グレートすぎる「ザ・グレート」!パーヴォ・ヤルヴィとドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の作り出すシューベルトの新時代

こんばんは、うたげです。
今日は演奏会の感想です。
演奏会には両親に誘われて行くことが多いのですが、今回は素晴らしい演奏に出会えて、両親には本当に感謝しかありません。

 

シューベルトの新時代

今回の演奏会はこちら。

パーヴォ・ヤルヴィ指揮
ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団
シューベルト 交響曲 第5番 変ロ長調 D485
シューベルト 交響曲 第8番 ハ長調 D944「ザ・グレート」

聴いた感想は、めちゃくちゃ良かったです。語彙がないのが悔やまれますが…
パーヴォの指揮はメリハリが非常にはっきりしています。早めのテンポでどちらの交響曲も40分程度で終了したと思います。そこに加えて強弱も非常にダイナミックで、陰影がくっきりしているので、曲の輪郭が見えやすいんです。重要なテーマはしつこいくらいにクレッシェンドをかけるし指示も出しまくるしで、他の部分より目立たせている。
ドイツ・カンマーフィルも、とっても表現豊か!パーヴォの指揮にとてもよく応えていました。血潮の流れを感じさせるくらいぬくもりある音色で、すごく好みでした。
弦は息がぴったりで、みんな椅子から落ちそうなくらい体を揺らしまくっていました。管も柔らかい音がすごく良かった。「ザ・グレート」冒頭のホルンソロは本当にブラボー!でした。クラリネットも情感があって良かったな。

アンコールはシベリウスの「悲しきワルツ」。大好きな曲なので冒頭聴こえてきたとき「おや?」と思ったら本当にそれですごくびっくりしたし嬉しかったです。
シューベルトとはまた違う表情を見せてくれました。情感たっぷりに歌って踊る。こちらもやはりメリハリのきいた指揮で、こんなに心が動かされる曲だったのか~と笑顔で聴いていました。

終演後は周囲からも「良かった」「素晴らしい」の声があちこち聞こえてくるほどの好演。
私も改めて曲の良さを再認識できました。非常に良い演奏でした!

 

横浜みなとみらいホール

今回の演奏会は横浜みなとみらいホールで行われました。発展を続けるみなとみらい駅が最寄りです。便利な場所にありますね。今回は時間がなかったので近くのフードコートでハンバーガーだけ食べて行きましたが、時間があればみなとみらい散策もしたかった…。調べたらおしゃれなお店がやはり多そうですね。マフィン専門店行ってみたかったなー。

さて、こちらの大ホール、サントリーホールより小さいですが、管弦楽団ならこのサイズがちょうどいいのでは?と思います。残響も申し分なし。座席も背もたれが高くて体を預けて聴きやすいと思います。でも一階席は座席の間の幅がややコンパクトだったかな?中のほうの席の人が私の前を通っていくときにかなり足同士がぶつかりましたから。
(でも場所柄なのかゆとりある方が多くて全然嫌な感じはありませんでした…横浜すごい…)

他に設備面として、トイレの個室数が多いのもポイント高いです。休憩時間でもほぼ待たずに入れました。クロークもスタッフさんが多くて終演後の受取もスムーズ!ロケーションも相まってかなり優雅な気分になれます。
ただ、近くにお店がたくさんあるからなのか力の入れどころが違うのか、バーカウンターは飲み物中心でした。フード系は小さいパンの詰め合わせとクッキーとアイスクリームのみ。パンは近くのホテルのものだそうで、おいしそうだったのですが、ハード系なので演奏会前に顎を疲れさせるのもな…と思って今回はパスしちゃいました。サンドイッチやしっとり系のお菓子はないので、お腹を空かせて行く場合は注意が必要です。パンをパスした結果、空腹で終演後フラフラになりましたから、私。

 

パーヴォ・ヤルヴィの指揮

パーヴォ・ヤルヴィについては、数年前のN響との第九を聴きに行ったのですが、当時は爆速と言われているくらいに早いテンポでちょっとだけびっくりした記憶があります。
でも今は早いほうがトレンドですね。耳も慣れたもので、心地いいなと感じるようになりました。
何よりパーヴォの指揮は構成が見えやすいと思います。重点を置きたいところ、踊ってほしいところ、しっかり指示を出してオケを導いています。
今回のがこれだけわかりやすいと他の曲も聴いてみようかなという気になりますね…彼が指揮したCDを買おうかなと思っています。

