このタイミングで出すということは、今後の展開に繋がってくるものになるのでしょうか?
菊田と有古ももうひと騒動起こしてくれそうですね。
一枚岩かと思われた相手方にも内部から亀裂が生じている、という展開は非常に楽しみです。

 

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こんばんは、うたげです。
ヤングジャンプ連載中のゴールデンカムイ最新話の感想です。
ネタバレありますので未読の方・コミックス派の方は気をつけてくださいね。
言わずもがなアニメ派の方も!アニメ三期早く~

 

第195話 有古の庭

都丹――――ッ!!
今週はとにかくそんなお話…けっこうショックな展開です…。

 

見えてるぜ

読者はすでに都丹を知っているので盲点になりがちですが、菊田特務曹長たちは都丹の正体に気付いていないのですよね。
「下手くそな按摩」
「刺青の囚人の連れていた仲間が按摩さん」
坑道に入った時点ではこの二つの情報だけです。
そこに、
「氷筍の折れる音がすると狙撃してくる」
「素早く移動しているのに氷筍の折れる音がしない」
この二つが加わって、菊田特務曹長が正解にたどり着きます。
堂々と明かりをつけて、氷筍を避け都丹に近づくことに成功。
「目が見えない」と一口に言っても色々な状態があると思いますが、都丹の目は光をほとんど感知できないのでしょうか。
明かりよりも先ににおいで松明と気付いています。

明かりがあり距離も詰められていては都丹には形勢不利。
坑道から逃げ出します。

坑道から出るときの宇佐美くん、負傷という雰囲気が薄くて、あざといですね~。
菊田特務曹長にも、何なんだあいつは、みたいなこと言われていますし。
でも足を撃たれていても、いざとなったら猛ダッシュで手柄を上げに行きそうなところがありますよね宇佐美くん…。

あと、チノイェタッのシーンにいるのは、幼少期の有古でしょうか?
眉毛と目元がそのままでかわいい。
前髪がいかにも昔の子どもという感じ。
これって「チャンスの神様」ですよね…前髪しかないってやつ…。

 

八甲田山での捜索隊

登別は有古の庭
宇佐美に肩を貸す菊田特務曹長に命じられ有古一人で都丹を追います。

有古はなんと八甲田山での捜索隊にいたとのこと。
八甲田山雪中行軍遭難事件はすさまじい事故です。
興味のある方はぜひWikipedia(外部リンク・新しいタブが開きます)などで読んでみてください。
文章だけでも壮絶さが伝わってきます…。
ちなみに映画化もされていますが、トラウマ必至と聞いているため私は見ていません…怖いもの…。

八甲田山へ捜索隊として招聘されるほど雪山を知り尽くした有古。
フルネームは有古力松
彼にとっては手負いの按摩を仕留めることなんて容易いようです。
枝を踏み折る音を出すことで巧みに都丹を狙った場所へ誘導。

狙った場所へ都丹を誘導した有古が銃を撃ちます。
それは都丹を撃つためではなく山の斜面を撃つため。
山に振動を与え、雪崩を起こすため。

 

都丹、フラグ回収か?

ここで都丹目線に切り替わりますが、この演出の恐ろしいこと…。
月明かりが反射して明るい、雪をまとった山肌。
でも都丹の目にはその光は入ってきません。
彼の視界はいつでも暗闇。
暗闇の中、銃声が続くけれど、自分に当たる気配はない。
そんな中、耳慣れない音が響いてくる。
地の底が沸き立つ音。
全身でその振動を感じ取り、やがて音の振動だけではないと気付いたときには遅かったのでしょうね。
雪崩に巻き込まれるのだと悟った都丹のコマはオノマトペがなく、都丹の覚悟のようなものが感じられる演出です。
雪崩に飲み込まれる直前に「負けたぜ」と呟く都丹。
かっこよすぎる…でも切ない…お願い死なないで都丹…!!

都丹は、意外と感情を隠さないところ(硫黄山で苦役させられたことを憎んでいると言ったところやアシリパさんの言葉に降参した様子とか)、そのくせ土方さんの指示で平然と杉元たちを裏切ったところとか、けっこう人間くさくて魅力的なのですよね。
また、なんとなく不器用な感じがするからでしょうか、そこが私の好みのキャラクターたるところなのですよ。
(もう始末されてしまいましたが)登別の按摩さん仲間に「都丹さんのせいだ」「今すぐ行け」って言われてそのまま新月を待たずに行かざるを得なかったところとか…。
それでいくと温泉での盗賊団も、都丹がリーダーって感じでしたが、実はまとめるのにけっこう苦労していたんじゃ?とか考えてしまって、苦労人・都丹がまた可愛く思えてきます。
あとシニカルな感じで笑うのもけっこう好き…。

そんな彼は、網走監獄で無事だったように今回も生き残ってくれる、具体的には逃げおおせて土方さんと合流すると思っていたのですが…まさか雪崩だなんて…。

雪崩に巻き込まれた際には、手で当座の空気を確保し、泳ぐイメージで雪の流れに乗り、無理に逆らわないほうがいいと聞きますよね。
そんな知識を持ち合わせていてくれ都丹!
今回の「負けたぜ」は、相手の作戦にはまった、という意味であってほしい…命の奪い合いにおいて負けたという意味であってほしくない…
その不屈の生命エネルギーで、どうにか無事に生き残ってくれ、都丹!!
先週の「穏やかに暮らしたい」発言が思いっきりフラグになってるじゃないか都丹!
そういう伏線は私求めてないから!

次週、雪崩が収まった頃に有古が死体を回収しようとしたら、どこを見ても都丹はおらず、足跡が森の中へ続ていていた…という展開を期待してます!

 

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