ちなみに今回は会場でCDを買うと終演後にパーヴォのサイン会に参加できたようです。
パーヴォは以前インタビューで好きな国を聞かれたときに「エストニア。みんなエストニア語をしゃべっているから」と英語で答えていたのを見てから私の中での好感度が高いです(外国語を使うのは本当に難しい…)。なので、いつかサインがほしいですね。N響にはいつまでいてくれるのかな…。
N響なら安く聴きに行けるのですがパーヴォとN響の組み合わせのときはあまり聞き慣れない曲をやることが多くて尻込みして行けていないので、もっと正統派なプログラムもやってくれないかなーと思っています。

ミュンヘンフィルとワレリー・ゲルギエフとユジャ・ワンの強力トリオ演奏会

こんばんは、うたげです。
本日は前から楽しみにしていた演奏会がありました!
ワレリー・ゲルギエフ指揮、ミュンヘンフィルハーモニー管弦楽団、ユジャ・ワンのピアノ独奏という豪華な組み合わせ!!

 

演奏の感想

師走の初日に幸先のよいスタートです。
先に総括すると、素晴らしい演奏でした。

ユジャ・ワンのピアノを初めて生で聴けたのも嬉しいし、ゲルギエフの演奏を満足いく形で聴けたのも本当に素晴らしい!
プログラムは、ブラームスのピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op.83と、マーラーの交響曲第1番 ニ長調「巨人」

まずはブラームスのピアノ協奏曲。ユジャ・ワンのピアノが輝きを放ちます。彼女のピアノはテレビでは何度か見聞きしているけれど、本当に凄まじいテクニックですね…でもテクニックだけではなくて音楽の世界観を表現して、大編成のオケを見事リードしていると思いました。
マホガニーの調度品でまとめられた部屋に、大輪の花がゴージャスな花瓶に入って置かれているイメージ。まとまりはあるけれどユジャ・ワンのピアノがすごく際立っていて、彼女が全体の色を決めていました。オケは純然たる西洋クラシックサウンドだけど、ピアノはそこに少しジャズとかの新しい要素が混じっているように聞こえました。
ユジャ・ワンは攻めた舞台衣装でも有名です。この日は普通の肩出しロングドレスかなと思いきや、スカート部分の下半分はオーガンジーっぽい透ける素材。胸と尻しか隠れてないような服装でした。色もドレスが金とオーガンジーの黒で、赤のハイヒール。かっこよかったです。

続いてはマーラーの「巨人」。こちらも非常に楽しみにしていました。
まず驚いたのは、雑味のない澄んだ音色!耳にすんなり入ってきます。それなのに厚み深みもあり、迫力もある。アンサンブルも非常にまとまりがあります。ホールの性能も影響しているのでしょうが、全体的に輪郭のくっきりした演奏でした。これは生で聴けてよかった…。

私の語彙力表現力が足りなくてこの良さをお伝えしきれないのが残念ですが、本当によかったです。チケット高くて行こうか迷ったけど、行って本当によかった!
アンコールもすごかった…彼女のCDがほしいです。

 

演奏だけじゃない!楽しかったことあれこれ

マーラーの「巨人」。マーラーは比較的現代に近い作曲家だからなのか、楽譜上に様々な指示を書き込んでいます。
私はこの曲を今回も含め三度ほど演奏会で聴いておいてほぼまったく別演奏に気付けないポンコツ耳の持ち主なのですが…この曲、冒頭にトランペットのファンファーレがあります。遠くから聞こえてくるという情景描写のために、実際に舞台裏で演奏しているそうなのです。その部分が終わると舞台裏で演奏していたトランペット3名が演奏中そっと舞台に上がってきました。これはステージに近い席か、サントリーホールだったのでステージ後方の座席で聴くと、より楽しめる演出ですね。
他にも木管楽器に対してベルアップ(通常下に向けている楽器の音の出口を前へ向けること。きつそう…)の指示があったり、視覚的にも面白い曲です。ベルアップはより音を届けるための指示かもしれませんが。

あとは、ミュンヘンフィルのコンマスがバッハみたいな髪だな…とずっと思いながら聴いていました。

 

サントリーホール情報

今回の演奏会はサントリーホールで行われました。日本で一番有名なクラシック音楽ホールと言っても過言ではないですね。最寄り駅はおそらく六本木一丁目駅。付近にはお店も多いので早く着いても困りませんし、場所柄夜遅くまで営業しているお店もそれなりにあるので、終演後も明るいです。

私は演奏会の開演前にロビーで軽食を取るのが好きなので今回もいただきました。サントリーホールのロビーの飲食物、とてもレベルが高い!サンドイッチは具材の野菜が新鮮だしお肉もたっぷり。お菓子は見た目がパーフェクト、しかもお味もパーフェクト!ゆっくり味わいたいので開演30分前じゃなくもう少し早く開場してほしいな~。

サントリーホールには時間に余裕を持って、開場までに着くのをおすすめします!なぜって?開場時間になると、建物入り口上部の仕掛けが動き、機械仕掛けのオルゴール演奏が聴けるからです!
オルゴールを聴いているうちに扉が開き入場。クロークに荷物を預けたりバーカウンターでシャンパンを頼んだりして、ゆっくり開演を待ちましょう。

サントリーホールで聴く演奏はどれも損はしないですよ!上等な時間を過ごせるので気になる公演があればぜひ足を運んでください。

 

ゲルギエフとの思い出

今回、私にとってはワレリー・ゲルギエフのリベンジ演奏会でした。

以前にも彼の指揮の演奏を聴きに行ったことがあります。
そのときはチャイコフスキーの「悲愴」だったのです。演奏はとてもとても素晴らしかった…。「悲愴」は、最後、心臓の鼓動の間隔が空いていきやがて止まる…というような、緊迫した終わりを迎えます。音が鳴り止んでも、その余韻に浸っている曲。指揮者がタクトを下ろすまでは曲が続いています。
ですが、最後の音が鳴り止んで、彼がタクトを下ろすより前に、「ブラボー」の声が…。

終わった瞬間にブラボーを叫ぶような曲調でもないし、叫ぶべきタイミングでもないし!!ゲルギエフも呆れたような反応をしたように見えました…。

そんなわけで前回は素晴らしい演奏だったのに締めくくりがイマイチだったので、彼の演奏をもう一度、今度は最後まで素晴らしいまま聴きたい!と思っていたのです。
今日はその願いが叶って本当に嬉しいです。ゲルギエフリベンジ、成功です。

 

その他、演奏会や展示会についての記事はこちら!↓
ムンク展とのコラボ演奏会
ムンク展
乃木希典展

ART meets MUSIC ムンクとグリーグ

こんばんは、うたげです。
演奏会に行ってきましたのでその感想です。

 

ART meets MUSIC

先日ムンク展に行ってきた際に知った演奏会。
東京都美術館と東京文化会館、そして東京都交響楽団のコラボレーションイベントのようです。

パンフレット表紙には、三つの施設・団体の名前がしっかり記載されています。
演奏前に奏者の方が話されていたのですが、上野にある文化施設とそこを本拠地に活動する団体が協力し、お互いの集客力を高め合おうという意図が感じられました。美術鑑賞が好きな層と音楽鑑賞が好きな層、きっと親和性があると思うので、それなりに効果があるのではないかなと思います!
また、第3回目ということで、それなりに好評であろうことも伺えます。

 

行き方は?

さて、こちらの「ART meets MUSIC」、私はこうして行きました。
(第3回ということでこれまでの2回は違う方法だったかもしれませんし、これから変更になる可能性もあるので、あくまで私の行ったときの話として書いています。)

①ムンク展に行く。
②鑑賞後の半券を、東京都美術館の案内所に提示し、演奏会の整理券をもらう
③演奏会当日、整理券を持って入場する

演奏会そのもののチケットをお金で買うわけではありませんでした。
美術鑑賞をした人のうち、演奏会に行きたい人が先着順で行けるということになります。
私の整理券は400番台。東京文化会館小ホールの収容人数は649席で、うち何席かは関係者席としてブロックされていたので、実際に一般の人は620人ほど入っていたと思います。
また、ムンク展のスタートが10月27日で、私が整理券をもらったのが11月3日だったと思います(展示会はそれより前に行っていたのですが帰りに整理券をもらうのを忘れて別の日にまた来ました…)。
となると、展示会が始まってから一週間で7割ほど整理券が出ていたことになります!なかなかに人気なのですねぇ…。
行きたい方は展示会開始から一週間以内に整理券をもらいに行くことをおすすめします!半券提示でもらえるので、例えば前売り券を買って整理券をもらっておいて、展示会は後日ゆっくり…という方法もありかなと。

当日は、10:30開場でしたが、10:15頃に着いてみるとすでに待機列ができていました。30分ぴったりに入場開始。自由席なので気に入った場所を選び席を確保します。
15分頃に着いて並び始めましたが、そのくらいのタイミングだとわりと早いうちに入れたほうで、なかなかいい席を取れたと思います。一人なら開演ギリギリでもそれなりの席に着けるけれど、お友達同士で来ている場合は別々の席になるかも。でもどの席でも音はしっかり響くのであまり問題ではないと思います。

 

ムンクとグリーグ

さて、いよいよ開演!演奏者さんが舞台袖から出てきます。
通常の演奏会だと、すぐに演奏に入るのですが、今回は演奏者の方のトークがありました。
演奏会の概要(三つの施設・団体のコラボであることなど)や曲紹介を丁寧にされていて、極めつけは「では今からチューニングという音出しをしてから曲を演奏します」とおっしゃっていました。普段こういう演奏会にあまり来ない方向けの親切な対応に関心しました。
他にも、女性はドレスで華やかにしていたりと(通常は黒い服装)、クラシックコンサートに親しみを持ってもらおうという気持ちが随所に見える演奏会でした。

演奏は、まずはエルガーとモーツァルト。どちらも言わずと知れた名曲です。絶対にどこかで耳にした機会があるはずです!
ヴァイオリンは軽やかな印象。アンサンブルは息がぴったりでした。

後半はムンクと同時代に活躍した、グリーグの曲から。皆さん歌いまくる!前半がきっちりまとまった仕上がりな印象でしたが、後半のグリーグはとにかく感情を揺さぶってきます。ヴァイオリンも前半とは打って変わって重みのある音色でした。
最後の組曲「ホルベアの時代」以外は抜粋でした。「アイネ~」も、第1楽章と第4楽章のみ。抜粋の場合は楽章の切れ目で拍手すべきかよくわからなかったので、空気を読んでおきました。

「胸のいたで」は、選曲理由の通り、ムンクに近しいものを感じました。
思考が内側に向かって行って、様々な感情が湧き出てくる。それらに耳を貸すのが嫌になってふと顔を上げると、今度は周囲からの圧を感じる。
ムンクは、そうして自然からの叫びを聞いたのではないかなぁと、素人ながらに解釈しました。

アンコールまで終わったら終演です。アンコール後はコントラバスが奏者と一緒に退場して舞台が椅子以外すっからかんになるので、わかりやすいな…と思いました。楽器が置かれたままだとたまに終了がわからないときがあるんですよね…演奏者が何度も舞台に戻ってきたりとか。

 

演奏会のおまけ

さて、地味に気になる演奏会前の過ごし方。
東京文化会館の小ホールにはバーカウンターがあるので軽食がいただけます。私は朝ご飯を食べ損ねて行ったのでワッフルとコーヒーをいただきました。
午前中の公演だったのでワッフルしかないようでしたが、メニュー表には記載があったので午後からの公演ではサンドイッチが食べられると思います。
もちろん各種飲み物もあります。シャンパンを頼まれているマダムがいて、午前中からとても優雅な空気が流れていました。

演奏会終了後は、せっかくの上野なので近くでご飯を食べたいところです。
今回は東京文化会館にある「cafe HIBIKI」さんへ。精養軒のミニハヤシライスの他、カフェメニューがいただけます。ハヤシライスは本当にミニサイズなので普通のご飯としてはちょっと物足りないです…カフェラテと比べるとサイズがよくわかりますね…でもお味は抜群でした。
こちらのカフェは、どうやら大ホールに公演がある日はテラス席のみの営業のようです。今回は公演がない日だったので室内の席に着けましたが、大ホールのロビーの一部が室内席になっているため、チケットを持たない人が入ってしまうことを防ぐためでしょう。暑い日や寒い日は気を付けたいですね。写真は室内席からの眺め。大ホールのロビーがよく見渡せます。

他にも東京文化会館内にはレストランもあります。こちらはランチ1,000円台~と安くはないですが、精養軒が運営しているようなのでクオリティは間違いないと思われます。
小ホールのバーカウンターも精養軒の系列店の名前だったような。上野公園と精養軒は切っても切れないんですね。

 

美術展と演奏会の取り組み

実質無料の演奏会、とても満足しました。
演奏の質もとてもよかったのですが、何よりも、初めて演奏会へ来る人への配慮がすごく嬉しかったです。
私は配慮を受ける側ではないのですが、慣れた人たちの「こういうルールだから」という暗黙の了解って、初心者をすごく遠ざけると思うのですよね。

クラシック音楽の演奏会の敷居を高くしている要素として考えつくのが、こちらの三つ。
①値段が高い!
②聴くのに緊張する!
③プログラムのどの曲を演奏しているかわからない!

①については今回は実質無料なので、入り口としては最良だと思います。国内団体ならテーマパークに行くより安く聴けますし。

②については、値段の高い公演の話になりますが…やはり、一音も聞き逃すまい!という気持ちになりやすいとか、好きな人ほど集中したいとか、そういう理由かなと。
有名オケや指揮者の来日公演ともなれば、お客さん側もとても緊張しています。というのも、雑音NGの空気があるから。
だからみんなカシャカシャ音の鳴るダウンコートはクロークに預けるし、パンフとチラシの入ったビニール袋は音の出ない柔らかい素材だし、咳は楽章の合間にまとめてするし。のど飴を開ける音なんて出そうものならとんでもないヒンシュクを買います…(余談ですがこののど飴問題、少し問題になっていました。クラシックは高齢の方が来られることが多いからのど飴を演奏中に開ける人が多いらしく、ご配慮くださいと注意書きの紙が配られていた演奏会もありました)。
でも、音楽を楽しむのに、そういうピリピリした空気で本当にいいのかは私は疑問です。少なくとも初めての人には、リラックスして聴いて、楽しい場なんだという感想を持って帰ってもらいたいですよね。
なので今回、演奏が終わるごとにトークを挟んでいたのですが、お客さんの緊張を解く効果は目に見えてありました。おしゃべりしてもいいんですよリラックスしてくださいね、というのは最初はびっくりしましたが、たしかにとてもいい声かけですね。

また、③については今回されていた、次の曲の紹介がとても効果的でした!パンフレットに書いてあっても、読まない人も多いですし、いくつかの楽章で一曲という場合もあり今どの曲を演奏しているのかわからなくなった…という声も聞きます。いい曲だなと思っても曲名がわからないのはもったいないですよね。
それに、演奏する前に聴きどころなど教えてもらったほうがより音楽の世界に浸れます。直感で聞くのも必要ですが、せっかくの演奏会なので一つでも多く得て帰ったほうが満足度は高いはずです。鑑賞に必要な情報は事前にあったほうがいいです。

 

演奏会のすすめ

今回の演奏会は、クラシック音楽を聴く人のすそ野を広げるためにもとても良い取り組みだと思いました。唯一、平日開催というのが社会人にとってはハードルが高いですが…クラシックコンサートに来てくれる人を増やしたいという気持ちは十分に伝わってきました。私も、もっとたくさんの人に聴いてもらいたい!と思っているので、この姿勢はとても嬉しいです。

クラシックコンサートなんて七割がたが白髪の世代ですからね!以前にゲーム音楽のオーケストラコンサートに行った際には黒髪の若者が多くて、新鮮な眺めにびっくりしましたよ。

有名なホールで聴いてみたい、帰りにおいしいものを食べるって誘われて、無料でやってるから…、きっかけは何でもいいんです。クラシックコンサートはとてもいいものなので時には芸術に触れる時間を作ってみませんか?今回の記事がきっかけになって演奏会に足を運んでいただけたら大変幸せに思います。

「学び舎の乃木希典」の記録

こんばんは、うたげです。
語呂が良くて好きな言葉は「頑張る一辺倒」です。

 

「学び舎の乃木希典」展

現在、学習院大学史料館で開かれている平成30年度秋季特別展「学び舎の乃木希典」をご存知でしょうか。

開催場所が場所ですし(大学構内)、規模も小ぶりで内容もかなりピンポイントのため、在校生かお知らせハガキを受け取った卒業生が知っているくらいでしょうか。
かくいう私は所用で近くに行った際にチラシを見かけ、大好きな漫画「ゴールデンカムイ」の影響で帝国陸軍関連には興味があるので、足を運んだわけです。

 

展示会に行くには

展示会は学習院大学で開かれています。名前を耳にしたことのある人も多いと思います。付属の幼稚園や中高には皇室関連の方が通われていることでも有名ですね。
ロケーション自体はJR山手線の目白駅からすぐです。駅を出て右手の一番近い門が便利ですが、今回お目当ての大学史料館には正門のほうが近いです。正門は明治41(1908)年竣工の風情あるつくりなので見学がてら通りました。

史料館は正門を通り抜けて正面にあります。手前に北別館があり、その向こうが展示室のある北2号館です。北別館も明治42(1909)年竣工の歴史を感じる建物。著名な建築家、久留正道設計の国登録有形文化財だそうです。北別館を写真に収めたり池の鯉を眺めたりしながら展示室へ。(北別館は事務室のようなので立ち入りはできないor自由ではないと思います。)

明治期の建物ということで、「ゴールデンカムイ」作中の建物に似た雰囲気なような気がします。これは否が応でもテンションが上がりますね…

 

展示の中で印象に残ったこと

展示内容については、すごく満足でした。無料でいいのかと思うくらい。解説がすごく丁寧で、じっくり見て回ったら一時間かかりました。小さなギャラリーくらいのサイズの一部屋だけの展示なのですが、内容はとても濃いです。
軍人、特に殉死の人のイメージでしたが、かなり熱心な教育者でもあったようです。全寮制が敷かれた際には学生と一緒に寝起きをしていたみたいですね。それも会議室の一室に家具を少し入れただけの質素な部屋で。国の将来を支える若者たちと過ごす時間は自分も青春を謳歌しているようでたいそう輝いていただろうなと思います。

具体的な展示品の感想としては、天皇から下賜された品は見るからに高級そうでした。もちろん菊の御紋が入っているのですがそれがなくても絶対に高いと思えるような代物ばかり。
一番印象に残ったのは夏季遊泳で撮影された写真です。ふんどし姿の乃木希典が頭の手ぬぐいを直しながら歯を見せて笑っているもの。こんな楽しそうに笑う大将だったのかと少し身近に感じました。
あとは、今と変わらないなと思ったのが、ポストカード!英国王戴冠式に親王が名代として参列する、その随行員として乃木希典と東郷平八郎も渡欧したのですが、その記念の絵葉書が発行されています。親王・王妃のポストカードはもちろん、東郷提督(Admiral TOGO)と乃木大将(General NOGI)の二人のものまで。記念のこういうものが明治から作られていたんですね。それも有名人の顔写真入りで。


展示室ではアンケートに答えるとポストカードがもらえます。写っているのは実際の展示品。右下の軍靴、とても長い…私の太もも上部までありそうでした…

 

展示室以外にもゆかりのものが

展示室で見られるもの以外にも乃木希典関連のものが構内にたくさんあります。

まず、展示室の入り口横には、大きな骨格標本が!こちらは実際に学習院大学構内で飼われていた馬、「乃木号」の骨格標本。ガラスケースの中にいるのですが間近で見られるので大きさに圧倒されます…撮影不可なので写真はないです。

北別館以外にも歴史を感じる建物がいくつかあります。緑も多いので見終わったあとの散歩が気持ちよかったです。

 

ちょっと気を付けたいこと

比較的オープンな大学ですが、明らかに部外者とわかる場合は門の守衛さんに声をかけられるかもしれません。ベビーカーを押した人が「どこに行かれますか」と聞かれていました。その人は「レストランまで」と答えていました。構内にレストランがあり、そこは大学関係者以外でも利用可能なようですが、さすがに赤子連れは明らかに関係者ではないですもんね、そりゃ声はかけますよね…。
また、展示室の入り口では、記名を求められます。名前だけなので渋らず書きましょう。
場所柄、やんごとない方々がいる可能性のある場所なので、不審者を極力入れたくないのだと思います。けれど学びの場としてオープンでなければいけない場所でもあるので、守衛さんや展示室入り口でこういった対策がされているんでしょうね。

 

頑張る一辺倒の始まり

明治時代の学習院での教育は、乃木希典を雷様に例えた風刺画があったくらいに、なかなかに厳格なものだったように思いました。学生は軍に入るべしとの考えから、剣道と柔道を必須科目にしたり。軍隊での訓練を取り入れたんですね。

明治天皇崩御の後に殉死ともとれる自刃をした人の展示だったので、まさしく明治期に思いを馳せた格好です。そのあとで構内で運動部の練習に励む学生さんを見て、平和な時代でよかったなぁ…と思いました。

ムンク展

先日、ムンク展に行ってきました!

 

場所は上野

上野の東京都美術館で行われているムンク展。『叫び』が見たくて行ってまいりました。
上野駅にお昼ごろに着いて、鑑賞前に「みはし」であんみつを。

 

鑑賞前に

さて、腹ごしらえをしたら東京都美術館へ向かいます。行った日は平日の13時ごろだったのですが、チケット売り場には列ができていました!5分ほどで買えましたが、土日はどれほどの混雑なのか…。

 

オーディオガイドのすすめ

最近はオーディオガイドの貸し出しがあれば借りて回るようにしています。テキストの説明の展示もあるのですが、声優さんの情感こもった読みによって想像力が刺激される気がするんですよね。同時代に活躍した作曲家の曲なども聴けるので、一つの美術展をとっかかりにして色々な分野に興味が広がります。

ムンクと同時代に活躍したという北欧の作曲家、グリーグの音楽がたくさん用いられていました。「ペールギュントの『朝』」が有名ですね。オーディオガイドで流れていた曲で気に入ったものがいくつかあったので、グリーグもこれから少し聴いてみようと思います。

 

ムンクの叫び

肝心の展示は、会期が始まったばかりなので少し混んでいましたが、それでも一つ一つゆっくり見て回れました。あの『叫び』も、それと構図が同じ作品も見てきました。

『叫び』は、自然からの叫びのようなものを聞き耳を塞ぐ人物を描いたもの、だそうです。てっきり、描かれた人物が頬に手を当てて叫んでいるものと思っていましたが…実際には彼が叫びを聞いたのですね。しかも手を当てているのは頬ではなく耳だったんですね。

有名な絵画でも解説を読む機会がないことが多いので、専門の方が書かれたキャプションと、その作家の他の作品や人生を追うことで理解が深まりますね。ムンクは、『叫び』の原色のイメージから勝手に南欧のほうの人かと思っていたのですが、彼の他の作品では北欧らしい淡く白っぽい日光を感じさせる色合いが見受けられ、認識を改めました。

 

死を身近に感じていたから惹かれる

ムンクは、幼い頃に母親を亡くしています。成人前に姉も亡くしました。どちらも結核だったそうです。また、仕事で地元を離れている間にまだ若かっただろう父も亡くし、死を常に身近に感じていたのだと思います。
そういった境遇がそうさせたのか、他の人よりも感覚が鋭敏だったのだと思います。自然からの叫びもおそらく本当に聞こえたのでしょう。

死は、生まれた限り逃れようのない結果です。死なない人間はいません。ムンクの言葉を借りるなら、「黒いゆりかご」に生まれるのです。生まれた瞬間から死はつきまとう。
私はたまに人生の意義みたいなものを考えたりするのですが、何か結果を出すことが意義だというなら、死という絶対的な結果がある限り、突き詰めれば何をしようとも結果なんて意味がないんですよね。だから死は圧倒的な力で人間を押さえつけてくる。
でもムンクは死を感じながらも芸術作品を生み出し続けました。死は、彼から創作意欲を奪えなかった。死に取り囲まれながらも屈さなかったところ、それどころか死の呼び声すらも糧にしているように思えるところに、私は惹かれたのかなと思います。

 

芸術とは説明できないもの

説明とは、あるものを別のものに置き換える、いわば代替です。説明可能なものは代替可能と言えます。

ムンクが言うには、絵画は説明ができない。なぜなら他に替えうる手段がないから。魂の叫びだからこれしかないんだ、芸術は人の生き血なんだ、と。

これと近しいことを最近本で読みました。養老孟子の『遺言。』で書かれていたことです。
「同じ」にする働きを持つ人間社会において「違う」ことが重要、それが芸術。

代替がない、「同じ」と言うことができない。二人とも近いことを言っていると思います。
時代や場所や経歴があまりに違うにも関わらず、芸術についての考えが近いのはとても興味深いです。
とはいえ、これら二人の言葉は、芸術ではなく説明なので、二人とも「同じ」ことを言っていると言えてしまうんですけどね…

モバイルバージョンを終了